舞浜新聞

東京ディズニーリゾートなどのディズニーパークをはじめとして、ディズニーに関する様々な情報をお伝えします。



「D23 Expo Japan 2015」から見える、オリエンタルランドの思いとは?

11月6日~8日まで、東京ディズニーリゾートで行われた「D23 Expo Japan 2015」アメリカ・アナハイムでもディズニーファンのためのイベントとして「D23 Expo」が行われていますが、2013年に引き続いて、日本でも2回目のエキスポが行われました。

 

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©Disney

 

今年8月にアナハイムで行われたエキスポについては、こちらの記事をどうぞ。

 

エキスポでは様々なショー・プレゼンテーションが、舞浜アンフィシアターで行われました。中でも、多くの注目を集めたのは、東京ディズニーリゾート・スペシャルプログラムでした。

 

今回は東京ディズニーリゾート・スペシャルプログラムから、オリエンタルランドの思いについて、少し考えてみたいと思います。

 

どんな内容だったの?

東京ディズニーリゾート・スペシャルプログラムでは、主に3つのプログラムが行われました。

 

  • オリエンタルランドの上西京一郎社長による、東京ディズニーリゾートの将来に関するプレゼンテーション
  • 東京ディズニーリゾートのアンバサダー、今枝李衣奈さんと上西社長による、東京ディズニーシー15周年イベントに関するプレゼンテーション
  • シー15周年イベントのハーバーショー「クリスタル・ウィッシュ・ジャーニー」の前日譚を描くショー「スペシャルプレミアムツアー」

 

それでは、順番にプログラムの内容について見ていきましょう。

 

高橋政知さんのスピーチが!

プレゼンテーション開始前、会場では歴代のアニバーサリーソングなど、パークの音楽が流れていました。なんだか年越しの花火を待っているかのような、そんな感覚になってしまいます。

 

さて、プログラムは東京ディズニーシーの構想から、建設工事、そして開園までの様子を簡単に振り返る映像から始まりました。私としては、1988年、東京ディズニーランド5周年の記者会見の中で、当時オリエンタルランドの社長を務めていた故・高橋政知氏の「第2パーク構想」のスピーチが流れたのには、思わず鳥肌が立ってしまいました。

 

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ランドに続く「第2パーク建設構想」が発表された東京ディズニーランド5周年記者会見の様子(1988年4月15日)朝日新聞デジタルから引用

 

以前の記事でも書いたのですが、高橋さんがいなければ、東京ディズニーランドや東京ディズニーリゾートは生まれていなかった、と言っても過言ではないのです。

 

 

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ミッキーマウスとともに写る、故・高橋政知氏。ディズニー社が自社に功績のあった人物に贈る「ディズニー・レジェンド」を受賞している。©Disney

 

さて、東京ディズニーシーの歴史を振り返る映像の後は、シー開園当時のコスチュームである、提督姿のミッキーマウスと、ケープコッドコスチュームのミニーマウスとともに、オリエンタルランドの上西社長が登場しました。

 

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ミッキーマウス・ミニーマウスとともに登場した、オリエンタルランドの上西京一郎社長 ©Disney

 

ミニーマウスにハグされ、キスまでされて、思わずたじろぐ上西社長の姿は、なんとも微笑ましかったですね。上西社長をサポートするミッキーマウスの姿も、とても印象的でした。

 

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©Disney

 

上西社長からはプレゼンテーションの冒頭で、ディズニー社とのパートナーシップに対して、感謝の気持ちが述べられました。オリエンタルランドは世界で唯一、ディズニーとのライセンス契約によってパークを運営しています。

 

以前の記事でも、オリエンタルランドはディズニーからの出資や株式持ち合い、取締役の派遣などを一切受けていない、完全に独立した企業であることを書きました。

 

 

さて、上西社長からは、東京ディズニーリゾートのこれまでの歩み、そして東京ディズニーリゾートの将来についてプレゼンテーションが行われました。

 

上西社長からは「東京ディズニーシーはまだ15周年。これからも『マジカルモーメント』を作っていく」「パークは生き物」「ゲストの心の琴線に触れる楽しさを作っていく」「今後もソフト・ハード両面で充実させていく」といった発言がありました。

 

中でも、ゲストのニーズが多様化していることにも触れ、ゲストの声を拾っていくという発言もありました。オリエンタルランドとしても、年間パスポートを持ったハードリピーターとワンデーパスのライトユーザー、そしてバケーション・パッケージを使う地方ゲストなど、多様化するゲストを念頭に置いているのでしょう。

 

