東京ディズニーリゾートの周りを走っているのが「ディズニーリゾートライン」単線のモノレールで、リゾート内を反時計回りに運行しています。舞浜駅からオフィシャルホテルやディズニーシーへ行くために、利用する人も多いと思います。
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このディズニーリゾートライン、一周を超えなければ大人250円・小児130円の均一運賃となっています。舞浜駅の最寄りであるリゾートゲートウェイ・ステーションから東京ディズニーシーまでは約9分間。これだけの移動で250円は、ちょっと高いような気がします。バスでも200円でかなりのところまで行けますからね。
アメリカのパークは「無料」
では海外のディズニーパークはどうでしょうか。まずはアメリカから見ていきましょう。アナハイムにあるディズニーランドと、オーランドにあるウォルト・ディズニー・ワールドにも東京と同じようにモノレールが走っています。
アナハイムのモノレールはアメリカ初のモノレールとして誕生しました。ディズニーランドのトゥモローランドと、パーク外のダウンタウン・ディズニーを環状運転で結んでいます。ディズニーランドのチケットがあれば無料で乗車することができます。
オーランドのモノレールはマジックキングダムやエプコット、直営ホテルなどを結んでいます。改札はなく、ゲストは全路線を無料で利用することができます。特にチケットを見せる必要もありません。
パリや香港には敷地内を走るモノレールは運行されていません。ただし、香港はパークまで地下鉄の支線である迪士尼綫(ディズニー線)が走っています。敷地内の移動手段というわけではなく有料です。
どうして東京は無料にできないの?
アメリカの場合、モノレールは敷地内の移動手段であり、運賃は基本的に無料であると書きました。では、なぜ東京のディズニーリゾートラインは運賃が有料なのでしょうか。そもそも無料にはできないのでしょうか。
ディズニーリゾートラインの総事業費は2001年当時で約370億円。東京ディズニーランドホテルの総事業費が約440億円(駐車場の改修費含む)ですから、かなりの金額であることが分かります。
ホテルやアトラクションであれば、宿泊料やチケット代などの収入が見込めます。モノレールであれば運賃を返済に充てるしかありません。ですから、東京では運賃が有料になったのでしょう。開業当初、運賃は大人200円・小児100円でしたが、初期投資が巨額であったため債務超過の状態が続きました。
親会社であるオリエンタルランドからの支援、記念乗車券の販売、コインロッカーの設置、人件費の圧縮と経費削減、などいくつかの改善策を行ってきました。しかし、沿岸部特有の塩害や施設の更新費、テロ対策費に加えて、東京ベイNKホールの閉鎖などによる利用客の減少が収支悪化に拍車をかけていました。そこで、2007年4月1日から大人250円・小児130円に値上げされたという経緯があります。
ここでオリエンタルランドが公表しているモノレール事業の売上高を紹介したいと思います。ディズニーリゾートラインを運営している舞浜リゾートラインは、オリエンタルランドの100%子会社です。そのため単独では決算発表を行っていません。つまり、モノレール事業について知る手がかりはこれしかありません。
モノレール事業 売上高(OLCファクトブックより)
- 2002年度 31億円
- 2003年度 28億円(ランド20周年)
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2004年度 26億円
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2005年度 26億円
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2006年度 28億円(シー5周年)
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2007年度 30億円(運賃値上げ)
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2008年度 35億円(リゾート25周年)
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2009年度 35億円
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2010年度 34億円
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2011年度 34億円(東日本大震災・シー10周年)
この数字を見ると、運賃値上げが売上高のアップにつながっていることが分かります。値上げによって乗客が減り、さらなる収支悪化につながるという悪循環にはなっていないようです。
本当は無料化できるはず。けど…
では話を戻します。私は東京もアメリカのディズニーパークのように、モノレールを無料化することは十分可能であると考えます。
実際、リゾート内を走るディズニーリゾートクルーザーやパートナーホテル・シャトル、グットネイバーホテル・シャトルは無料で乗ることができます。バスと同様に周辺ホテルからの協力金があれば、運営は十分可能ではないでしょうか。
しかし、無料化は理論上可能だとは思いますが、実際にオリエンタルランドが踏み切る可能性は非常に低いと思います。
それは無料化による混雑に加えて、建設費などの負債をオリエンタルランド本体で抱えなければいけなくなる、長期的なコスト負担が重くなる、といった理由が考えられます。モノレールは交通機関であって、アトラクションのように古くなったからといってすぐに壊すことはできませんからね。更新に向けた費用も積み立てていかなくてはいけません。
現実的には、今後も運賃は据え置かれ、当面の間は有料の交通機関として運営されるでしょう。建設費の返済が終われば運賃の値下げも考えられますが、利用者の増える見込みが立たなければ、それもきびしいかもしれません。アメリカのように利用しやすい交通機関になってほしいものです。