舞浜新聞

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舞浜駅のホームが拡張へ!JR京葉線に秘められた壮大な計画とは?

JR東日本の千葉支社は3月25日、東京ディズニーリゾートの最寄り駅である、京葉線舞浜駅のホームを延伸すると発表しました。完成は2022年春ごろを予定しています。

 

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今回はJR東日本が舞浜駅の工事を決めた理由、そして京葉線に秘められた壮大な計画について、ひも解いていきたいと思います。

 

混雑緩和のためにホームを拡張へ

JR東日本のプレスリリースによると、舞浜駅のホーム(全長約200メートル)を東京方面へ約45メートル、蘇我・西船橋方面に約55メートル延伸して、全体の面積を約1.5倍に拡張する計画です*1。完成後は、上り列車の停止位置を蘇我・西船橋寄りに、下り列車の停止位置を東京寄りに変更して、列車が停車しない部分には柵を設置します。乗客を分散させることで、ホームの混雑を緩和するのがねらいです。

 

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JR東日本のプレスリリース(PDF)から引用)

 

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工事は2020年4月に着手、2022年春ごろの完成を予定しています。総事業費は44億円。東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランド(OLC)からの要請に伴うもので、OLCが費用の50%を負担します。駅高架下にある「ホテルドリームゲート舞浜」「ホテルドリームゲート舞浜アネックス」は、工事期間中の約2年間営業を休止します。

 

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これまで舞浜駅では、東京ディズニーランド・東京ディズニーシーが閉園時間を迎える、夜9時から11時前後の混雑が問題視されてきました。クリスマスイベントの時期などはホームに人があふれ、非常に危険な状態になることも…。最近では改札前で入場制限が行われるようになり、以前に比べて状況は改善されています。

 

 

しかし、どうしても乗降客数に対してホームが狭く、乗り降りに時間がかかる問題が指摘されてきました。また、京葉線はホームドアの設置が進んでおらず、小さな子どもを連れた方や、車いすの方などは危険を感じることも多かったと思います。

 

今回のホーム拡張によって、上り列車と下り列車の停車位置がずれますので、より乗り降りがスムーズになるだけではなく、改札前に人がたまってしまう…という状況も改善されるでしょう。

 

これまでも改良工事を実施

舞浜駅が開業したのは、1988年12月のことです。当時は南口にしか改札はなく、入り口も細かく仕切られているなど、現在のような大屋根のある開放的な構造ではありませんでした。

 

www.asahi.com

 

東京ディズニーシーの開業を控えた2001年7月、改良工事が行われ、新しい駅舎に生まれ変わりました。このときに北口が新設されたほか、ホームの両端にエスカレーターが増設されました。

 

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その後、2004年の「ホテルドリームゲート舞浜」開業、2009年のトイレ改修工事、2016年のコンコースなどの改修工事*2が行われ、現在に至っています。

 

国土交通省がまとめている「国土数値情報 駅別乗降客数データ*3」によると、2018年度の舞浜駅の乗降客数(1日当たり)は、約16万人。年間だと約5,700万人もの乗り降りがある巨大な駅なのです*4。しかし、そんな混雑する状況が続いていたにも関わらず、ホームの拡張はなかなか実現しませんでした。

 

東京ディズニーランドの新エリア開業、2021年夏の東京オリンピック・パラリンピック、さらには2023年の東京ディズニーシーの新テーマポート「ファンタジースプリングス」とパーク直結型ホテルの開業など、今後も駅の利用者数が伸びることが予想されます。オリエンタルランドとしては、事故が起きる前に、駅の混雑緩和や安全対策に力を入れたい、と考えているのでしょう。

 

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新型コロナウイルスの流行で開業時期が延期されている、東京ディズニーランド「新ファンタジーランド」

 

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建設工事が進む、東京ディズニーシー「ファンタジースプリングス」

 

なお、JR東日本の計画では、京葉線全駅へのホームドア導入について、2032年度末までに完了するとしています*5。舞浜駅など、主要な駅には先行して導入される可能性もありますが、直通する武蔵野線の車両との違いもあるため、今後数年の導入は厳しいと思います。

 

ホームは増設できないの?

