舞浜新聞

東京ディズニーリゾートなどのディズニーパークをはじめとして、ディズニーに関する様々な情報をお伝えします。



毎日新聞「ディズニースカイ」報道から、東京ディズニーリゾートの未来を考える

2018年2月4日(日)の毎日新聞朝刊に、ある記事が掲載されました。

 

 

それは、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドが、パークに隣接する平面駐車場に、東京ディズニーランド、東京ディズニーシーに次ぐ、新しいテーマパークを建設することで検討に入った、というものです。

 

この報道を受けて、オリエンタルランドからは「当社として発表したものではない」というプレスリリースが出されています。今回は、毎日新聞の報道から、東京ディズニーリゾートの未来について、考えてみたいと思います。

 

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©Disney

 

どんな内容なの?

毎日新聞の朝刊では、以下のように報道されています。

 

  • 第3パークのテーマは「空」
  • 空や宇宙をテーマにした、アトラクションやエリアの建設を検討
  • 宇宙旅行やジェット機での飛行を疑似体験できるアトラクションなども
  • 名称は「ディズニースカイ」とする案も
  • 2019年度着工→2022年度の開業*1
  • シニア層に向けて、動く歩道なども整備
  • 紙のチケットではなく、スマートフォンを使った電子チケットの導入も
  • 園内にセンサーを設置し、ビッグデータを収集。混雑緩和を図る
  • 新パークの詳細は、2018年4月下旬~5月上旬の発表を目指す

 

建設・開業時期や、新しいパークの中身などについて、かなり詳細に報道されています。ただし、紙面では「検討に入った」「案が浮上」「目指す」という表現も目立ちますので、信ぴょう性に関しては、少し疑問が残ります。

 

どうして、このタイミングで?

個人的にまず引っかかったのは、2月上旬、しかも日曜日の朝刊で、このような報道が出たことでした。

 

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©Disney

 

オリエンタルランドからのリーク記事といえば、日本経済新聞に掲載されるのが、これまでの流れでした。このような報道の形態を、企業間では「日経ファースト」とも呼んでいます。日経は多くの企業幹部や業界人が読んでいますので、その紙面に情報が載るというのは、ある意味でステータスなのです。

 

 

日経が企業のスクープ情報を、他社に先駆けて報道するのは、あまり珍しいことではありません。ただ、今回は日経ではなく、毎日新聞です。しかも、日曜日の朝刊でした。本来、リーク記事を出すのは、平日の朝刊が普通です。株式市場への影響を見極めるため、そして広報担当者から「当社として発表したものではない」という、プレスリリースを出す必要があるからです。

 

今回の新聞報道に対しても、オリエンタルランドから以下のリリースが出ています。

 

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http://www.olc.co.jp/ja/news/news_olc/20180204_01/main/0/link/20180204_01.pdfより引用)

 

日曜日に広報担当者を出勤させるのは、企業としても嫌がるはずです。このあたりも腑に落ちません。しかし、タイミングとしては、今週末の2月10日~12日に、ディズニー公式のファンイベント「D23 Expo Japan」の開催を控えています。オリエンタルランドが何らかの意図をもって、毎日新聞に情報を提供した可能性はあります。

 

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アメリカ国外では唯一、日本で行われる「D23 Expo Japan」今回の毎日新聞の報道との関係は…?

 

オリエンタルランドによる、意図的なリーク記事なのか。それとも、毎日新聞のスクープなのか。これについては、何とも言えません。

 

ただ、今回の記事は、全国版の最終面(社会面)、しかも4コマ漫画の横という、かなり目立つ位置に掲載されています。記者からの報告を受けた担当デスクも、それなりの根拠をもって、掲載許可を出していると思われます。もし仮に「ガセネタ」「偽リーク」であれば、担当記者の処分は免れないでしょう。

 

どんなエリアが考えられるの?

