ディズニーが運営するホテル会員権「ディズニーバケーションクラブ」最近では、知ってる方も増えてきました。
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舞浜新聞でもこれまで、バケーションクラブについて取り上げたことがあります。読者の方からもいくつか質問をいただいたのですが、その中でやはり多かったのは「バケーションクラブは得なの?それとも損なの?」というもの。やはり大きな買い物ですので、気になりますよね。
今回はバケーションクラブのメリット・デメリット、そして本当に得なのか・損なのかについて考えていきたいと思います。
この記事では「ディズニーバケーションクラブ」について、中立的な立場から情報提供することを目的としています。会員権の勧誘・宣伝を行う目的ではありません。この記事によって生じる損失についての責任は負いかねます。
では早速バケーションクラブのメリット・デメリットについて見ていきましょう。
バケーションクラブの「メリット」
メリットは以下のものです。
- ホテル代を節約することができる。
- ホームリゾートなら11か月前から、それ以外のリゾートは7か月前から予約することができる。
- ポイントは繰り越しや前借りができる。
- ホテルだけではなくクルーズラインやディズニーのパッケージツアーにも使える。
- 海外パークではメンバー向けの割引サービスがある。
- 人生の生き甲斐になる。
バケーションクラブの宣伝文句は「ホテル代を節約できる」というもの。最初の購入代金と年間管理費をホテルの宿泊代金に充てる形になりますが、現金で払うよりも安く泊まれるとしています。
会員権を持っているホームリゾートの場合、11か月前から優先的に予約をすることができます。ゴールデンウィークやお盆、年末年始などはどうしても予約が集中しがち。ですがバケーションクラブの場合は早めに予約することができるのです。
ポイントは毎年発行されますが、繰り越しや前借りをすることができます。「今年は旅行する予定がない」という場合でも、翌年に繰り越して使うことができます。ただし、繰り越しは1年間だけになります。ポイントが足りないという場合には、翌年の分を前借りして使うこともできます。つまり3年分のポイントをまとめて使うこともできるのです。
バケーションクラブはディズニーが所有しているヴィラ*1やホテル以外にも、クルーズラインやパッケージツアー「アドベンチャー・バイ・ディズニー」でも使うことができます。また手数料などがかかりますが、ディズニー以外のホテルの宿泊にも使うことができます。
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東京ディズニーリゾートではメンバー向けの割引サービスはありません。海外のディズニーパークの場合、年間パスポートの購入やショップ、レストランの利用で割引サービスを行っているところがあります。
最後に「人生の生き甲斐」と書きました。毎年自動的にポイントが発行されますし、使わなければなくなってしまいますので「旅行に行かなくちゃ!」「今度はどこに行こうかな?」といった気持ちになりますよ。
バケーションクラブの「デメリット」
では次にデメリットについて見ていきましょう。
- 年間管理費は一定ではなく上昇し続ける。
- ホテル代しか節約できず、飛行機代・パークチケット代・食事代などは別に必要。
- ディズニーホテル独自の割引キャンペーンや大手旅行代理店のパッケージツアーでも安く宿泊することができる。
- 決められたホテルでしか使えない。
- ヴィラではタオルの交換や部屋の掃除は毎日ではない。
メンバーは「年間管理費」を支払う必要があります。これは所有するポイント数に応じて決まるのですが、毎年一定ではありません。おおよそ2%から4%ずつ上がっていく仕組みです。これは物価の上昇や管理コストの増加を見越して上がっていきます。ただ想定よりも管理コストが増えてしまった場合は、4%よりも上がる場合があります。
バケーションクラブの場合、ホテル代しか節約することができません。旅行代理店のパッケージツアーの場合、ホテル代に加えて往復の航空券とパークチケットがセットになっています。飛行機代やパークチケット代も考えなくてはいけませんね。
アメリカの場合、ディズニー直営ホテルは割引キャンペーンを行うことがあります。また旅行代理店のパッケージツアーでも、安い航空券と余ったホテルの部屋を組み合わせた格安プランを提供する場合があります。加えて、バケーションクラブの場合は決められたホテルでしかポイントを使うことができません。
バケーションクラブのヴィラの場合、客室がコンドミニアムタイプのため、タオルやシーツなどの交換、ゴミ捨て、部屋の清掃は毎日行われるわけではありません。また通常のホテルとは違って、アメニティグッズも限られています。これは管理コストを減らして、年間管理費の上昇を抑えるためです。
得なの?損なの?