また、上西社長からは、今後の東京ディズニーリゾートの将来像についても説明がありました。

 

特に私が気になったのは、2023年の「ありたい姿」に向けた、5,000億円にも上る投資計画についてです。上西社長からは「キャストのホスピタリティも高めていく」「リニューアルだけではなく『成長』していく」という発言がありました。

 

テーマパークのアトラクションやレストラン、ショップが「ハード」なら、ショーやパレード、キャストのサービスは「ソフト」と言えるでしょう。今年のオリエンタルランドの株主総会でも、キャストの待遇について株主から質問が上がりました。IR資料では「キャストの待遇改善」を書いていますので、今後の投資計画の中にも、きちんと盛り込んでいくということでしょう。

 

 

ただ、心配になったのが、5,000億円の投資計画の説明の中で、すでに発表されている東京ディズニーランドのファンタジーランド再開発計画や、東京ディズニーシーの新テーマポート建設計画について、言葉だけによる説明で終わったという点です。

 

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オリエンタルランドが発表しているパークへの投資計画(プレスリリースより引用)

 

私としては「新しいコンセプトアートでも出してくるのかな?」と思っていたのですが、既報のアートすら出さなかったことに、少し不安を感じました。

 

10月29日の第2四半期決算の発表の中で、オリエンタルランドは投資計画の見直しを行っていることを発表しています。どれほどの内容を見直しているのか、正直まったく分かりません。ただ、コンセプトアートすら出さなかったということは、すでに発表している内容をかなり見直しているのではないかと思います。

 

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オリエンタルランドのIR資料より引用。「現在一部見直しを進めている」という一文がある。

 

オリエンタルランドは、ファンタジーランド再開発計画、新テーマポート計画について「年内にも詳細を発表する」としています。ただ、ライバルのUSJの株式上場がなくなった今、サプライズ発表をする必要性も薄らいでいます。年内に、どこまでの情報が発表されるのか、微妙なところですね。

 

 

シー15周年は期待できる?

さて、東京ディズニーリゾートの将来についてのプレゼンテーションのあとは、来年2016年に開園から15周年を迎える東京ディズニーシーの15周年イベントに関するプレゼンテーションです。

 

冒頭で、シーのこれまでの14年間を振り返る2分間の映像が流れました。私としては開園当時からシーに通い詰めていましたので、思い出がよみがえってきて、すごく懐かしさを感じてしまいました。とくに2009年に行われた「ミッキーのドリームカンパニー」では、主役のマーガレット役を演じた三森すずこさんの映像も流れて、時の流れを感じてしまいましたね。

 

映像の後で登場したのが東京ディズニーリゾートのアンバサダー、今枝さんと上西社長です。2人からは、シー15周年イベントについてプレゼンテーションが行われました。

 

シー15周年イベントのタイトルは「ザ・イヤー・オブ・ウィッシュ」これは願いや期待感、ワクワクのイメージから名づけられました。今回のイベントでキーアイテムとなるのが「クリスタル」です。これはシーの水面をイメージしており、これからも旅が続いていく思いが込められています。

 

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シー15周年イベントのコンセプトアート(プレスリリースより引用)©Disney

 

また、各キャラクターによって、クリスタルの色が決められています。ミニーマウスは愛を表す赤、ドナルドダックは友情を表す青、グーフィーは活力を表す緑となっています。それ以外にも、ここでは触れられませんでしたが、プルートやチップ&デール、そしてデイジーのクリスタルも決められています。

 

 

そして、ミッキーマウスのクリスタルの色は「透明」これは、光の三原色である赤・青・緑をかけあわせると、白色、つまり透明になることから決められました。なんともミッキーらしい色ですね。

 

また、プレゼンテーションでは、シー15周年イベントで行われるハーバーショー「クリスタル・ウィッシュ・ジャーニー」について、ショー開発部の辻宣孝部長のインタビュー映像が流れました。

 

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「クリスタル・ウィッシュ・ジャーニー」イメージパース(プレスリリースより引用)©Disney

 

映像を一言で表すと「ガイヤの夜明け」なんともテレビ東京の経済番組っぽい仕上がりになっていました。辻部長からはショーについて「ゲストの旅立ちを祝うショー」「キャラクターやダンサーが乗るパージには、それぞれの願いが込められている」「フィナーレにはサプライズがある」という発言がありました。

 

最近のショープログラムの傾向として「終わりと見せかけて、最後にサプライズがある」という演出が多くなっています。シーの新しいショーも、この演出が取り入れられるのでしょう。

 

