6月14日、オリエンタルランドは東京ディズニーシーの大規模拡張プロジェクトと、ディズニー社とのライセンス契約の延長について記者会見を行いました。
今回は発表された内容について、舞浜新聞独自の視点で分析していきたいと思います。
シー開業以来、最大規模の投資へ
2001年9月に開業した東京ディズニーシーは、これまで7つのテーマポートに分かれていました。今回の拡張工事では、「魔法の泉が導くディズニーファンタジーの世界」をテーマにした、8つ目の新しいテーマポートが導入される予定です。
また、新テーマポートに隣接する形で、5つ目の新しいディズニーホテルも建設される計画です。
新テーマポートと新ホテルの総事業費は約2,500億円。東京ディズニーリゾートの既存施設への追加投資としては、過去最大の規模となります。東京ディズニーランドの総事業費は、約1,800億円(1983年当時)、東京ディズニーシーの総事業費は約3,350億円*1ですから、まさにパーク一つ分に匹敵する規模であるということが分かります。
開業は2022年度中を予定しています。2021年にはシーの開園20周年、2023年にはランドの開園40周年を控えていますので、まさに周年イベントの谷間の年にお披露目となる見込みです。
どんな施設ができるの?
では、建設が計画されている施設について、詳しく見ていきましょう。
新テーマポートは、ディズニー映画『アナと雪の女王』『塔の上のラプンツェル』『ピーター・パン』の3つの作品をテーマにしたエリアに分かれています。
『アナと雪の女王』をテーマにしたエリアは、2013年に公開された長編映画の後の世界観が設定されています。メインアトラクションでは、ボートに乗ったゲストは、アナとエルサの物語を、映画の名曲とともに体験することができます。
また、雪山のふもとにあるアレンデール城には、レストランもつくられます。レストランの世界観やコンセプトについては、今回は発表されませんでした。
プレスリリースを読む限り、米フロリダのエプコットにある「フローズン・エバー・アフター」に似たアトラクションになる可能性があります。ただし、エプコットでは、ノルウェー館にあった「マウルストラム」をリニューアルする形でつくられています。仮に東京に導入されるとしても、オリジナルの最新ライドになるでしょう。
2015年3月に公開された短編映画「エルサのサプライズ」では、アナの誕生日をお祝いするために奮闘する、エルサの姿が描かれています。アレンデール城のレストランでは、そんな世界観を体験できるようになるかもしれません。
オリエンタルランドは、2015年4月に、シーのロストリバーデルタ南側に広がる拡張用地を使って、「北欧」をテーマにした新テーマポートを建設し、『アナと雪の女王』をテーマにしたアトラクションを導入することを発表しました。
2015年4月にオリエンタルランドが発表したコンセプトアート
しかしその後、開発計画は見直しとなり、2016年4月に計画は一時凍結されました。ただ、このときのオリエンタルランドの発表では「別の場所での展開」という表現があり、計画そのものが立ち消えになったわけではないとされていました。
東京での「一時凍結」の発表後、2016年11月に香港ディズニーランドで、アナ雪をテーマにしたエリアの建設が発表されました。また、パリのウォルト・ディズニー・スタジオの大規模開発計画でも、アナ雪エリアと思われる施設が描かれています。
2018年5月に発表された、香港「アナ雪エリア」のコンセプトアート。これまでなかったコースターも描かれている。
2018年2月に発表された、スタジオ・パーク大規模拡張のコンセプトアート。パーク奥にアナ雪エリアを思わせる施設が描かれている。
ディズニー社としては、今後公開される長編映画の続編や、映像ソフト、グッズの売り上げを考えると、東京にもアナ雪エリアを導入したいと考えていたのでしょう。また、オリエンタルランドとしても、小さな女の子に根強い人気を誇るアナとエルサを、海をテーマにしたシーに持ってきたいという思惑が一致した結果だったと思います。
小さな子どもに根強い人気を誇る「アナ雪」今後の続編公開も期待される。
ただ、アラビアンコーストや、マーメイドラグーンのように、一つの作品に絞ったエリア展開は、将来的なスクラップ&ビルドを考えると、少し不安に思われたのかもしれません。結果的に、ロストリバーデルタ南側の拡張用地を温存して、新テーマポートの一部として展開する、という結論になりましたね。
『塔の上のラプンツェル』をテーマにしたエリアでは、ラプンツェルが暮らしていた塔がそびえ立っています。メインアトラクションでは、ゴンドラに乗ったゲストは、ラプンツェルがフリン・ライダーとともに、憧れの「ランタンフェスティバル」へ向かうまでの道のりを体験できます。
プレスリリースでは、ラプンツェルにとって「今までで最高の日」となるランタンフェスティバルという表記があります。これはおそらく映画本編で、塔から抜け出したラプンツェルが叫んだ「Best day ever!(今までで最高の日だわ!)」というセリフから取ったのでしょう。