メリット・デメリットについては分かっていただけたと思います。では今回の本題「バケーションクラブは得なのか、それとも損なのか」について見ていきましょう。
今回は以下を前提条件にします。
- 購入するのはハワイにある「アウラニ・ディズニー・バケーション・クラブ・ヴィラ」の会員権
- 160ポイント分を購入する
- 会員権は購入時から2061年まで有効
- 今年(2014年)に購入する(47年間有効)
- 会員権購入代金 25,600ドル(1ポイントあたり160ドル)
- 契約手数料 約363ドル
- 年間管理費(2014年) 約1,030ドル
まずはこんな計算をしてみましょう。1年間にもらえるのは160ポイントですので、このポイントがいくら分の価値かを考えてみることにします。
会員権は2014年から47年間有効ですので、購入代金と契約手数料を足したものを47年で割ってみます。
(25,600+363)÷47=約552ドル
会員権を購入すると、1年間に552ドルずつ支払っているということになります。これに年間管理費を足すと552+1,030=1,582ドルになります。つまり1年間に1,582ドルずつ払っているという計算になります。これをポイント数で割ると
1,582÷160=約9.89ドル
つまり1ポイント当たり9.89ドルの価値になります。ではこれをポイントチャートに当てはめてみましょう。2014年12月23日~28日にアウラニのデラックススタジオ(スタンダード・ビュー)に宿泊する場合、以下のようになります。
1泊24ポイント×5泊=120ポイント
160ポイント以内に収まりましたね。ではこれに先ほどの「9.89」をかけると
120×9.89=1186.8ドル(1ドル100円として118,680円)
成田ーホノルル便の場合、同じ日程で往復13万円から航空券があります。家族4人で行く場合、13万円×4人ですので52万円、これに先ほどの118,680円を足すと約64万円になります。
では旅行代理店のパッケージツアーはどうでしょうか。
「ルックJTB」の場合、同じアウラニに5泊するプランですと一人約30万円からになっています。航空券とホテル代がセットになっていますので30万円×4人で120万円となります。
先ほどの金額と比べると、バケーションクラブはかなりお得にアウラニへ行けることが分かると思います。特にバケーションクラブは「1部屋」単位の予約ですので、人数が多ければ多いほどお得になります。
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では個人手配の場合はどうでしょうか。大手予約サイト「エクスペディア」で最安値を調べると、ガーデンビューの部屋に5泊で約36万円になっています。これに飛行機代を足すと36+52=88万円になります。パッケージツアーよりは安くなりますが、それでもバケーションクラブのほうが安くなります。
舞浜でも得できるの?
一方でこんな方もいると思います。
ハワイやアメリカのディズニーパークにはあんまり行かないよ。舞浜のディズニーホテルでも使えるみたいだから、そこで使えば得できるの?
では東京ディズニーリゾートのディズニーホテルではどうでしょうか。通常、バケーションクラブのヴィラ以外のホテルに泊まる場合、ディズニー直営のホテルでも手数料が必要になります。ただしカリフォルニアと東京の場合は手数料はかかりません。
2014年12月23日~25日の2泊3日で東京ディズニーランドホテルのスーペリアルーム・スタンダードビューの部屋に宿泊したとして計算することにしましょう。
バケーションクラブの場合、ヴィラよりもホテルのほうがより多くのポイントが必要になります。今回は1泊81ポイント必要ですので、2泊で162ポイントが必要になります。ここで1年分のポイントを上回ってしまうくらいです。ではこれも先ほどの計算式に当てはめてみると
162×9.89=約1,602ドル(1ドル100円として160,200円)
となります。
公式サイトの客室料金カレンダーを見ると、この時期はトップの扱いですので、同じ部屋に泊まろうとすると1泊あたり60,700円になっています。つまり2泊で60,700×2=121,400円。
東京のディズニーホテルは1部屋あたりの料金となっており、旅行代理店やバケーションパッケージでもほぼ同じ価格設定になっています。それを考えると、バケーションクラブのほうが割高になってしまうのが分かると思います。
実はここが大きな問題点です。日本国内、特に東京ディズニーリゾート内にはバケーションクラブのヴィラはありませんので、低いポイントで宿泊することはできません。アンバサダーホテルやミラコスタも同様です。またすべての部屋のタイプでポイントが使えるわけではなく、対象の部屋が限られています。
舞浜でのホテル代の節約のためにバケーションクラブの購入を考えている方は、止めておいた方がいいと思います。
将来的にはどうなの?