シーの場合はレギュラーのハーバーショーである「レジェンド・オブ・ミシカ」が終演して、現在はスペシャルイベントのハーバーショーのみとなっています。

 

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多くのゲストから惜しまれつつ終演した「レジェンド・オブ・ミシカ」©Disney

 

開園当時から行われた「ポルト・パラディーゾ・ウォーター・カーニバル」やミシカの良さを肌で感じている私としては、やはりレギュラーのハーバーショーがないことに、一抹の寂しさを感じています。

 

ただ、その分の人員と予算を期間限定のショーに投入して、豪華なプログラムに仕上げている印象もあります。15周年イベントで行われる「クリスタル・ウィッシュ・ジャーニー」は、プレスリリースや今回のプレゼンテーションでも「期間限定」と強調されていましたので、そのままレギュラーのハーバーショーに…という可能性は低いと思われます。

 

ハーバーショー以外にも、ビックバンドビートやハンガーステージのリニューアル、エントランスのフォトロケーション、そしてホテルミラコスタやディズニーリゾートラインのデコレーションなどについても説明がありました。特に気になったのが、15周年イベントに合わせて発売される「クリスタルコンパス」です。

 

これはエントランスや各テーマポートにあるモニュメントと連動するグッズです。ランド30周年やシー10周年のときにも、同様のグッズは販売されました。しかし、私が気になったのはハーバーショー「ファンタズミック!」とも連動するという点です。

 

ランドではマジカルドリームライトが販売され、エレクトリカルパレード・ドリームライツのフロートの動きに合わせて、光り方が変わるという演出があります。おそらくクリスタルコンパスも、そういった連動があるのでしょう。ただし、ファンタズミック!との連動は15周年イベントの期間中とされています。マジカルドリームライトのように、通年で販売されるようにはならないということでしょう。

 

懐かしさがこみ上げるショーに、思わず号泣!

さて、今回のメインでもある「スペシャルプレミアムツアー」へと移ります。

 

冒頭で流れたのは、シーのランドマークでもある「プロメテウス火山」の映像。この山はすべてのテーマポートから見えることから、あらゆる時代や場所を超えた存在でもあります。

 

そんなプロメテウス火山の中には、数多くのクリスタルがあります。そんなクリスタルがシー15周年のシンボルになる…。なんとも素敵なストーリーですね。それを見ながら「プロメテウス火山の建設費は、一部は第一生命が負担したはず。オリエンタルランドの大株主であり、オフィシャルスポンサーである第一生命への配慮?」なんて思ったのは、おそらく私だけだったと思います。

 

「東京ディズニーシー・テーマソング」が流れると、いよいよ旅が始まります。まずは、シー開園から5年続いたハーバーショー「ポルト・パラディーゾ・ウォーター・カーニバル(2001年~2006年)」のストーリーテラーによる前説です。

 

私としてはシーのファンになるきっかけが、このウォーターカーニバルでした。当時地方に住んでいたため、なかなか頻繁に行くことはできませんでしたが、それでも終演の知らせを聞いたときは、思わず弾丸旅行で見納めに行ったくらい、大好きなショーでした。

 

まさにシーの歴史を象徴するようなショーが冒頭に登場したことで、この時点で私は号泣してしまいました。まさに「最初からクライマックス」とは、このことでしょうね。

 

さて、ポルトの後は、ケープコッドの風景が流れます。ケープコッドの人々は、たびたび嵐に見舞われました。嵐に苦しむ人々の願いは「嵐が消せればいいのに…」さて、そんな人々の願いが、100年後の未来で実現します。それがポートディスカバリーの「ストームライダー」でした。

 

グーフィーによる、テーマソングに合わせたダンスは、なんとも愛らしかったですね。ストームライダーについては「忘れることはないでしょう」というセリフもありました。オリエンタルランドとしても、クローズについて大きな話題となったストームライダーについて、気には留めているというメッセージが込められているのでしょう。

 

 

さて、ポートディスカバリーの次は、その横にあるロストリバーデルタへと移ります。こちらは先日惜しまれつつ終演した「ミスティックリズム(2001年~2015年)」のダンサーとともに、グーフィーが登場しました。ここでグーフィーは、ジャングルのサルたちから緑色のクリスタルを受け取ります。

 

次に舞台はアラビアンコーストへと移ります。ここで懐かしの「ボンファイヤーダンス」のコンビ、カッガリーナとキビータの2人が登場!ゲストはまさかの登場に、盛り上がりが最高潮になりました。

 

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©Disney

 

