東京ディズニーランドと東京ディズニーシーでは「オフィシャルスポンサー」と呼ばれる企業の名前が書かれています。アトラクションやレストラン、ショー、パレードなどで見たことがある人も多いと思います。
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オフィシャルスポンサーとは、パーク内の施設やサービスの経費を出す代わりに、広告宣伝などにディズニーパークやディズニーのキャラクターを使用することができるというもの。正式には「参加企業制度」と呼ばれています。ランド・シーで重複していますが、2013年1月現在で26社が名前を連ねています。
東京ディズニーランドのお昼のパレードは、2002年4月からNTTドコモグループが提供している。©Disney
東京ディズニーリゾート以外でも、同じような制度をもっているテーマパークはいくつかあります。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンでは「コーポレート・マーケティング・パートナーズ」、キッザニアでは「オフィシャルスポンサー」と呼ばれています。東京ディズニーリゾートと同様に、経費を出す代わりに、企業名の掲示や広告宣伝活動にテーマパークを利用することができます。
今回は私がこれまで考えてきた、オフィシャルスポンサー制度への意見を書きたいと思います。
それは「即刻解体せよ」といっても、スポンサー制度を全否定するつもりはありません。スポンサーからの協力金は、オリエンタルランドにとって貴重な収入源。魅力のあるアトラクションやエンターテイメントを造るうえで、必要不可欠だからです。では、どうするのか。以下は私の提言です。
- 特定の施設ではなく、パーク全体やエリアでも契約する
- 商品名での提供も可能とする
- 提供企業と協力してアトラクションやショーを開発する
まずは1から。トゥーンタウンの講談社やフォートレス・エクスプロレーションの日本ユニシスのように、現在でもエリアごと提供している企業はあります。これを広げるのです。
例えば特定のエリアやテーマランドを複数の企業で提供してもらったり、特定の施設ではなく、パーク全体の運営費を少し負担してもらったり、といったことが考えられます。特定の施設はスポンサー、パーク全体ならサポーターやパートナーといったように、名称を変えてもよいかもしれません。少なくとも、金額を引き下げて、より多くの企業が参加しやすくすることが必要です。
次に2です。これは以前、オリエンタルランドの内部でも検討されましたが、いまだに実現していません*1。
現在はスポンサーの契約上、企業名の掲示しか認められていませんが、企業名よりも商品名のほうが有名な大手企業はいくつかあります。例えば、クリネックススタジアム宮城のように、日本製紙という社名ではなく、商品名を前面に出している施設もあります。
最後に3です。アメリカ・オーランドにあるエプコットというテーマパークは、フューチャー・ワールドとワールド・ショーケースのふたつのゾーンで構成されています。分かりやすく言うと、万国博覧会の企業パビリオンと政府パビリオンといったところでしょうか。このうち、「テスト・トラック」というアトラクションは、スポンサーであるシボレー(ゼネラルモーターズ)が前面に押し出されています。
東京でも、例えば自動車メーカーであれば自動車のアトラクション、鉄道会社であれば鉄道のアトラクションといった具合に、その企業独自の技術力やブランド力を生かしたアトラクションやショーを開発するべきだと思います。もちろん、ディズニーが提供する夢と魔法や、非日常の空間を壊さないようにするのは当然のことですが。
非日常空間であるディズニーパークにおいて、日常を感じさせる企業名やロゴマークは不釣合いかもしれません。それを見て現実に引き戻されて、不快に感じる人もいるかもしれません。
しかし、テーマパークを運営するためには入場料収入だけでは足りないのです。勢いづいている東京ディズニーリゾートにとっても、スポンサーは引き続き必要不可欠であると私は考えています。オリエンタルランドも、より幅広い企業に対して営業を進め、スポンサーの獲得に努めてほしいと思います。
*1:2006年11月8日付・毎日新聞朝刊より。ただし過去にはナショナル・パナソニック(松下電器産業、2008年に社名をパナソニックに変更)や現在のエネオス(JX日鉱日石エネルギー)のように、ブランド名を使用していた・使用している企業もあります。