東京ディズニーリゾートには、4つのディズニーホテルがあります。舞浜エリアにあるディズニーアンバサダーホテル、東京ディズニーシー・ホテルミラコスタ、東京ディズニーランドホテル、そして新浦安エリアにある東京ディズニーセレブレーションホテルです。
このうち、アンバサダー・ミラコスタ・ランドホテルの3つは「デラックスタイプ」、セレブレーションは「バリュータイプ」に位置付けられており、サービスの内容が大きく異なります。レベルの高いサービスが行き届いているデラックスに比べると、バリューはサービスが簡易的になっています。
パーム&ファウンテンテラスホテルをリニューアルする形でつくられた「東京ディズニーセレブレーションホテル」稼働率は好調と言われているが…。
実は最近、アンバサダーホテルのサービス内容の変更をめぐって、これまでホテルを利用してきたゲストから、不安や不満の声が上がっているのです。今回はそんな「改悪」とも受け取れる、サービス内容変更について、詳しく見ていきたいと思います。
最初は「ルームキー」廃止から始まった
これまでデラックスタイプのディズニーホテルでは、宿泊日と氏名が入ったルームキーが渡され、チェックアウト後は記念に持ち帰ることができました。
しかし、アンバサダーホテルでは今年(2018年)4月1日の宿泊分から、従来のルームキーは廃止され、持ち帰ることができなくなってしまいました。現在はICカードタイプのルームキーが渡され、チェックアウト時にボックスへ返却する仕組みになっています。
これに対してゲストからは「記念に持ち帰れないのは寂しい」「ルームキーを返すなんて、安いビジネスホテルみたい」といった声が聞かれます。このルームキー廃止は、デザイン料や印刷コストの削減が、理由の一つとして考えられるのですが、やはり一番大きいのは、オンラインチェックインへの全面移行に向けた動きでしょう。
今年(2018年)7月5日から、東京ディズニーリゾートの公式スマートフォンアプリの配信が始まりました。このアプリでは、アトラクションの待ち時間を確認したり、グッズのオンライン注文を行ったりすることができます。実はこのアプリ、アンバサダーホテルのオンラインチェックインにも対応しており、自分のスマートフォンを、ホテルのルームキーとして使えるようになっているのです。
ディズニーホテルでは従来、15時のチェックインに合わせて、フロントの前に長い列ができる、といった光景がよく見られました。現在は7時~13時の時間帯に「プリチェックイン」を行えば、すぐに部屋へ行けるようになりましたが、入室は16時半以降からという制約もあります。
オンラインチェックインが普及すれば、それだけフロントに並ぶゲストも少なくなり、混雑も分散化できます。おそらく、特に問題がなければ、ミラコスタやランドホテルでも、従来型のルームキーが廃止され、オンラインチェックインに対応した鍵への切り替えが行われるかもしれません。
ベルキャストのサービスが廃止?
「ルームキーの廃止=サービスの改悪」とは言い切れないと思います。しかし、ゲストの間でとくに不安が広がっているのは、2019年1月6日から行われる、以下のサービス内容変更です。
- 客室内ミニバー(客室内冷蔵庫の飲み物の提供)廃止
- ルームサービスの提供 廃止(一部を除く)
- ベルキャストによる客室への案内 廃止
従来のデラックスタイプのホテルでは、当たり前に行われてきたサービスが、ことごとく廃止対象になっています。ミニバーやルームサービスについては、利用するゲストに対して、コストがかかり過ぎるといった問題があったのでしょう。
しかし、ベルキャストによる案内もなくなってしまうと、ただのビジネスホテルと同じになってしまいます。地方から訪れた場合は「初めてのディズニーホテルだから、部屋までの行き方が分からない」というゲストも多いと思います。
ただ一方で、現状を考えると、ベルキャストの案内廃止は仕方がない、という見方もできるのです。
ホテルのロビーをよく見ていると、15時のチェックイン開始直後や、パークが閉園する22時前後になると、ベルキャストの案内を待つゲストで、かなり混雑することが分かります。せっかくチェックインしても、ロビーで長時間待たされる…。最近は人材不足の影響もあって、案内や荷物運搬を行うベルキャストも不足しているのが現状です。
もちろん、部屋へ行くまでの間に、ベルキャストさんとお話しするというのも、貴重な時間だったかもしれません。しかし、現場の負担は以前よりもかなり大きくなっていると思います。
オリエンタルランドとしては、貴重な人材をフロントや別のサービスへ回したいと考えていると思います。数年前からはフロントでも「ご案内は必要ですか?」と聞くようになり、不要と答えると、館内マップを渡されるようになっていました。先ほども触れた、オンラインチェックインなどの導入によって、今後もゲストが自分の力で部屋まで行けるように、環境整備を進めていくと思われます。
