舞浜新聞

東京ディズニーリゾートなどのディズニーパークをはじめとして、ディズニーに関する様々な情報をお伝えします。



オリエンタルランド 第57期 定時株主総会を振り返る

6月29日、東京ディズニーリゾートを運営する株式会社オリエンタルランドの株主総会が、千葉・幕張メッセで行われました。

 

 

今回の総会では、経営陣から昨年度の事業報告、決算報告、会計監査報告が行われ、剰余金の処分(株主への配当金)、取締役の選任が決議されました。また、株主からの質疑応答も合わせて行われました。

 

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©Disney

 

今回の記事では株主からの主な質問と、それに対する経営陣の回答から、オリエンタルランドの今後の動きについて考えていきたいと思います。

 

昨年度の総会については、こちらをどうぞ。

 

エンターテイメント・プログラムの充実

オリエンタルランドは毎年、財務書類などでエンターテイメント・ショー製作費の金額を公表しています。そのデータを見ると、2005年をピークに減少となり*1、ここ数年はランド1パーク時代と同じ水準まで削減が進んでいます。

 

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過去20年間のショー製作費の推移。2016年度はシー15周年イベントの影響で、久しぶりに前年度を大きく上回った。

 

このショー製作費の削減については、これまで外部のプロダクションや子会社に外注していたキャストを、自社で雇用するようになったため、その分の経費や人件費がほかの品目に付け替えられている、という推測もできます。しかし、それを差し引いても、近年の製作費減少は、ちょっと心配になるくらいです。

 

今のパークを見てみると、レギュラーショーの数や公演回数は少なくなっており、パレードなどの出演人数も減らされています。天候に左右されやすく、人件費や開発費が膨らみやすいエンターテイメント・プログラムは、できるだけ削りたいのでしょう。

 

最近では、削減が進められていたアトモスフィア(路上パフォーマンスをするキャスト)が、少しずつ増やされています。オリエンタルランドとしては、できるだけ経費を抑えながら、アトラクションやショー以外にゲストを分散化させて、混雑を緩和させたいと考えているのでしょう。もちろん、年間パスポートホルダーのようなハードリピーターに、常に変化を感じてもらいたい、という狙いもあるかもしれません。

 

総会では、株主から「来年2018年のランド35周年に向けて、キャッスルショーをやってもらいたい」「アフター6パスポートを活用するために、夜のエンタメを充実してほしい」という要望が出されました。

 

これに対して、経営陣からは「ゲストに満足していただけるようなショーの維持に努めている」「ショーの公演形態については、様々な事情を考慮して決定する」という回答がありました。

 

かつてランドのアニバーサリーイベントでは、シンデレラ城前にあるキャッスルフォアコートに特設ステージが組まれ、豪華なショーが行われていました。

 

しかし、2008年の25周年イベントを最後に、アニバーサリーのキャッスルショーは行われなくなり、城前ステージを使ったショーも、2013年の夏イベントを最後に行われていません。

 

これは、シンデレラ城を使ったキャッスル・プロジェクション「ワンス・アポン・ア・タイム」の公演開始に伴い、キャッスルショーで使われてきた照明類を、プロジェクション・マッピング用の照明やプロジェクターに置き換えてしまったため、新規のショーを行えないからだと考えられます。

 

もし仮にキャッスルショーを行うとすれば、アメリカ・フロリダのマジック・キングダムのように、新しく照明用の設備を建てる必要があります。しかし、オリエンタルランドがそこまで経費をかける可能性は低いでしょう。

 

先ほども触れたように、キャッスルショーは固定費が大きい割に、天候に左右されやすく、体験できるゲストの数に限りがあります。座席の抽選制を導入しても、当たらなかったゲストの不満は大きくなりますし、現場のゲスト誘導を行うキャストも必要になります。

 

また、キャッスルショーを行うと、シンデレラ城を使う婚礼プログラム「ディズニー・ロイヤルドリーム・ウェディング」の開催にも支障が出てきます。オリエンタルランドとしては、経費が掛かるキャッスルショーをやるよりも、利益率が高い婚礼プログラムを優先させたいのは当然でしょう。

 

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1日1組限定の「ディズニー・ロイヤルドリーム・ウェディング」50名で770万円と高額だが、利用は好調だ。©Disney

 

なお、今年11月8日から12月25日まで、クリスマスの期間限定でキャッスル・プロジェクション「ディズニー・ギフト・オブ・クリスマス」が行われる予定です。これに伴い、現行の「ワンス・アポン・ア・タイム」は公演終了となります。おそらく35周年イベントには、キャッスルショーに代わって、リニューアルしたプロジェクション・マッピングを行う可能性が高いかもしれません。

