2019年3月23日、舞浜新聞は誕生から6周年を迎えました。これもひとえに、日頃から愛読してくださる、読者の皆様のおかげだと思っています。本当にありがとうございます。
最近、パークファンの間で、ミッキーマウスとミニーマウスの「顔」が、大きな話題になっています。今回は6周年記念特集として、新しいミッキーとミニーの顔、いわゆる「ニュールック」について、少し考えていきたいと思います。
ミッキーとミニーの顔が変わる?
2月28日、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは、4月4日から始まる東京ディズニーシーのハーバーショー「Tip-Topイースター」に関するプレスリリースを発表しました。
このリリースでは、ミッキーとミニーがショーで着るコスチュームを、一足早くお披露目するということで、それぞれの「おしゃれなポイント」が紹介されました。
ショーの開始前に、コスチュームをお披露目するのは、決して珍しいことではありません。東京ディズニーリゾートでは、2016年の夏イベントから「初お披露目」ということで、プレスリリースが発表されるようになっています。しかし、今回は違った意味で、パークファンの間で大きな話題になりました。
それは、ミッキーとミニーの顔が、今のパークで会える2人の姿とは、明らかに違うものだったからです。
【ニュース!】
— 東京ディズニーリゾートPR【公式】 (@TDR_PR) February 28, 2019
4月4日から開催される東京ディズニーシーのスペシャルイベント「ディズニー・イースター」。
今年初登場の昼のハーバーショー「Tip-Topイースター」でミッキーマウスとミニーマウスが着用する春らしいコスチュームをひとあし早くお披露目!
>> https://t.co/NzFFpgveFT pic.twitter.com/fC6kfMfIHD
下の画像を見てみてください。左は公式写真に、今の東京ディズニーリゾートで会えるミッキーとミニーの顔を合わせたものです。
よく見比べてみると、白目が大きくなり、瞳が下に寄っているのが分かると思います。ミニーに関しては、リップやアイシャドウなどのメイクもなく、よりナチュラルな印象を受けます。
実はこのミッキーとミニー、海外では「ニュールック」と呼ばれ、これまで東京以外のディズニーパークで登場してきているのです。今回のイースターイベントをきっかけに、初めてオリエンタルランドが公式に登場させたということで、パークファンは騒然となったのでした。
きっかけは上海ディズニーランド開園
さて、ニュールックと呼ばれる、新しいミッキーとミニー。一番最初に登場したのは、上海ディズニーランドのオープンが間近に迫った、2016年4月のことでした。
上海市内にあるショッピングモール「グランド・ゲートウェイ66」で、4月8日~17日までの10日間、上海ディズニーランドの広報宣伝を行うためのイベントが開催されました。
ここでは、パークのコンセプトアートや建築模型の展示に加えて、ミッキーやミニーが登場するショーも行われました。上海ディズニーランドからは、このときのイベントについて、プレスリリースが発表されています。
プレスリリースで使われた写真。これまでと同じミッキーとミニーが写っている。
実はこのとき、関係者向けのグリーティングも行われていたのです*1。インスタグラムに公開された写真を見ると、4月10日に投稿されたものは、これまでと同じミッキーとミニーが写っています。
しかし、同じユーザーが17日に投稿した写真を見ると、明らかに違うミッキーとミニーが写っていたのです。
この写真を見たディズニーファンの間では「顔が変わった!」と話題になりました。ただ、商業施設のイベントだったことに加えて、発信元がインスタグラムだったことから、それほど拡散はしませんでした。
#MickeyMouse #MinnieMouse#ShanghaiDisneyland pic.twitter.com/34HLSsagkZ
— Joe ~ Disney Re-fork-ification! (@DisneylandDrive) April 17, 2016
グリーティング参加者のSNSへの投稿。上海がニュールック初お披露目の地となった。
‼️🌟‼️ BREAKING NEWS ‼️🌟‼️
— °o° Disney-Me もいもい °o° (@LeDisneyMoi) April 16, 2016
‼️🌟‼️ BREAKING NEWS ‼️🌟‼️
‼️🌟‼️ BREAKING NEWS ‼️🌟‼️#MickeyMouse 🌟 #MinnieMouse pic.twitter.com/1s1bslgkwZ
日本のディズニーファンにも有名な「もいもい(@LeDisneyMoi)」氏も、Twitterで即座に反応した。
