来年で誕生から10年を迎えるダッフィー。今では東京ディズニーシーのシンボル的な存在にまで成長して、多くの人に親しまれています。
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2015年にはダッフィーをメインキャラクターとした、新しいスペシャルイベントの開催も決まっています。 では、そもそもどうしてダッフィーはこれほど人気なのでしょうか。今回はそんな彼の人気の秘密について考えていくことにしましょう。
ディズニー公式のテディベアだから
テディベアは古くから多くの人々に愛されています。それは熊のかわいらしさに加えて、包容力を感じるからだと思われます。
特にダッフィーの場合は「航海に出るミッキーマウスが寂しがらないようにと、ミニーマウスが作ったテディベア」というストーリーがあります。単なるテディベアではなく「ミニーがミッキーのために作ったテディベア」という設定が、多くの人々の共感を呼んだのではないでしょうか。
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ダッフィーを見ると、あまりディズニーらしさを感じません。しかし、よく見ると顔の模様や足の肉球、お尻にはミッキーシェイプが取り入れられており、彼がディズニーのキャラクターであることが分かります。
従来のキャラクターのぬいぐるみを「子どもっぽい」と感じていた人たちにとって、ディズニーらしくないダッフィーは魅力的に映ったのではないでしょうか。
世界に一つしかないから
これはダッフィーのぬいぐるみを見るとよく分かるのですが、一体一体、微妙に顔つきが違うのです。これはパーツごとに流れ作業で作られており、それを最後に一つのぬいぐるみに仕上げるため、まったく同じものを作れないからです。
ダッフィーとシェリーメイ ©Disney
ダッフィーを扱っているショップへ行くと、顔を真剣に見比べながら品定めをしている人を見かけます。もし自分の家に迎えるのであれば、自分の好みに合ったダッフィーを選びたいですよね。そんな微妙に違うダッフィーを買うと「この子は私だけのダッフィー」という愛着が生まれます。そんな特別感も彼の人気の理由ではないでしょうか。
パーク内を抱っこできるから
ダッフィーがこれまでのぬいぐるみと大きく違うのは、パーク内を抱っこして歩くゲストが多いことです。
これまでパーク内では「ぬいぐるみバッチ」が売られており、それを着けている方はいました。しかし、ぬいぐるみそのものを「抱っこして歩く」という大人は少なかったと思います。
ダッフィーの場合、ショップのキャストが「抱っこしていきますか?」と聞くことも影響しているかもしれませんが、やはりダッフィーのぬいぐるみが、アクセサリーの一部になっているからだと思うのです。
パーク内ではカチューシャやファンキャップ、ポップコーンバケットのように「身に着けるもの」が多く売られています。これらを身に着けると「東京ディズニーリゾートに来たよ!」という気持ちになりますし、友達や家族で同じものを身に着ければ、なんだか連帯感も生まれます。ダッフィーのぬいぐるみも、これらと同じ働きをしているのではないでしょうか。
さらに、パーク内にはダッフィーの記念写真を撮ることができる台も設置されています。その台に置いて写真を撮ると、まるでダッフィーと一緒にパークを回っているような感覚になります。
ダッフィーを普段の生活で持ち歩いている人は、まずいないでしょう。パーク内で抱っこしていると、やはり「ディズニーに来た!」という気持ちが高まると思います。だからこそ、抱っこしているゲストが多いのではないでしょうか。
また、ダッフィーを抱っこしている人を見ると「かわいい!」「私も抱っこしたい」というように、見た人からさらに人気に火が付いたというのも考えられます。人が持っていると、ついつい欲しくなってしまいますからね。
着せ替えができるから
ダッフィーの人気に火がついた理由として「着せ替えができるから」というのが多く挙げられます。やはりバービーやリカちゃんのように、人形を着せ替えするのは楽しいですからね。自分が着られない服をぬいぐるみに着せるというのは、憧れや変身願望を投影していると思います。
ダッフィーの場合、元となる映画やテレビ番組などはありません。そのため「ダッフィーはこんな衣装だよ」という設定がないのです。季節やスペシャルイベントに合わせて、自由にコスチュームを作ることができるのです。
オリエンタルランドにとっても、このコスチュームの存在は大きくなっています。本来、ぬいぐるみの場合は一度買ってしまえば「終わり」何度も同じぬいぐるみを買う人は、ほとんどいないでしょう。
しかし、着せ替えできるコスチュームはどうでしょうか。コレクター心理をくすぐられ、毎回買ってしまう人もいるのではないでしょうか。こうやって継続して利益を生み出していけるのです。最近では「キャナリークロージング」のような、高級着せ替えコスチュームも登場しています。