 

「ワンス・アポン・ア・タイム」の導入直後のように、夜間の混雑が激しくなれば、アフター6パスポートの値上げも考えられますが、1デーパスポートの価格設定を考えると、ギリギリの値段になっていると思います。今後のチケット値上げとも含めて、注視していく必要がありそうです。

 

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2017年度のイースターイベントで行われたパレード「うさたま大脱走!」期間限定パレードに史上初めて、日本航空が協賛した。今後も協賛企業の力を借りることは増えるだろう。©Disney

 

オリエンタルランド≠ディズニー

オリエンタルランドと聞くと、多くの方が「ディズニーランドの会社」とイメージすると思います。もともとは千葉・浦安沖の埋め立て事業の会社としてつくられ、不動産開発、そして東京ディズニーリゾートの運営を担ってきました。

 

今回の総会では、株主から「最寄りの駅から、会場の幕張メッセまでキャラクターを出してほしい」という要望が出されました。

 

これに対して、経営陣からは「ディズニー社との取り決めにより、キャラクターを出すのは難しい」という回答がありました。これは当然でしょう。オリエンタルランドは、ディズニーとライセンス契約を結んでいるだけであって、サンリオのように、キャラクターの版権を直接持っているわけではありません。

 

また、別の株主からは「ミッキーマウスの著作権が切れたときにどうするのか」「キャラクターの著作権を保護する方針は、どのように立てているのか」という質問がありました。

 

これに対して経営陣からは「パークは、シー開園の2001年から45年契約になっている」「米国におけるミッキーマウス保護法(著作権延長法)は、独占禁止法も含めた国際的な問題なので、今後も注視していく」という回答がありました。

 

キャラクターの版権については、オリエンタルランドはどうすることもできません。これも、的外れな質問だったと思います。パークのライセンス契約については、2046年に契約が満期となりますので、そのときにディズニーとオリエンタルランドがどのような決断をするのかは、気になりますね。

 

今回の総会を見ていると、どうしても「オリエンタルランド=ディズニー」と考える株主が多い気がしました。今後IR資料などで、ディズニーとのライセンス契約について、丁寧な情報発信が求められていくでしょう。

 

ちなみに、ディズニー社(ウォルト・ディズニー・カンパニー)の株主総会では、株主向けにキャラクターのグリーティングが行われています。今年3月に行われた総会では、ミッキーマウスに加えて、モアナやキャプテン・アメリカ、ストームトルーパーと一緒に記念撮影をすることができました。

 

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今年3月に行われた、ウォルト・ディズニー・カンパニーの株主総会。ニュールックのミッキーマウスも、株主との記念撮影に応じた。©Disney

 

ディズニーの株主総会の質疑応答でも、東京ディズニーリゾートの話題がいくつか出ています。

 

ロバート・アイガーCEOからは、今後の気候変動に伴う海面上昇によって、東京と香港のパークが影響を受ける可能性があること、東京のパークはフランチャイズ経営のため、ディズニー社や他のパーク運営会社とは収益が切り離されていること、などが説明されました。

 

 

舞浜地区 開発用地の利活用

東京ディズニーランドでは、2020年春の完成を目指して、パークの大規模開発が行われています。今年1月にクローズした「グランドサーキット・レースウェイ」や、10月にクローズ予定の「スタージェット」などの跡地を使って、映画『美女と野獣』をテーマにしたエリアなどを建設する計画です。

 

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東京ディズニーランド 大規模開発のコンセプトアート ©Disney

 

詳しい開発計画は、こちらをどうぞ。

 

ランドの開発に加えて、シーでも2019年度のオープンを目指して、「ソアリン(仮称)」の建設工事も進められています。こちらは海外のパークでも高い人気を誇るアトラクションですので、満足度の向上につながると期待されています。

 

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上海ディズニーランドにある「ソアリン・オーバー・ザ・ホライズン」遊覧飛行が楽しめるため、現地のゲストにも大人気のアトラクションだ。©Disney

 

株主からは、2020年に過去最高の入園者数を目指すという経営陣の姿勢に対して、「現状のパークでゲストを収容できるのか」「東京ベイNKホールの跡地に直営ホテルを建てるなど、有効活用できないのか」という質問が出されました。

 

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第一生命からオリエンタルランドが購入した「東京ベイNKホール」跡地。現在は建物部分の解体が終わっている。