「拡張じゃなくて、ホームをもう一つ増やすことはできないの?」

 

舞浜駅を利用したことがある人なら、そう思うかもしれません。実は舞浜駅の北側には、ホーム増設用の土地がちゃんと用意されているのです。しかし、そう簡単には工事ができない事情があります。

 

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舞浜駅の北側に広がる空き地。千葉県企業局が保有している。

 

京葉線にはもともと、新木場駅から線路を複々線(上りと下りに2本ずつ線路を引く)にして、津田沼駅まで伸ばし、総武緩行線*6に接続する計画があります。いわゆる「総武線・京葉線接続新線」です。

 

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2000年の「運輸政策審議会答申第18号」では、2015年度までの整備着手が適当とされていましたが、いまだに実現していません。これが完成すれば、京葉線の混雑緩和だけではなく、東京都心と千葉方面のアクセスが向上することが期待できます。総武緩行線に東京駅への直通列車も導入できますので、総武快速線の混雑緩和にもつながります。

 

しかし、国や千葉県、JR東日本には、この計画を前に進めようという動きはありません。浦安市内はすでに用地が確保されていますが*7、ほかの地域は宅地などの開発が進んでいますので、用地買収は容易ではないでしょう。また、葛西臨海公園駅から舞浜駅までの区間は、旧江戸川を越える橋が必要になります。

 

「費用対効果があまり見込めない」という点も、接続新線の計画が進まない理由だと思います。ただでさえ混雑が激しい総武緩行線に京葉線との直通列車を入れれば、御茶ノ水・三鷹方面に行く列車の本数が減ってしまいます。新木場から先は複線のままだと、京葉線の本数もそれほど多くは増やせません。

 

一方で、こんな見方もあります。

 

東京の臨海副都心を走るりんかい線は、新木場駅で京葉線の線路とつながっています。これは、国鉄時代にもともと同じ路線として計画されていたからです。団体向けの臨時列車をりんかい線から京葉線に走らせるなど、技術的には直通が可能になっています。京葉線を複々線にして、新木場からはりんかい線とも直通させれば、輸送力は増強できるのです。

 

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りんかい線と京葉線の直通運転が実現すれば、渋谷・新宿・池袋・大宮など埼京線や湘南新宿ラインの各駅、臨海副都心と千葉方面が一本でつながります。お互いのアクセスが飛躍的に向上するでしょう。

 

ただ、りんかい線は建設費回収のために、割高な運賃を設定しています。西側は大崎駅経由でJR埼京線と相互乗り入れを行っているため、もし京葉線と直通させてしまうと、りんかい線経由の乗客とJR線経由の乗客の区別ができなくなってしまいます。りんかい線は運賃の回収が難しくなってしまうために、こちらも未だに実現していません。

 

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京葉線には、このような様々な計画があるために、単純に舞浜駅のホームだけを増設することができないのです。また、隣の新浦安駅との関係もあるかもしれません。

 

新浦安駅には、ホームが2つ、線路が4本引かれていますので、朝夕のラッシュ時でも乗客を捌いています。また、特急の通過待ちや快速と各駅停車との接続も行われています。

 

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JR京葉線の新浦安駅。京葉線内で2面4線を備えるのは、東京、南船橋、海浜幕張と数えるほどしかない。

 

しかしすでに新浦安駅にホームが2つある以上、わざわざ隣の舞浜駅に線路とホームを増やしたところで、JRのメリットは少ないのです。地元住民が多く利用するわけではありませんし、夜の時間帯のみ混雑する舞浜駅では費用対効果はあまり見込めません。

 

首都圏では少子高齢化が進み、鉄道利用も少しずつ減っていくことが予想されています。東京ディズニーリゾートを訪れるゲストは増えるかもしれませんが、JRやオリエンタルランドが舞浜駅のさらなる拡張に踏み切る可能性は低いでしょう。

 

新宿から三鷹への延伸計画も?