そんな騒動から1か月後の5月7日、上海ディズニーランドでは、キャスト向けのソフトオープン(試験営業)が始まりました。そこで、上海のミッキーとミニーの顔が、これまでと大きく変わることが明らかになったのです。これに対して、ファンからは「かわいい」「アニメーションの顔に近い」という肯定的な声が上がる一方で、「作り物のような感じがする」「白目が大きくて不気味」という否定的な意見も出ました。
2016年6月1日に中国中央テレビで放送された特集番組
また、この時点では「中国本土のゲストに合わせて、ディズニー社がローカライズ(現地化)させただけなのでは?」という意見もあり、上海独自のミッキーとミニーになる可能性もありました。しかし、事態は大きく変化していきます。
続々と登場する「ニュールック」
2016年6月16日、上海ディズニーランドがグランドオープニングを迎えました。その翌日、6月17日にウォルト・ディズニー・ワールドにあるマジック・キングダムで、新しいショー「ミッキーのロイヤル・フレンドシップ・フェア」が始まりました。
事前に発表されていたプレスリリースでは、これまでと同じ顔のミッキーだったのですが、実際のステージに登場したのは、セリフに合わせてキャラクターの口が動く、しかも顔が上海で登場したものと同じ、ミッキーとミニーでした。
マジック・キングダムのショー「ミッキーのロイヤル・フレンドシップ・フェア」
これにアメリカのパークファンも、驚きの声を上げます。これが、ニュールック世界展開の最初の一歩でした。
その後、2016年7月にディズニーランド・パリでスタートしたショー「ミッキー・アンド・ザ・マジシャン」にも、ニュールックのミッキーが登場。同じ月には、ディズニー社が運営する豪華客船「ディズニー・クルーズライン」のファンタジー号でも、ニュールックのミッキーとミニーが登場しました。
ディズニーランド・パリのショー「ミッキー・アンド・ザ・マジシャン」
8月には、ハワイにあるディズニーホテル「アウラニ・ディズニー・リゾート&スパ コオリナ・ハワイ」にも登場。9月にはアメリカ・カリフォルニアのディズニーランドで、開園60周年イベントの終了に合わせて、一斉にミッキーとミニーがニュールックに変わりました。
この頃、東京ではディズニーシーの開園15周年イベントが行われていました。海外のパークで、続々と登場するニュールック。キャラクターファンからは「15周年イベントが終わったら、東京でもニュールックに変わってしまうのでは?」という声が上がり始めました。それと同時に、SNSではニュールックに対して、否定的・ 批判的な声も多くなっていきました。
そんな中、10月22日に、京都市内にニュールックのミッキーが登場して、SNSで話題になります。これは、11月のミッキーマウスの誕生日に合わせた、世界一周のプロモーションを目的として、登場したものでした。日本は東京ディズニーリゾートではなく、京都に初めてニュールックが登場したということになります。
年が変わって、2017年。これまでニュールックが登場していなかった香港で、グリーティングを含むすべてのミッキーとミニーが、ニュールックに変わりました。すでに夏の段階で、ハロウィーンのリハーサルにニュールックが登場するなど、キャストの間では噂されていました。
このとき驚きだったのが、現地のキャストからゲストに対して「この顔は今日までだよ」「明日からミッキーとミニーの顔が変わるよ」というように、事前に情報が漏れていたことです。これについては、賛否両論分かれる事態となりましたね。
ただ、ストーリーブック・シアターで行われているショー「ミッキー・アンド・ザ・ワンダラス・ブック」は、2019年3月現在も、ニュールックではなく、以前と同じミッキーが登場しています。これはおそらく、スクリーンにミッキーの映像が映し出されるため、大規模な撮り直しを行う必要があるからだと思われます。
「ミッキー・アンド・ザ・ワンダラス・ブック」今後、ニュールックへの切り替えが行われる可能性は高い。
1月18日には、パリでもすべてのミッキーとミニーが、ニュールックに変わりました。ついに、ニュールックが一切登場していないパークは、東京だけになったのです。「シー15周年イベントが終わったら、東京でもニュールックに変わるのでは?」そんな声も多くなっていきました。しかし、結果的に3月のイベント終了後も、ミッキーとミニーの顔は変わることなく、そのままになっています。
ニュールック導入の軌跡については、dpost.jpさんが時系列順に詳しくまとめています。
遅れただけ?それとも…
2018年4月に始まった、東京ディズニーランド開園35周年イベントに合わせて、ニュールックのミッキーとミニーが登場するのでは?という憶測もありました。しかし、新しく始まったショーでも、これまでと同じ顔のミッキーとミニーが登場。そのたびにファンはドキドキする…ということが繰り返されてきました。
皆さんがご存知の通り、東京ディズニーリゾートは、オリエンタルランドによるフランチャイズ経営です。ディズニー社による直営ではなく、オリエンタルランドがディズニー社とライセンス契約を結んでいます。
そのため、東京のパークをどのように運営するのかは、オリエンタルランドにかなり大きな決定権があります。しかし、ミッキーとミニーは、ディズニー社にとって重要なキャラクターである以上、ニュールックへの切り替えは拒否できないでしょう。