 

これに対して、経営陣からは「パークやホテルを含めて、リゾートとして開発を進めていきたい」「具体的なものは未定だが、決まり次第報告したい」という回答がありました。また、別の株主からの同様の質問に対しても「新たなホテルの建設や、既存ホテルの増床については検討中」という回答がありました。

 

舞浜地区全体を見ると、まだまだパークの拡張に使える土地は残っています。以下に、今後開発が予想される土地を挙げておきます。

 

  • 立体駐車場の建設に伴ってできる遊休地
  • 東京ディズニーシー ロストリバーデルタ南側の拡張用地
  • バックステージ施設の移転/整理に伴ってできる遊休地
  • 東京ベイNKホール跡地

 

東京ディズニーシーのロストリバーデルタ南側には、テーマポート一つ分の土地が残されています。オリエンタルランドは当初、この場所に北欧をテーマにしたエリアを展開して、映画『アナと雪の女王』に関連した施設を建設する計画でした。

 

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ロストリバーデルタ南側に広がる拡張用地

 

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オリエンタルランドが当時発表したコンセプトアート。その後、計画は白紙撤回されている。©Disney

 

しかし、その後、計画の見直しが行われ、ランドの『美女と野獣』エリアや、シーのソアリン建設を優先させることを決めています。『アナと雪の女王』は、日本でも人気のコンテンツですから、より大きな土地を使って展開したほうがいい、という経営判断があった可能性はあるでしょう。

 

おそらく、さらなるパーク開発は、東京オリンピック・パラリンピックが終わってからになると思われます。ライバルであるUSJが、今後どのような動きを見せてくるのか。それによって、オリエンタルランドも、ランド40周年・45周年を見据えた開発に手をつけていくでしょう。

 

なお、株主から出た東京ベイNKホールの跡地ですが、地下施設があるため、今すぐ更地にすることは難しいと思われます。今後、施設の移転などが行われれば、この土地の利活用が考えられますが、両隣にオフィシャルホテルがある場所に、わざわざディズニーブランドの直営ホテルを建設する可能性は低いでしょう。

 

NKホール跡地については、Ni-gata Tradersさんが詳しく書かれていますので、ご覧ください。

オリエンタルランドが93億円で取得した「東京ベイNKホール」を簡単に再開発できない複雑な理由 ※2016/12/24 情報修正・追記 | Ni-gata Traders ?

 

沖縄の米軍施設跡地への進出

2015年12月、多くのメディアが「沖縄の米軍施設跡地に、オリエンタルランドがディズニー関連施設を建設する」と報じました。これに対して、オリエンタルランドからは、「現在検討中」「決まっていることはない」というプレスリリースが出されています。

 

 

これについては、当時迫っていた沖縄の宜野湾市長選挙に向けた、首相官邸と宜野湾市長によるパフォーマンスだったと考えられます。

 

今年5月には、オリエンタルランドが、インダストリアルコリドー地区に、ディズニーブランドのリゾートホテルを建設する方向で検討すると、政府関係者に伝えていた、と沖縄タイムスが報じています。 これも、あくまで「施設返還が実現してから」という前提条件があり、首相官邸が、沖縄の世論にプレッシャーをかけるため、という見方もできます。

 

今回の総会でも、沖縄への進出について、株主から質問が出されました。これに対して、経営陣からは「引き続き調査中で、現時点で決まっているものはない」という回答がありました。

 

2016年11月には、オリエンタルランドの子会社であるミリアルリゾートホテルズが、沖縄・恩納村で建設中の「ハイアット リージェンシー 瀬良垣アイランド 沖縄」の運営に参加することが発表されています。今後、舞浜地区以外の収益確保のため、ホテル事業のさらなる強化が進められていくでしょう。

 

 

シニア層の集客強化

オリエンタルランドが、近年力を入れているのが「3世代ディズニー」です。これは比較的お金に余裕がある祖父母と、孫とその親を連れた3世代ファミリーに、東京ディズニーリゾートを訪れてもらおうという取り組みです。

 

 

この取り組みに関連して、株主から「テーマパーク間の競争激化を受けて、シニア層を取り込む工夫などはしているのか」という質問が出されました。経営陣からは「少子高齢化などの問題もあるが、家族連れの掘り起こしが重要だと考えている」「シニア層も小さな子を連れて来園することもあるので、重要なマーケットとして考えている」という回答がありました。

 

