舞浜新聞

東京ディズニーリゾートなどのディズニーパークをはじめとして、ディズニーに関する様々な情報をお伝えします。



小説「東京ディズニーリゾートが、もし『ディズニー直営』だったら?」

このお話は「もし東京ディズニーリゾートがディズニーの直営だったら」という仮想をもとに作られています。

 

物語に出てくる人物・会社・組織・施設などは現実と一切関係ありませんので、ご注意ください。

 

さて、取材に向かおう

3月のまだ肌寒い日の朝、私とカメラマンの上西は舞浜へと向かっていた。さすがに徹夜明けはきつい。しかし、今日は我慢しなければ。それはもちろん、待ちに待った「東京ディズニーリゾート」の取材がめぐってきたからだ。同期で気の置けない上西がパートナー、というのも私にとって気が楽だった。

 

舞浜駅に降りるのは何年ぶりだろう。昔に比べると、駅も大きくなり、ミッキーの形をした窓やキャラクターの広告が目を引く。JRの駅なのだが、運営はディズニーが直接行っているのだそうだ*1。学生の頃は毎月のように来てたっけ。

 

舞浜は「日本のアメリカ」

駅の改札を出て、右へ行くとディズニーランド、左へ行くとディズニー・ヴィレッジがある。ディズニー・ヴィレッジは言わばショッピングモールのようなものだ。ディズニーランドへ行かなくても、ここで一日ショッピングを楽しめたりする。私の友人もよく買い物に来ている。

 

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ちなみに、その友人は浦安に住んでいて、ディズニーパークの年間パスポートを持っている。千葉県民だと年間パスが割引で買えるらしく、分割払いもできるそうだ。平日限定や夜間限定のパスポートもあって、私の周りでも持っている人は多い。

 

ディズニー・ヴィレッジの中には「ウォルト・ディズニー・シアター」という劇場もある。ここはシルク・ドゥ・ソレイユやディズニー・オン・クラシック、ディズニー・オン・アイス、ディズニー・ライブ!、劇団四季のディズニーミュージカルなど、とにかくディズニーのプログラムが多い。

 

来年からはディズニーキャラクターの新しいショーをやるらしい。それも取材してみたいな。さて、今日はまず用事のあるランドへ向かうことにしよう。

 

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歩道橋を歩いていくと、右手に大きなホテルが見えてくる。新しくできたホテルだそうだ。といっても、部屋の大部分は所有権を小分けにして販売している「タイムシェア」のリゾートらしい。

 

そういえばこの間、ウチの新聞に「日本初のディズニーバケーションクラブのリゾート、即日完売」と書かれていたっけ。ビクトリア朝の大きなホテルはフロリダにあるホテルをモデルに作ったとも書かれていた。

 

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ディズニーランドに到着! 

いよいよディズニーランドに入場。簡単な手荷物検査を受ける。これは前と一緒だな。違ったのがゲートをくぐるとき、指をタッチするように言われたこと。不正入場を防ぐためだと従業員は言っていた。私と上西はプレス用の招待チケットだったのだが、それでも指紋が必要と言われてしまった。なんだか犯罪者になった気分だ。

 

ゲートをくぐると、目の前にはディズニーランド鉄道の駅*2。懐かしい。久しぶりに来たのに、なんだかそんな気がしない。横にあるトンネルをくぐると、そこは「メインストリートUSA*3」。アメリカの古き良き町並みが再現されている。

 

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まずは頼まれていたディズニードルを買わなくては。ディズニー好きの友人から「今月から新しいデザインが出たから!」と、行くついでに買い物を頼まれていたのだ。ディズニードルとは、ディズニーが発行している商品券のこと。東京ディズニーリゾートだけではなく、日本国内のディズニーストアでも使える*4

 

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「少し休んでる」と言う上西を置いて、私は足早にシティホールへと向かった。スタッフに聞くと、100円からあると言われたので、とりあえず全種類を1枚ずつ購入することにした。最近ではチャージができる「ディズニーギフトカード」のほうがディズニードルよりも利用者が多いそうだ。確かに支払いは楽そうである。

 

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私は時計を見た。まだ約束の時間まで余裕がある。久しぶりに「メインストリート・シネマ」へ行くことにした。ここへ来ると、なんだか落ち着くから不思議だ。建物自体はそんなに広くなく、ただミッキーマウスの短編映画を見られるだけなのだが、なんだかアメリカらしくて気に入っている。友人には「変」と言われてしまうのだが…。

 

いよいよ約束の時間… 

約束の時間が迫ってきた。私は上西と合流して最近オープンしたという、スターバックスが運営するカフェへと向かった。カフェに入り、あたりを見回す。その人は窓際の席に座って、コーヒーを飲みながら外を眺めていた。

 

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「こんにちは。川崎さんですか?」私が声をかけると、彼は立ち上がって「産経新聞の立花さんですか?」と笑顔で答えた。この人こそ、ウォルト・ディズニー・カンパニー・ジャパンで開園以来、パークの運営に携わっている川崎政知さんである。今日は川崎さんへの取材とインタビューが主な任務となる。

 

ミッキーに会うの? 

