「ピン・トレーディング」という言葉を聞いたことがありますか?この言葉の意味を知っているとしたら、かなりのディズニー通だと思います。
実は東京以外のディズニーパークでは行われているピン・トレーディング。今回はこのピン・トレーディングについて考えていきたいと思います。
©Disney
ピン・トレーディングとは、文字通りピンバッチを交換すること。東京のパークでもショップへ行くと、たくさんのピンバッチが売られていますよね。最近ではリゾート30周年の記念ピンバッチも多く扱われています。
ピン・トレーディングにゲスト・キャストは関係ありません。お互いに納得すれば、自分のピンと相手のピンと交換します。限定のピンなど希少性の高いものは、もちろん同じだけの価値のあるピンと交換するのがマナー。お互いに納得できなければ、ピンの交換はしません。決まりはこれだけなのです。
海外のディズニーパークへ行くと、ランヤード(ピンがたくさんついたひも)を首からかけている人、服にたくさんのピンがついている人、鞄にピンがついている人など、とにかくピンを持っている人が多いのです。皆さん気さくにピンの交換をしています。
実はこのピン・トレーディング、そんなに歴史は古くありません。1999年にフロリダのウォルト・ディズニー・ワールドで始まり、翌年にカリフォルニアのディズニーランドを皮切りに、パリ・東京・香港のディズニーパークで導入されました。
さて、ここで一つの疑問が読者の方から出たと思います。「あれ?東京ではピン・トレーディングなんてやってないよ!」実は東京にもピン・トレーディングが導入されたことがあるのです。それは今から13年前の2000年11月18日。ちょうどミッキーマウスのバースデーの日です。
東京でのピン・トレーディング開始時の限定ピンバッチ。今持っている人はどれくらいいるのだろうか?©Disney
海外のパークではゲスト・キャスト双方にとって、貴重なコミュニケーションの手段になっているピン・トレーディング。実は東京では以下の3つの大きな問題が起きました。
- ピンの交換があまり行われなかった
- マニアによる過剰な収集が目立った
- 一部の心ない人間がピンの転売を行った
1については、導入当初で仕方がなかったのかもしれません。しかし、ゲストはピンをきっかけとしたコミュニケーションではなく、ピンそのものを求めました。特に限定配布や限定販売のピンがその対象となりました。
キャストはといえば、自分が持っているピンやランヤードはオリエンタルランドのもの。自分のものではありませんでした。結局は会社の備品であるため、自分から積極的にピンを交換したがらないのは当然です。もちろんキャストにとってもピンをきっかけとしたコミュニケーションが念頭になかったのかもしれません。
2についてはご存知の方もいるかもしれません。この当時、限定ピンが販売されるとなれば、パークの開園からダッシュで買い求めるというゲストが続出しました。個数が限られる場合は、一度買ってもう一度並ぶ。売り切れとなればキャストに食ってかかる。まさに阿鼻叫喚。当時キャストを務められていた方に話を聞くことができましたが、想像以上に酷かったそうです。
マナーを守らないゲストの存在もあります。特に限定ピンを持っている子供に対して、価値の釣り合わないピンとの交換を強要するようなマナー違反も目立ちました。
3についても、ネットで書かれている方がいますね。2とも関係するのですが、転売目的で大量に限定ピンを購入するゲストが多発しました。これは明らかに物々交換が原則であるピン・トレーディングのルールを破るものです。
以上のような問題もあり、東京ではピン・トレーディングが2002年2月いっぱいで廃止となり、翌3月からはパーク内でのピン交換が禁止されました。
その後、特定日などに配布される限定グッズとしてピンが配られたり、記念グッズでピンが販売されたりすることはありましたが、ランヤードなどといったピン・トレーディングに関するグッズは販売されていません。
ランドのパイレーツ・トレジャーはコレクションアイテムを取り扱っている。もちろんピンもあるのだが、ショップにはこのような注意書きが。
東京でピン・トレーディングが廃止されて、早11年。これだけ時間が経過しても、オリエンタルランドがピン・トレーディングの復活に乗り出さないのは、それだけトラウマがあるということでしょう。
特に東京の場合、海外のパークと比べてリピーター率が高く、首都圏などの近場から来るゲストが多いため、どうしてもピンの争奪戦になりやすいという環境があります。また、コミュニケーションをあまり取りたがらない日本人の民族性も関係しているような気がします。
私は、当時のピンステーション(ピンを交換したい人たちが集まる場所)の、なんとも言えない殺伐とした空気が忘れられません。東京ではやっぱりピン・トレーディングは無理なのでしょうか?海外のパークでしか楽しめないのは、やはりもったいないと思うのです。
最後に。当時のピン・トレーディングに対する思いを率直に書かれていたコラムがありましたので、ご紹介しておきます。