またエリア内には、フックハンドや、ウラジミール、ビッグノーズといった荒くれ者たちが集う酒場「The Snuggly Duckling(かわいいアヒルちゃん)」をテーマにしたレストランも導入されます。
世界のディズニーパークを見てみると、米フロリダのマジック・キングダムには、ラプンツェルをテーマにした休憩エリアがあります。また、上海ディズニーランドには、The Snuggly Ducklingをモチーフにした「ラプンツェル・ツリー・タバン」というレストランがすでにあります。
マジック・キングダムにある、ラプンツェルをテーマにした休憩エリア。レストルームと休憩用ベンチ、充電用のコンセントがある。
東京に導入されるレストランは、映画の酒場がモデルになった本格的な施設になると思うのですが、ここまで大規模なエリア展開と、メインアトラクションは世界のパークの中でも、東京だけとなります。
ラプンツェルについては、ディズニープリンセスの中でも、高い人気を誇っています。また、シー15周年イベントのグッズなどには、アナとエルサに加えて、ラプンツェルも描かれていました。この時点で、すでにシーへの導入が考えられていたかもしれません。
『ピーター・パン』をテーマにしたエリアでは、2つのアトラクションが導入されます。一つは、海賊にさらわれたウェンディの弟・ジョンを救うためにボートに乗り込んだゲストが、ロスト・ボーイズ(迷子たち)の後を追って川を下り、ティンカー・ベルのピクシーダストでネバーランドの空へと飛び立つ…というものです。
ファンの間では、上海ディズニーランドにある「カリブの海賊:バトル・フォー・ザ・サンケン・トレジャー」のライドシステムが使われるのでは?という見方もあります。もし仮に実現すれば、大人でもかなり楽しめるアトラクションになるかもしれません。
もう一つのアトラクションは、ティンカー・ベルと妖精たちが住む、ピクシー・ホロウを訪れるアトラクションです。プレスリリースでは「かわいらしいアトラクション」という表記もありますので、おそらくディズニーフェアリーズがテーマになった、小さな女の子向けの施設になるでしょう。明言はされていませんが、ティンカー・ベルとのグリーティング施設という見方が、自然かもしれません。
このエリアには、ネバーランドの景色を眺めながら、食事が楽しめるレストランも導入されます。
オリエンタルランドでは、数年前から「ピーター・パン」をテーマにしたグッズ展開を行っていました。個人的には「ディズニーによる実写化はまだ先だし、どうしてだろう…?」と気になっていたのですが、まさかシーの新テーマポートに持ってくるとは思ってもみませんでした。
確かに、海賊たちが登場するピーター・パンの世界観は、海をテーマにしたシーの世界観にも合います。ただ、ランドの既存アトラクションと、どのように差別化を図っていくのかは気になりますね。プレスリリースを読む限り、映画のストーリーをそのまま追体験するものではなさそうですので、期待して待つことにしましょう。
今回の3つの作品について、SNSでの反応を見ていると「シーのテーマである海と関係あるのか?」という意見が聞こえます。アナとエルサが治めるアレンデール王国は港町でした。ラプンツェルの両親が暮らすコロナ王国は、フランスの「モン・サン=ミシェル」がモデルになっており、四方を海に囲まれています。ピーター・パンは言うまでもありませんよね。どの作品も、シーに導入しても違和感のない選択だったと思います。
5つ目のディズニーホテルも建設へ
3つの映画をテーマにしたエリアで構成される、東京ディズニーシーの新テーマポート。今回の発表では、アンバサダー、ミラコスタ、ランドホテル、セレブレーションに次ぐ、5つ目の新しいディズニーホテルの建設も発表されました。
場所は新テーマポートに隣接する場所となります。ホテルミラコスタと同様に、パーク一体型のホテルになるとみられています。客室数は475室となる予定です。以下は、既存のディズニーホテルの客室数です。
- アンバサダー 504室
- ミラコスタ 502室
- ランドホテル 706室
- セレブレーション
・ウィッシュ 352室
・ディスカバー 350室
アンバサダーやミラコスタよりも、少し規模は小さくなりそうです。ただし、プレスリリースには「デラックスタイプの客室に加え、一部は、東京ディズニーリゾートで最上級の宿泊体験を提供するラグジュアリータイプの客室で構成」という表現もありますので、家族連れ向けの広い部屋や、外国人観光客(インバウンド)向けの高級タイプの客室を充実させるのかもしれません。
ホテルの1階部分には、商品施設もつくられる予定です。パーク側からもアクセスできますので、レギュラーグッズに加えて、ホテルオリジナルグッズも取り扱われるでしょう。新テーマポートのショップはここだけになりますので、多くのゲストが集中しそうです。
プレスリリースでは、詳しく説明されていませんでしたが、新しいホテルには2つのレストランも導入される予定です。テーブルサービスやブッフェスタイル、またはキャラクターダイニングなどが考えられますね。
どこにできるの?
