舞浜新聞

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ドリームライツのリニューアルから、舞浜の未来を考える

2015年7月10日、東京ディズニーランドの夜のパレード「エレクトリカルパレード・ドリームライツ」のフロートがリニューアルされました*1

 

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©Disney

 

今回は新しくなった夜のパレードから、東京ディズニーリゾートの将来について、舞浜新聞独自の視点で考えてみたいと思います。

 

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©Disney

 

何が新しくなったの?

今回のリニューアルでは、以下のような変更がありました。

 

  • 「オープニング」ブルーフェアリー、光の騎士 リニューアル
  • 「ピーターパン」ピーターパンの海賊船 リニューアル
  • 「塔の上のラプンツェル」ラプンツェル 新規導入
  • 「スモールワールド」ショーボート、エアシップ、ザ・ムーン、ザ・サン リニューアル
  • 「ふしぎの国のアリス」レディバグ、Ms.スネイル、Mr.スネイル 廃止
  • 「プー」プーさんと森の仲間たち 廃止

 

新しく導入されたのは、今回のリニューアルの目玉でもある『塔の上のラプンツェル』のフロートですね。映画の世界観がそのままフロートに再現されていて、私も思わず息をのむほどでした。ラプンツェルは若い女性を中心に、幅広い人気がありますので、新規フロートとして導入されるのも納得です。

 

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新規導入された「ラプンツェル」のフロート ©Disney

 

今回のリニューアルでは、これまでの公演で登場していた7つのフロートがリニューアルされました。全体的に新しい技術やLEDを使って、より華やかなフロートに仕上がっている印象があります。

 

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パレードの先頭を飾る「ブルーフェアリー」©Disney

 

また、キャラクター近くの照明が明るくなり、遠くからでもキャラクターの表情がよく見えるようになりました。これはおそらく、より多くのゲストが見やすくするためでしょう。

 

また最近では、パレードの写真をスマートフォンやデジタルカメラで撮影する人も多くなりました。より写真を撮りやすくするために、照明を明るくしたのだと思います。

 

パレードの長さが短くなってる?

今回のリニューアルで、ドリームライツはフロート台数23台*2、出演者数は約80名のナイトパレードになりました。

 

実はあまり知られていないのですが、ドリームライツの公演が始まった2001年当時と比べると、パレードのフロート台数、出演者数はともに減っているのです。

 

以下はこれまでのドリームライツのフロート台数*3です。

 

  • 2001年6月~2007年3月 30台
  • 2007年3月~2011年5月*4 29台
  • 2011年7月~2013年11月 26台
  • 2013年11月~2015年7月 26台*5
  • 2015年7月~ 23台

 

「ディズニー・ファンティリュージョン!」の後継パレードとして始まったドリームライツ。2001年の公演開始当時は、フロート台数30台、出演者数は約100名でした。それと比べると、リニューアルを重ねるごとにフロートの台数が減っているのです。

 

これについては、様々な見方ができます。

 

一つ目はやはり「経費削減」でしょうか。

 

ナイトパレードは天候に左右されますし、出演者数が多い豪華なプログラムですと、そのぶんだけ人件費や電気代などのコストが大きくかかってしまいます。東京ディズニーリゾートではここ数年、エンターテイメント・ショー製作費の削減が続いています。ドリームライツのフロートの数や出演者数が減っているのも、この経費削減の一環だとする見方が一番簡単でしょう。

 

またフロート台数を少なくして、公演時間を短くすれば、パレードルートでゲストの誘導を行う、ゲストコントロール・キャストの人員も減らすことができますからね。

 

二つ目はパーク内の混雑についてです。昼のパレードとは違い、夜のパレードはスターライトやアフター6といった、夜間チケットで鑑賞するゲストが多くなります。またパーク内は暗くなりますので、ゲストは移動することが難しくなります。

 

東京ディズニーランドの開園当時、想定された入園者数は年間1,000万人でした。今ではランド・シー合わせて、年間3,000万人のゲストが訪れています。単純計算でランドには、当初の設計よりも1.5倍のゲストが入っていることになります。

 