「バケーションクラブが海外では得なのは分かったけど、それって買ってすぐだけじゃないの?年間管理費は上がっていくんでしょ?いつか損するようになるんじゃないの?」
では将来的にはどうなるのかを見ていくことにしましょう。
2014年のアウラニの年間管理費は施設の維持管理費や固定資産税を合わせて、1ポイント当たり6.4378ドルになっています*2。以下はオープンした2011年から今年までの年間管理費の一覧です。
- 2011年 5.7300
- 2012年 5.9607
- 2013年 6.2529
- 2014年 6.4378
2011年から2012年には4.0%、2012年から2013年には4.9%、そして2013年から2014年には2.9%それぞれ値上がりしています。アメリカはゆるやかなインフレ傾向ですので、それに合わせて年間管理費も上がっていくのです。
では今後はどうなるのでしょうか。今から10年後を考えてみたいと思います。今回は年間「2%」「4%」「6%」それぞれ同じ比率で年間管理費が上がっていったという想定で計算してみます。2024年時点ではこうなります。
- 2% 7.8476
- 4% 9.5295
- 6% 11.5291
6%はかなり極端な数字で、実際これだけのインフレ率になったら大変なのですが、今回は比較検討のために載せておきます。ではこれをもとに計算してみましょう。
年間上昇2%の場合
7.8476×160ポイント=1256ドル
先ほど「最初の購入代金を有効年数で割ると、1年間で約552ドルずつ支払ってることになる」という話をしました。ではもう一度同じ式に当てはめてみましょう。
(552+1256)÷160=11.3
2014年時点では1ポイント当たり9.89ドルの価値でしたが、2024年時点では11.3ドルに上がりました。もし必要なポイント数が同じだと仮定して、先ほどのように120ポイントを使うとすると
120×11.3=1356ドル(1ドル100円として135,600円)
10年前と比べて16,920円(約1.4%)も値上がりしてしまいました。
では4%と6%のときはどうでしょうか。
- 年間上昇4%の場合
- 9.5295×160ポイント=1525ドル
- (552+1525)÷160=13
- 120×13=1560(1ドル100円として156,000円)
- 10年前と比べて37,320円(約3.1%)値上がり
- 年間上昇6%の場合
- 11.5291×160ポイント=1845ドル
- (552+1845)÷160=15
- 120×15=1800(1ドル100円として180,000円)
- 10年前と比べて61,320円(約5.2%)値上がり
年間管理費の上昇率に比べて、宿泊金額の値上がりが緩やかなのは、最初に払った金額を均等に47年間で割っているからです。つまりインフレになればなるほど、年間管理費は値上がりしていきますが、会員権の価値は少しずつ上昇していくのです*3。
先ほどのルックJTBのパッケージツアーの場合、アウラニに5泊するためには一人30万円で4人で120万円。格安航空券の場合、家族4人の往復で約52万円ですので、実質的にホテル代は68万円となります。
バケーションクラブの年間管理費が1ポイントあたり54ドル(年間8,640ドル)になれば、ホテル代は同じぐらいになりますが、年間4%ずつ上昇し続けていっても2061年に40.67ドルになるくらいです。
では個人手配の場合はどうでしょうか。「エクスペディア」での最安値は約36万円でした。この場合は年間管理費が27ドル(年間4,320ドル)になれば、ホテル代は同じくらいになります。年間3%ずつ上昇しても2061年にやっと25.82ドル、4%ずつの上昇で2051年に27.47ドルになる計算です。4%ずつの上昇でも37年間はバケーションクラブのほうが安くなる計算です。
ただしこの想定はかなり乱暴です。今から10年後、日本経済やアメリカ経済、そして世界経済がどうなっているかなんてまったく分かりません。50年後なんてなおさらです。また、日本とアメリカの物価、原油価格、金利、果ては円・ドル相場もまったく予想できません。
さらに、おそらく10年後は今よりも必要となるポイント数が増えると思いますので、計算がかなり変わってくると思います。
「10年後なんて分からない」しかし、これまでのバケーションクラブの歴史を振り返ることはできます。ヴィラの中で最も古いのがオーランドにある「オールド・キーウエスト・リゾート」ここは1991年にオープンしました。以下のグラフはオールド・キーウエストの年間管理費の推移を表したものです。
1991年のオープン当時は1ポイント当たり2.51ドル、2014年現在は5.54ドルまで上がっています。23年間で約2.2倍になっています。しかし平均して考えてみると、1年間で約3.5%ずつの上昇なのです。バケーションクラブの契約時には「2%から4%の上昇」と説明されますので、その範囲内には収まっています。
アメリカで今後も物価の上昇が続き、日本でもそれに合わせて物価上昇が続き、円・ドル相場がよほどの円安にならない限りはバケーションクラブを使ったほうがお得だと言えると思います。そうでなければ、誰もメンバーにはなろうと思いませんもんね。
元は取れるの?
