舞浜新聞

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元日特集 TDS「ビリーヴ!~シー・オブ・ドリームス~」は、コロナ禍の救世主になるのか?

新年明けましておめでとうございます。

 

 

2013年にスタートした当ブログも、今年3月でついに10周年を迎えます。最近はあまり新規記事を書くことができていませんが、これだけ長く続けられているのは、日頃から愛読してくださる皆さんのおかげです。本当にありがとうございます。

 

今回は、2022年11月から東京ディズニーシーで始まった新しいショー「ビリーヴ!~シー・オブ・ドリームス~」について、これまでのハーバーショーとの比較や、コロナ禍からの復活を目指す東京ディズニーリゾートにとって「救世主」となりうるのか、といった視点から考えていきたいと思います。

 

 

今回の記事では「ビリーヴ!~シー・オブ・ドリームス~」の核心となるストーリーや演出などについて触れています。ネタバレを避けたい方は、ショー鑑賞後にお読みいただくことをおすすめします。

 

目次

 

公演開始前から高まっていた期待

東京ディズニーシーの開園10周年イベントに合わせて、2011年4月28日から夜のハーバーショーとして始まったのが「ファンタズミック!」でした。同じ名前のショーは、アメリカにあるディズニーパークでも公演されており、東京での導入前から期待が高まっていました。

 

東日本大震災による公演延期を乗り越えて、なんとか始まった「ファンタズミック!」。演出の変更や機材の故障などにも見舞われながらも、ディズニーシーの夜の定番として、その地位を確立していったのです。そんな「ファンタズミック!」の公演終了が発表されたのは、2019年8月26日のことでした。

 

公演開始からすでに8年がたち、ショーで使われる機材は限界を迎えていました。ファンからは「アメリカでは20年以上続いているのに」「終わるのは寂しい」といった惜しむ声があがった一方で、「そろそろ終了だと思っていた」「機材故障による演出変更があったから納得」といった声もみられました。

 

しかし、そんな「ファンタズミック!」を襲ったのは、新型コロナウイルス(COVID-19)の流行でした。当初は「3月25日に終演」という予定だったものの、感染症拡大防止のための臨時休園によって、2月28日が事実上の最終日に。ただ、3月25日には、臨時休園中だったにもかかわらず、スペシャル動画の配信が行われるなど、ファンへの感謝の気持ちが伝えられました。

 

 

さて、そんな不本意な形で終了してしまった「ファンタズミック!」。その後継となるショーが発表されたのは、パークが臨時休園から再開して間もない、2020年7月でした。新しいショーの名前は「ビリーヴ!~シー・オブ・ドリームス~」。ファンタズミックと同じく、NTTドコモによる協賛も同時に発表されました。

 

このとき、ショーの開始時期は「2021年度」とされており、ディズニーシーの開園20周年イベントの開催時期に導入されることが予想されました。しかし、新型コロナウイルスの流行が、ビリーヴにも暗い影を落とすことになるのです。以下は時系列ごとに出来事をまとめたものです。

 

2020年

  • 7月20日 新規ショーとして2021年度の導入を発表

2021年

  • 6月7日 シー20周年イベント「タイム・トゥ・シャイン!」同年9月4日から開始することを発表、ビリーヴに関する記述はなし
  • 8月18日 政府による緊急事態宣言の延長に伴い、導入時期を2022年度に延期
  • 10月28日 第2四半期決算説明会で、導入時期を2023年3月期(2022年度)と発表

2022年

  • 7月28日 公演開始日を「11月11日」と発表
  • 8月~9月 YouTubeなどで特別映像を公開
  • 9月13日 MISIAさんがテーマソング『君の願いが世界を輝かす』の歌唱を担当すると発表
  • 10月27日 日本テレビ系列「ヒルナンデス!」でリハーサルの様子を公開
  • 11月11日 正式に公演開始

 

あくまでも推測ですが、オリエンタルランドとしては、ビリーヴをファンタズミックに代わる、新たな夜の集客の目玉として導入したかったと思われます。しかし、新型コロナウイルスの流行と、政府による行動制限、パーク内でのソーシャルディスタンス確保などから、最終的には20周年イベントが終わった2022年からのスタートとなってしまいました。

 

ただ、ビリーヴの開始前から、ファンの間では期待の声が高まっていました。特にオリエンタルランドが投資額について「約95億円」と発表したことも、驚きをもって受け止められていたようです。ファンタズミックの投資額は約30億円、ビリーヴはその3倍以上ものお金がかかっているということで「どんな船が出てくるのかな」「キャラクターはたくさん出るのかな」といった、ショーの開始を楽しみに待つ方たちの声が、SNSでも目立っていたように思います。