フロート台数が多くなると、そのぶんだけ公演時間は長くなり、パーク内の人の流れを止めてしまいます。パレードルートには「クロスオーバー」といって、横断できる道が設けられていますが、それでも多くのゲストの移動が困難になるのは事実です。

 

フロート台数が少なくなっているのは、パーク内の人の流れをなるべく止めないように配慮している、という見方ができるのです。

 

三つ目はパーク内の混雑とも関係しているのですが、万が一のときの避難誘導についてです。

 

もしナイトパレードの公演時に、大きな揺れがパークを襲ったら、どうなるでしょうか。ゲストの避難誘導を考えると、フロートは安全に素早く動かさなくてはいけません。フロートの台数が多くなると、そのぶんだけ移動に時間がかかってしまいます。万が一のときに、素早くパレードを撤収させるために、フロートの台数を絞っているのではないか。そんな見方もできるのです。

 

ちなみに、2013年11月に「ピートとドラゴン」のフロートだけがリニューアルされる、といったことがありました。以前はピートがエリオット(ドラゴン)の首に乗っていたのですが、新しいフロートでは、ピートはエリオットに抱きかかえられるようになっています。おそらくこれは、万が一の場合に、安全にパフォーマーを避難させるために改善されたのだと思われます。

 

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「ピートとドラゴン」のフロート ©Disney

 

最後の四つ目はゲストの集中力でしょうか。これについては、あくまでも舞浜新聞の個人的見解ですが、ゲストが以前よりも長いコンテンツを望んでいないのではないか、そんな気がするのです。

 

豪華なプログラムは、それだけで圧倒されるほどの感動があります。しかし、公演時間が長くなればなるほど、ゲストの集中力は切れやすくなります。最近はインターネットの台頭で、短くて面白いコンテンツが注目されがちです。テレビでも視聴者を飽きさせないように、短い尺で内容をコロコロ変えています。

 

ドリームライツのフロート台数が削られているのは、ゲストに「間延びしている」「なんだか退屈」といった感覚を持たれないようにするためではないでしょうか。

 

今後どのフロートがリニューアルされるの?

さて、今回のリニューアルでは、新規導入が1台、リニューアルが7台、廃止が4台となりました。今後ドリームライツのリニューアルが行われるとすれば、どのフロートが対象になるのでしょうか。

 

2001年の公演開始当時からあるフロートは、以下の通りです。

 

  • ミッキーのドリームライツ・トレイン
  • アリスとチシャネコ
  • 白雪姫
  • 時計台
  • 舞踏会
  • スポンサーフロート

 

ミッキーのドリームライツ・トレインとスポンサーフロートについては、パレードを象徴するものですので、おそらくリニューアルの可能性は低いと思われます。もしリニューアルされるとすれば、かなり大がかりなテコ入れになるのではないでしょうか。

 

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ドリームライツのシンボルでもある「ミッキーのドリームライツ・トレイン」©Disney

 

アリスとチシャネコや白雪姫、シンデレラの時計台や舞踏会は、おそらくファンタジーランドの再開発と大きく関わってくると思われます。

 

特にアリスはエリアの建設も正式に発表されていますし、幅広い層に人気があるキャラクターです。今回のリニューアルで導入されたラプンツェルのフロートのように、リニューアルの目玉として新設される可能性は高いでしょう。

 

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ドリームライツの初演からある「アリスとチシャネコ」のフロート ©Disney

 

また、新しくフロートを導入するとすれば、『美女と野獣』に代表されるプリンセスの要素の強化でしょうか。「美女と野獣」のフロートについては、2011年7月にリニューアルで廃止されています。アリスと同様に、美女と野獣も新エリアの建設が発表されていますので、このあたりも今後のリニューアルのポイントになるのではないでしょうか。

 

新しいナイトパレード導入はないの?

