車で東京ディズニーリゾートへ向かっていると、普段は見かけないデザインの道路標識に出会うと思います。
実は浦安市内でも、舞浜地区だけ道路標識が違うのです。今回は見過ごしてしまいそうな風景にひそむ、オリエンタルランドのねらいについて見ていきましょう。
目次
信号や道路標識も舞浜オリジナル!
一般道の場合、方向を指し示す標識は、青地に白い文字で描かれていることが多いと思います。また、高速道路で使われる標識は、一般道と区別するために、緑地に白い文字で描かれています。
しかし、東京ディズニーリゾートがある舞浜地区では、少し様子が違います。テーマパークや商業施設、駐車場を案内する標識は青地に白い文字、一方でホテルの案内標識は緑地に白い文字で描かれているのです。
ただし、高速道路の案内については、一般道と同じく「緑地に白い文字」のデザインで統一されています。これなら、地方から来た方や、外国人観光客でも迷いにくいですね。
実は東京ディズニーリゾート周辺にある道路標識は、千葉県や浦安市ではなく、オリエンタルランドがすべて建設費を負担しています。信号機や街灯もデザインが統一されていますが、これも税金ではなくオリエンタルランドが自社で負担しているのです。
東京ディズニーリゾートがある舞浜地区は、もともと千葉県が海を埋め立てて造成し、それをオリエンタルランドに払い下げた、という歴史があります。そのため、舞浜地区の道路は、基本的にオリエンタルランドが管理しているのです*1。
街路樹に関しても、700本ものヤシの木を植えるなど、エリア全体で統一感があるようになっています。もちろん、電線や電話線などもすべて地下化されており、電信柱は一本もありません。東京ディズニーリゾートは非日常の空間が広がっていますが、何気なく見過ごしてしまう風景にも、オリエンタルランドはこだわっているのです。
ちなみに、浦安市内には、一般の道路標識に交じって、東京ディズニーリゾートの案内標識が複数設置されています。市民にとっては何気ない風景ですが、これなら一般道に迷い込んでしまった人でも安心ですね。
高速道路の入り口も自社負担?
東京ディズニーリゾートの近くを走る首都高速道路の湾岸線には、「舞浜入口」という入口専用のインターチェンジがあります。
この舞浜入口、葛西JCT方面の西行きにしか入ることができません。どうして、このような特殊な施設がつくられたのでしょうか。実はここにも、オリエンタルランドが関係しているのです。
東京ディズニーランドの開園当時、湾岸線を使って東京都心や横浜方面に向かう場合、国道357号から葛西出入口へ向かう必要がありました。しかし、閉園時間ともなると、駐車場から一気に車が流れ出して、周辺道路は大渋滞を引き起こしていました。
オリエンタルランドは、混雑緩和のために葛西ではなく、東にある浦安出入口に迂回してから湾岸線に乗るルートを推奨していました。しかし、それでも渋滞が深刻化していたことから、2001年8月、東京ディズニーシーの開園に合わせて「舞浜入口」が新設されたのです。
この舞浜入口の完成によって、国道357号線に出なくても、直接湾岸線に入れるようになりました。現在は東京ディズニーリゾートの来園客ではなく、鉄鋼団地や千鳥地区にある物流センターの大型トラックも多く利用しています。
実はこのインターチェンジ、オリエンタルランドが浦安市へ建設費の約27億円を寄付して、浦安市が首都高速道路(株)の代わりに建設したのです。そのため、舞浜入口とその周辺道路は「市道」扱いとなり、市が費用を負担して首都高(株)が管理するという、全国でも珍しい形態をとっています。
東京ディズニーリゾートの玄関口「JR舞浜駅」にも?