京葉線の東京駅(京葉地下ホーム)は、山手線や新幹線のホームから遠いことで知られています。これは、もともと東京駅から成田空港までを結ぶ「成田新幹線」の計画がとん挫し、空いていた場所などを活用して京葉線のホームがつくられた…という歴史があるからです。

 

しかし、終点にもかかわらず、京葉線のホームは少し曲がっています。実はこれ、新宿駅や三鷹駅への延伸計画があるため、皇居の地下を通らないように、あえて曲げられているからなのです。

 

成田新幹線は、東京駅から先、新宿駅まで乗り入れる計画でした。現在、大宮から上野を経由して東京駅に乗り入れている上越新幹線も、もともとは新宿駅発着になる計画もあったのです。

 

京葉線が三鷹まで延伸すれば、中央快速線や地下鉄東西線の混雑緩和につながるだけではなく、千葉方面からのアクセスも向上します。しかし、東京駅から三鷹駅までの区間は、大部分が地下トンネルとなり、莫大な事業費が見込まれます。国や東京都、JR東日本が工事に向けて動き出す可能性は低いでしょう。

 

舞浜駅に「羽田空港行き」の列車がやって来る?

最後に、JR東日本が取り組んでいる計画をご紹介しておきましょう。それは「羽田空港アクセス線」です。

 

羽田空港の第1ターミナルと第2ターミナルの間に「羽田空港新駅」を建設、そこから東京貨物ターミナル駅付近まで約5キロメートルの「アクセス新線」を建設して、田町駅までを結ぶ「東山手ルート」、大井町駅までを結ぶ「西山手ルート」、東京テレポート駅までを結ぶ「臨海部ルート」の3ルートを設ける計画です。

 

www.jreast.co.jp

www.nikkei.com

 

3つあるルートのうち、臨海部ルートは東京テレポート駅からりんかい線に入り、新木場駅、さらには京葉線へと乗り入れる計画になっているのです。もしこれが実現すれば、舞浜駅から乗り換えなしで、羽田空港まで行けるようになります。

 

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ただし課題もあります。JR東日本は東山手ルートとアクセス新線の環境影響評価手続きに着手していますが、西山手ルートと臨海部ルートについては、まだ構想中の段階です。先ほども触れたとおり、りんかい線と京葉線の直通運転は、運賃収受の問題から、実現にはかなりのハードルがあります。そうなると、仮に臨海部ルートが実現したとしても、新木場駅止まりになるかもしれません。

 

東京ディズニーリゾートと羽田空港のアクセスは、鉄道とリムジンバスが競合関係にあります。JR東日本が今後どのような動きを見せるのか、注目していきたいですね。

 

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参考リンク

xtech.nikkei.com

www.tokyo-np.co.jp

www.itmedia.co.jp

response.jp

www.mlit.go.jp

news.mynavi.jp

mirai-report.com

mirai-report.com

blog.livedoor.jp

toyokeizai.net

kakuyodo.cocolog-nifty.com

*1:15両編成の列車も停車できる長さです。

*2:このときにホーム中央に大型エレベーターが増設されました。

*3:国土数値情報 駅別乗降客数データの詳細を参照。

*4:JR東日本の統計(2018年度)によると、2018年度の舞浜駅の乗車人数(1日平均)は83,157人となっています。これは乗車のみであり、降車人数は含まれていません。

*5:JR東、首都圏の主要路線「全駅」にホームドア設置へ 2033年春まで - ITmedia ビジネスオンラインから。

*6:利用客向けには「中央・総武線各駅停車」として案内されています。

*7:一部はオリエンタルランドと順天堂に売却されましたが、大部分が駐車場として利用されています(2018年3月浦安市議会での西山幸男議員の質問に対する市の回答)。