2021年4月8日、東京ディズニーランドの駐車場に地下トンネル(アンダーパス)が開通しました。一見すると普通の道路なのですが、実はこれ浦安市内で初めてのトンネルなのです。そんな話題性もあって、メディアではこのトンネルが大きく取り上げられました。
「たかがトンネルでしょ?どうしてそこまで騒ぐの?」そう思う方も多いかもしれません。実はこのトンネルには、とても大切な役割が秘められているのです。今回はこのトンネルが作られた理由について、少し考えてみたいと思います。
目次
駐車場から一般道へ出るためのルート
新しく開通したトンネルは、東京ディズニーランドの駐車場から一般道へ出る車のために新設されました。トンネルは約330メートル、前後のアプローチ部分を含めた全長は約500メートル。道路は片側2車線の一方通行、高さは4.7メートル、幅は9.5メートルとなっています。SNSの投稿を見ていると、周辺ホテルのシャトルバスも利用することがあるようです。
新トンネル初通過しました pic.twitter.com/WhqCO90ENZ
— こりーん(スペシャルトリート済) (@OneYaoyaFamily) 2021年4月8日
今日開通のディズニーランドの新しい退出口
— ヴぁんD (@ven_d_TDR) 2021年4月8日
浦安市初のトンネル道(地下道)だそう#TDR_now#ディズニー#トンネル#地下道 pic.twitter.com/b3GAFbMw8q
駐車場から出る車はこれまで、大三角線へつながる出口か、オフィシャルホテル前の外周道路につながる出口のいずれかに案内されていました。今後は大三角線方面出口と、地下トンネルを通ってシェラトン前、もしくは旧リゾートパーキング第3(R3)前の信号に出るルートの2つが使われる予定です。
(東京ディズニーリゾート公式ウェブサイトから引用)
何のために作られたの?
東京ディズニーリゾートがある舞浜地区は、もともと海を埋め立ててつくられた土地です。一般的に埋立地は地盤が軟弱で、地下トンネルをつくるのが難しいとされています。
1983年の東京ディズニーランド建設当時、地下に管理施設を建設する計画があったのですが、莫大な工事費がかかることから断念…。そのため、今回つくられたトンネルは、かなりの手間と費用がかかっていると思われます。
では、どうしてわざわざ、このような地下トンネルをつくったのでしょうか。私は以下の3つの理由があると考えています。
周辺道路の交通量コントロール
コロナ禍の前までは、パーク閉園時刻の午後10時ごろになると、駐車場から国道357号線や首都高速に向かう車で渋滞が起きていました。オフィシャルホテル周辺の外周道路では、舞浜ローズタウン前に向かう車と、運動公園前に向かう車で両方向とも動かなくなり、1時間以上舞浜に取り残された…という経験をした人も。周辺道路の渋滞は、地元住民から苦情が出ることもありました。
千鳥地区にある「リゾートパーキング第7」遠くから見ても、その大きさがよく分かる。
東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは、これまで周辺道路の渋滞対策を進めてきました。例えば、2015年4月に行われた駐車料金の値上げもその一つです。それまでは普通車は1日2,000円だった料金を、平日は2,500円、土日祝日は3,000円に引き上げへ*1。これも値上げによって、できるだけ電車やバスなどの公共交通機関を利用してもらい、駐車場の混雑を抑える狙いがありました。
今回開通した地下トンネルによって、これまでよりもスムーズに車やバスが退出できるようになれば、周辺道路の混雑も緩和できると考えられます。
オリエンタルランドが建設費を負担してつくられた、首都高速の舞浜入口。それまでは国道357号線から葛西出入口まで行く必要があったため、舞浜大橋で激しい渋滞が起きていた。
歩行者と一般車の事故防止
舞浜地区では2つのディズニーホテルが建設中です。一つはヒルトン東京ベイとホテルオークラ東京ベイの間で工事が進められている「東京ディズニーリゾート・トイ・ストーリーホテル」です。地上11階・地下1階で、客室数は約600室。映画『トイ・ストーリー』シリーズがテーマの、モデレートタイプのホテルになる予定です。
