2023年3月23日、舞浜新聞は誕生から「10年」という節目を迎えました。東京ディズニーリゾート30周年イベントの直前に始めたブログは、読者の皆様に支えられて、これだけ長く続けられています。本当にありがとうございます。
さて、今回取り上げるのは、東京ディズニーリゾートのパークチケットについて。実は入園日が4月1日以降のチケットから、購入方法やルールの一部が変更されているのです。なぜ40周年イベントが始まるこのタイミングで、変更に踏み切ったのでしょうか。オリエンタルランドの狙いについて、少し考えていきたいと思います。
目次
どんなふうに変わるの?
2023年1月25日、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは、公式ウェブサイトで「パークチケットに関するお知らせ」を発表しました。内容は以下の通りです。
- チケット購入サイトをリニューアル
- 入園日が4月1日以降のチケット 券種・入園パークの変更不可
- 入園日と年齢区分の変更可能
- 決済方法 クレジットカードに加えて、スマートフォン決済も可能
- チケットの二次元コード表示 公式アプリのみ○ Webブラウザでの表示、紙への印刷は×
なお、入園日が2023年3月末までのチケットを、4月1日以降の入園日に変更する場合は、これまでのルールが適用となって券種と入園パークの変更が可能です。ただし、期間限定の割引チケットなどへの変更はできません。
公式ウェブサイトでは、「一部のスマートフォン決済」と表記されていますが、2023年3月現在、PayPayのみが対応しています。今後、利用可能なサービスが増えるかもしれません。なお、クレジットカードには、一部デビットカードやプリペイドカードが含まれていますが、SNSでは「買えなかった」「決済できなかった」という体験談も目にします。十分ご注意ください。
券種や入園パークの変更ができなくなる!?
今回のパークチケットのルール変更について、SNSで大きな反響があったのは、券種や入園パークの変更ができなくなるという点でしょう。
- この日、ダッフィーのグッズ発売日じゃん!ランドからシーに変えよう
- 午前中は強風の予報か…。午後から収まるなら、シーからランドに変えよう
- 急用ができたから、1デーを17時からのウィークナイトパスに変えよう
- イベントワクワク割のチケット空きあるじゃん!1デーから変えよう
- 障がい者向けのチケットあるの知らなかった…。1デーから変えよう
入園日が4月1日以降のチケットを新しく購入した場合、上記のようなことはできなくなります。また、1デーパスポートから「首都圏ウィークデーパスポート」(平日限定)のような、割引パスへの変更もできません。
これについては、2022年10月から2023年1月まで行われた「イベントワクワク割」による混乱が、大きなきっかけになったと思います。政府によるイベント需要喚起事業だったのですが、急な発売開始と、20%割引という料金設定が話題になり、一気にアクセスが集中。SNSでは「買えなかった」「最初に通常価格で買った人が損するのはおかしい」といった、怒りの声が上がっていました。
また、公式ファンクラブの会員向けに販売している「ファンダフル・ディズニー・パスポート」も、イベントワクワク割への対応によって、払い戻しをすることに。オリエンタルランドとしては、券種変更をできなくすることで、後から割引パスを発売したときの混乱を少なくしたいという狙いがあるのでしょう。
事前に入園者数の正確な予測を立てておきたい、という考えもあるかもしれません。チケット販売数が分かっていれば、キャストの人員配置やレストランなどの仕入れなどを最適化できるからです。株主優待パスやスポンサーパスなどを対象に行っている「事前日付指定入園」についても、「この日は空いているので事前予約は不要ですよ」といった案内も将来的には可能になります。
さらには、グッズ発売日の変更によって、ランドからシーに大きく人が流れる、という事態も避けたいのかもしれません。
メルカリやラクマといったフリマアプリの普及によって、一般のゲストでも転売目的でグッズを購入できるようになっています。また、日本に住む中国人がWeibo(ウェイボー)などを使って人を集め、組織的にグッズを買い漁って、中国本土で売りさばくといった事態も起きています。
オリエンタルランドとしては、これまでグッズの個数制限の抜け穴として使われてきた、電子チケットを紙チケットに変更するサービスを、2022年9月に終了させています*1。今回のパーク変更不可の措置も、転売防止の流れを受けている可能性はあるでしょう。
東京ディズニーリゾートでは、すでに入園日によってチケットの価格が異なる「変動価格制」を導入しています。入園パークの変更を不可にすれば、「ランドは○円」「シーは○円」といったように、パークごとに異なる価格を設定しても、混乱は少なくなります。イベントやアトラクション、グッズ発売日など、ゲストの偏りが予想される日だけ値上げすることで、より利益を上げることができるようになるでしょう。
ちなみに、SNSの一部では「入園者数の予測を正確にして、午後から入園できる年間パスポートを導入するのでは?」といった声もみられました。これについては、確かに2022年5月~7月に導入された「複数日来園パスポート」の前例があります。ただし、定期券タイプのチケットは、客単価の低下やさらなる混雑、転売の助長などにつながる恐れがあるため、オリエンタルランドとしては導入にかなり慎重になるでしょう。
どうして購入サイトを新しくするの?
