舞浜新聞

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アナ雪イベントの功罪を考える

今年1月13日から3月20日まで、東京ディズニーランドで行われたスペシャルイベント「アナとエルサのフローズンファンタジー」。今回はそんな「アナ雪イベント」がパークにもたらした功罪について、少し考えてみたいと思います。

 

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©Disney

 

1月~3月はパークの「閑散期」

東京ディズニーリゾートではこれまで、お正月明けから春休みまでの1月~3月は「閑散期」と呼ばれ、入園者数が落ち込む傾向にありました。この時期は天候が悪くて気温も低く、一般的に旅行する人が少なくなるのです。

 

パークを運営するオリエンタルランドとしても、長年この閑散期でどのように集客するのかについて、知恵を絞っていました。例えばランドのシンデレラ城前やシーのウォーターフロントパークに特設ステージを組んで、豪華なショーを行ったこともありました。

 

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©Disney

 

豪華なエンターテイメント・プログラムは、メディアにも取り上げられやすく、近隣に住むハードリピーターの集客に力を発揮します。しかし、その一方で景気が冷え込んだり、天候不順が続いたりすると、人件費などの経費が足を引っ張る結果になっていました。

 

以下のグラフは近年のオリエンタルランドの四半期別営業利益(連結)を表したものです。

 

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これを見ると、ハロウィーンとクリスマスの期間に当たる第3四半期(10月~12月)の売り上げがピークになっているのが分かります。その一方で、梅雨をはさむ第1四半期(4月~6月)や第4四半期(1月~3月)が苦戦していることが見て取れます。

 

オリエンタルランドでは、特に落ち込みが激しい第4四半期について、最近は「キャンパスデーパスポート」の販売に力を入れています。学生向けに安い割引パスポートを販売して、集客しようとしているのです。決算の数字を見る限り、少ない経費で集客に成功しているといえるでしょう。

 

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(オリエンタルランド「2014年3月期決算及び2016中期経営計画説明会」資料より引用)

 

「アナ雪」は閑散期をなくした!

では、今年の1月~3月はどうだったでしょうか。

 

今年の閑散期は例年とは大きく状況が変わりました。本来この時期、入場制限が行われることはほとんどありません。お正月や春休みには行われることがありますが、それ以外は平日ともなるとガラガラになっていました。


以下は2014年と2015年の1月~3月に実施された、ランド・シーの入場制限日の一覧です。昨年と比べて2月の制限が多いことが分かると思います。私も2月にパークを訪れたのですが、予想とは反して大混雑の中を回ることになってしまいました。

 

2014年

ランド

  • 1月3日(金)
  • 3月8日(土)、21日(金)、28日(金)

シー

  • 1月2日(木)、3日(金)
  • 3月28日(金)

 

2015年

ランド

  • 1月31日(土)
  • 2月7日(土)、15日(日)、21日(土)、28日(土)
  • 3月6日(金)、7日(土)、14日(土)、15日(日)

シー

  • 2月21日(土)、28日(土)
  • 3月14日(土)、15日(日)

 

シーよりもランドの混雑が目立った今年の閑散期。やはり一番の大きな理由はアナ雪イベントの開催でしょう。昨年に映画が公開され、瞬く間に社会現象に。今では知らない人がいないというぐらいの、大人気コンテンツにまで成長しました。

 

そんなアナ雪に登場するアナとエルサ、そしてオラフに会える。パークでアナ雪の世界観を感じることができる。そう言われれば、やはり行ってみたくなる人は多いでしょう。パークへ行ってみて感じたのは、カップルや友人同士に加えて、親子連れで訪れている方が多いということでした。

 

チケット値上げ報道も影響?

今年1月29日、オリエンタルランドは東京ディズニーリゾートのチケット料金を、4月1日に引き上げることを発表しました。1デーパスポートの場合、大人一人6,900円となります。

 

 

今年の閑散期に混雑が目立ったのは、このチケット値上げが影響した可能性はあるでしょう。「値上げされる前に行っておかなきゃ!」と思った方は多いと思います。特に家族連れの場合、値上げによってかなり金額が変わってしまいますからね。

 

少ない経費で効果は最大?

