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舞浜新聞

東京ディズニーリゾートなどのディズニーパークをはじめとして、ディズニーに関する様々な情報をお伝えします。



オリエンタルランド 2017年3月期 第3四半期決算を読み解く

東京ディズニーリゾートの分析・考察

1月30日、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは、2017年3月期の第3四半期決算を発表しました。

 

 

今回は発表された決算の数字から、東京ディズニーリゾートの現状と、今後の展望を読み解いていきたいと思います。

 

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©Disney

 

売上高 前年同期比1.7%増

今回発表されたのは、2016年4月~12月までの売り上げや利益を示した「第3四半期決算」です。主な項目は、以下のようになっています。

 

  • 売上高 約3,606億円(前年同期比1.7%増)
  • 営業利益 約921億円(同微減)
  • 経常利益 約935億円(同0.2%減)
  • 四半期純利益 約653億円(同3.2%増)

 

では、まず「売上高」から見ていくことにしましょう。

 

テーマパーク事業 前年同期比1.6%増

今期は2,976億円となり、前年同期比で1.6%増となっています。これについてオリエンタルランドは、ゲスト一人当たりの売上高(客単価)が増加したためだと説明しています。

 

東京ディズニーリゾートの場合、客単価を占めるものは、以下の3つに大きく分けられます。

 

  • パークチケット
  • グッズ(物販)
  • レストラン(飲食)

 

これを今回の決算に当てはめてみましょう。

 

  • アトラクション・ショー収入 1,371億円(3.0%増)
  • 商品販売収入 1,049億円(2.1%増)
  • 飲食販売収入 514億円(2.9%減)

 

アトラクション・ショー収入が増えているのは、2016年4月のチケット値上げによるものです。決算書類でも「チケット価格改定による増」と説明されています。また、商品販売収入が増えているのは、シー15周年イベントの関連商品の売れ行きが好調であるため、とも説明されています。

 

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シー15周年イベントの目玉「クリスタル・ウィッシュ・ジャーニー」©Disney

 

舞浜新聞では、商品販売収入の増加について、「多品種少量生産のグッズ販売」と「グッズ単価の引き上げ」の2つが大きな理由ではないかと考えています。

 

最近の東京ディズニーリゾートのグッズ展開を見ていると、スペシャルイベントに合わせたグッズに加えて、販売期間の短いグッズがたくさん投入されています。ちょうどコンビニの商品展開と同じように、多くの種類のグッズを少量だけ生産して、なるべく売り切るようにしているのです。

 

その弊害として、発売して間もなく欠品してしまう商品や、そのまま販売終了になってしまうグッズも多くなっています。転売業者による買い占めも問題になっており、遠方に住むゲストからは不満の声が上がっています。

 

グッズ単価の引き上げも、「ぬいぐるみバッチ」などの人気商品を見ていると明らかです。原材料費や生産コストの増加を考えても、数年前と比べてかなり値上げされています。

 

あくまでも推測ですが、原価率を引き下げて、一つのグッズ当たりの利益率を伸ばそうとしているのではないか、という見方もできます。「グッズの質が下がった」「中身が減った」という個人的な意見も見られますが、このあたりも注視していく必要がありそうです。

 

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©Disney

 

今回の決算で特に気になったのが、飲食販売収入が3%近くも減少している、という点です。

 

これはおそらく、2016年4月から、テーブルサービスのレストランで導入された「完全予約制」が大きな影響を与えていると考えられます。

 

 

オリエンタルランドとしては、完全予約制を導入することで、客の流れを事前につかみ、原材料の仕入れや人件費のコントロールをしようと考えていたのでしょう。しかし、ふたを開けてみれば、レストランがガラガラになっていることも珍しくありませんでした。

 

テレビ番組の特集やCMなどで「レストランは事前予約のみ」と強調されていれば、ここまで問題にはならなかったと思います。バケーション・パッケージの利用客や、年間パスポート保有者などのコアなファンを除けば、「え?レストランって事前予約だけなの?」という反応がほとんどだったと思います。

 