いきなりだが、川崎さんの案内でミッキーの家に向かうことになった。「ミッキーにはもう話をしてあるからね」と笑顔で語る川崎さん。私たちはしぶしぶついていくことに。実はこの私、着ぐるみは昔からどうも苦手なんだよね…。

 

やはり従業員たちも川崎さんの顔を知っているようで、目を合わせれば挨拶やお辞儀をしてくる。ただ、アメリカの企業らしく、向こうから積極的にサービスしてくるという感じではない。むしろ受け身と言える。他人に干渉しすぎず、かといって必要最低限のサービスは提供する。アメリカ的と言えばアメリカ的かもしれない。

 

ミッキーの部屋に通された私は、思わず声を上げてしまった。なんと、ミッキーが喋っているではないか!さすがにこれには私も驚いてしまった。その隣で川崎さんは微笑んでいた。ミッキーとは簡単にあいさつを済ませ、最近覚えたというマジックの腕前を見せてもらった。最後は写真撮影。上西の手にも力が入る。上西からのオーダーにもミッキーは気さくに応じていた。これって現実なのかな?

 

 

川崎さんの案内で、いくつかのアトラクションも回った。中でも彼が気に入っているという「ミート・ザ・ワールド」は、私も子供の頃に何度か来たことがある。アメリカらしいディズニーランドの中で、どうも日本を感じさせるアトラクションで不思議だった。

 

「文化を伝える、こういうアトラクションを大切にしていきたいんだよ」

 

静かに語る川崎さんの表情からは、ディズニーランドを運営する気構えを感じさせてくれた。

 

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そういえば昔「ミート・ザ・ワールド」にはスポンサーが付いていたなあ…。どこの会社だったか思い出せない。それにしても、ディズニーランドで商品名や企業名を見かけることはほとんどない。コカ・コーラやコダックのように、本当にごくわずかのアトラクションやレストランだけだ*5

 

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「お土産いっぱい」は昔の話 

途中ショップにも立ち寄った。昔と比べるとグッズ数はかなり増えているそうである。最近ではディズニーストアのウェブサイトで買えたり、東京駅・羽田空港・成田空港に直営ショップができたりしたこともあって、パークで買う人はあまり多くないらしい。最近は東京で企画した商品を販売することも多くなってきたと聞かせてくれた。

 

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ショップのレジには「ディズニービザカード」のロゴマークが目立つように貼られている。それ以外にも、年間パスポート保有者やディズニーバケーションクラブの会員、公式ファンクラブD23のメンバー向けの割引サービスがあることを伝えるステッカーも貼られている。ここまで割引が充実していれば、現実に引き戻される気もするが…。

 

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ディズニーランドの隣には… 

ディズニーランドもそこそこに、私たちはディズニーランドの隣にある「ウォルト・ディズニー・スタジオ・パーク」へ向かうことになった*6。私がもらった招待チケットは「パークホッパー」がオプションについているらしく、一日に2つのパークへ行けるそうだ。無料のモノレール*7で行けるのもありがたい。途中、モノレールはホテル近くの駅に止まった。それにしても、舞浜地区にあるホテルすべてがディズニー直営、というのはすごい*8。しかも、どのホテルも利益を上げているから不思議だ。

 

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川崎さんによると、大阪のユニバーサル・スタジオの影響もあって、スタジオパークは苦戦しているそうだ。ただ、少しずつエリア拡張も進めているそうで、今後ますます期待できると話してくれた。5年後、10年後が楽しみと言えるかもしれない。

 

夕闇が迫り、私たちは「ファンタズミック!」の会場へと案内された。これは2年前から始まった屋外ショーで、スタジオパークの目玉となっている。宣伝ポスターには「これを見なきゃ帰れない」というキャッチコピーも使われたほどだ。

 

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少し小さめの野球場ほどだろうか、目の前には巨大な会場が広がっていた。川崎さんの案内で私たちは中央の見やすい席へと向かった。後から聞いたのだが、どうもそこはVIP専用の席だったらしい。

 