シーの新テーマポートと、新しいディズニーホテルは、リゾートパーキング第1と第2の敷地を利用して建設される計画です。
具体的な施設の配置は、正式に発表されていません。ただ、ゲストの動線やディズニーリゾートラインのベイサイド・ステーション、ホテル用の搬入口を考えると、以下のような配置になると思われます。
新テーマポートは、メインエントランスから1km以上も歩かなくてはいけません。「入り口は一つ」というディズニーパークの不文律がある以上、西側に別のエントランスをつくるのは考えにくいです。
もし仮に建設したとしても、ホテル利用者のみが利用できるエントランスがつくられるでしょう。ただ、オフィシャルホテルの宿泊者や、パーキングの利用者が集中する可能性もあるため、利用を「ホテル宿泊者」に限定する可能性もあります。
どうして、このタイミングで?
大手メディアの報道を見ていると、東京ディズニーランドの新ファンタジーランド開発計画に次ぐ、新たな大規模開発計画について、「4月~5月のタイミングで発表があるのでは?」と報道されていました。
おそらく、オリエンタルランド側が、株式市場の反応を見極めながら、意図的に情報をリークしていたのでしょう。2月4日には、毎日新聞の朝刊に「ディズニースカイ建設へ」という見出しも躍りました。これについて、ファンの間では「敷地面積の大きさを考えると、第3パークという線はない」という見方が大半でした。
4月15日に行われたランド開園35周年イベントのセレモニー終了後、オリエンタルランドの宮内良一執行役員/広報部担当は、第3パーク建設に関する報道を公式に否定し、新たな拡張について「ランドかシーのいずれか」と記者団に答えています。
あくまでも舞浜新聞の個人的な見立てですが、4月26日に発表された2018年3月期の決算の数字が、市場予想よりも低かったときのために、開発計画の発表を隠し玉として残しておいたのかな…と考えています。実際の決算は想定よりも好成績だったために、発表は見送られ、6月28日の株主総会直前というこのタイミングで、発表されたのではないでしょうか。
メディアの報道を見ていると、アトラクションやレストランの混雑が目立ち、顧客満足度が下がっている…というネガティブな報道も目立ちます。オリエンタルランドとしては、入園者数のさらなる上積み、客単価の向上、顧客満足度の向上に取り組んでいる、という姿勢を見せたいのかもしれません。
開発計画から透けて見える、オリエンタルランドの思惑
今回の新テーマポートと新しいディズニーホテルの建設計画を見ていくと、以下のようなオリエンタルランドの思惑が感じられます。
- 施設の収容人数アップによる、混雑感の緩和
- 小さな子やシニア層も楽しめるアトラクションの充実
- 混雑でレストランが利用できない「食事難民」の解消
- 宿泊を伴う富裕層ゲストの集客
近年の東京ディズニーリゾートは、施設のキャパシティーを超えるゲストが押し寄せています。休日ともなると、人気アトラクションは1時間以上待つのは当たり前…。整理券であるファストパス・チケットも、午前中の早い時間帯になくなってしまい、下手をすると2時間~3時間以上、待たなくてはいけないこともあります。
日本生産性本部 サービス産業生性協議会が毎年発表しているJCSI(日本版顧客満足度指数)という、顧客満足度のランキングでは、東京ディズニーリゾートは年々ランクを落としています。入園者数は落ち込んではいないものの、3,000万人台で頭打ち…。今回の新テーマポート計画を見ていくと、収容人数が多く、回転率がよいボートライドのアトラクションが目立ちます。
施設の収容人数が増えれば、結果的に既存のアトラクションから人が流れ、混雑感は緩和されます。もちろん、入園者数のさらなる上積みも期待できるでしょう。今回の拡張で、商品施設がホテル内の1か所に絞られたのも、敷地面積をできるだけ広く使いたい、という狙いが感じられます。
また、ボートライドのアトラクションが多いということは、小さな子を連れた家族連れや、シニア層のゲストも安心して楽しめるということを意味しています。
