舞浜新聞

東京ディズニーリゾートなどのディズニーパークをはじめとして、ディズニーに関する様々な情報をお伝えします。



「ミッキーの家」1日限定ファストパスは、舞浜の未来を変える?

11月18日は、ミッキーマウスとミニーマウスのスクリーンデビュー記念日です。一般的には2人の誕生日ということで、様々なイベントが行われたり、グッズが販売されたりしていますね。

 

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世界的な大スターの2人をお祝いしようと、多くのゲストが東京ディズニーリゾートを訪れます。実は今年、東京ディズニーランドではこれまでとは違う、新たな取り組みが行われるのです。

 

今回は11月18日限定で配布される、「ミッキーの家とミート・ミッキー」のファストパスから、東京ディズニーリゾートの将来像を考えていきたいと思います。

 

昨年は「660分待ち」の大混雑に

昨年2018年は、ミッキーマウスのスクリーンデビュー90周年という、節目の年となりました。この日は日曜日ということもあって、多くのファンがミッキーの記念日をお祝いするために来園しました。

 

ミッキーと会える「ミッキーの家とミート・ミッキー」は、開園直後の待ち時間が「600分」となり、最高で「660分待ち」まで長くなったのです。午後になると「270分待ち」となり、最終的には午後6時前に案内が打ち切られました。

 

660分と聞いても、あまりピンときませんよね。一つのアトラクションに11時間もの待ち時間が表示されたことで、NHKをはじめ、多くのメディアがこの大混雑を取り上げました。

 

www.nikkei.com

 

ミッキーの家は1996年4月のオープン以来、スタンバイ(通常の待ち列)のみの運営となっています。連日多くのゲストで賑わっていますが、ほかのアトラクションとは違い、ファストパスは導入されていません。この理由については、以下の3つが考えられます。

 

  1. アトラクションのストーリー(設定)にそぐわない
  2. 「ミッキーは一人」という大原則に反する
  3. 一組あたりの対応時間が変動しやすく、待ち時間が伸びてしまう

 

「ミッキーの家とミート・ミッキー」は、ミッキーマウスが映画撮影の合間に、自宅を訪れてくれたゲストをもてなす…という設定になっています。ファストパスを導入してしまうと、単なるグリーティング施設になってしまい、設定とそぐわないのです。

 

ディズニーパークには「ミッキーは一人」という大原則があります。これについては賛否両論あるのですが、定義として「一人のゲストが同時に2人のミッキーを見ることはない」とされています。これは海外のパークでも同様で、ディズニーパークの夢と魔法を壊すことがないように配慮されているのです。

 

もし仮にファストパスを導入してしまうと、パレードがあるのに、同じ時刻にミッキーの家で会えてしまう…という現象が起きてしまいます。

 

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最後が一番大きな理由かもしれません。キャラクターのグリーティング施設は、ライドアトラクションとは違って、1グループあたりの所要時間が変動しやすくなっています。すぐに終わるグループもあれば、おしゃべりをしたり、1人ずつ写真を撮ったりと、長くなってしまうグループもあります。

 

当然、パークでは長年蓄積してきたデータをもとに、待ち時間を計算していますが、それでも誤差は生まれます。またほかのアトラクションよりも、ゲストの人数に対して、待ち時間が長くなりやすい傾向もあります。もしファストパスを導入してしまうと、さらに待ち時間が長くなる恐れもあるのです。

 

3つの理由以外にも、ミッキーの家の構造上、ファストパス用のエントランスや、ミックスポイント*1をつくる場所がないということも考えられますね。

 

1日限定のファストパスを導入!

東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは、今年11月18日に限り、「ミッキーの家とミート・ミッキー」でファストパスを導入することを発表しました。

 

www.tokyodisneyresort.jp

 

当日はファストパスを持っているゲストのみの案内で、スタンバイはありません。ディズニーホテルの宿泊者が対象となる「ハッピー15エントリー」で入園した場合は、入園後から「ミッキーの家とミート・ミッキー」のファストパスが取得可能になります。

 

公式アプリを持っているゲストは入園後から取得可能、スマートフォンや公式アプリを持っていないゲストは、ミッキーの家まで来たうえで、入り口前にいるキャストに声を掛けて取得します。

 

faq.tokyodisneyresort.jp

 

1日限りのファストパス導入について、公式サイトでは「当日は長時間の待ち時間が発生し、エリア内も混雑・混乱すると予想されます。そのため、ファストパスを発行することにいたしました。」と書いています。昨年の大混雑では、多くのゲストがトゥーンタウンに押し寄せて大混乱となりました。キャストの負担軽減などを考えて、スタンバイではなく、ファストパス限定の運用にすることにしたのでしょう。

 

ファストパスについては、今年7月10日から運用方法が変更になっています。これまでは園内の発券機でチケットを発行する仕組みだったのが、パークチケットもしくは公式アプリを使って利用する仕組みに変わっています。

 

ure.pia.co.jp

 

これまでのファストパスであれば、アトラクションの入り口付近に発券機を導入する必要がありました。今は公式アプリで取るゲストがかなり増えています。そんな仕組みの変化が、今回の1日限定ファストパス導入につながったのでしょう。

 

将来的にはグリーティング施設に導入も?