ショーの開演時間が迫ると、客たちはおもむろに帽子をかぶり始めた。「どうしてだろう?」と不思議に思っていると、なんと帽子の耳が七色に光っているではないか。しかもショーが始まると、光の色が一斉に変わり始めて、私はすっかり魔法の世界に連れてこられたような、そんな気持ちになってしまった。

 

 

「ファンタズミック!」が終わると、ゲートへ向かうゲストの流れができ始めていた。時計を見ると、もう閉園の午後10時。「そろそろ閉園ですので…」と取材を切り上げようとする私たちに、川崎さんは「今日はエクストラ・マジックアワーだから、深夜0時までいられるんですよ」と教えてくれた。ホテルの宿泊者など一部の客は朝早く入れたり、夜遅くまでいられたりできるそうである。なんとも便利なサービスだ*9

 

いよいよ取材も佳境 

時間も遅かったため、私たち3人はレストランに向かった。ここで最後に川崎さんへの簡単なインタビューを行うことにした。川崎さんからは10年後、20年後の東京ディズニーリゾートについて、様々な思いを聞くことができた。特に印象深かったのが「スペシャルイベントに力を入れたい」というコメント。

 

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今でも期間限定のショーやパレード、ハロウィーンとクリスマスには夜間の貸し切りプログラムなども行っているが、これからはそれを充実させていきたい、とのことだった。確かにリピーター獲得にはちょうどいいかもしれない。

 

私と上西は日付が変わった舞浜を、2人で歩いていた。海からの冷たい風が身に染みる。さて、明日からは今日の取材を連載記事にまとめる作業が始まる。またあのゴリラに怒鳴られるかと思うと気がめいるが、川崎さんのおかげでいい記事が書けそうだ。疲れているはずなのに、それを感じないのはディズニー・マジックなんだろうな。

 

この物語はフィクションです!

もう一度繰り返しますが、このお話は「もし東京ディズニーリゾートがディズニーの直営だったら」という仮想をもとに作られています。物語に出てくる人物・会社・組織・施設などは現実と一切関係ありませんので、ご注意ください。実際に運営会社の重役にインタビューする場合は、広報部からも誰か来ますからね。

 

ただし、カリフォルニアやフロリダ、パリ、香港のディズニーパークでの実例をもとに書いていますので、まったくの空想・妄想というわけではありません。特にパリは東京のあとに造られた「直営では初の海外パーク」ですので、もし東京が直営だった場合、パリと似たようなものが作られた可能性は十分高いと思われます。

 

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苦戦が続くディズニーランドパリ。ここがもしフランチャイズで運営されていたら、歴史は変わっていたかもしれない。©Disney

 

日本の法律によって、東京では海外のパークと比べて変わってしまった点がいくつかあります。今回のお話はあくまでも「フィクション」ですので、細かい点は無視しました。ただ、脚注は適時入れておきましたので、お読みください。

*1:実際の舞浜駅の管理はJR東日本が行っていますが、駅員の制服や発車メロディは独自のものを使っています。駅舎の基本デザインもオリエンタルランドと共同で行っています。

*2:東京ディズニーランドにカリフォルニアのような周遊鉄道がないのは、法律のためです。1983年のパーク開園当時、2つ以上駅がある鉄道路線は法律によって運賃や時刻表などの届け出が必要でした。そのため建設を断念した経緯があります。

*3:東京がほかのディズニーパークと違って、屋根付きの「ワールドバザール」になっているのは、梅雨や台風などの雨の多い日本の気候を考えて造られたからだと言われています。

*4:実際の東京ディズニーリゾートには商品券として「ギフトカード」がありますが、500円券と1000円券のみとなっています。パークやディズニーホテルでも使えますが、ディズニーストアでは使えません。

*5:実際の東京ディズニーリゾートの場合、「参加企業」と呼ばれるオフィシャルスポンサーが多数ついており、パークの中でも企業名をよく見かけます。しかし、直営のパークではほとんど企業のロゴマークを見かけることはありません。

*6:実際にディズニーは東京に第2パークとして、映画スタジオのパークを作ろうと計画していました。しかし、オリエンタルランドとの交渉の末、東京ディズニーシーを建設することに決まったという経緯があります。

*7:ディズニーリゾートラインは有料ですが、これは国土交通省から無料化の許可が下りなかったためです。当初はカリフォルニアやフロリダと同様に、無料にする予定でした。

*8:パリのディズニーランド周辺には7つのディズニー直営ホテルがあります。

*9:実際の東京ディズニーリゾートでは法律や条例によって、午後10時以降の営業は難しいと思われます。