シーはもともと「子ども向けのランド」との差別化が図られ、大人向けのスリリングなアトラクションが多く建設されました。ただ、近年は家族連れの集客を考え、小さな子も楽しめるアトラクションの建設が相次いでいます。「シーのランド化」とも言われる状況ですが、新テーマポートもこの流れに沿ったものなのでしょう。
「シーのランド化」については、こちらをどうぞ。
大型のメインアトラクションに加えて、各テーマエリアにレストランが一つずつ導入される、というのも特筆すべき点でしょう。休日の食事時ともなると、パーク内のレストランには、どこも長蛇の列ができます。特に最近はレストランのキャストが不足しているため、料理の提供までに時間がかかってしまう…という状況もあります。
オリエンタルランドとしては、できるだけレストランの座席数を増やすことで、食事難民の解消を目指していると考えられます。ただ、足元の課題として、キャストの時給アップや待遇改善による、提供時間の短縮も目指すべきでしょう。
新ディズニーホテルは、先ほども触れたとおり、プレスリリースの中で「東京ディズニーリゾートで最上級の宿泊体験を提供するラグジュアリータイプの客室で構成」と書かれています。あくまでも文面からですが、国内や海外の富裕層をターゲットにした、客室単価の高いホテルを目指すのでしょう。
もちろん、これには目の前に立地するオフィシャルホテルへの配慮、という見方もできます。既存ホテルの客層と重ならないように、新たな客層の獲得を目指していくと思われます。
ランド・シー直結という構想も…?
東京ディズニーランドでは、2020年春の開業を目指して、新ファンタジーランドの建設が進められています。東京ディズニーシーの新テーマポートが実現すれば、ファンタジーの世界をテーマにしたエリアが隣接することになります。
2020年春の開業に向けて、建設が進む新ファンタジーランドのコンセプトアート
あくまでも個人的な推測ですが、オリエンタルランドとしては、ランドとシーをつなぐエリアとして、新テーマポートを考えているのではないか、という見方ができるのです。
シーは現実世界にある風景が、忠実に再現されています。もちろん、マーメイドラグーンのように、現実にはないファンタジーな風景もありますが、映画『アラジン』をテーマにした「アラビアンコースト」でさえ、実際にあるものをモデルにつくられているのです。
先ほども触れたとおり、新テーマポートは、メインエントランスから1km以上も離れています。いくら人気アトラクションがあるからといっても、家族連れやシニア層には、なかなか遠い距離です。では、隣接するランドから、そのまま新テーマポートに入れるとしたら、どうでしょうか。
ファンタジーの世界をテーマにしたエリアであれば、シーの「現実にある風景」とのギャップをうまく埋めてくれるでしょう。ゲストも違和感を感じることなく、シーへ入ることができます。
少し話が変わりますが、2011年の東日本大震災のことを振り返ってみたいと思います。地震発生当日、ランドにいたゲストの多くは、外での避難を余儀なくされました。施設の安全点検が進められたのですが、築年数が新しい建物が多かったシーは、ランドに比べて点検が早く終わったのです。
「このまま外で避難してもらうよりは、シーにゲストを誘導したほうがよい」「しかし、パーク周辺の道路は液状化で、安全に誘導できない」オリエンタルランドは最終的に「ゲストの安全が第一」という考え方から、史上初めて、バックステージの従業員専用通路を使って、ランドからシーへゲストを誘導しました。この対応には、のちに多くの称賛の声が上がりました。
2011年5月8日放送・フジテレビ「Mr.サンデー」から引用
万が一の災害時を考えても、ランドとシーが接続するメリットは大きいのです。もちろん、ゲストの流動性が高まり、混雑の予測が難しくなるというデメリットもあります。また、現在はディズニーホテル宿泊者限定で販売されている「マルチデーパスポート・スペシャル」のように、両方のパークを行き来できるオプションを、どのように価格設定するのか、という問題点も出てきます。
これについては、今後のオリエンタルランドの出方を見極めたいと思います。
チケット値上げも?