海外のパークと比べると、東京での導入は遅かったように思います。単にフランチャイズだったために、導入が遅くなっただけなのか、それともオリエンタルランドが先延ばししてきた結果なのか…。これについては、推測の域を出ません。
ただ、2017年から、パークではミッキーやミニーの実写デザイングッズを多く見かけるようになりました。また、公式ウェブサイトから、ミッキーとミニーが入った写真が削除されたり、同じショーが再演されるにも関わらず、ミッキーやミニーの写真を意図的に外したりするなど、ニュールック登場に向けた動きが続いていました。
決定的になったのは、旅行代理店やメディア向けに描かれた、シーのイースターのコンセプトアートでした。これをよく見ると、白目が大きく描かれるなど、明らかにニュールックを意識したイラストになっていました。このイラストをきっかけに「いよいよ、東京でもニュールックが登場するのでは?」という空気が、強くなっていった気がします。
東京ディズニーシーのイースターイベントのコンセプトアート
オリエンタルランドが直接「ミッキーとミニーの顔が変わるよ!」と、直接発表する可能性はゼロでしょう。これまでのニュールック登場の動きを見ていても、ディズニー社から、公式なメッセージはまったく発表されていません。だからこそ、既存のファンに対して、その登場を匂わせることで、ショックを和らげようとした可能性はあると思うのです。
ニュールック登場で、舞浜はどう変わる?
SNSでは、ニュールックの肯定派と反対派に分かれて、かなりの論戦が繰り広げられています。中には、ディズニー社に対して、署名活動を行う方も出てきました。
実はミッキーとミニーの顔が変わるのは、東京では2回目のことなのです。1983年の東京ディズニーランド開園から、1993年の開園10周年イベントまでは、今の顔とは違う顔でした。
1982年12月にTBSで放送された「東京ディズニーランドスペシャル」
変わるきっかけになったのが、1992年4月のディズニーランド・パリのオープンと言われています。パリはディズニー社直営として初めて、アメリカ国外に建設されたパークです*2。ディズニー社にとっても、まさに社運をかけたプロジェクトだったからでしょう。ちょうど上海のオープンに合わせて、ニュールックが登場したのと状況は似ています。
1992年4月12日に行われた、ユーロ・ディズニーランド(当時)のオープニングセレモニー
東京では、1992年3月に始まった「ロジャーラビットのダンシンタイムワープ」が、今の顔のミッキーとミニーが、レギュラー登場した最初のショーとされています。その後、10月1日のクリッターカントリーのオープニングセレモニーにも、新しい顔の2人が登場しましたが、グリーティングやショーでは、開園当時と同じ顔になっていました。
プラザパビリオン・バンドスタンドで行われていたショー「プラザ・プレイタイム」91年と93年で、ミッキーの顔が変わっているのが分かる。
パリと東京でミッキーとミニーの顔が違うことは、当時のファンの間でも話題になっていました。しかし、当時は携帯電話もパソコンも、インターネットも、まだ一般には普及していない時代。雑誌「ディズニーファン」や、現地に行った人からの情報しかありません。今ほど顔が変わることに対して、否定的・批判的な声もありませんでした。
東京ディズニーランドのグッズガイドブック、92年版と93-94年版を比較したブログ記事。ミッキーとミニーの顔が変わっているのが分かる。
結局、すべてのミッキーとミニーの顔が変わったのは、1993年の開園10周年イベントからでした。それから26年、いよいよ東京でも再び、顔が変わろうとしています。
東京は海外と異なり、キャラクターの熱狂的なファンが多いのが特徴です。ディズニーホテルの結婚式やパーティープラン、バケーション・パッケージ専用のグリーティング、キャラクターダイニングなど、かなりの高額にも関わらず、キャラクターに会うための出費を惜しまないゲストが多いのも事実です。
キャラクターを呼ぶことができるパーティープランは、年々充実している。
これまで、東京のミッキーは「かわいさ」だけではなく「カッコよさ」も強調されてきました。ニュールックの登場によって、その顔から受ける印象がどのように変わるのか。実際に東京で会ってみないことには、分かりません。
しかし、変化を受け入れられないゲストは、東京ディズニーリゾートから去っていくことになるでしょう。訪れているゲストがどのように変化するのか、どう新陳代謝が進むのか…。長年のパークファンからすると、興味深い変化がやってくるのかもしれません。
これまでパークに重課金を続けてきた、キャラクターファンの動向も気になります。東京ディズニーリゾートの35周年イベントは、いよいよ3月25日で終了します。舞浜新聞は、これからも変わりゆく舞浜を見つめていきます。引き続き、ご愛読いただけるよう頑張っていきます。よろしくお願い致します。