6月29日、東京ディズニーリゾートを運営する株式会社オリエンタルランドの株主総会が行われました。昨年はパークからも近い舞浜アンフィシアターだったのですが、今年は再び幕張メッセでの開催に戻りました。
株式会社オリエンタルランド 第56期 定時株主総会招集ご通知(PDFファイル)
今回の総会では、経営陣から昨年度の事業報告、決算報告、会計監査報告が行われ、剰余金の処分(株主への配当金)、定款の一部変更、取締役・監査役の選任が決議されました。また株主からの質疑応答も合わせて行われました。
©Disney
今回の記事では株主からの主な質問と、それに対する経営陣の回答から、オリエンタルランドの今後の動きについて考えていきたいと思います。
昨年度の総会については、こちらをどうぞ。
勢いのあるUSJへの対抗策
東京ディズニーシーでは15周年イベントが開催されていますが、大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンでも、開園15周年イベントが開催されています。
USJでは「RE-BOOOOOOOORN!」「やり過ぎ」をテーマに、新型アトラクションの導入に加えて、ショー・パレードなどのエンターテイメント・プログラムの開催、人気コンテンツの期間限定イベントを開催するなど、大いに盛り上がっています。
最近では「2015年10月の入園者数は東京ディズニーランドを超えた」「2015年度の入園者数で東京ディズニーシーを超えた」と発表するなど*1、かつて集客で苦戦していたのがウソのように蘇りました。
15周年イベントで盛り上がるUSJに対して、今一つ勢いが感じられないのが、東京ディズニーリゾートです。入園者数では3,000万人台のレベルに達しており、客単価も下がっているというわけではありません。ただ「顧客満足度」の面から見ると、かつてのような勢いが失われている気がします。
この点について、株主からは「USJのように、従業員からのアイディアを募集する仕組みはあるのか?」という質問が出されました。
これに対して、経営陣からは「I have アイデア」と呼ばれる取り組みで、キャストからサービスやフードメニューについて、意見を集めていることが説明されました。
例えばフードメニューの「リトルグリーンまん」や、オリジナルグッズの「スティッチグラス」などは、キャストからのアイディアによって生まれたものです。また、ダッフィーのぬいぐるみを扱うときに、かごではなく、専用の布バッグで運ぶようになったのも、キャストのアイディアによるものなのです。
最近のオリエンタルランドを見る限り、現場のアイディアを積極的に取り入れていると思います。ただ、USJへの対抗策としては、現場の声に加えて、攻めの経営姿勢が必要ではないかと思います。
最近のパークを見ていると、どうしても決断のスピードが遅く、保守的でマンネリ化が進んでいる印象があります。このあたりの改善をどうするのかは、今後気になりますね。
株主総会の場所が変更に?
今回の総会の第2号議案では、定款の一部変更が取り上げられました。これまで総会の開催場所について「2. 株主総会は、本店所在地またはその隣接地のほか千葉県千葉市においてこれを招集する。」としていたのを、削除するというものでした。
この議案について、質疑応答では「直営ホテルのホールなどで開催することはできないのか」という質問が出されました。これに対して経営陣からは、「株式分割で出席者が増えている」「分散ではなく今後も1か所で開催したい」という返答がありました。
ここ数年の総会は、幕張メッセのイベントホールで行われてきました。昨年度はパークからも近い、舞浜アンフィシアターに変更となり、今年度は幕張メッセの国際展示場7ホールに再び変更となっています。
幕張メッセのイベントホールは3,098平方メートル(アリーナ)、国際展示場の7ホールは6,750平方メートルとなっています。オリエンタルランドが増加する株主に合わせて、これまでよりも広い会場を準備したことが分かります。
舞浜アンフィシアターの座席数は2,170席、しかも固定型ですので、幕張メッセのように座席をさらに増やすことはできません。また、直営ホテルの場合、アンバサダーの大宴会場「ファンタジア」が700人まで収容、ミラコスタの大宴会場「パラディーゾ」が900人まで収容となっていますので、十分な席数は用意できません*2。
2020年の東京オリンピックでは、東京都内や千葉市内の大規模ホール・体育館が会場として使われる予定です。また、今後閉鎖や大規模改修に入るホールもいくつかあります。今回定款を変更したということは、おそらく今後、東京都内などにある大規模なホールを使って、総会を開催できるようにするためでしょう。
どうして今「ソアリン」なの?