2021年度の開業を予定している「トイ・ストーリーホテル」
もう一つは、東京ディズニーシーの新テーマポート「ファンタジースプリングス」に直結するホテルです。客室数は475室。プレスリリースでは「デラックスタイプの客室に加え、一部は、東京ディズニーリゾートで最上級の宿泊体験を提供するラグジュアリータイプの客室で構成」としていますので、最上級クラスのホテルになるでしょう。
旧平面駐車場で建設が進む「ファンタジースプリングス」
新しいディズニーホテルが開業すれば、ディズニーリゾートラインのベイサイド・ステーションを利用するゲストも増えるはずです。そうなると、駐車場から出る車とホテルを利用するゲストが交錯する可能性も。地下トンネルがあれば、歩行者と車の流れを分離することができ、夜間の交通事故防止につながるのです。
実際、東京ディズニーランドホテル前には、バイク用の通路として、小さなアンダーパスがつくられています。現在は駐車区画が変わったため、ほとんど使われていませんが、こちらも歩行者と二輪車を分離するためでしょう。
ランドホテルとリゾートラインの駅の間を通る、バイク用のアンダーパス。朝の開園前には、混雑緩和のためにゲスト用の通路として使われたことも。
本日ランド通常開園待ちの人はランホ手前の道路?みたいなとこ通って向かいます。
— nahom.*・。 (@nahom53241608) 2019年6月13日
ただでさえ遠いのに朝からハードトレーニングです。
この前はこんな遠回りしなかったぞ!!人が多すぎる💦💦💦💦 pic.twitter.com/lRII7sc8zT
新設するディズニーホテルのエントランス整備
先ほども触れたとおり、東京ディズニーシーの新エリアに直結する形で、新しいディズニーホテルの建設が進められています。このホテルの車寄せや駐車場を建設するには、どうしても駐車場から出る車を、別のルートに誘導する必要がありました。
大三角線方面や、ファーストリゾート近くにある水処理施設方面だと、距離が短くて場内で車が詰まってしまう。できるだけ長いルートを確保するためには、地下トンネルがどうしても必要だったのです。
もちろん、ディズニーホテルやオフィシャルホテルの騒音防止という意味合いもあるでしょう。ホテルのすぐそばに渋滞の車列があれば、せっかく最高級の客室を利用しても、雰囲気が台無しになってしまいますからね。
変わりゆく舞浜。駐車場のさらなる立体化も?
東京ディズニーランドでは、待望の新エリア「ニューファンタジーランド」が2020年9月にオープン。コロナ禍で延期されていた「ファンタジーランド・フォレストシアター」も、2021年4月に公演を開始しました。東京ディズニーシーの新エリア「ファンタジースプリングス」は、2023年度に開業予定。舞浜地区はさらなる進化を遂げようとしています。
2021年4月から公演を開始した「ファンタジーランド・フォレストシアター」
コロナ禍の前までは、パークは連日多くのゲストで賑わっていました。感染拡大を防止するため、東京ディズニーリゾートでは時短営業や入園者数の制限などが続いています。しかしワクチンが普及し、感染が抑えられるようになれば、V字回復が見込めると思います。そうなると、駐車場を利用するゲストも一気に増えるはずです。
東京ディズニーランドでは、2019年7月に立体駐車場が新設されました。今後も混雑緩和とパークの開発用地を確保するため、立体駐車場が新設される可能性はあるでしょう。コロナ禍で業績が大きく落ち込んでいる東京ディズニーリゾートですが、まだまだ成長する余地は残っています。今後の発展が楽しみですね。
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参考資料
*1:1999年4月には普通車が1,500円から1,700円へ、2001年2月には1,700円から2,000円へ、それぞれ値上げされています。