東京ディズニーリゾートのショップでは、様々なお菓子が売られています。皆さんも、親戚や友人、職場の同僚へ買ったことがあるのではないでしょうか。
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今回は、知っているようで知らない、東京ディズニーリゾートで売られているお菓子の「製造元」について、取り上げてみたいと思います。
どこの会社が作っているか、分からなかった?
東京ディズニーランドの開園当時、売られているお菓子には、製造元のメーカー名がきちんと書かれていました。パッケージの裏を見れば「このお菓子は、ここが作っているんだな」ということが、すぐに分かったのです。
1998年頃のチョコレートクランチのパッケージ。「製造者」には、菓子メーカーの千鳥屋の名前が明記されている。
しかし、その後、お菓子には販売者であるオリエンタルランドの名前だけで、製造元の名前は書かれなくなってしまいました。
これは、商品に関する問い合わせを、オリエンタルランドに一元化するためだったと思われます。例えば、商品に異物が入っていた、味が変だったなどの問題が起きたとします。そういったときに製造元を書いていると、オリエンタルランドではなく、メーカーに直接、連絡や苦情が行く可能性がありました。
オリエンタルランドとしては、パークで販売している商品である以上、もし何かあれば責任を問われます。ブランドイメージにも、傷がついてしまうかもしれません。最悪の場合、商品の自主回収を決断しなくてはいけないこともあります。そういったときに、商品に関する情報がメーカーへ行ってしまうと、オリエンタルランドは知ることができないのです。
また、商品に関する要望なども、メーカーに行ってしまう可能性がありました。商品に対するゲストの目は厳しいので、そういった情報を一元化するためにも、メーカー名やメーカーの問い合わせ先を伏せていたのだと思われます。
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これは、オリエンタルランドだけではなく、 プライベート・ブランド(PB)商品を販売している、流通大手にも当てはまります。セブン&アイグループのように、メーカー名を明記している企業がある一方で、イオンは一切書かれていません。
PB商品は自社ブランドの商品ですので、もし品質に問題があれば、メーカーだけではなく、販売している小売店の責任にもなります。だからこそ、メーカー名は明記せずに、問い合わせ先を自社に一元化しているのです。
もちろん、メーカー側の都合もあります。大手メーカーとしては、一定数量を買い取ってくれるPB商品は、利益が出やすく魅力的です。しかし、PB商品がそのメーカーのものだと分かってしまうと、自分たちの商品(ナショナル・ブランド)が売れなくなってしまう、という危険性もあります。メーカー名を出してほしくないという企業があるからこそ、あえて伏せているところもあるのです。
プレジデント・オンラインの記事*1より引用。流通大手のセブン&アイはPB商品にメーカーを明記する一方で、イオンは自社名しか表記していない。
謎のアルファベットと数字
メーカー名が明記されなくなった、東京ディズニーリゾートのお菓子。裏側のパッケージをよく見ると、このようになっていました。
もちろん、どこを探してみても、メーカーの名前は見当たりません。しかし、よく見ると、販売者の「株式会社オリエンタルランド」と書かれている横に、アルファベット3文字と数字があります。実は、これがメーカーを表すコードだったのです。
この商品には「JUH01」と書かれています。「JUH」は洋菓子メーカーのユーハイムを表しています。実はユーハイムの菓子のパッケージには、必ずこんな表記がされていました。
これはユーハイムが、東京ディズニーリゾートのオフィシャルスポンサーだったからでしょう。製造元はユーハイムと明記されていないのですが、これを読めば誰でも「このお菓子はユーハイムが作っているのか」ということが分かりますからね。ユーハイムにとっても、広告宣伝効果があります。
さて、ユーハイムのお菓子は、すぐに分かるようになっていました。しかし、それ以外は、アルファベットと数字のコードしか書かれていませんでした。以下は、当時使われていた、メーカーを表す3レターコードの一覧表です。
菓子メーカー3レターコード一覧
- (レターコード 製造元 主な製品)
- AZA 東あられ本舗 あられ・おかき・せんべい
- AZK アジカル 柿の種
- BJU 美十(旧おたべ) 和菓子・洋菓子
- BRB ブルボン 洋菓子
- CBR ちぼり 洋菓子・クッキー
- CHD 千鳥屋 和菓子・洋菓子
- CHS 千鳥屋 和菓子・洋菓子
- CRB コロンバン 洋菓子
- EIT 榮太樓總本鋪 和菓子