オリエンタルランドは東京ディズニーシーの開発計画として、2019年度にメディテレーニアンハーバーへ「ソアリン(仮称)」を導入することを発表しています。
アトラクションのコンセプトアート(オリエンタルランドのプレスリリースより引用 ©Disney)
この開発計画について、株主から「どうして、わざわざ10年前に導入されたアトラクションを持ってくるのか」という質問が出されました。
これに対して、経営陣からは「アメリカのパークでも高い人気を誇っている」「6月に開園した上海ディズニーランドでも導入されている」「新しい映像も確認したうえで導入を決めた」という返答がありました。
ソアリンは、空を飛んでいるような気分を味わえる人気アトラクションで、ディズニー・カリフォルニア・アドベンチャーとエプコットでは、いつも長い行列ができています。最近では上海への導入に合わせて、映像が変更となり、アトラクションのタイトルも「ソアリン:アラウンド・ザ・ワールド」へと変わっています。
カリフォルニア・アドベンチャーにある「ソアリン」6月からはサブタイトルが変更になっている。©Disney
ソアリンの東京への導入は、以前から噂されていました。ただ個人的には、導入されるとしても、未来の港をテーマにした、ポートディスカバリーへの導入かと思っていたのですが、まさかのメディテレーニアンハーバーには驚かされました。
上海ディズニーランドのソアリンは、これまでのソアリンに比べて、ファンタジー色が強くなっています。おそらく、オリエンタルランドとしては、人気アトラクションで集客も期待できること、さらには従来のソアリンのように、ただの遊覧飛行ではない点なども、導入を決めた一因になったと思われます。
ただ、今回のように「どうして今さらソアリンなの?」という疑問は多くの方が抱いていると思います。オリエンタルランドには、東京でしかできないソアリンを作り上げてほしいですね。
アナ雪エリアはどうするの?
2015年4月、オリエンタルランドは東京ディズニーシーの拡張用地に、北欧をテーマにしたエリアを建設して、映画『アナと雪の女王』がテーマになったアトラクションを導入する計画を発表しました。
計画当初に発表されたコンセプトアート(オリエンタルランドのプレスリリースより引用 ©Disney)
しかし、2016年4月の決算説明会では、代表取締役社長兼COOの上西京一郎氏から「アナ雪の施設は今回発表する計画には含まれていない」「従来発表していた、ロストリバーデルタ南側の拡張用地以外の場所への建設を検討中」という発表があり、事実上「棚上げ」となってしまったのです。
今回の総会では株主から「冬の集客に期待できるので、ランドへの建設などは考えているのか」という質問が出されました。これに対して経営陣からは、「ほかの拡張用地を使ったほうがよいと考えた」「候補地は複数検討している」「ランドについても計画が決まり次第、発表する」という返答がありました。
アナ雪エリアについては、4月の決算説明会でも、「白紙撤回」ではなく「計画の先送り・再検討」というニュアンスで発表されました。シーの別の拡張用地を使うのか、それともランドにアナ雪エリアを持ってくるのか…。まだまだ先の状況は読めませんね。今後の発表を待ちたいと思います。
パークの開発計画については、こちらをどうぞ。
キャストの英語力と外国人ゲストへの対応
最近では円高などの影響もあり、日本を訪れる外国人観光客が増えています。東京ディズニーリゾートでも、全体の割合は低いものの、少しずつ外国人ゲストの数が増えてきています*3。オリエンタルランドは、東南アジアからのゲストにターゲットを絞って、マーケティングなどを行っています。
海外ゲストの入園者数を表したグラフ。オリエンタルランドが公表している入園者数割合から、舞浜新聞が推計した。直近の2015年度で180万人を超えている。
総会では、急増する外国人ゲストに対して、キャストの英語力を高める対策について、質問が出されました。これに対して経営陣からは、キャストが英語・中国語・韓国語を学習できる機会を設けていること、独自の認定試験に合格したキャストには「ランゲージピン」を着用させて、ゲストからも分かるようにしていることが説明されました。
ただ、舞浜新聞の個人的な感覚では、まだまだ外国語を話せるキャストが少ない、と感じています。またランゲージピンをもらえたからと言って、時給がアップするわけではありません。時間給で入れ替わりも激しいアルバイトに、そこまでの高いレベルのサービスを求められない、というのが会社の本音でしょう。
個人的な意見としては、首都圏に住んでいる外国人や留学生を積極的に採用して、パークで働いてもらえば、それだけ有能な人材を集めることができると思います。