パーク内で売られている「キャナリークロージング」のコスチュームセット。1セットで1万円近くもする。©Disney
ファンによる手作りのコスチュームの存在も大きいでしょう。自分で作ったコスチュームをダッフィーに着せる。それをパークへ持っていくと、みんなの注目の的になる。それだけでも、かなりの満足感が得られると思います。
東京ディズニーシーでしか売っていないから
日本国内でダッフィーが買えるのは、東京ディズニーシーのパーク内にあるショップだけです*1。以前はスペシャルイベントのダッフィーが、周辺ホテルにあるショップで販売されたこともありましたが*2、基本的にはパーク内でしか買うことはできません。
人間の心理として「そこでしか買えない」と思うと、やはり欲しくなるもの。アメリカのようにネット通販やディズニーストアで売られていたら、ダッフィーの希少価値はここまで高くはならなかったと思います。日本人は特に「限定」という言葉に弱いですからね。「損をしたくない」という気持ちも働きます。
「思い出保存装置」だから
オリエンタルランドの上西京一郎社長は、東洋経済の取材に対してこう語っています。
東京ディズニーリゾートで非常に売れている商品を街中にポンと出しても、そんなには売れないだろう。やはり東京ディズニーリゾートで遊んで幸せを感じている、その思い出を、今度は商品に託して買っていただいている*3。
ダッフィーに関しては、「ディズニー」という強いブランド力に加えて、デザインやストーリーも素晴らしいものを持っています。しかし、上西社長が語っているように、ダッフィーを日本国内のディズニーストアで販売していたとしても、ここまでの人気にはならなかったでしょう。
ダッフィーがなぜ、ここまで人気を集めているのか。その最大の理由は、パーク内での思い出と強く結びついているからだと思うのです。パーク内で思い出の一部として、ダッフィーを買う。それを自宅に持ち帰って、楽しかった記憶を思い出す。そして再び、ダッフィーをパークへ連れていく。
ダッフィーが「思い出保存装置」になっているからこそ、ここまでの人気を獲得することができたのではないでしょうか。
ダッフィーは「東京ディズニーシー復活の立役者」
さて、ここまでダッフィーの人気の秘密について見てきました。
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実はダッフィーはオリエンタルランドが戦略的に、大ヒットを仕掛けたわけではありません。
発売当初は知る人ぞ知るキャラクターで、グッズこそ完売するものの、グリーティングに集まるゲストはまばらでした。そんな彼でしたが次第に人気が広がり始め、メディアで取り上げられるようになると、一気に人気キャラクターへと上り詰めたのです。
ダッフィーは開園当初、大人向けパークのコンセプトを掲げて苦戦していた東京ディズニーシー復活の立役者と言われています。
シーの場合、開園当時はまだアトラクションが少なく、キャラクターの露出も少なめでした。ランドの補完的施設ではなく、キャラクターに依存しない全く新しいパークを目指していたのです。
しかし、それは多くのゲストが求めているものではありませんでした。その後、オリエンタルランドは方針を転換。キャラクターの露出を増やし、徐々にですがアトラクションの数も増えていきました。
そんなとき、人気に火がついたのが「ダッフィー」パーク内でしか買えないということで、多くのゲストがディズニーシーを訪れました。開園当時を知る人・知らない人を問わず、ディズニーシーへ来園するきっかけをダッフィーは作り出したのです。今ではシーもランドと肩を並べるほどの集客を誇っています。
また、ダッフィーのグッズを購入するゲストが増えたことで、ゲスト一人当たりの消費金額(客単価)も向上しました。先ほども触れたように、ぬいぐるみの購入はもちろんのこと、期間限定のコスチュームやグッズを買うゲストが多いためだと思われます。まさにダッフィーは東京ディズニーシー復活の立役者なのです。
最近はオリエンタルランドも「いっしょだと、いいことありそう」というコピーで、ダッフィーのマーケティングを積極的に行っています。これはおそらく、USJが展開している「モッピー」を意識しているのではないかと思われます。今後ますますダッフィーの動向からは目が離せませんね。
USJが展開しているモッピー。開園10周年を記念して登場したセサミストリートのオリジナルキャラクターで「幸せを呼ぶ」というコンセプトがある。©USJ
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参考資料
*1:アメリカのディズニーストアなどで売られているダッフィーを取り扱っている店はあります。