ただ、今後の少子高齢化を考えると、果たして現状のように、家族連ればかりにターゲットを絞っていてよいのか、という疑問は残ります。最近のパークを見ていると、ショー鑑賞チケットやファストパスが付いた「バケーション・パッケージ」や、プリンセスに変身できる「ビビディ・バビディ・ブティック」のように、より多くの金額を家族連れに使ってもらおう、という取り組みが目立ちます。

 

しかし、果たして今のパークを見て育っている子どもたちが、大人になったときに「今度は自分の子どもを連れて行こう」と考えてくれるのでしょうか。生涯未婚率が上昇し、結婚しても子どもを望まない家庭も増えてきています。いつまでも家族連れに頼る経営には不安が残ります。

 

今後増加が予想されるシニア層に向けて、パークでゆっくり食事が楽しめるレストランの増設や、ショーやアトモスフィアの充実、シニアに限定したオーダーメイド型のガイドツアー復活なども、一つの方法だと思います。また、子育てが終わって、一段落している40代~50代が来園したくなるような、イベントの企画などが必要ではないでしょうか。

 

オリエンタルランドには、10代~20代の主要ターゲットに加えて、より幅広いゲストの集客が求められていると思います。今後の動向に注目していく必要がありそうです。

 

IT対策の遅れ

海外のパークでは、iOSとAndroid向けに専用アプリが提供されており、アトラクションの待ち時間を確認したり、パーク内の施設の場所を調べたりすることができるようになっています。また、Wi-Fiも整備されており、ゲストは無料でインターネットに接続することができます。

 

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ウォルト・ディズニー・ワールドのゲスト向けに提供されているアプリ「マイ・ディズニー・エクスペリエンス」トップ画面にオフィシャルスポンサーのAT&Tのロゴマークが描かれている。©Disney

 

しかし、東京ディズニーリゾートの場合は、一つにまとまっている専用アプリはありません。写真のエフェクトが楽しめる「ハピネスカム」や「ショー抽選アプリ」はありますが、アトラクションの待ち時間を調べたり、レストランの予約をしたりする場合は、ウェブサイトから行う必要があります。

 

この現状について、株主からは「ホームページの多言語化以外に、どのようなIT施策を取っていくのか」「アメリカに比べて遅れているのではないか」という質問が出されました。

 

この質問に対して、経営陣からは「アメリカとは打ち合わせをしているが、電波法の関係もあって、日本では実現が難しいものもある」という回答がありました。

 

東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて、公共の場所では無線LAN(Wi-Fi)の整備が進められています。

 

訪日外国人の場合は、高額になるパケット通信よりも、無料で使えるWi-Fiのほうが便利だからです。しかし、東京ディズニーリゾートの場合は、パーク全体に無料のWi-Fiネットワークを整備しようとすると、膨大な設備投資が必要になります。さらに、整備後の通信費の負担も、大きくのしかかってきます。

 

ディズニーホテルでは、宿泊者向けに無料のWi-Fiサービスが提供されています。周辺の住宅地にも影響が出る可能性があるため、今後もパーク内の無料Wi-Fiは実現する可能性は低いでしょう。オフィシャルスポンサーである、NTTドコモやNTTコミュニケーションズの動きに期待したいところです。

 

社外取締役の選任

近年は「コーポレート・ガバナンス(企業統治)」という言葉が、盛んに言われるようになりました。これは、経営に対して、外部からの目も入れて公平化・透明化を図っていくというものです。

 

 

今回の総会では。企業統治で大きな役割を果たす「社外取締役」についても質問が出ました。経営陣からは「客観性や利益相反などの適法性を考えながら、選任している」という回答がありました。

 

また、別の株主からは、社外取締役の花田力氏について、筆頭株主である京成電鉄からの採用、さらには在任期間が長すぎるのでは、という疑問の声が上がりました。これに対して、経営陣からは「花田氏は現在相談役で、経営の一線からは離れている」「客観的な意見をもらっており、在任期間の長さは問題ないと考える」という回答がありました。

 

オリエンタルランドの社外役員を見てみると、代表取締役会長(兼)CEOを務める、加賀見俊夫氏との関係が強い方の名前が並んでいます。社外取締役の茂木友三郎氏は、加賀見氏の慶応義塾大学時代の同級生で、キッコーマンの名誉会長です。また、社外監査役の大塚弘氏は、加賀見氏の京成電鉄の同期入社組の一人です。

 

企業統治は透明性が求められており、経営のトップと個人的な信頼関係のある人間が、社外役員を務めていることには、少し違和感が残ります。今後の総会でも、突っ込んだ質問が出るかもしれません。