- FRC フランセ 洋菓子
- GON ゴンチャロフ製菓 洋菓子
- JUH ユーハイム 洋菓子
- KFG 神戸風月堂 洋菓子
- KJK 九十九島グループ 洋菓子
- KMD 亀田製菓 あられ・おかき・せんべい
- KYM 亀屋万年堂 和菓子・洋菓子
- MIJ 明治 洋菓子・チョコレート
- MKZ 松風屋 和菓子・洋菓子
- MRN 森永製菓 洋菓子
- MRY メリーチョコレート チョコレート
- NRC 日本緑茶センター お茶
- NSK ネスレ日本 飲料・洋菓子
- NWU ニュートラルコーポレーション (ライセンス商品の企画・販売)
- OTB おたべ 和菓子→現在は「美十」
- QBG クインビーガーデン はちみつ・メープルシロップ
- RMN レーマン チョコレート
- SSS 三州製菓・三州総本舗 あられ・おかき・せんべい
- TKY 高山 (菓子商社)
- TON 東洋ナッツ食品 ナッツ・ドライフルーツ
- XNT 日東紅茶(三井農林) お茶
- YKM ヨックモック 洋菓子
- YUR 有楽製菓 洋菓子
こうやって見てみると、かなりの大手メーカーが製造していることが分かります。例えばパークのスポンサーである明治や、以前スポンサーだった森永製菓などはその代表です。有楽製菓は「ブラックサンダー」の製造元として有名ですよね。
ちなみに、お菓子によっては、Xで始まるコードが書かれていることもありました。
オリエンタルランドの横のコードを見ると「XCH01」と書かれています。Xで始まるコードの場合、パッケージの別の場所にメーカー名が書かれていました。
上の写真のパッケージの場合、XCH01以外に「MIJ」と書かれているのが分かります。これが本当のメーカー名です。つまり、この商品は明治の工場で作られているのです。ちなみに、Xで始まるコードは、メーカー名ではなく商品名や商品の種類を表しています。この場合「XCH」は、チョコレートクランチを表しています。
今はメーカー名が分かるように!
写真で見てきたように、以前は3レターコードを使って製造元が伏せられていました。しかし、その後、再びパッケージにメーカー名が明記されるようになっています。
「鶴乃子」が有名な石村萬盛堂は、福岡のお菓子メーカーとして知られている。
チョコレートクランチのパッケージにも、製造元が明記されている。
どうして、オリエンタルランドは、これまでの製造元を伏せる方針から、明記することに切り替えたのでしょうか。実は、これには2015年4月に施行された「食品表示法」という法律が、深く関係しているのです。
これまで、食品表示に関する法律は「食品衛生法」「日本農林規格(JAS)法」「健康増進法」の3つがありました。複雑な規定を整理するために作られたのが、この食品表示法だったのです。
食品表示法の施行に伴い、2016年4月から、1つの商品を単独のメーカーで製造している場合は、パッケージにその企業名と所在地を明記しなくてはいけなくなりました*2。ただし、移行期間として5年間が猶予されていますので、2020年までは旧表示でも問題ありません。
しかし、オリエンタルランドでは、食品表示法の規定に合わせて、販売するすべての菓子で、製造元を明記する方針に切り替えています。また、流通大手のイオンも、法律に合わせて、自社PB商品のメーカー名を検索できるウェブサイトを立ち上げています。
東京ディズニーリゾートのお菓子のパッケージも、時代の流れに合わせて、変化しています。お菓子の種類や、見た目のかわいさも大切ですが、買うときには、裏面のメーカー名もチェックしてみてくださいね。
東京ディズニーリゾートのお菓子に関しての問い合わせは、商品ゲストサービス(047-381-3499・9:00~18:00・年中無休)までお願いします。
参考資料
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消費者庁「早分かり食品表示ガイド」 http://www.caa.go.jp/foods/pdf/jas_1606_all.pdf
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消費者庁食品表示企画課「新しい食品表示制度について」 http://www.caa.go.jp/foods/pdf/150511_shiryou2.pdf
※この記事は2014年4月に公開した記事を、新しい情報を加えて再構成したものです。
*1:メーカー号泣!「PB商品」という怪物の正体 イオンでは5年で売り上げ2倍!ウナギ、ランドセルから家電まで:PRESIDENT Online
*2:もし、複数のメーカーで製造している場合は、記号で表記して、消費者が問い合わせるための連絡先やウェブサイトを、パッケージに明記すれば良いとされています。