4月5日、東京ディズニーランドの「グランドサーキット・レースウェイ」跡地で、大規模開発工事の起工式が開催されました。
起工式の様子(東京ディズニーリゾート公式ブログから引用 ©Disney)
今回は起工式に合わせて、新しく発表されたコンセプトアートや、YouTubeの映像から、東京ディズニーランドの将来の姿について、少し読み解いていきたいと思います。
ミッキーとミニーもお祝いに!
東京ディズニーランドでは現在、ファンタジーランドとトゥモローランドの大規模開発工事が進められています。2020年春には、『美女と野獣』をテーマにしたエリアや、『ベイマックス』をテーマにしたアトラクションが誕生する予定です。
詳しい開発計画は、こちらをどうぞ。
今回行われた起工式は、その開発工事の始まりを告げる、大切なセレモニーとなりました。セレモニーには、以下の方々が参加しました。
- オリエンタルランド 加賀見俊夫 代表取締役会長(兼)CEO
- オリエンタルランド 上西京一郎 代表取締役社長(兼)COO
- ビル・アーネスト ウォルト・ディズニー・パーク&リゾート プレジデント/マネージング・ディレクター アジア
- 川崎重工業 金花芳則 代表取締役社長
- 大成建設 山内隆司 代表取締役会長
セレモニーには、ミッキーマウスとミニーマウスも駆けつけ、東京ディズニーリゾートの新しい出発を盛大にお祝いしました。日刊建設工業新聞の記事によると、エリアの建物工事は大成建設、アトラクションは川崎重工業がそれぞれ担当する予定です。
大成建設は、ランド・シーの建設工事も担当していましたので、大手ゼネコンとして今回の案件にも参加するのでしょう。
新しいコンセプトアートが公開に!
さて、今回の起工式に合わせて、オリエンタルランドから新しいコンセプトアートが公開されました。まずは、2016年4月に発表されたコンセプトアートと、違う点があるものを比べてみることにしましょう。
まずは、開発エリア全景のものです。違うところは、以下の4か所です。
- トゥーンタウンのキャラクターグリーティング施設
- ビーストの城
- ライブエンターテイメントシアター
- 『ベイマックス』をテーマにしたアトラクション
トゥーンタウンのキャラクターグリーティング施設は、これまでの発表の中に含まれていましたが、新しく発表されたアートで、初めて『美女と野獣』エリアとの位置関係が分かりました。また、ビーストの城の外壁の色が、昨年発表されたアートと、微妙に変わっていることが分かります。
また、ライブエンターテイメントシアターの形が、少し変わっていることや、これまでは雲で隠されていた場所に、『ベイマックス』をテーマにしたアトラクションがつくられることも分かりました。
次は、ライブエンターテイメントシアターの外側を描いたものです。
昨年のアートと比べると、施設前にあった滝がなくなり、入り口正面の形が少し変わっているのが分かります。
シアターの内側を描いたアートも、微妙に変わっています。
昨年のアートと比べて、壁の色や装飾が変わっていることが分かります。さらに気になるのは、ステージが切れていることでしょう。照明が当たっていますので、もしかすると、今回は切れて見えないところに、新しくシアターで始まるショーのヒントが描かれているのかもしれませんね。
最後は、ミニーマウスと写真が撮れる、グリーティング施設のアートです。
カメラマンの男性が、よりリアルに描かれただけではなく、ミニーの顔もパークにいるミニーとほぼ同じものに描き直されました。これは、昨年のアートの評判が悪かったことに加えて、ファンから「上海と同じ顔を導入するのでは?」という指摘があったからではないでしょうか。
すでに上海を皮切りに、カリフォルニア、パリ、香港では、新しいミッキーとミニーの顔が導入されています。米フロリダのウォルト・ディズニー・ワールドでは、東京と同じ顔になっていますが、今後置き換えが進むのは時間の問題でしょう。
東京ディズニーリゾートのミッキーとミニー。今の顔は、20年以上ゲストに親しまれている。©Disney
上海ディズニーランドのミッキーとミニー。カリフォルニアやパリ、香港のパークでも、この顔の導入が進んでいる。©Disney
東京のファンの間では、いつミッキーとミニーの顔が変わるのか、関心が高まっています。今のオリエンタルランドの動きを見ていると、早くても2018年のランド35周年イベントか、それ以降まで先延ばしする可能性すらあります。このあたりの動きにも、注目していく必要がありそうですね。
では、ここからは、今回が初出しとなったアートを見ていくことにしましょう。1枚目は『美女と野獣』エリアのアートです。
正面に見えるのは、ビーストの城です。フロリダのマジック・キングダムにも、ビーストの城はあるのですが、遠近法を使ったミニチュアになっています。しかし、東京はこの城を高さ30mで再現する計画です。ランドホテルのロビー吹き抜けが、ちょうど30mですので、いかに巨大かが分かると思います。
コンセプトアートを見る限り、『美女と野獣』エリアは、かなり余裕のあるつくりになっていることが分かります。混雑緩和が今回の開発の大きな目的ですので、ゲストの満足度向上につながりそうです。
2枚目は同じく『美女と野獣』エリアのアートです。
プレスリリースでは「街並み」と表記されていますが、明らかにベルとモーリスが住んでいる家でしょう。舞浜新聞では、昨年発表されたアートの中に、この赤い家が描かれていることに注目していました。
昨年4月に発表されたコンセプトアートの一部。ベルの家を思わせる、赤い屋根の建物が描かれていることが分かる。©Disney
米フロリダのマジックキングダムにあるベルの家。中はアトラクション「エンチャンテッド・テール・ウィズ・ベル」になっている。©Disney
今回発表されたアートを見る限り、アトラクションではなさそうです。後ろ側はパレードルートになっていますので、それほど大きなものも造れないはず。そう考えると、プリンセスのグリーティング施設か、休憩所、レストルームといった選択肢が考えられます。ここについては、今後の続報を待つことにしましょう。
3枚目と4枚目は、『美女と野獣』エリアにつくられる、ショップとレストランのアートです。
アートを見る限り、フロリダのマジック・キングダムにあるショップと、レストラン「ガストンズ・タバーン」に似た移設がつくられる可能性が高いと思います。ただ、フロリダのガストンズ・タバーンは、カウンターサービスがメインで、席数は少なくなっていますので、東京では座席を増やすと思われます。
マジックキングダムにある『美女と野獣』エリア。現地のゲストにも人気が高い。©Disney
5枚目と6枚目は、『ベイマックス』のアトラクションに隣接してつくられる、ポップコーンの専門ショップのアートです。
アートを見る限り、近未来をイメージした、東京オリジナルのショップになりそうです。海外のパークと比べても、東京のポップコーンは味の種類が豊富で、とても美味しくなっています。ギャレット・ポップコーンのように、海外のポップコーンが日本でも人気を集めていますので、ここも長い列ができそうです。
YouTubeでも映像が公開に!