東京ディズニーリゾートには、常設のグリーティング施設*2が全6か所あります。

 

  • ウッドチャック・グリーティングトレイル
  • ミッキーの家とミート・ミッキー
  • ヴィレッジ・グリーティングプレイス
  • “サルードス・アミーゴス!”グリーティングドック
  • ミッキー&フレンズ・グリーティングトレイル
  • アリエルのグリーティンググロット(2020年3月31日クローズ)

 

いずれの施設も、スタンバイのみでファストパスは導入されていません。これは先ほども触れたとおり、「キャラクターは一人」という大原則に加えて、待ち時間がより長くなってしまうためだと考えられます。

 

しかし、キャラクターと触れ合えるグリーティング施設は、需要が高まってきています。「ウッドチャック・グリーティングトレイル」のように、ドナルドとデイジーと会える施設の導入や、来年2020年4月にオープン予定の「ミニーのスタイルスタジオ」など、常設グリーティングを増やす動きは加速しています。今後もその動きは続くでしょう。

 

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東京ディズニーランド「ウッドチャック・グリーティングトレイル」

 

今回の1日限定ファストパスがうまくいけば、ゲストが有効に使える時間を増やすために、グリーティング施設へのファストパス導入が進む可能性はあるでしょう。また、年間パスポート除外日など、あらかじめ混雑が予想される日のみ、ファストパスを運用するという選択肢も生まれます。今回の取り組みが、舞浜の将来を占う試金石になるかもしれません。

 

アメリカ・フロリダのウォルト・ディズニー・ワールドでは、すでに多くのグリーティング施設で、ファストパスが導入されています。規模や施設の数、キャラクターの種類など、東京とは比較できない部分もあります。しかし、ゲストの選択肢を増やすという意味では、有効な取り組みになるでしょう。

 

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多くの施設でファストパスが導入されている「ウォルト・ディズニー・ワールド」

 

混雑緩和に逆行する?

一方で、こんな見方もできます。

 

東京ディズニーランドの開園当時、ファストパスのような仕組みはありませんでした。ショーやパレードの抽選制度もなく、ゲストはひたすら待たなくてはいけませんでした。じっと待つゲストが増えれば、飲食収入や物販収入は減ってしまいます。ゲストの選択肢を増やして、流動性を高め、客単価を上げる。ディズニー社やオリエンタルランドの取り組みは、まさにそんな思いから続けられているのです。

 

混雑を感じやすくなっている理由については、こちらの記事をどうぞ。

maihama.hateblo.jp

 

しかし、ゲストの流動性が高まると、より「混雑している」と感じやすくなります。日本生産性本部・サービス産業生産性協議会が調査している「日本版顧客満足度指数(JCSI)」では、混雑や費用対効果の観点から、年々ランキングを落としていました。オリエンタルランドとしては、待ち時間を少しでも短くする取り組みに加えて、内部留保を活用した大規模なエリア開発を目指しています。

 

maihama.hateblo.jp

 

maihama.hateblo.jp

 

もし仮にグリーティング施設でファストパス導入を進めれば、より一層の混雑に拍車をかける可能性はあるでしょう。すでにプラザパビリオン・バンドスタンドでは、ファストパスと似た「整理券」を配布しています。また一部のキャラクターグリーティングで配布されている「整列券」は、グループの代表者だけが列に残り、それ以外のゲストは移動してもよい、という仕組みになっています。

 

あらかじめ戻る時間が決められている「整理券」ファストパスに似ている。

faq.tokyodisneyresort.jp

 

代表者が残る必要がある「整列券」待ち列の圧縮と不正合流の防止が目的。

faq.tokyodisneyresort.jp

 

660分待ちの大混雑になった昨年2018年のときは、ミッキーの家では整列券が配布されました。そのため、長い待ち時間にも関わらず、列はそれほど長くなりませんでした。ミッキーの家のように、待ち列が確保しにくい施設や、同じグループのメンバーが合流しにくい施設ではファストパス、それ以外は整理券や整列券、といった使い分けが重要になってくると思います。

 

 

今後オリエンタルランドが、グリーティング施設の混雑緩和にどうメスを入れていくのか。海外のパークで進められている、ショーへのファストパス導入も含めて、注視していく必要がありそうです。

 

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参考リンク

www.excite.co.jp

www.dailyshincho.jp

*1:アトラクションの待ち列の中で、スタンバイとファストパスのゲストを交ぜる場所

*2:専用の待機場所などがないものや、場所や時間が発表されない「フリーグリーティング」は除いています。