さて、今回閑散期を見事に吹き飛ばしたアナ雪イベント。今年2月27日、日経MJ(日経流通新聞)の1面にアナ雪イベントの舞台裏が取り上げられました。

 

記事の内容を要約すると、以下のようになります。

 

  • 準備期間は通常のスペシャルイベントの半分(16か月→7か月)。
  • グリーティングはパフォーマンスや歌などの参加型にして、ゲストの印象に残るように。また、止まる場所を3か所から9か所に増やして、寂しい印象がないように。
  • 若手中心の社員に権限を持たせて、迅速な意思決定。
  • グッズは「期間限定」をアピールするために、イベントのロゴを目立たせた。
  • グッズは準備期間が少なく、25種類をなんとか準備。
  • 飲食はほかの部門との一貫性を持たせた。

 

日経MJの記事によると、昨年6月にはアナ雪イベントの開催が決まっていたということになります。3月14日に映画は公開されましたので、かなり早い段階で決断したことが分かります。

 

昨年6月に行われたオリエンタルランドの株主総会で、株主からのアナ雪活用に関する質問に対して、田丸泰取締役から「ご期待ください」と、かなり踏み込んだ発言もありました。

 

そんな突貫プロジェクトだったため、アナ雪イベントの目玉としては、アナとエルサ、オラフが出演する「フローズンファンタジー・グリーティング」と「ワンス・アポン・ア・タイム」の特別版「スペシャルウィンターエディション」のみとなりました。しかし、結果的にはこの2つのプログラムで、かなりの集客を達成することができたのです。

 

グリーティングに関しては出演者は25人ほど。フロートもこれまで何度か使われてきたものを再利用していましたので、人件費や衣装代を考えても、かなり経費は抑えられたのではないかと思われます。

 

またワンス・アポン・ア・タイムの特別版についても、基本的には映像を映すだけのショーですので、作る手間はかかっていたとはいえ、それほど経費はかかっていないはずです。

 

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©Disney

 

企業経営を考えるうえで、少ない経費で大きな利益を上げることは非常に重要です。しかし、果たして今回のアナ雪イベントは大成功だったのでしょうか。私がパークを訪れたとき、グリーティングを見終わった家族連れが「えっ?これで終わり?」と言っていたのを耳にしました。その声は決して少数派ではなかったと思います。

 

「準備期間が少なかったから」「閑散期で天候不順になれば、経費がかかるから」果たしてこれでいいのでしょうか。私には大きな疑問が残ります。

 

「金をかけろ」「豪華なショーを作れ」経営を考えると、オリエンタルランドに対してこんなことは言えません。しかし「スペシャルイベント」とうたっている以上、それだけのものを出してほしかったと思うのです。

 

来年の閑散期はどうなるのか

実は今年の閑散期は「スポンサーファミリーデー」として、東京ディズニーリゾートのスポンサー企業に勤める方向けに、割引パスポートが販売されました。

 

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今年度販売された「スポンサーファミリーデー・パスポート」かなり割引額が大きいことが分かる。©Disney

 

スポンサーファミリーデーに関しては毎年、不定期に販売されるため、決して珍しいものではありません。ただし、今年はアナ雪イベントの混雑に拍車をかけた可能性はあるでしょう。

 

ランドは3月6日、金曜日だったにもかかわらず入場制限が行われたのは、このスポンサーファミリーデー・パスポートの有効期間が3月6日までだったからだと思われます。このパスポートは入園保証が付いていますので、その分早めに制限をかけたと考えられます。

 

オリエンタルランドとしては、アナ雪イベントがここまで集客力を発揮するとは思っていなかったのでしょう。本来、周年イベントの翌年は地方ゲストが減るため、苦戦することが多かったのです。

 

今年に限って言えば、おそらくキャンパスデーとスポンサーファミリーデーの2つの割引パスポートで、なんとか乗り切ろうと考えていたかもしれません。

 

そこにアナ雪に殺到したゲストと、値上げ前の駆け込み需要が重なりました。現場にいるキャストの方に話を聞くと、今年は例年通りの「閑散期シフト」で、現場の人員はそれほど多くはありませんでした。

 

バケーション・パッケージの宿泊客や入園保証のあるパスポートを持っているゲストも考慮して、それほど混雑していなくても、今年は早めに入場制限をかけた可能性はあるでしょう。

 

さて、アナ雪イベントは来年2016年1月~3月にも開催されることが決まっています。また「ワンス・アポン・ア・タイム」の特別版については、今年7月7日までの延長が決まっています。

 

ワンスの延長については、今年4月に実写版映画『シンデレラ』と同時公開される『アナと雪の女王 エルサのサプライズ』のプロモーションも関係しているのでは?と舞浜新聞では見ています。

 

もちろん、経費が少ないワンスの延長で、なんとか4月からのチケット値上げを乗り越えて、7月17日オープンの新アトラクション「スティッチ・エンカウンター」まで客足を繋ぎ止めたいという考えもあるかもしれません。

 

さて、来年度のアナ雪イベントはどうなるのでしょうか。もう「突貫プロジェクト」という言い訳は許されないと思います。もし今年度と全く同じプログラムで勝負しようというのなら、ゲストよりも、ほかの誰かの顔色をうかがっているとしか思えません。

 

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©Disney