実は今回の起工式に合わせて、YouTubeの東京ディズニーリゾート公式チャンネルで、新しいエリアの完成予想CGが公開されました。
メディア向けに制作された映像ですが、SNSなどを意識して、YouTubeでも新エリアの魅力を伝えたいと考えたからでしょう。企業広報を考えると、かなり画期的な試みだと思います。では、映像に映っているものについて、少し見ていくことにしましょう。
映像の道順は、以下の赤い線をなぞるようになっています。
映像は、トゥーンタウンに新しくできる、キャラクター・グリーティング施設の前から始まります。
こうやって見ると、ミニーマウスのシンボルである、ポルカドットのリボンが大きく取り付けられています。複数のキャラクターが登場するのではなく、「ミッキーの家とミートミッキー」のように、いつでもミニーに会える施設になるのでしょう。
グリーティング施設の横には、トゥーンタウンの看板があります。今回発表されたアートでも、トゥーンタウンの大きなゲートは描かれていません。パレードルートとの関係もあって、ゲートは撤去され、その代わりに看板が設置されるのでしょう。
さて、カメラは『美女と野獣』エリアへと向かっていきます。
右手に見えてきたのは、おそらくベルとモーリスの家でしょう。今回の発表では詳しく明かされませんでしたので、今後の続報を待つことにしましょう。
施設の大きさを考えても、アトラクションというより、グリーティング施設や休憩所、レストルームの可能性が高いと思います。
さて、『美女と野獣』エリアに入ってきました。ベルが住んでいる街並みが再現されていて、とても開放感があります。キャパシティにも余裕がありそうですので、ある程度は混雑も緩和されるでしょう。
フロリダのマジック・キングダムにもある、ガストン像の噴水もあります。正面に映っているのが、レストランの「ガストンズ・タバーン」だと思われます。
小さな石橋をくぐると、いよいよビーストの城が近づいてきます。
左手に見えてくるのは、ビーストがモーリスを街へ追い返すときに使った、魔法の馬車が置かれています。こんな演出はディズニーらしいですね。
さて、いよいよビーストの城へやって来ました。外壁がコンクリートの打ちっぱなしになっていますが、おそらくこれは細かな仕様が決まっていないからでしょう。オープンするときには、城らしい重厚な外壁になっていると思います。
ビーストの城は、『美女と野獣』をテーマにしたアトラクションになっています。城の高さは約30m。下から見上げると、かなりの高さがあるのが分かります。東京だけのオリジナルアトラクションとして、人気を集めそうです。
さて、ここまでが新エリアの完成予想CGです。もう一度、ここまでの道順をおさらいしましょう。
今回は映らなかった道の先には、ライブエンターテイメントシアターがあるはずです。その先を歩いていくと、抽選所があるトゥモローランド・ホールへと抜けられます。
どうして、このタイミングで発表に?
起工式に合わせて、新しく発表されたコンセプトアートと、完成予想CG。報道関係者向けには、新エリアの建築模型も公開されました。
建築模型の位置関係を、平面図に書き起こしたもの。図中の解説は、舞浜新聞が独自に付けている。
これだけ多くのメディアを集め、大々的に起工式の様子を取材させたということは、それだけオリエンタルランドが、現状に危機感をもっている裏返しではないでしょうか。
東京ディズニーリゾートの2016年度の入園者数は、2年連続で減少となりました。過去の数字と比べても、決して大きく数字を下げているわけではありませんが、混雑によって顧客満足度が低下し、USJの猛追を許しています。
株主や機関投資家に向けて、自社の成長可能性や、優位性をアピールしたい。だからこそ、今回はこれだけ多くの情報が発表されたのでしょう。新エリアのオープンは2020年春、東京オリンピックの直前を予定しています。
入園者数を落とさず、満足度や客単価を下げず、経費を削りながら、開発を進めていく。オリエンタルランドにとっては、忍耐の3年間になりそうです。
©Disney
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