オリエンタルランドの上西京一郎社長は、今回の新テーマポート建設に関する記者会見の中で「今回の拡張のほかにも2020年までに計画している投資もあり、そういった中ではチケット価格を上げていく機会にあると考えているが、顧客も敏感なので環境を踏まえながら検討していく」と述べています。
2019年のシー「ソアリン(仮称)」のオープン、2020年の新ファンタジーランド、そして2022年の新テーマポートのオープンを考えると、2023年のランド40周年を見据えた値上げが行われる可能性が高いと思います。
ただ、値上げ幅によっては、ゲストが離れてしまう危険性もあります。ライバルである大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンのチケット価格なども見極めながら、慎重に検討していくでしょう。
海外のディズニーパークを見ていても、東京はまだまだ安い価格設定になっていると思います。「1日券で1万円」というのが、一つの目安になるかもしれません。ただ、ディズニー社が直営で運営している海外パークとは違い、東京はオリエンタルランドによるフランチャイズ経営となっています。パーク単独で収益を上げなくてはいけない以上、難しい判断に迫られると思います。
ライセンス契約の延長へ。敵対的買収と直営化はない?
先ほども触れたとおり、オリエンタルランドは、ディズニー社とのライセンス契約に基づいて、東京ディズニーリゾートを運営しています。
オリエンタルランドが発行している有価証券報告書には、ライセンス契約について「昭和54年4月30日から「東京ディズニーシー」開園日の20年後まで。ただし、各当事者はさらに5年間ずつ、5回にわたり延長することができる。」と書かれています。
文面通りに読むと、2001年9月4日のシー開園から45年間、最長で2046年までの契約期間でした。今回の新テーマポートの建設発表に合わせて、ライセンス契約についても30年間延長され、2076年までとなったのです。
これについては、日本経済新聞の報道で、加賀見俊夫会長が2017年11月上旬にアメリカを訪問して、交渉にあたっていたことが報道されています。おそらくこの場で、開発プロジェクトに加えて、ライセンス契約の延長についても話し合われたのでしょう。
アメリカ国内やパリ、香港、上海にあるディズニーパークは、すべてディズニー社による直営か、ディズニー社の資本が入った関連会社によって運営されています。ディズニー社がまったく資本参加していないのは、東京だけなのです。
もし仮に、ディズニー社が「東京はいらない」と判断してしまえば、オリエンタルランドはディズニーに関する一切の事業を継続できなくなってしまいます。土地や建物はすべて自社で保有していますが、それらはディズニー社の知的財産権に基づいてつくられているからです。
今回の契約延長により、ディズニー社がオリエンタルランドを重要なビジネスパートナーとして見ていることが、再認識されました。ただ、今後さらに深刻になる少子高齢化や人口減少を考えると、引き続きフランチャイズにしておくほうが、リスクを減らせるという見方もあったかもしれません。
しかし、この契約延長によって、ディズニー社がオリエンタルランドを敵対的な手段によって買収したり、契約が打ち切られたりする可能性は、かなり低くなりました。オリエンタルランドとしては、より一層、パークの開発に力を入れることができるでしょう。
拡張を続ける舞浜に死角はないのか?
新たな大規模開発計画が発表され、東京ディズニーリゾートの将来像について、ファンの間でも期待感が高まっています。しかし、そんな拡張を続けるオリエンタルランドに、死角はないのでしょうか。
個人的に一番引っかかっているのは、現場で働くキャストの人手不足です。数年前と比べても、パレードルートやレストランのキャストが、かなり減っている印象を受けます。もちろん、若年層の人口減少で、トータルの労働者人口が減っているという見方もできます。
しかし、好景気による「売り手市場」の影響を受け、時給が低く、高いサービス水準が求められるパークのキャストは、なかなか成り手が増えないのが現状です。
オリエンタルランドとしても、様々な取り組みを行っていますが、どれも「やりがい」に依存したものばかりです。大きな箱をつくっても、中身のハピネスを作り出すのは人だと思います。そろそろ、正式に人手不足を認めて、時給の大幅引き上げといった待遇改善を行っていかなければ、現場が崩壊しかねません。
つい華やかな話に目が行ってしまいがちですが、舞浜新聞ではこれからも、オリエンタルランドの経営姿勢を注視していきたいと思います。
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*1:パークに隣接する「東京ディズニーシー・ホテルミラコスタ」の建設費も含まれています。