 

女性・女児向け集客の是非

東京ディズニーリゾートを訪れるゲストのうち、約70%は女性が占めています。

 

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オリエンタルランド「ゲストプロフィール 」より引用)

 

多くの方がイメージするように、ディズニーランドと聞くと「女性」「女の子が行く場所」と考えるのが普通でしょう。ショップに並んだプリンセスのグッズや、かわいいレストランメニュー、小さな女の子がプリンセスに変身できる「ビビディ・バビディ・ブティック」を見ていても、オリエンタルランドが女性・女児の集客に力を入れているのが分かります。

 

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今年4月にパーク内にオープンした「ビビディ・バビディ・ブティック」ランドホテルに続き、2店舗目となる。©Disney

 

これに対して、株主からは「女性と比べて、男性ゲストのマーケティングが不十分ではないか」「海外のパークでは男性向けのコンテンツも充実している」という声が上がりました。

 

経営陣からは「ゲストに任意でアンケートを行い、性別や年代を調べている」「来園の約7割が女性で、女性の意見が反映されているものは多いかもしれない」「2020年春には映画『ベイマックス』をテーマにしたアトラクションも建設する計画で、今後も模索していく」という回答がありました。

 

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2020年春オープン予定の、映画『ベイマックス』をテーマにしたアトラクション ©Disney

 

オリエンタルランドとしても、決して男性をマーケティングの対象として見ていない、というわけではないと思います。家族旅行の場合は、計画を立てるのはお母さん、お金を出すのはお父さん、という家庭が多いからです。

 

しかし、ディズニーが持っているスター・ウォーズやマーベル・ヒーローなどのキャラクターを展開したとしても、どれだけの男性ファンが「じゃあ舞浜へ行ってみよう!」と考えるでしょうか。また、スター・ウォーズやマーベル・ヒーローをパークに出す場合、多くの外国人キャストが必要になります。その分だけ人件費が増え、パークの収益を圧迫します。

 

かつてのユニバーサルとマーベルの契約に基づき、大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンでは、スパイダーマンのアトラクションがつくられています。あくまでも推測ですが、香港ディズニーランドのように、パーク内にマーベルのアトラクションをつくるのは難しいかもしれません。

 

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今年1月、香港ディズニーランドにオープンした「アイアンマン・エクスペリエンス」香港ではマーベルエリアの建設も進んでいる。©Disney

 

スター・ウォーズは、カリフォルニアのディズニーランドと、フロリダのディズニー・ハリウッド・スタジオで、テーマエリアの建設が進められています。今後東京でも、ファンタジーランドの開発が一段落すれば、将来的なスター・ウォーズエリアの導入は視野に入るかもしれません。

 

顧客満足度の低下

サービス産業生産性協議会では、毎年「日本版顧客満足度指数(JCSI)」という、消費者調査を行っています。このデータを見てみると、2014年は2位につけていた「東京ディズニーリゾート」が、2015年では11位、2016年では27位まで低下してしまったのです。

 

 

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(発表資料より引用)

 

あくまでも外部調査であり、調査対象となっている企業・サービスは様々ありますので、一概に東京ディズニーリゾートの顧客満足度が低下したとは言い切れません。ただ、最近の経費削減や、混雑の激しいパークを見ていると、少しずつ一般のゲストも、違和感を感じ始めていると思います。

 

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今年4月3日の日経MJ(日経流通新聞)の一面。東京ディズニーリゾートの顧客満足度低下について、大きく紙面を割いている。

 

この点について、株主からは「施設面以外で、満足度低下の原因だと考えているものは何か」という質問が出されました。経営陣からは「視覚価値やコストパフォーマンスが下がったというデータが出ている」「キャストの質の低下が原因では全くない」「当社が理想と考える顧客満足度に向けて、様々な計画を推進する」という回答がありました。

 

経営陣が「コストパフォーマンス」という言葉を使ったことに、個人的には違和感がありました。現在進められているパークの大規模開発は、ゲストから集めたお金、つまりキャッシュフローを原資にして行っています。経費を抑え、手元の資金を増やして、パークの開発に注ぐ。これが今のオリエンタルランドの経営姿勢です。

 

しかし、いくら将来の開発のためとはいえ、ショーやパレードの質が下がってしまえば、ゲストの満足度が下がるのも当然です。ショーやパレード、アトモスフィアが縮小された結果、アトラクションにより多くのゲストが流れ、混雑に拍車がかかっている、という見方もできます。