では、仮に、今回の記事が正しい情報だとしたら、どんなエリアが考えられるのでしょうか。記事には「空や宇宙をテーマにした、アトラクションやエリアの建設を検討」「宇宙旅行やジェット機での飛行を疑似体験できるアトラクションなど」という記述があります。

 

単純に考えると、これまでのディズニー作品の中で、空や宇宙がテーマになったものや、海外のディズニーパークにあるアトラクションをベースに、新しい施設がつくられる可能性が高いでしょう。

 

一番有力なのは、すでにカリフォルニアとフロリダで建設工事が進められている、映画『スター・ウォーズ』シリーズをテーマにしたエリアです。

 

 

正式名称「スター・ウォーズ ギャラクシーズ・エッジ」と呼ばれるこのエリアは、これまで女性・女児に偏っていた東京ディズニーリゾートにとって、男性客を呼び込めるコンテンツになりうるでしょう。ディズニー社にとっても、今後の映画続編の興行成績や、物販収入を考えると、舞浜にスターウォーズエリアを導入しておきたいと考えている可能性があります。

 

フロリダのディズニー・ハリウッド・スタジオでは、スター・ウォーズをテーマにしたホテルの建設も進められています。仮に同じものを東京で導入すれば、既存の4つのディズニーホテルとは、別の客層を開拓することができます。

 

また、フロリダのディズニー・アニマルキングダムに導入されている「アバター・フライト・オブ・パッセージ」も導入される可能性はあるでしょう。映画『アバター』をもとにした施設で、空を自由に飛び回る感覚は、まさに新パークにピッタリかもしれません。

 

ほかにも、宇宙旅行をテーマにした、エプコットにある「ミッション:スペース」、上海ディズニーランドにあるバイク型のコースター「トロン・ライトサイクル・パワーラン」なども、「空」「宇宙」のテーマに合う施設だと思います。

 

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上海ディズニーランド「トロン・ライトサイクル・パワーラン」フロリダのマジック・キングダムでも、導入に向けて建設工事が進められている。©Disney

 

東京だけの新施設がつくられるとすれば、映画『ベイマックス』『リロ・アンド・スティッチ』『カールじいさんの空飛ぶ家』『プレーンズ』などが題材になる可能性はあるでしょう。

 

ただ、ベイマックスは、ランドで新アトラクションの建設が進められています。スティッチについても、すでにランドに2つ、アトラクションがあります。新施設を投入するとして、どのようにすみ分けするのかも気になりますね。

 

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2020年春のオープンを目指して、建設が進む『ベイマックス』のアトラクション(オリエンタルランドのプレスリリースより引用)

 

マーベルについては、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』をテーマにしたアトラクションが、すでにカリフォルニアで導入されています。また『アイアンマン』のアトラクションも香港で導入されていますので、このあたりの動向も注目していく必要がありそうです。

 

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2017年1月に、香港ディズニーランドにオープンした「アイアンマン・エクスペリエンス」香港では、マーベルエリアの建設も進められている。©Disney

 

期待ばかりで、心配なことはないの?

さて、ランド、シーに次ぐ、新しいパークが実現するとして、心配なところはないのでしょうか。

 

1つ目は、平面駐車場をすべて使って新パークを建設すると、ランド・シーの将来的な拡張用地がなくなってしまう、という点でしょう。

 

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ランドの場合は、現在進められているファンタジーランドの拡張が終了すると、周辺に拡張用地はほとんど残されていません。オリエンタルランドの本社棟などがある、バックステージ施設の用地を整理する必要が出てきます。既存エリアのスクラップ&ビルドも、考えていかなくてはいけません。

 

シーの場合は、ロストリバーデルタ南側の余剰地、もしくは道路を挟んだリゾートパーキング第3が、今後の拡張用地になりえます。ただ、ランドと同様に、大規模なエリアの建設は難しくなります。

 

2つ目は、エントランスやゲストの動線をどうするのか、という点です。

 

仮にエントランスを、ベイサイド・ステーション近くに作るとすると、プラットホームの拡張や、開園前にゲストが待機する十分なスペースを確保する必要があります。個人的な推測ですが、東京ベイNKホール跡地に、商業施設やゲストが滞留できるような施設をつくるかもしれません。また、ディズニーリゾートラインを海側に移設して、ゲストの動線を確保する可能性もあるでしょう。

 