ここまで読んだ方には、ある一つの疑問が頭に浮かぶと思います。それは「ドリームライツに代わる、新しいナイトパレードは導入されないの?」ではないでしょうか。

 

香港ディズニーランドでは、2014年10月から新しいナイトパレード「ディズニー・ペイント・ザ・ナイト」が始まっています。

 

 

今年5月からは、開園60周年を迎えたカリフォルニアのディズニーランドでも、同名のパレードが公演されています。

 

 

ペイント・ザ・ナイトはアップテンポな曲に、LEDを多用した明るいフロートが目を引きます。ドリームライツがエレクトリカルパレードの伝統を受け継ぎ、バロック・ホウダウンをテーマソングにした、落ち着いたパレードになっているのとは対照的です。

 

 

ドリームライツは2001年に公演が始まり、今年で15年目に入りました。先代のエレクトリカルパレードが約10年、ファンティリュージョンが約6年で、後継パレードにバトンタッチしていることを考えると、かなりのロングランのように感じます。

 

今回のリニューアルで、2001年の公演開始当時からそのままのフロートは6台となりました。これまでのリニューアルでかなりのフロートが入れ替わっていますので、今後数年間は新ナイトパレードの導入の可能性は低いと言えるでしょう。

 

リニューアルの間隔が同じだとすれば、今度は4年後、2019年春~夏に再びフロートのリニューアルが行われる可能性はあります。これについては、今後ランドで予定されているファンタジーランドの再開発や、シーの新テーマポートの建設とも関わってくるのではないでしょうか。

 

パークへの大型投資が落ち着き、夜の集客の目玉として、ドリームライツに代わる新しいナイトパレードを導入する。その可能性は十分あります。ただ、現在のパークを考えると、ワンス・アポン・ア・タイムの公演に伴って、アフター6パスポートが値上げされたように、夜の集客に苦戦しているとは思えません。

 

もし今後、夜の集客を強化したい、宿泊需要を掘り起こしたい、という流れになれば、新ナイトパレードの導入も選択肢として考えられますが、これについては状況が流動的ですね。

 

ちなみに、2016年に開園予定の上海ディズニーランドでは、キャッスル・プロジェクションとして「イグナイト・ザ・ドリーム」が公演される予定です。しかし、パレードは昼の「ミッキーのストーリーブック・エクスプレス」のみで、夜のパレードはありません。

 

ディズニーやオリエンタルランド、スポンサーである日本ユニシスの思惑も絡む問題だと思いますが、上海でのナイトパレード導入の前に、東京で新技術を多用したナイトパレードが導入される可能性はあるでしょう。特に東京の場合は、ディズニーではなく、オリエンタルランドと日本ユニシスが資金を出します。ディズニーが上海の実験場として、東京のパークを使う可能性は、低いですが残っています。 

 

東京ディズニーランドの夜はどうなるの?

今回リニューアルされたドリームライツ。投資金額は約20億円と発表されています。2001年のドリームライツの公演開始当時、投資金額は約30億円とされていますから、2/3の金額がリニューアルに使われたことになります。

 

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©Disney

 

もちろん、2001年当時と比べて、全体の物価や資材価格は上がっていますので、単純に比較はできません。しかし、オリエンタルランドがそれだけの金額をかけてリニューアルをするということは、ドリームライツのロングランを今後も考えている証拠のような気もします。

 

ディズニーの夜のパレードと聞くと、どうしてもバロック・ホウダウンがテーマソングになった、エレクトリカルパレードを想像する方は多いのではないでしょうか。

 

 

ファンティリュージョンが、ファンタズミックのパレード版として、ショーモードを中心としたパレードになっていたことを考えると、今のドリームライツに「ナイトパレードらしさ」を感じる方も多いかもしれません。

 

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©Disney

 

果たして、東京ディズニーランドの夜はどうなるのか。ドリームライツがロングラン公演を続けるのか、それとも新技術を多用した、まったく新しいナイトパレードが公演されるのか…。ちょっと気になりますね。

 

参考資料

*1:予定では7月9日に公演が始まる予定でしたが、8日のメディア向けプレビューに続いて、雨のため中止となりました。

*2:パレードのクロージングであるスポンサーフロートも含んでいます。

*3:「光の騎士」は1台として数えています。

*4:東日本大震災による臨時休園の期間を含みます。

*5:「ピートとドラゴン」フロートのリニューアルのみ。