もし仮に、アンバサダーで余裕ができた人材を、ミラコスタやランドホテルに回す…というのであれば、アンバサダーの「バリュータイプ化」という批判も、あながち間違いではなくなります。ただ、ミラコスタやランドホテルでも、サービスが打ち切られる可能性は低くないと思います。今後の動きに注意していきたいですね。
衝撃が走ったレストラン「花」の閉鎖
7月2日に発表されたプレスリリースにも、ファンの間では衝撃が走りました。このリリースでは、アンバサダーホテル宿泊者向けに行われている「ハッピー15エントリー(15分前入園)」について、チェックイン日からディズニーシーでも利用が可能になる、ということが紹介されていました。
しかし、これよりも衝撃的だったのが、リリースの最後に書かれていた「ご家族向けスペースの新設に伴い、日本料理レストラン「花 Hana」は2019年1月6日(日)をもって営業を終了します」という一文でした。
ディズニーホテルにあるレストランの中で、日本料理は「花」ただ1か所だけでした。本格的な鉄板焼きのカウンターもあり、多くのゲストに親しまれてきました。最近では、シニア層や七五三、小規模の会食などでも多く利用されてきただけに、突然の閉鎖の知らせには、本当に驚かされました。
現在レストランがある場所には、家族向けスペースとして、親子で一緒にアニメや絵本を見ながら過ごせる場所が作られる予定です(2019年春予定)。アンバサダーには従来、2階に授乳室がありましたが、場所が少し分かりにくかったと思います。今回新設されるスペースには、おそらくおむつ替えや授乳ができるスペースも設けられるのでしょう。
家族向けスペースの必要性は理解できます。しかし、わざわざレストランを潰してまで、そこにつくる必要性はあまり感じられません。それなら、2階の宴会場の一部を改修すれば済む話でしょう。
アンバサダーホテルの館内マップ。「4」の花のスペースがいかに大きいかがよく分かる。
おそらく「家族向けスペース」というのは後付けの理由で、
- 利用客が少なく、売り上げが伸び悩んでいたこと
- 料理の提供に時間がかかり、回転率が悪いこと
- 人件費などのコストが大きかったこと
といった複数の要因が重なった結果、閉鎖対象に選ばれたのではないでしょうか。
以前は本格的な懐石料理だったのが、最近ではなるべく提供回数が少なくなるように、一つのお盆に乗せられたメニューが増えていました。今から考えると、より早く料理を提供することで、回転率を上げるための工夫だったと推測できます。
また、最近の人材不足の影響を受けて、より少ないキャストでも、現場を回せるように工夫していたのかもしれません。
加えて、鉄板焼きや懐石料理の板前、和服の着れるキャストが必要だった「花」は、ほかのレストランと比べると、人件費などのコストも高かったと思われます。うがった見方ですが、婚礼プログラムで和食を必要としないという、ディズニーホテルならではの理由もあったかもしれません。
ただ、日本のディズニーホテルらしい料理が食べられる「花」は、貴重な場所でした。今後増えていくであろうインバウンド(外国人観光客)の集客を考えると、今閉鎖すべき場所なのか、と疑問の声が上がるのは事実です。現在計画が進められている、5つ目の新しいディズニーホテルに、日本料理レストランが復活することを願ってやみません。
東京オリンピック・パラリンピックに向けて、急増するインバウンド。首都圏のホテルでは囲い込みが進んでいるが、舞浜では…。
バリュータイプ化は進む?
2022年度中のオープンを目指して、東京ディズニーシーでは新しいテーマポートの計画が進められています。これと並行して、パーク直結型の新しいディズニーホテルが建設される予定です。
2022年度中の開業を目指す、新しいディズニーホテル。リゾート内では最上級クラスのホテルになる予定だ。(オリエンタルランドのプレスリリースより引用)
パークに近いランドホテルやミラコスタ、宿泊特化型のセレブレーションと比べると、どうしてもアンバサダーホテルの持ち味がハッキリしないのは事実です。
ランドとシーの間に挟まれ、徒歩ではパークに移動しづらいという難点は、以前から指摘されていました。オリエンタルランドとしても、キャラクタールームを導入するなど、積極的に設備投資を行ってきました。
アンバサダーホテルのシンボル的な客室である「ミッキーマウスルーム」
しかし、今回のサービス内容の変更を見ると、アンバサダーに見切りをつけ、ラグジュアリータイプの新ホテル、デラックスタイプのランドホテルとミラコスタの下に、アンバサダーを位置付けると思われます。
今後もますますサービスカットに加え、人員削減も進められていくでしょう。これで値段が下がれば、ゲストにとって選択肢も増えるかもしれませんが、そのような動きはあまり感じられません。
宿泊者向けにキャラクターグリーティングを行ったり、ランドホテルやミラコスタと婚礼プログラムを差別化したりと、アンバサダーの需要の掘り起こし策はいくらでもあると思います。
日本で初めて誕生したディズニーホテルが、今後どう変化していくのか。舞浜新聞では引き続き、その姿を見つめていきたいと思います。