事前予約にしぼったことで、レストラン前の長蛇の列はなくなりました。しかし、その分だけ「機会損失」となり、飲食販売収入が減少したのでしょう。テーブルサービスのレストランであふれたゲストが、カウンターサービスやワゴンなどに流れた結果、混雑が激しくなり、パーク外の飲食施設の利用につながった、という見方もできます。

 

オリエンタルランドでは、飲食の客単価を引き上げるために、メニュー数を絞ったり、コースメニューに変更したりするなど、いろいろと知恵を絞っています。シーと比べて、単価が低いランドのレストランを、今後どうテコ入れしていくのかは気になりますね。

 

ホテル事業 前年同期比3.7%増

今期は499億円となり、前年同期比で3.7%増となっています。これについて、オリエンタルランドは、東京ディズニーシー・ホテルミラコスタの売り上げが増えたため、だと説明しています。

 

以下は3つのディズニーホテルの売上高です。

 

  • ランドホテル 136億円(前年同期比0.3%増)
  • ミラコスタ 143億円(同14.2%増)
  • アンバサダー 106億円(同4.1%減)

 

ミラコスタの売上高が大きく伸びていることが分かります。これはシー15周年イベントが最大の理由でしょう。周年イベントでは地方からのゲストが多く訪れますので、より利便性の高いミラコスタに人気が集中したと考えられます。客室稼働率も、前年同期と比べて「上回った」ことが説明されています。

 

ランドホテルは前年同期とほぼ同じ数字であるのに対して、少し元気がないのはアンバサダーホテルです。決算書類でも、稼働率が「若干下回った」と説明されていますので、ランドホテルとミラコスタの間に挟まれて、存在感を発揮できていないのでしょう。

 

2017年2月6日には、アンバサダーホテルに「チップとデールルーム」と「スティッチルーム」が新しく導入されます。ランドホテルやミラコスタでも、景色が望めない客室の「キャラクタールーム化」が進められています。

 

 

今後オリエンタルランドとしては、アンバサダーホテルのテコ入れとして、よりキャラクター色の強い客室への改装を進めていくと思われます。

 

入園者数が減ったのは、悪天候が原因?

さて、売上高の説明について、オリエンタルランドは「入園者数が減ったものの、ゲスト一人当たりの売上高が増えたため増収となった」と説明しています。

 

入園者数が前年同期と比べて「若干下回った」理由について、上半期の悪天候による影響に加えて、シーのハロウィーンイベントが2年目を迎えたことを理由に挙げています。

 

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シーの「ザ・ヴィランズ・ワールド~ウィッシュ・アンド・ディザイア~」前年も行われたショーに15周年の要素を入れた。©Disney

 

まずは、上半期の悪天候について考えてみましょう。以下は、葛西臨海公園にある気象庁のアメダスが観測した、日照時間の数字です。

 

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こうやって比べてみると、4月から7月にかけて、前年よりも日照時間が短かったことが分かります。8月は上回ったものの、ハロウィーンイベントが行われる9月・10月も、前年に比べて短かったのです。確かにオリエンタルランドの説明の通り、2016年はあまり天気に恵まれなかったのでしょう。

 

では、果たして「天候不良」だけで、入園者数の減少を説明できるのでしょうか。

 

舞浜新聞では、今回の入園者数の減少について、以下の2つが大きな理由ではないか、と見ています。

 

  1. 「日付指定券限定入園日」の導入
  2. 前年踏襲の代わり映えのしないイベント内容

 

一つ目の「日付指定券限定入園日」については、導入前から賛否両論が巻き起こりました。これは、オープン券などの日付指定のないチケットでは、土日祝日に入園できない、という制度です。

 

 

オリエンタルランドとしては、休日から平日への混雑分散化に加えて、事前に入園者数の予測を立てやすくしたい、と考えたのでしょう。

 

平日へ分散化すれば、休日の混雑は緩和されます。さらに、事前に日付指定のあるチケットを買うゲストが増えれば、仕入れや人員のコントロールもしやすくなります。

 

しかし、2016年10月から導入された日付指定券限定入園日ですが、ゲストに「事前にチケットを買わないと入れない」という誤解が広がってしまいました。これは大きな機会損失につながったのではないでしょうか。