では一体、何年以上バケーションクラブの会員になっていれば元が取れるのでしょうか。バケーションクラブで宿泊した場合と、個人手配した場合とで比較してみることにしましょう。
前提条件は以下の通りです。
- 購入するのはハワイの「アウラニ・ディズニー・バケーション・クラブ・ヴィラ」の会員権
- 160ポイント分を購入する
- 会員権は購入時(2014年)から2061年まで有効
- 会員権購入代金 25,600ドル(1ポイントあたり160ドル)
- 契約手数料 約363ドル
- 毎年1回、年末年始に家族4人でアウラニに5泊する
- 為替相場は1ドル100円
- 年間管理費の上昇率は年4%
- ホテル代のインフレ率は年2%
2014年時点ではアウラニに家族4人で5泊すると、一番安くて約36万円でした。ホテル代は年2%ずつ値上がりするとして、10年後には439,000円となります。実はハワイのホテル代はアメリカ国内の物価上昇に加えて、人気の観光地ということでホテル代が年々上昇し続けているのです。
では、何年後に元が取れるのでしょうか。以下の表を見てください。
2022年の時点ではバケーションクラブに支払う金額の累計が36,864ドル(約368万円)、個人手配の累計が約351万円になっています。次の年、2023年でバケーションクラブが38,330ドル(約383万円)、個人手配が394万円になっていますので、ここで逆転する計算です。つまり2023年、2014年に購入したとして9年後に元が取れる計算になります。
では本当にバケーションクラブは得なのか?
ここまで「バケーションクラブは安くホテルに泊まれる」「年間管理費の上昇を考えても元が取れる」と書いてきました。しかし、やはり商売としてディズニーが不動産所有権を販売している以上、バケーションクラブで損をしてしまう人がいることも事実です。
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例えばあまり海外に行かないという方。先ほど「東京のディズニーホテルで使う目的でバケーションクラブを買うことは止めておいた方がいい」ということを書きました。ポイントの繰り越しは1年間のみですので、少なくとも3年に1回は海外に行かなければ元は取れません。しかもポイントを使いきれずに余らせてしまうと、ますます元を取ることは難しくなります。
また一人暮らしで一緒に旅行へ行く人がいないという方にも、あまりお勧めできません。パッケージツアーの場合は「おひとり様追加代金」というのが取られてしまいますので得なのですが、個人手配の場合はバケーションクラブよりも安くなる場合があります。
バケーションクラブの場合「一部屋単位」での予約になりますので、多くの人数のほうが得なのです。ただしバケーションクラブでは高いランクの部屋に安く泊まれるというメリットはあります。
さらに定期的にお休みが取れる方、収入が安定している方でないと厳しいかもしれません。会員権が有効である間は年間管理費を支払っていかなければならないためです。
バケーションクラブの会員権は「不動産所有権」ですので、売却することも可能です。ただヒルトンやマリオットといった、ほかのホテルグループが販売しているタイムシェアと同様に、なかなか買い手が見つからないというのが現状のようです。もし売れない場合はディズニーが直接仲介もしてくれますが、買った時よりも価格が大きく下がる可能性が高いでしょう。
大きな買い物である「ディズニーバケーションクラブ」じっくり検討したうえで、購入するかしないかを決めていただきたいと思います。
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