東京湾にせり出すように立つ東京ディズニーリゾート。もともとは、遠浅の海を埋め立ててつくられた土地のため、パークから海までは、一番近いところで約100mほどしかありません。
東京ディズニーリゾート周辺の衛星写真(Googleマップ)
これほど海に近いと「もし大きな津波が来たら、東京ディズニーリゾートにいても安全なの?」という素朴な疑問が生まれます。今回は不安に感じている方のために、千葉県や浦安市が発表している情報をもとに、この疑問を解決したいと思います。
もしも巨大地震が起きたら…
千葉県は2018年11月、津波防災地域づくり法*1に基づいて、県内の津波浸水想定を発表しました。
この浸水想定は、考えられる最大級の地震と最悪の条件で計算されたものです。これによると、地震発生後は房総半島南部や外房を中心に大きな津波が押し寄せて、南房総市では最大25.2mの津波に襲われると推計されています。
また、千葉市や船橋市などの東京湾岸でも、最大で3m以上の津波に襲われるとされています。浦安市も例外ではなく、最大で4mの津波が押し寄せ、海抜より低い574ヘクタールもの地域が津波によって浸水する可能性があるのです。
千葉県が発表した津波浸水想定図
浦安市全体を見ると、埋め立て工事前から市街地が広がる元町地区を中心に、大きな被害が出ることが予想されます。しかし、東京ディズニーリゾート周辺を見ると、オフィシャルホテル近くの防波堤や、東京ディズニーランドホテルとその周辺で浸水が見られるものの、水位は30cm未満となっています。
東京ディズニーランド・東京ディズニーシーは建設工事前に土地を造成していますので、周りよりも少し高くなっています。現在考えられる想定では、巨大地震が起きても、東京ディズニーリゾートが津波に飲み込まれてしまう危険性はなさそうです。
津波よりも怖い「高潮」
実は、地震による津波よりも怖いのが、高潮による被害なのです。高潮とは、台風や発達した低気圧が海岸近くを通るときに発生する、海水面の高まりを指します。津波よりも長い時間続くために、浸水が広がり、より大きな被害が出てしまうのです。
千葉県では、津波による浸水想定に加えて、台風による高潮浸水の想定も発表しています。これは最大級の台風が千葉県近くを通過し、堤防などの施設がすべて破壊された…という最悪の事態を想定しています。
以下は、東京ディズニーリゾートとその周辺の浸水想定です。
これを見ると、パーク内の施設でも1m程度、オフィシャルホテル周辺では1m~3mの浸水が想定されています。あくまでも最悪の事態が起きた場合ですが、東京ディズニーリゾートはまさに陸の孤島になってしまうでしょう。
最近は地球温暖化による海水温の上昇で、台風が巨大化する傾向があります。事前に被害が予想される場合は、速やかに高い場所へ避難する必要があると思います。
浦安市のハザードマップは、舞浜が対象外に?
それでは、もし大雨や河川の氾濫などが起きたとき、東京ディズニーリゾートに被害はないのでしょうか。浦安市が発表しているハザードマップを見てみましょう。
浦安市では「洪水ハザードマップ」と「内水ハザードマップ」の2種類を作成しています。洪水版は江戸川放水路が氾濫した場合の想定、内水版は集中豪雨が市内に降り、下水道から水があふれ出た場合の想定となっています。
これを見ると、洪水版は東京ディズニーリゾートの浸水は想定されていません。先ほども触れたとおり、旧市街地である元町地区の被害が予想されています。
一方、内水版を見ると、周辺にある住宅地や鉄鋼団地の水位予想はされているものの、東京ディズニーリゾートは色が全く塗られていません。よく見ると東京ディズニーリゾートの敷地には「※舞浜アーバンリゾートは、私有地等のため水害予測をいたしておりません」という一文が書かれています。
東京ディズニーリゾートに住んでいる市民はいませんので、最初から水害予測をする必要がないためでしょう。ただ、いくら私有地だからといっても、浦安市がまったく想定していないのは、ゲストからすると不安に感じます。もちろんオリエンタルランドが独自のハザードマップをつくっている可能性はあります。
夢と魔法を生み出している東京ディズニーリゾート。日常を忘れて楽しむことも大切ですが、もしものときの備えも忘れないようにしたいですね。
舞浜をぐるりと囲んでいる防波堤。地面からの高さは約3メートル、海抜からの高さは約7メートル。津波だけではなく高潮も想定して設計されている。
参考リンク
*1:正式名称は「津波防災地域づくりに関する法律」です。