ただ、東京ディズニーリゾートの場合は「日本人キャストにサービスをしてもらいたい」というニーズがどうしても高いと思われます。このあたりの課題については、解決方法が難しいですね。
また、総会では、米フロリダのウォルト・ディズニー・ワールドを訪れた株主から、外国人ゲストの受け入れ体制についての質問が出されました。
これに対して経営陣からは、英語・中国語・韓国語に加えて、タイ語・インドネシア語のガイドマップとトゥデイを用意していること、電話による通訳サービスを行っていること、一部のキャストがタブレット端末を持って対応していること、などが説明されました。
ウォルト・ディズニー・ワールドの場合は、英語に加えて、日本語・フランス語・ドイツ語・ポルトガル語・スペイン語の5か国語に対応しています。東京ディズニーリゾートでも、日本語を加えた6か国語に対応していますので、決して劣っているというわけではありません。
キャストの待遇改善とレベルアップ
2015年11月、オリエンタルランドは「ソフト(人財力)強化に向けた取り組みについて」というプレスリリースを発表しました。
ソフト(人財力)強化に向けた取り組みについて(PDFファイル)
これは2016年度から、準社員(アルバイト)の人事制度を改定する、というものでした。具体的にはディズニー教育プログラムの新設、ビジネススキル研修の導入、賃金制度の改定などが挙げられています。
東京ディズニーリゾートの場合、多くの準社員が現場を支えています。時給制で入れ替わりも激しいのですが、海外のパークにも負けないくらい、高いサービスレベルを誇っています。ただ、最近では人財が集まりにくくなり、地方までキャスト募集をかけている状況です。
この点について、株主から「2015年度の決算で、人件費が35億円増となっている具体的な理由を教えてほしい」「ランドのレストランで不快なことがあった」「キャスト全体のサービスレベルを底上げする必要があるのでは」という質問が出されました。
経営陣からは、人件費の増加について「スーパーバイザーの処遇を見直して社員区分に移行した」「準社員の時給を引き上げた」「研修やキャリア支援を充実させた」という理由が説明されました。
またサービスレベルの向上について、現場のオン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)や研修などを適時行っているが、今後も改善していきたい、という回答がありました。キャストのサービスレベルについては、顧客満足度に直結することから、過敏になっているのでしょう。今後もキャストの待遇改善を望みたいと思います。
ディズニーへのロイヤルティー
東京ディズニーリゾートは、世界で唯一、ディズニーが直接運営していないディズニーリゾートです。運営・管理はオリエンタルランドが行い、売り上げに応じて、ディズニーへロイヤルティー(ライセンス使用料)を支払っているのです。
ちょうど、コンビニやガソリンスタンドのように、本部と契約して経営を行う「フランチャイズ」と同じ仕組みを取っているのです。これは、東京ディズニーランドを建設するときに、ディズニー側が事業失敗のリスクを極力減らすために、このような契約になりました。
今回の総会では、これまであまり触れられてこなかった「ロイヤルティー」について、金利とドル建て・円建てどちらで支払っているのか、について株主から質問が出されました。
これに対して経営陣からは、2015年度は272億円を支払ったこと、平均売り上げの約7%を円建てで支払っていること、ロイヤルティーは売上原価に計上していること、が説明されました。
ロイヤルティー自体は、オリエンタルランドの財務書類でも、きちんと明記されています。ただ、今回「円建て」で支払っていることが明らかになったのは、驚きでした。「円建て」というのは、外国の取引先へ支払うときに、両替するのではなく、そのまま日本円で支払うことを意味します。
オリエンタルランドの第56期(2016年3月期)有価証券報告書から引用。赤で囲んでいるのがロイヤルティーの項目。
円建ての場合、為替相場の影響を受けることはありません。逆にディズニーは、円高だと同じ日本円でももらえるロイヤルティーは増えますが、逆に円安になると目減りしてしまいます。ここはオリエンタルランドが有利な契約になっているということでしょう。
ディズニーへのロイヤルティー支払金額を表したグラフ。近年は売り上げの上昇に合わせて、ロイヤルティーも増加している。
ホテル事業
オリエンタルランドは4つのディズニーホテルに加えて、ブライトンホテルを所有・経営しています。2015年度の決算を見ていると、ほかの区分が伸び悩んでいるのに対して、ホテル事業だけが微増しています。