 

東日本大震災後、非日常を味わえるパークの需要は高まりました。また、近年のSNSの普及によって、SNS映えする写真や、フォトジェニックな写真が多く撮れるパークは、それを目当てに訪れる若いゲストも増えてきています。これも混雑の要因の一つでしょう。

 

ハリー・ポッターや日本独自のコンテンツで集客を成功させ、着実に値上げを続けているユニバーサル・スタジオ・ジャパン。こちらは顧客満足度が低下した、という話は耳にしません。今の舞浜には、1日7,400円分の価値があるのか。ゲストは冷静に見ていると思います。オリエンタルランドには、慎重な価格設定を望みたいですね。

 

自動販売機はどうしてダメ?

ウォルト・ディズニーは、パークでの人と人とのコミュニケーションを大切にしてきました。そのため、コミュニケーションが起こらない自動販売機は、パーク内には置きませんでした。

 

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©Disney

 

東京ディズニーリゾートでも、そんなウォルトの考え方を大切にして、1983年のランド開園以来、パーク内には自動販売機を置いていませんでした*2。しかし、2008年、トゥモローランドに突然、自動販売機が設置されたのです。これに対して、当時ディズニーファンの間では「利益優先では?」という疑問の声が上がりました。

 

今回の総会では、株主から「自動販売機の設置のように、ウォルト・ディズニーの意思にそぐわない事をしているのでは?」という質問が出されました。これに対して、経営陣からは、ゲストの期待にこたえられるように、満足度の向上を目指していく、という回答がありました。

 

自動販売機は現在、ランドの3か所に設置されています。シーには設置されていません。もともとは飲料を販売するワゴンが混雑するようになったため、ゲストの熱中症対策として設置されました。

 

もちろん、ワゴンの人件費を減らす効果もありますが、ワゴンを全面廃止せずに、自販機も3か所にとどめているということは、オリエンタルランドとしても、ディズニーの世界観や哲学を大切にしようとしているのだと思います。

 

おわりに

今回の株主総会にあたって、舞浜新聞が気になっていたことは以下の通りです。

 

  • パーク開発計画の見直しと今後の展望(東京五輪終了後のパークのあるべき姿)
  • キャッシュフロー依存(低金利なのに、銀行からの借り入れはしないのか)
  • USJ対策(任天堂エリアの影響をどう考えているのか)
  • インバウンド対策(東京五輪とその後、外国語のサービス)
  • 本社機能の移転とバックステージ施設(新浦安ビルの稼働状況)
  • 千鳥地区の利活用(ロジスティクスセンターの移転は?)
  • 駐車場の立体化(ダイハツの協賛で何か変化はあるのか)
  • 東京ディズニーセレブレーションホテルの稼働率(苦戦している?)
  • 在庫管理と転売対策(発注数、売れ行き予測、オンラインストアの運営)
  • 舞浜地区以外の安定的事業の展望(本当に見つけられるのか?)
  • アンバサダーホテルのテコ入れ(キャラルームが稼働率に与えた影響)
  • ディズニージャパンとの連携強化(映画とのコラボ企画など)
  • チケット制度の改定(海外のような平日・休日料金の設定)

 

オリエンタルランドの場合、日本人ゲストで混雑が激しくなっている現状を考えると、インバウンド対策には消極的かもしれません。ほかのホテル会社は、東京オリンピック・パラリンピックで急増する外国人客を、いかに手中に収めるかを考えていますが、稼働率が高止まっているディズニーホテルには、関係がありませんからね。

 

ユニバーサル・スタジオ・ジャパンでは、2020年オープンを目指して、任天堂のスーパーマリオをテーマにしたエリアの建設工事が進められています。東京ディズニーリゾートでも、今後開発工事が進んでいきます。

 

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USJ任天堂エリアのコンセプトアート。大阪が世界初の導入となる。 

 

いかに入園者数を落とさず、客単価を下げずに、パーク開発用の資金を確保していくのか。混雑を緩和しながら、顧客満足度を下げずに、USJに対抗していくのか。オリエンタルランドの経営姿勢に、今後も注目して行く必要がありそうです。

 

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©Disney

 

合わせて読みたい

*1:2008年の金額が大きく跳ね上がっているのは、ランド25周年イベントに加えて、シルク・ドゥ・ソレイユ専用劇場の諸経費が含まれていたからだと思われます。

*2:コインロッカーの両替機は、例外的に置かれていました。