さて、車ではなく、電車で東京ディズニーリゾートを訪れる方にとって、一番身近なのはJR京葉線の舞浜駅ですよね。
実はここにも、オリエンタルランドはお金を出しています。舞浜駅が開業したのは1988年12月。その後、東京ディズニーシー開園を控えた2001年7月に駅舎の改築工事が行われ、現在の形になりました。
この2001年の改築工事では、JR東日本だけではなく、オリエンタルランドもデザイン監修などに加わりました。約40億円の総事業のうち、80%を自社で負担しています。また、駅構内にある広告はすべて、東京ディズニーリゾートもしくはパークのスポンサー企業に統一されています。オリエンタルランドが舞浜駅を、東京ディズニーリゾートの玄関口として、そして非日常空間を演出する場所として考えている証拠でしょう。
なお、舞浜駅では混雑緩和のため、2022年春をめどにホームの拡張工事を行う予定です。上りの東京方面に45m、下りの蘇我方面に55mホームを伸ばすことで、全体の面積を約1.5倍にまで拡張する計画です。建設費の約44億円のうち、半分はオリエンタルランドが負担する予定です。今後もパークだけではなく、周辺施設への投資は続きそうです。
舞浜駅のホーム拡張工事については、こちらをどうぞ。
ウォルト・ディズニー・ワールドの都市開発
最後は東京ディズニーリゾートではなく、アメリカ・フロリダにあるウォルト・ディズニー・ワールドの都市開発について、ご紹介しましょう。
ディズニーワールドといえば、4つのテーマパーク、2つのウォーターパーク、30以上のリゾートホテルを抱える、世界最大のディズニーリゾートです。ディズニーファンなら一度は憧れる聖地ですね。
ディズニーワールド全体の敷地面積は、約122平方キロメートル。東京ディズニーリゾートの敷地面積が、約1.6平方キロメートル*2ですから、およそ76倍にもなる広大なリゾートです。
「ディズニーワールドって、どれぐらい広いの?」ってよく聞かれます。東京の主要な駅で比べると、こんな感じ。いかに広いか分かりますよね(*_*; pic.twitter.com/o6TssKY4a8
— 舞浜新聞 (@maihama_shimbun) March 30, 2019
オーランド国際空港からディズニーワールドへ向かうと、ミッキーとミニーが描かれた大きなゲートが見えてきます。このゲートより向こう側は、すべてディズニーの敷地です。街一つ分がまるごとディズニーリゾート、と言ったほうがよいかもしれません。
ディズニーワールド内を車で走っていると、ほかの道路と標識のデザインが違うことに気づきます。実は東京ディズニーリゾートと同様に、ディズニーワールドでも独自の道路標識が使われているのです。
ディズニーワールド敷地外にある道路標識。日本と同じく、緑地に白い文字で描かれている。
ディズニーワールド敷地内にある道路標識。上の施設案内は紫地に白い文字、下の方面案内は、ミッキーマウスを思わせる赤地に黄色い文字になっている。
この独創的な道路標識は、デザイナーのデボラ・サスマンの手によるものです。彼女は1984年のロサンゼルスオリンピックのグラフィックデザインを手がけるなど、アメリカでは売れっ子のデザイナーでした。
ディズニーワールドの開発を担当していたディズニー・ディベロップメント・カンパニー*3が、サスマンの勤める会社にデザインを依頼したのは、1989年のこと。サスマンはその後、ディズニーランド・パリのグラフィックやロゴデザインも担当しています。
(2022年1月28日追記)
ディズニーワールドでは、新設の道路標識から、新しいデザインに変更されているようです。今後置き換えが進むのかもしれません。
Say goodbye to the purple signs…
— WDW News Today (@WDWNT) 2022年1月27日
Walt Disney World has begun to replace the classic road signs with these new color ones. These signs were changed since Galactic Starcruiser needed to be added to the one on the right. pic.twitter.com/7yvumFNi4p
Walt Disney World's iconic purple road signs are being replaced with an all-new look https://t.co/XCHCHqofOf
— WDWMAGIC.COM (@wdwmagic) 2022年1月27日
ディズニーワールドのそばには、ディズニー社が開発を行った「セレブレーション」という住宅地が広がっています。テーマパークやホテルだけではなく、住宅地そのものを開発するなんて、ディズニー社らしいですね。
2011年にはディズニーワールドの敷地内に、高級住宅地として「ゴールデンオーク」が誕生しました。富裕層を対象とした物件がほとんどで、価格は数百万ドル(数億円)規模。まさに夢のような場所ですね。
ちなみに、ディズニーランド・パリの近くにある「Val d'Europe(ヴァル・デュロップ)」も、ディズニー社が開発している街です。こちらはフランス政府との共同開発で、住宅街やショッピングモールが広がっています。
(おまけ)
香港では、パーク近くを走る高速道路の標識にミッキーシェイプが描かれていて、一目で方面が分かるようになっています。また、パーク近隣にはオリジナルデザインの道路標識や案内看板が設置されています。
ディズニーランド・パリ周辺には、オリジナルデザインの道路標識はありません。ただし、2016年に周辺道路に設置されている案内看板が一新されています。
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参考資料
urayasudaisuki.cocolog-nifty.com
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