今回の総会では、株主からホテル事業の売り上げ向上について、競合ホテルとの比較や、今後の計画などについて質問が出されました。これに対して経営陣からは、海外からの宿泊客増加に加えて、キャラクタールームの導入、既存客室の改修によって、客室単価が上がっていることが説明されました。
ミラコスタに導入された「カピターノ・ミッキー・スーペリアルーム」ディズニーホテルでは、景色が悪い客室のキャラクタールーム化が進んでいる。©Disney
また、今後の計画について、6月開業の「東京ディズニーセレブレーションホテル」の安定稼働が当面の目標であり、それ以外の計画については「ない」という回答でした。
ただ、この回答には少し疑問が残りました。2016年3月、東急不動産・NTT都市開発・ミリアルリゾートホテルズ(オリエンタルランドのホテル事業子会社)の3社は、沖縄でのホテル開発事業に参加することを発表しているのです。
沖縄県国頭郡恩納村字瀬良垣におけるホテル事業に関する基本協定契約の締結について(PDFファイル)
プレスリリースを読むと、3社が共同で設立する会社が、ホテルの開発・所有・経営を行い、この会社とは別の会社にホテルの運営を委託する、というものです。あくまでも、ミリアルが東急不動産とNTT都市開発の計画に乗っかるという形になっており、沖縄でディズニーホテルを建設する、という話にはなっていません。
ただ、総会で「今後の計画はない」と説明されたということは、まだ具体的に話せるものがないのか、それとも沖縄のホテル計画に、ミリアルはあまり関わっていないのか、少し引っかかります。沖縄のホテル計画については、続報が出れば、また詳しく書きたいと思います。
低下する顧客満足度
サービス産業生産性協議会では毎年「日本版顧客満足度指数(JCSI)」という、消費者調査を行っています。このデータを見てみると、2014年は第2位につけていた「東京ディズニーリゾート」が、2015年ではトップ10から陥落してしまい、第11位となってしまったのです。
(記事から引用)
あくまでも外部調査であり、調査対象となっている企業・サービスは様々ありますので、一概に東京ディズニーリゾートの顧客満足度が低下したとは言い切れません。ただ、最近の経費削減の経営方針や、混雑の激しいパークを見ていると、徐々に一般のゲストも「何か昔と違うぞ?」と、違和感を感じ始めているのかもしれません。
この点について、株主からは「もっと危機感を持ってほしい」「ディズニー一本に頼る『シングルブランド戦略』には限界があるのではないか」「男性向けにジブリなどを導入してはどうか」という質問が出されました。
これに対して経営陣からは、様々なコンテンツについて、導入できないか幅広く検討していること、ジブリについては回答できないが、あらゆる層に楽しんでもらえるようにしていきたい、という回答がありました。
東京ディズニーリゾートを見ていると、どうしても「女性向け」「女の子向け」の運営方針が目立っています。これはゲストの約70%が女性であるため、当然といえば当然でしょう。日本の場合は、男性よりも女性から「ディズニーへ行こう!」と誘うことも多いです。
東京ディズニーリゾートの男女別来園者比率(オリエンタルランドのウェブサイトから引用)
ただ、ディズニー直営のパークを見ていると、スター・ウォーズやマーベルといった、男性向けコンテンツの利用も積極的に行われています。
マーベルの場合は、USJのライセンス契約があるため、東京ディズニーリゾートでの導入は難しいかもしれません。また、スター・ウォーズも外国人キャストが必要になってくるため、人件費の増加を抑えたい経営陣が、どこまで積極的になれるのか、という問題があります。
ただ、今後の人口減少や外国人ゲストの取り込みを考えると、男性向けコンテンツの導入も急務と言えるでしょう。ちなみに、スタジオジブリはディズニーと事業提携を結んでいます。ジョン・ラセター氏は宮崎駿監督の大ファンとして有名ですので、「ジブリエリア」はあながち妄想ではないかもしれませんね。
ディズニーギャラリーの閉鎖
2016年2月、オリエンタルランドは、2017年春に東京ディズニーランド内に「ビビディ・バビディ・ブティック」の2店舗目をオープンさせることを発表しました。しかし、その場所が大きな波紋を呼びました。それは、ワールドバザールの「ディズニーギャラリー」を閉鎖して、その跡地につくるとしていたからでした。
©Disney
ディズニーギャラリーは、もともとランドの開園10周年を記念してつくられました。ディズニーのこれまでの作品やキャラクターを紹介する施設として、長年多くのゲストに親しまれてきました。最近では、ディズニーのキャラクターを描ける「ディズニードローイングクラス」も人気を集めていました。