今回の発表の中で、個人的に一番の驚きだったのは、チケット購入サイトのリニューアルでした。従来のシステムと比べてみると、日数や人数などの条件を指定して、ショッピングカートの中に入れてから決済する仕組みに変わっています。Amazonなどのショッピングサイトに似ているかもしれません。
以前よりも分かりやすくなっていると思いますので、ゲスト目線でのリニューアルだと言えるでしょう。ただ、私としては単純なUI(ユーザー・インターフェイス)の改善に加えて、サーバーへの負荷軽減や不正利用の検知*2なども狙っているのではないかと思うのです。
2020年に始まったコロナ禍以降、東京ディズニーリゾートは臨時休園や入園者数の制限など、厳しい状況での営業を余儀なくされました。チケットの当日券販売は事実上なくなり、多くのゲストが、パソコンやスマートフォンでチケットを購入することに。しかし、膨大なアクセスが集中してしまったことで、「買えない」「決済できない」という悲痛な声がメディアでも話題になりました。
現在では、入園者数の制限は撤廃され、オリエンタルランドが設定する販売上限数も引き上げられていますので、スムーズにチケットを買うことができるようになっています。しかし、宿泊プラン「バケーションパッケージ」の発売日や、パーク内レストランの予約開始時刻の前後には、つながりにくくなることも。
このような状況に対して、オリエンタルランドでは、2022年7月からオンライン上の待合室(バーチャルキュー)を導入しています。以前はアクセスが上限数を超えると、エラーメッセージが表示されるだけ。そのため、購入サイトの中に入れるまで、何度も何度もアクセスしなくてはいけませんでした。しかし、この待合室の導入によって、時間がたつと順番に中へ入れるように変わったのです。
ただ、このようなシステムの変更はありましたが、そもそも「オンライン予約・購入サイト」でパークチケット、ホテル、バケーションパッケージ、ガイドツアーなど、東京ディズニーリゾートに関するすべての購入や予約を受け付けているため、アクセスが集中しやすい状況は変わりませんでした。
実はオンライン予約・購入サイトは、reserveから始まるリンクになっていますが、今回リニューアルしたチケット購入サイトは、planから始まるリンクになっているのです。事実上のシステム分離と言えるでしょう。これにより、以前よりもスムーズにチケットを買えるようになるはずです。
現在、東京ディズニーリゾートでは、1デーパスポート(1日券)に加えて、休日の午後3時から入園できる「アーリーイブニングパスポート」、平日の午後5時から入園できる「ウィークナイトパスポート」を販売しています。また、2021年10月からは、障がいのある方向けの1デーパスポートの販売も始まりました。しかし、コロナ禍以前に販売されていた65歳以上向けの「シニアパスポート」や、2~4日券の「マルチデーパスポート」の販売は休止されたままです。
いよいよ4月からは、東京ディズニーリゾートの40周年イベントが開幕します。5月8日には、新型コロナの感染症法上の位置づけを今の「2類相当」から「5類」に移行することが決まっています。少しずつ社会が正常化していく中で、マルチデーパスの販売再開も近いかもしれません。そうなると、以前よりもチケット購入サイトの重要度は増していくと思います。
自宅での印刷はできなくなる?
今回のチケット購入サイトのリニューアルによって、Webブラウザでの二次元コードの表示や、自宅での印刷チケットは廃止になります。二次元コードは公式アプリのみ表示させることができますが、アプリを持っていない方のために、購入時に送られてくるeメールのコードでも入園することは可能です。
4月以降は廃止となる印刷チケット
この変更については、不正アクセスの防止や、印刷チケットに関わるライセンス料の削減などが理由として考えられます。具体的な契約や金額については不明ですが、使うキャラクターの数を減らすことで、経費を圧縮できるのかもしれません。ただ、ファンとしては「コレクションとして手元に残しておきたい」という気持ちもありますので、少し複雑ですね。
ちなみに、「ファンダフル・ディズニー・パスポート」は、従来のチケット購入サイトをそのまま利用するため、自宅での印刷チケットも利用することができます。40周年イベントの限定デザインになっていますので、もし「コレクションしたい!」という方は、こちらを利用するのも手だと思います。
40周年イベント限定デザインの「ファンダフル・ディズニー・パスポート」
コロナ禍によって変わったパーク
新型コロナウイルスの流行は、社会の仕組みを変える大きなきっかけとなりました。それは、東京ディズニーリゾートも例外ではありません。
コロナ禍以前は、朝にパークのチケットブースに並び、紙のパークチケットを手に持ち、ファストパスの発券機へ…なんて光景が普通でした。しかし、パークチケットのオンライン販売が主流になったことで、販売窓口のキャストはほぼ不要になりました。ランドはエントランスの改良工事が終わっていますが、シーでも新型ゲートの導入と販売窓口の集約化は時間の問題だと言えるでしょう。
入園の迅速化に威力を発揮している新型ゲート。シーでの導入も噂されているが…。
公式アプリの急速な普及も、コロナ禍の功績の一つでしょう。アプリへの情報集約によって、どの性別・年代・居住地のゲストが、パークでどのように行動するのか、プレミアアクセスといった有料サービスに課金してくれるのかが、すぐに分かるようになりました。今後さらなるビッグデータの活用が進んでいくはずです。もしかすると、公式アプリとQRコード決済の連携によって、購買データの収集も進むかもしれません。
パーク変更が不可になることで、海外パークのように、一日でランド・シー両パークを行き来することができる「パークホップオプション」が導入される可能性もあるでしょう。ゲストの流動性は高まりますが、オリエンタルランドは客単価を引き上げることができます。
40周年イベントは、いよいよ4月15日に開幕します。東京ディズニーシーの新エリア「ファンタジースプリングス」のオープンも来年に迫り、ますます注目度が高まる東京ディズニーリゾート。舞浜新聞では、引き続き読者の皆様に有益な情報をお届けできるよう、頑張っていきます。