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オリエンタルランドが第一生命から取得した、東京ベイNKホール跡地。現在は地上のホール部分は解体され、地下施設のみが残っている。

 

3つ目は、敷地面積の狭さです。東京ディズニーランドは約51ヘクタール、東京ディズニーシーは49ヘクタールとなっています。一方で、毎日新聞が報じた第3パークの建設予定エリアは、20ヘクタールほどしかありません。しかも、ランドのファンタジーランド拡張工事に伴って、真ん中がくぼんだ形状になっています。

 

ただ、これについては、2階建て・3階建てのような多層構造にしたり、屋根のある全天候型施設にしたりすれば、面積の小ささはカバーできるでしょう。

 

4つ目は、トゥモローランドとのすみ分けです。東京ディズニーランドでは、トゥモローランドだった場所を使って、ファンタジーランドの拡張工事を進めています。仮に第3パークが建設されてしまうと、トゥモローの拡張の余地が小さくなってしまいます。このあたりも気がかりですね。

 

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2020年春オープンを目指して進められている、ファンタジーランドの拡張工事。工事前と比べて、トゥモローランドの面積が、小さくなっているのが分かる。

 

「都市伝説」と笑えなくなるかも…

かつて「東京ディズニースカイ」と言えば、もしオリエンタルランドが第3パークをつくるとしたら…というファンの話で出てくる、都市伝説的な存在でした。

 

東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年に向けて、東京ディズニーリゾートでは拡張工事が進められています。シーの「ソアリン(仮称)」は2019年度、ランドの『美女と野獣』エリアは、2020年春のオープンが予定されています。オリエンタルランドにとっては、五輪終了後にどのような成長戦略を描けるのかが、今後の課題になってくるでしょう。

 

ランド・シーの拡張か、それとも第3パークをつくるのか。オリエンタルランドから、正式な発表が出るのを待つことにしましょう。

 

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©Disney

 

(2018年2月8日追記)

毎日新聞の今村茜記者は、毎日新聞ウェブサイトで配信している動画「Mainichi Live」第18回編集版で、今回の記事内容について、以下のように語っています。

  • 開発計画は、オリエンタルランドで協議中。検討を進めている。
  • 第3パーク構想は、長年アイディアとしてはあった。ここ4年~5年で検討が進んだ。
  • 現在、ディズニー社とも協議中。
  • 第3パークは「空」がテーマ。飛行体験や宇宙体験ができるアトラクションが想定されているが、技術的に開発・運営が難しい。
  • スリル型ライドは若者向け。シニア層のゲストには難しい。施設配置のバランスが難しい。
  • 第3パークでは、シニア世代でも乗れるようなもの、3世代で利用しやすいものを考えている。
  • 現在のランド・シーは混雑が激しい。第3パークで分散化を図り、ゲストの満足度を高める狙い。
  • オリエンタルランドは、さらなる成長を目指した投資を考えている。シーのような「世界でここだけ」のものを検討中。
  • ランド・シーと同規模なパークは難しい。あくまでも2パークの混雑緩和が目的。
  • 第3パーク計画は、アトラクションの技術開発と、3,000億円の投資回収の見込みが立つかどうかで決まる。
  • 経営判断によっては、単なるエリア拡張や、アトラクションの増設で終わる可能性も。

 

合わせて読みたい

 

おまけ

以下は個人的に気になっていることを挙げたものです。今回の記事では分析しませんでしたが、また機会がありましたら、書きたいと思っています。

 

  • シーのロストリバーデルタ南側余剰地は、どうするのか。
  • 映画『アナと雪の女王』エリアは、結局つくるのか。
  • ランドの「全エリア刷新」とは、どのようなタイムスケジュールなのか。
  • 既存アトラクションのリニューアルはどうするのか。
  • プリンセスのグリーティング施設は導入しないのか。
  • バックステージ施設の再整備は、どうなっているのか。
  • キャラクターダイニングや、ショーレストランは増設しないのか。
  • パーク限定グッズの通信販売は、行わないのか。

*1:建設用地の液状化対策工事を考えると、3年間は短いような気もしますが、ディズニーシーのときは、対策工事を含めて1998年10月着工→2001年9月開園というスケジュールでした。