東京ディズニーランド・シーへ入園するときには、その日に有効なチケットが必要となります。それが「パスポート」普通の方であればアトラクション乗り放題・ショー見放題の「1デーパスポート」を買う場合がほとんどだと思います。
では、以前はどうだったのでしょうか。読者の中には覚えている方もいるかもしれません。昔はパスポートのほかに「ビッグ10」や「アトラクション券」「入園券」と呼ばれるチケットがあったことを…。
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今では考えられないのですが、東京ディズニーランドの開園当初、パスポートは平日のみ有効でした。土・日・祝や連休期間などに入園する場合は、アトラクション1回につき1枚必要となるアトラクション券と入園券がセットになった「ビッグ10」や、無料のショー・アトラクションのみ利用できる「入園券」を買わなければいけなかったのです。
しかも、アトラクション券はAからEまで種類があり、アトラクションによって利用できる券種は決まっていました。
東京ディズニーランドのアトラクションの中で、開園当初からあるアトラクションでは入り口の真ん中にキャストが立てるスペースがあります。開園当初はもちろん、今のようにファストパスなどありませんでした。このスペースはパスポートの日付確認やアトラクション券を受け取るために、キャストが立っていたのです。
入園のみだった「入園券」アトラクションには数回しか乗らないし、ショーやパレードは見る、というゲストが利用した。©Disney
その後、ビッグ10の廃止や価格改定が行われ、入園券・アトラクション券の廃止とパスポートへの一本化が行われたのが2001年4月のこと。東京ディズニーシーの開園を間近に控えていた時期でした。このとき、縦長だったチケットがカードサイズの横長に変わりました。ショップで販売されているチケットホルダーの形も変わったのを覚えている人もいるのではないでしょうか。
パスポートへの一本化により、アトラクションではいちいちチケットを確認したり、アトラクション券を受け取ったりする必要はなくなりました。ゲストもホルダーにチケットを入れて首から下げたり、アトラクションに入るときにチケットを見せたり、冊子からアトラクション券をちぎって渡したりする必要もなくなりました。
入園券とアトラクション券を組み合わせて安く遊んでいたゲストにとっては、少し出費が多くなりましたが、それを差し引いてもキャスト・ゲスト双方にとってパスポートへの一本化はメリットが大きかったと思います。
しかし、最近私はこのパスポートへの一本化こそ、パークのショー・エンターテイメントの軽視につながっている気がしてならないのです。
普通の遊園地であれば、乗り物に乗るときに必ずチケットを渡します。乗り放題のチケットは高く、わざわざ買う人も少ないのではないでしょうか。スキー場のリフト券と乗り放題券の関係も同じです。面倒なのは分かっているけれど、一枚一枚になっているリフト券のほうが、結果的に安く済むのです。
パークに入る手段がパスポートだけであれば、ゲストは「アトラクションに乗らないと損だ!」と思うのではないでしょうか。もちろん、入園券があった時代のように「ショーやパレードを見たい!」というゲストもいると思います。しかし、アトラクションが乗り放題になっているのであれば、より多く乗ったほうが得だと考えるのが普通でしょう。
昔のパークには小さなステージがたくさんありました。今は噴水になっているスモールワールド・ステージや、企業向けのパーティなどでしか使われなくなったトゥモローランドテラス・ステージでは、以前はショーが行われていたものです。
もし入園券やアトラクション券が、そのまま存続していたら…。アトラクションに乗る人は「パスポート」、ショーやパレードを見る人は「入園券」、どちらも楽しみたい人は入園券とアトラクション券をセットで使う。こういったすみ分けが行われたのかもしれません。今となっては、もう後戻りすることはできませんが…。