 

また、かなり早い時期から、メディテレーニアンハーバーやホテルミラコスタの壁面を使って、ショーのリハーサルが頻繁に行われていました。ホテルの宿泊者がリハーサルの様子を目撃したり、壁面がプロジェクションマッピングで様々な色に光り輝いている様子が撮影されたりするなど、SNSにはしばしばショーの演出や内容に関する考察が書かれていました。

 

10月27日には、ショーの公演開始に先立って、日本テレビ系列のテレビ番組「ヒルナンデス!」で、ほぼ全編とも言えるリハーサルの様子が公開されたことも話題になりました。さすがにこれには、ファンからも「ネタバレすぎるのでは?」「もう見た気になってしまった」といった否定的な声もあがっていましたが、オリエンタルランドがそれだけ「現地でしか味わえない感動がある」と自信をもっていたことの裏返しだったのかもしれません。

 

そんな多くのファンの期待を背負った「ビリーヴ!~シー・オブ・ドリームス~」は、新型コロナウイルスの流行に翻弄されながらも、2022年11月11日、ついに公演を開始したのでした。初日は音響トラブルにも見舞われましたが、MISIAさんとミッキーマウスたちによるスペシャルグリーティングも行われ、パークは大いに盛り上がりました。

 

海外パークにも負けない構成

「ビリーヴ!~シー・オブ・ドリームス~」に関しては、ショーの開始以降、SNSやブログを中心に様々な評価がなされています。あくまでも個人的な意見ですが、ビリーヴは海外にあるディズニーパークにも負けない、世界に誇れるエンターテイメント・プログラムに仕上がっていると感じています。

 

 

ストーリーに加えて、出演するキャラクターの選定、テーマソングの使い方、花火(パイロ)などの演出、さらには新しく建造された船(バージ)など、とにかく華やかで、ディズニーらしい物語性が強く感じられるショーだと思いました。もちろん、水上オートバイなど、これまでディズニーシーのハーバーショーで使われてきた演出を使っている、という点も評価できると思います。

 

特に私が感動したのは、ディズニープリンセスの演出でした。アリエル、ジャスミン、ラプンツェルの3人によるメドレーは、ディズニーシーのこれまでの歴史、そして2024年度に開業が迫る新エリア「ファンタジースプリングス」とのつながりを感じさせてくれます。また、モアナとエルサを組み合わせて登場させるのも、何とも粋な演出ですね。プロメテウス火山を使った演出、さらにはハーバーが燃える演出も含めて、映画のストーリーを踏まえた素晴らしいものだと思います。

 

 

また、演出で私が舌を巻いたのは、ストーリー構成において、悪役たちであるヴィランズに依存していないという点でした。

 

過去の東京ディズニーリゾートのショーでは、ミッキーマウスやその仲間たちが、ヴィランズによる妨害を乗り越えてハッピーエンドを迎える…という演出が多くみられました。しかし、ビリーヴでは、それぞれの映画のキャラクターたちが、夢をあきらめる瞬間や、希望をなくす瞬間といった「絶望」が、場面転換のきっかけに使われているのです。

 

近年、東京ディズニーリゾートでは、ヴィランズの「恐怖」「残忍さ」をあまり扱わない傾向が強くなってきています。かつてのように、容赦なくミッキーたちに立ち向かってくるというよりかは、「咬ませ犬」としての役割が強くなっているように感じるのです。ビリーヴも、最近の舞浜の流れを汲んでいるのかもしれませんね。

 

個人的には、ショーの終盤でミッキーマウスやその仲間たちが一斉に登場する…という演出も良かったと思います。冒頭で流れるミッキーとミニーのセリフが伏線となって、最後の華やかなフィナーレへとつながっていくからです。ただ、これについては「必要性が感じられない」「ミッキーフレンズは蛇足」といった、批判的な声もSNSで目立っていました。

 

 

ただ、キャラクターの知名度やゲストのニーズ、さらにはグッズ展開などを考えると、ミッキーフレンズの登場は必要だったのだと思います。ショーの開発段階からミッキーフレンズの登場が予定されていたのか、それとも後から追加されたのか…。これについては何とも言えませんね。

 

ハーバーショーの課題を克服?

