8月20日、東京ディズニーシーに新しいレストラン「ドックサイドダイナー」がオープンしました。
ここはもともと「セイリングデイ・ブッフェ」という食べ放題のレストランでしたが、新しくカウンターサービスに生まれ変わりました。ただ、内装はセイリングデイのものをそのまま使っているものが多く、入ってみると懐かしい気持ちになる方もいるかもしれません。
実はこのレストランをよく観察してみると、オリエンタルランドが、パーク内のレストランをどう改善しようとしているのか、その将来像が感じられるのです。今回はそんな舞浜の未来について、少し考えてみたいと思います。
一つのレジに一列ずつ?
カウンターサービスのレストランでは、レジで注文・会計を済ませた後で、奥のカウンターにいるキャストから商品を受け取る、という仕組みになっています。
従来のレストランでは、一つのレジに対して、左右二つの列を作っていました。レジにいるキャストは、左右交互に注文を聞いて、後ろのカウンターに注文を流していました。これは、レジ前の列が長くなりすぎないようにするためです。
しかし、この仕組みだと、商品を提供するのに時間がかかってしまうと、列の進みが止まってしまい、レジにいるキャストは注文を受けられなくなってしまいます。
ドックサイドでは、一つのレジに対して一つの列を作っています。これだと効率的に注文を捌けますし、列の進みも速くなります。しかし、問題は商品提供のところです。いくら注文をたくさん受けたからといっても、ここで詰まってしまっては意味がありません。
ドックサイドでは、レシートに書かれている番号で呼ばれ、商品を受け取る仕組みになっています。キャストからも、列を崩して待つように促されます。これなら、順序良く並ばなくても、よりスペースを圧縮することができますね。
現在はレシートの下に書いてある「取引ナンバー」の下2桁を使っていますが、小さい文字のためにどうしても読みにくくなっています。将来的には、システムを変更していく可能性はあるでしょう。
片付けは「キャストの仕事」から「セルフサービス」へ
使い捨ての食器で提供されるレストランでは、基本的に私たちゲストが片づけをします。一方で、同じカウンターサービスのレストランでも、再利用ができる食器で提供されるところは、使い終わったものをテーブルの上に置いていきます*1。
これはキャストが食器を分けて回収するため、そして使用済みの座席を消毒してきれいにするため、という2つの理由があります。
しかし、最近はパーク全体を通して、人員不足が指摘されています。レストランも例外ではなく、少ない人数で現場を回しているため、長い時間、使用済みの食器が放置されていることも珍しくありません。
ドックサイドダイナーにも、レジや商品提供カウンターに加えて、ごみの回収や座席の掃除をするキャストが配置されています。しかし、ほかのレストランと比べて目立つのが、種類によって分けられた、大きなごみ箱が設置されている点でしょう。
外国人ゲストにも分かりやすく書かれたごみ箱
最近ではカウンターサービスのレストランを中心に、同様のごみ箱の設置が増えています。「ごみはなるべく各自で捨ててほしい」という、オリエンタルランドの思いを感じますね。
9月26日からは、東京ディズニーランドにある「グランマ・サラのキッチン」でも、従来の再利用可能な食器から、使い捨ての紙容器に変更される予定です。これもおそらく、食器の回収や洗う手間を削減して、ゲストが自分で片付けができるようにするためでしょう。
グランマサラ、紙皿に戻るんですね。96年のレストランガイドより。
— しう。 (@shu_hi23) August 21, 2018
チャイナボイジャーもこの紙皿でした。(ラーメンがなくて、焼きそばやビーフン、チャーハンでした。)#TDR_history pic.twitter.com/AVCcX7DcnR
環境保護の観点から、一度は再利用可能な食器になったグランマサラ。再び紙皿に戻ることに。
一部では「使い捨て容器は、環境保護に逆行するのでは?」という批判の声もあります。もちろん、再利用できる食器を使う方が、ごみを減らすことができます。しかし、もはやオリエンタルランドにとって、ごみ処理のコストよりも、人員不足や人件費などのコストの問題のほうが、大きくなっているのかもしれません。
「東京ディズニーシーの飲食施設では、設計段階から使い捨てではない陶磁器や金属などの食器を導入し、 紙ごみ、プラスチックごみの発生を抑制しています」という一文がある。
舞浜でも「美味い・安い・早い」が至上命題に
ドックサイドダイナーのメニューを見てみると、通年は2種類、夏季・冬季限定が各1種類ずつとなっています。それ以外にもサイドメニューが用意されていますが、かなり商品数は絞られています。
ドックサイドダイナーの主なメニュー*2
これはおそらく、商品数を絞ることで、より早くゲストに料理を提供するためでしょう。セントラルキッチンで大量に生産されたものを、現場の厨房で加熱して、食器に盛り付ける。ファミリーレストランもそうですが、現場で複雑な調理が不要になれば、それだけ安く・早く料理を出すことができます。
今後、季節イベントに合わせて、スペシャルメニューを投入していく可能性はありますが、商品数を増やすという選択肢はないと思います。
ドックサイドに限らず、ほかのレストランでもより早く料理を提供するために、似たようなメニューになっていくかもしれません。ただ、「遊園地で食事にお金を掛けたくない」「できれば安く食事を済ませたい」「ショーやパレードを待ちながら食べたい」と考えるゲストが増えている以上、これは仕方がないことかもしれません。
7月19日にオープンした「ベイサイド・テイクアウト」手軽に食べられる「寿司ロール」も、最近のゲストのニーズを反映した結果かもしれない。
入園者数がランド・シー合わせて、年間3,000万人を超えている現状を考えると、押し寄せるゲストにレストランが対応しきれていない、という問題もありそうです。今後、食の体験価値がどうなっていくのか。少し注目していく必要がありそうですね。
レストランが足りない!だけど…
東京ディズニーランドでは、ファンタジーランドの拡張工事が進められています。新エリアには、映画『美女と野獣』に登場する、ガストンの酒場をテーマにしたレストランが建設される予定です。ここは200席のカウンターサービスの施設になる計画です。
オリエンタルランドが公開した、レストランのコンセプトアート
また、東京ディズニーシーでは、新しいテーマポートの建設工事が進められています。ここには、『アナと雪の女王』『塔の上のラプンツェル』『ピーター・パン』をテーマにしたエリアがつくられる予定です。
シーの場合は、各エリアに一つずつ、レストランが建設されます。また、新テーマポートに隣接する新しいディズニーホテル内にも、2つのレストランがつくられます。オリエンタルランドがそれだけ、最近のレストラン混雑を意識して、拡張計画を考えていることがよく分かります。
ただし、箱モノをつくるだけで、混雑緩和につながるのか、というのは微妙なところです。
ブッフェスタイルだったセイリングデイを潰してまで、カウンターサービスのレストランを新設したということは、オリエンタルランドとしても現状に対して、かなりの危機感をもっている現れでしょう。
しかし、レストラン担当のキャストの待遇を改善していくとともに、人員をさらに増やしていかなければ、混雑に拍車がかかりかねません。また、テーブルサービスのような高級レストランと、大衆向けのカウンターサービスのレストランで、どのようにすみ分けしていくのか、といった問題もあります。「食の体験価値」が損なわれない改善を望みたいですね。
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*1:カウンターに並んだ料理から、自分の好きなものを選んで精算する「バフェテリアサービス」のレストランでも、食器はキャストが片付ける仕組みです。