長年、パークに通っていたゲストからは「どうして、わざわざディズニーギャラリーを閉めるのか」と、疑問の声が上がりました。舞浜新聞でも、この問題について記事で取り上げました。
今回の総会でも、株主から閉鎖の経緯と、他の場所への移転の可能性について質問が出されました。これに対して経営陣からは、顧客満足度など、様々な観点から検討をしてスクラップ&ビルドを行っている、という回答がありました。また、当面はディズニーギャラリーに代わる施設の導入計画は「ない」ことも明かされました。
個人的には、ディズニーギャラリーの閉鎖はやはり残念です。ただ、オリエンタルランドとしては、今後のパーク開発に向けて、よりキャッシュフローを増やすために、客単価の向上が狙えるビビディ2店舗目の導入は必然だったのでしょう。
オリエンタルランドには、ディズニーギャラリーに代わる施設、または東京ディズニーリゾートの歴史を振り返ることができる、博物館のような展示施設の導入を強く望みます。
キャラクター・グリーティング
東京ディズニーリゾートの場合、キャラクターと一緒に写真撮影ができる「キャラクター・グリーティング」への需要が高まっています。オリエンタルランドが提供している宿泊プラン「バケーション・パッケージ」でも、限定のグリーティングがセットになったプランが販売されており、高い人気を誇っています。
ただ、海外のパークと比べると、パーク内のフリー・グリーティングや、グリーティング・スポットが少ないというのが正直なところです。この点について、株主から「キャラクターとのグリーティングの機会を増やしてほしい」という要望が出されました。
これに対して経営陣からは、ランド・シーそれぞれで登場するキャラクターを増やしていること、今後ウエスタンランドとトゥーンタウンに、グリーティング施設を新設すること、などが説明されました。
夏の暑さや冬の寒さ、雨などの天候に影響される屋外のグリーティングは、ゲスト・キャスト双方にとって負担が大きいと思います。海外のパークでも、最近では完全屋内型のグリーティング施設が増えており、待ち時間は長いものの、確実にキャラクターと会えるようになっています。
東京ディズニーリゾートで課題になってくるのは、プリンセスたちとのグリーティング施設の導入でしょう。オリエンタルランドとしては、人件費が高い外国人キャストの採用には、二の足を踏んでいるのかもしれません。
日本でも人気の高いプリンセスたち。常設のグリーティングスポットを持っているのは、シーのアリエルのみ。©Disney
ただ、今後のパーク開発を考えると、グリーティング施設の導入は急務と言えるでしょう。バケーション・パッケージの販売とも関わってくると思いますが、注意して見ていく必要があると思います。
おわりに
今回の株主総会にあたって、舞浜新聞が気になっていたことは以下の通りです。
- 舞浜以外の事業拡大(「1セグメント」まで成長できるのか)
- 「縮小」とも受け取れるパーク開発計画の変更(資材や人件費の高騰が原因なのか、別の理由なのか)
- キャッシュフローに頼るパーク開発の是非(低金利なのにどうして借りないのか、増資はしないのか)
- 東京ベイNKホール跡地の利用(更地にはしないのか、ホテルなのか)
- 本社機能の移転とバックステージ施設の再整備(新浦安ビルの稼働、今後の舞浜本社機能の縮小、千鳥地区の活用)
- ディズニーリゾートラインの収益状況(単年度では赤字?黒字?特別車両の売り上げに与える影響)
- 新しいキャラクターヘッドの導入(ミッキーとミニーの顔が変わるのか)
特に一番気になっていたのは、新しいキャラクターヘッドの導入についてです。これについては「ミッキーはミッキー」と押し切られてしまう可能性は高かったでしょうね。上海を皮切りに、マジックキングダム、そしてパリのウォルト・ディズニー・スタジオでも、新しいヘッドが導入されています。
上海ディズニーランドで導入された、新しいキャラクターヘッド ©Disney
おそらくアナハイムのディズニーランドや、東京ディズニーリゾートでも、導入は時間の問題でしょう。昔からのディズニーファンは反応していますが、一般層はあまり顔の違いを意識していない、という話も聞きます。果たしてどうなるでしょうか。今後のオリエンタルランドの対応を注視していきたいと思います。
さて、当面は2020年度までのパーク開発計画が主な経営課題となるでしょう。いかに入園者数を維持して、客単価を伸ばし、顧客満足度を下げずに、キャッシュフローを積み上げていくか…。オリエンタルランドにとっては、ライバルのUSJを気にしながら、綱渡りの経営が続きそうですね。
©Disney