東京ディズニーシーのハーバーショーといえば、これまで「どこから見ればいいの?」という声が多くあがっていたと思います。オリエンタルランドからの案内や、公式ガイドブックなどでは「360度どこから見ても楽しめます」といった記述もありましたが、基本的にはホテルミラコスタ側の広場「ピアッツア・トポリーノ」(通称「ミッキー広場」)やその周辺から見るのが「正面」として、内容が構成されていたように思います。

 

ただ、ビリーヴでは、ハーバーショーの課題でもあった、観賞場所の偏りが改善されていると感じました。確かに、「ピアッツア・トポリーノ」や、レストラン「カフェ・ポルトフィーノ」前にある「ハーバーサイドテラス」(通称「バケパ席」)などの近くから見ると、キャラクターとの距離も近く、ショー全体をまんべんなく見ることができます。ただ、それ以外のエリアが見にくかったり、ストーリーが分かりにくかったりすることはないと思いました。

 

また、ビリーヴでは、プロメテウス火山側にある要塞「フォートレス・エクスプロレーション」にも、公式宿泊プラン「バケーションパッケージ」の利用者向けに、専用の鑑賞エリアが設定されています。

 

個人的には、フォートレスはハーバーからも少し距離があるため、「長時間の場所取りをするゲストを排除するため?」などと考えていたのですが、実際に鑑賞してみると、ミラコスタのプロジェクションマッピングをはじめ、ショー全体を上からまんべんなく見ることができるため、ここはここで課金する価値はあると思いました。

 

もちろん、キャラクターの登場する場所によって、自分の好きな鑑賞エリアは決まってくると思います。ただ、中央にあるバージ(セカンド・スター・バージ、通称「キノコ」)や、キャラクターが乗っているほかのバージも巨大ですので、花火や照明、映像といった演出にムラがなく、ハーバーのどこから見ても楽しめるのは間違いないでしょう。

 

ちなみに、ホテルミラコスタやプロメテウス火山には、ショー中にプロジェクションマッピングが映し出される演出があります。個人的には、マッピングが見られる場所のほうが良いとは思いますが、必ずしもそこにこだわる必要もないと思っています。マッピングとハーバーで視線を細かく動かすよりかは、時々見るぐらいでちょうど良いかもしれません。これについては、マッピングがショーの添え物になっているということで、一部のファンからは批判の声が上がっていたのですが…。

 

ストーリーにおける矛盾と課題

ここまでビリーヴの魅力について、いろいろと考えてきました。しかし、じっくり見ていくと、ストーリーやキャラクターのセリフの一部に、少し違和感を覚えたのです。

 

 

一つ目は「ピーター・パン」のキャラクター設定や立ち位置についてです。ディズニーのピーター・パンはもともと、1953年に公開された長編映画から始まっています。今ではアトラクションをはじめ、パレードやショーで彼の姿を見る機会は多くなっています。

 

しかし、ビリーヴに出てくるピーター・パンのキャラクター設定が、どうも原作映画と異なっているのです。映画では、やんちゃな男の子のイメージが強いピーター・パンですが、ビリーヴではみんなを導いていく存在に。さらにはショーの中で「絶対にあきらめなかったから、僕は飛べたんだよ!」という言い回しがありますが、このような設定は映画には出てきません。

 

また、同じくショーに出ているウェンディも、楽しいことを考えて最後に飛べるようになった…という演出がありますが、映画では家からネバーランドまで、ピーター・パンと一緒に空を飛んで向かうシーンがあります。これについては、重箱の隅をつつくような話になってしまうのですが、映画ファンとしては少し気になりましたね。ただ、東京ディズニーランドで公演されている「ミッキーのマジカルミュージックワールド」でもそうですが、ピーター・パンが、ストーリーテラーとしてみんなを導く存在になっている…という気もしますね。

 

もう一つ、ショー中に気になったのは、冒頭でピーター・パンが「ここがシー・オブ・ドリームス!」とウェンディたちを案内しているのですが、その後のセリフで「さあ、シー・オブ・ドリームスへ!星の中へ入るよ!」と言っているのです。あれ?みんなはシー・オブ・ドリームスにいたのでは…?こんなところにも、ちょっとした矛盾を感じてしまいました。

 

 

また、ショーの課題として、SNSで指摘されていたのが「原作の映画を見ていないと楽しめないのでは?」といった声でした。

 

これについては、ほかのアトラクションやショー、パレードでも同様のことが言えると思います。個人的には、映画を見ておいたほうが、より楽しめるとは思うのですが、だからと言って映画を見ていないとよく分からない…というふうにはならないと思います。