 

二つ目の「前年踏襲の代わり映えのしないイベント内容」については、その言葉の通りです。

 

ランドの場合、ハロウィーンのパレードは新規導入だったものの、シーのハロウィーンは前年とほぼ同じプログラム、クリスマスにいたってはランドのパレード、シーのハーバーショーは前年とほぼ同じ、という変わり映えのしない内容になっています。

 

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ランドの「ハロウィーン・ポップンライブ」フロートの停止回数を増やして、ゲストの偏りをなくそうとしたのは良かったのだが…。©Disney

 

ゲストが「行きたい」と考える動機を考えると、キャラクターの新しいコスチュームか、グッズ、レストランメニューしかありません。もちろんアトラクションに乗りたいというニーズはありますが、わざわざ混雑の激しい時期に行く理由は見つかりません。

 

舞浜新聞の推測では、9月~12月の書き入れ時に、オリエンタルランドの予測よりもかなり数字を落としたのではないか、と考えています。シーの場合は15周年要素がありましたが、ランドはかなり苦戦したのではないでしょうか。もちろん、4月のチケット値上げが影響した可能性もあります。

 

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©Disney

 

営業利益 業績予想を下回り

さて、売上高は前年同期比でプラスになりましたが、営業利益は約921億円で、前年同期比で約4億円ほど減少しました。ここにも、少し不安が残ります。

 

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オリエンタルランドの四半期別営業利益の推移。4月~12月の累計で見ると4億円の減少だが、第3四半期に限ると、前年同期比で12億円ほど減っている。

 

オリエンタルランドは営業利益について、以下のように説明しています。

 

  • ゲスト一人当たりの売上高 増加
  • 商品原価率・飲食原価率 減少
  • 人件費 29億円増加→人事制度の改定のため
  • 減価償却費 増加(23億円)
  • 諸経費 増加(15億円)→シー15周年イベント経費 17億円
  • ホテルミラコスタ 売上高 増加
  • セレブレーションホテル 開業費用の増加

 

4月~9月までの数字を見ていくと、営業利益は増加を示していました。しかし、10月~12月にしぼってみると、3四半期ぶりの「減益」となってしまいました。

 

先ほどの売上高とも重なるのですが、気になるのが「商品原価率・飲食原価率」についてでしょう。オリエンタルランドは決算説明会の中で、為替による原価率の減少を理由に挙げていました。

 

しかし、ここの原価率を下げれば、同じ価格でも利益を増やすことができます。今後、利益を増やすために、さらなる経費削減が実施される可能性もあります。

 

業績予想は据え置きへ。目標達成はできるの?

さて、オリエンタルランドの苦戦を感じる、2017年3月期の第3四半期決算。今回オリエンタルランドは、2017年3月までの通期予想について、売上高は4,799億円(前年比3%増)、営業利益は1,091億円(同2%増)の予想を「据え置く」と発表しています。

 

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©Disney

 

オリエンタルランドは毎年、かなり保守的な目標を立てていますので、その達成に自信を持っているのでしょう。個別に見ていくと、いろいろと厳しい面もありますが、全体の売上高は増加になっていますので、おそらく目標は達成できると思います。

 

1月~3月の集客ターゲットを見ていくと、ランドは『アナと雪の女王』で首都圏の家族連れ、シーは15周年イベントのフィナーレで、地方ゲストと学生客を見据えていると思われます。

 

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一般層の人気は落ち着いたが、小さな女の子には根強い人気を誇る『アナと雪の女王』2018年には続編の公開も決まっている。©Disney

 

2017年の閑散期集客については、こちらの分析をどうぞ。

 

さて、最終的な入園者数はどうなるのでしょうか。今後の決算の数字によっては、オリエンタルランドが進めるパークの大規模開発計画に対して、投資家から不安の声が上がるのは間違いありません。

 

2020年までのパーク開発計画については、こちらをどうぞ。

 

オリエンタルランドにとって、今後3か月が、目標を達成できるかどうかの「試練の3か月」になることは、間違いなさそうです。

 

参考リンク