 

特に『塔の上のラプンツェル』や『アナと雪の女王』『アナと雪の女王2』に関しては、2024年度に開業予定の新エリア「ファンタジースプリングス」に、アトラクションの導入が決まっています。オリエンタルランドとしては、アトラクションに乗ってストーリーを追体験してから、ビリーヴを鑑賞するゲストも想定しているのかもしれません。

 

旧平面駐車場で建設が進む、東京ディズニーシー「ファンタジースプリングス」

 

TDS開園5周年イベントとのつながり

今回のビリーヴで、ファンの間で大きな反響があったのが、やはりショーの日本語版テーマソング『君の願いが世界を輝かす』を歌手のMISIAさんが担当する、という発表でした。

 

www.tokyodisneyresort.jp


MISIAさんといえば、ディズニーシー開園5周年イベントのテーマソング「シー・オブ・ドリームス」を担当したことでも有名です。実に16年ぶりとなるコラボレーションに、パークファンだけではなくMISIAさんのファンも大いに盛り上がりました。

 

 

今回の楽曲『君の願いが世界を輝かす』は、日本語の訳詞もMISIAさんが手がけています。おそらく新型コロナウイルスの流行がなければ、「シー・オブ・ドリームス」の名前のつながりのように、20周年イベントと過去の周年イベントをつなぐ存在として、MISIAさんの歌唱を使う予定だったのでしょう。それを考えると、なんとも複雑な気持ちになりますね。

 

 

ただ、個人的に気になったのは、11月11日の公演初日に「MISIAさんが来るのでは?」とSNSで話題になっていたことです。これはもともと、バケーションパッケージの利用者向けに送られた案内メールの中に、ショーの公演時間が伸びることが書かれていたのが発端でした。この出来事よりも前に「MISIAさんが来るかも」という憶測を書いている方はいましたが、この案内メールがきっかけとなり、一気に盛り上がってしまったように思います。

 

サプライズ演出にしたかったオリエンタルランドの関係者にとっては、さぞ辛かったと思います。ただ、結果的には、MISIAさんとミッキーマウスたちのスペシャルグリーティングによって、公演初日のハーバーは大いに盛り上がりましたね。

 

 

ビリーヴは舞浜の救世主になるのか?

東京ディズニーリゾートでは、いよいよ4月から40周年イベント「Dream-Go-Round(ドリームゴーラウンド)」が始まります。

 

www.tokyodisneyresort.jp

 

すでにイベントの詳細はプレスリリースなどで発表されていますが、新型コロナウイルスの流行の影響を受けて、過去の周年イベントと比べると、かなり規模が縮小されていると感じます。また、ショーやパレードといったエンターテイメント・プログラムについても、ダンサーやパフォーマーの復活、さらにはキャラクター同士のディスタンス解除など、課題は山積している状況です。

 

オリエンタルランドとしては、少しずつ感染症の流行が落ち着き、地方客や訪日外国人が増加していけば、V字回復できるだろうという予測を立てているかもしれません。ただ、コロナ禍における入園者数の制限に慣れてきているゲストから考えれば、以前のような混雑が戻ってきたパークでは、満足度が下がってしまうかもしれません。


オリエンタルランドでは、パークチケットの変動価格制に加えて、従来のファストパスに代わる「ディズニー・プレミアアクセス」を導入しています。これは、チケット代とは別に課金することで、待ち時間を短縮できるサービスです。ビリーヴでも、ハーバーの一部エリアがプレミアアクセスの対象エリアとなっており、長時間の場所取りをしなくても鑑賞できる仕組みになっています。

 

maihama.hateblo.jp

 

ビリーヴの評判が広がっていけば、40周年イベントをきっかけにして、バケーションパッケージやプレミアアクセスで課金するゲストが増えるかもしれません。コロナ禍で苦しむオリエンタルランドにとって、客単価の向上は悲願だからです。しかし、その一方で、ハーバーショーは天候に左右されやすいという弱点も抱えています。雨天時などでもゲストの満足度を下げないようにするには、どうすればよいか。今後もオリエンタルランドの模索は続いていくでしょう。

 

年間パスポートの事実上の廃止によって、入園者数を適切に管理しつつ、確実に客単価を上げる仕組みを整えつつあるオリエンタルランド。売り上げの向上と混雑緩和、さらには顧客満足度とのバランスをいかに保っていくのか。2023年も東京ディズニーリゾートの動きに注目していきたいと思います。

 

 

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