久しぶりの2人の掛け合いもそうですが、何といってもゲスト全員でボンファイヤーダンスを踊れるとは思いませんでした。アラビアンコーストの歴史に残る、素敵なショーだったからだと思います。

 

アラビアンコーストの次は、海の中の世界であるマーメイドラグーンへと移ります。マーメイドラグーンでは、「ファッショナブル・イースター(2015年)」のコスチュームを着たチップ・デール・クラリスとともに、アクアポップのダンサーたちが出演しました。

 

また、次のミステリアスアイランドでも、ファッショナブル・イースターに出演したパフォーマーやダンサーが出演しました。こちらではドナルドとデイジーも登場して、ゲストも盛り上がりました。ドナルドはここで、ヒューゴーから青のクリスタルを受け取ります。

 

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©Disney

 

さて、舞台はアメリカンウォーターフロントへと移ります。ここでは「ニューヨーク・ハロウィーン・フォリーズ(2014年)」のコスチュームのミッキーとミニーが登場しました。また、「ニューヨーク・ハロウィーン・フォリーズ」「イースター・イン・ニューヨーク(2012年・2013年・2014年)」「ファッショナブル・イースター(2015年)」の3つのショーのダンサーが登場して、ステージは一気に華やかになりました。

 

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©Disney

 

スクリーンには、これまでウォーターフロントで行われたショーの映像が流れました。映像を見ながらミッキーとミニーの掛け合いがあったのですが、ミッキー「不思議な仮面舞踏会もあったよね」ミニー「え?なんのこと?」の一言は、なんとも言えませんでしたね。その後のショーの流れを作っていたと思います。

 

ここでタワー・オブ・テラーの曲とともに、ニューヨーク市保存協会のマーク・オーメンとカミーラ・カーメンの2人が登場。こちらも、なんとも懐かしい2人でした。スクリーンには「ミステリアス・マスカレード(2009年*1)」の映像が流れ、奈落からはショーのコスチュームを身にまとったキャラクターたちが登場!まさかオンリー・トゥナイトを再び踊れる日が来るとは…。踊る気はなかったのですが、気付いたら体が勝手に動いていました。スケルトンも登場して、思わず懐かしい気持ちになります。

 

ここでミニーは、カミーラから赤のクリスタルを受け取ります。

 

次に舞台はメディテレーニアンハーバーへと移ります。「ビックバンドビート」に出演していた男女のシンガー2人による「スウェプト・アウェイ」の生歌とともに、舞台では「ブラヴィッシーモ!(2004年~2010年)」の世界が再現されました。ウォーターカーニバルとともに、私が大好きだったブラヴィの演出に、鳥肌が立ってしまいました。

 

 

ブラヴィの次に、シー開園からの映像とともに「We Go On」の大合唱が流れたのにも、思わず号泣してしまいました。「We Go On」はもともと、ウォルト・ディズニー・ワールドのミレニアム・セレブレーションで使われた曲です。その後、エプコットのナイトショー「イルミネーションズ(2000年~)」で引き続き使われています。

 

 

日本語版はシーの2004年のカウントダウンで、初めて使われました。島田歌穂さんによる歌声は、今でも私の耳に残っています。そんな思い出深い曲を聞けるとは思ってもいなかったので、涙腺が崩壊してしまいました。

 

さて、ここで舞台には「ミート&スマイル(2006年~2011年)」のコスチュームを着たミッキー・ミニー・ドナルド・グーフィーが登場します。グーフィー・ドナルド・ミニーの手には、それぞれのクリスタルが。ドナルドとグーフィーが「光がここに連れて来た!」と語ると、「レジェンド・オブ・ミシカ(2006年~2014年)」の曲「フィール・ザ・ラブ」が流れます。ミシカは本当に多くのゲストに愛されていましたので、ハーバーを象徴するショーとして流されたのでしょう。

 

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いよいよショーもフィナーレが近づいてきました。ウォーターカーニバルの曲に合わせて、クリスタルを持ったキャラクターたちが集まります。ミッキーがクリスタルについて「これからの旅に必要」「本当に大切なものを教えてくれた、古びたコンパスみたいな」「さあ、旅を続けよう!」と力強く語りかけます。

 

この「古びたコンパス」とは、ウォーターカーニバルで登場するキーアイテムでした。15周年では古びたコンパスに代わって、クリスタルがミッキーたちを導くアイテムとなる…。シー15周年イベントの前日譚を描く、素晴らしい演出だと思います。

 

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ウォーターカーニバルの終演間際に行われた特別版「エテールノ」の曲とともに、ミッキーたちは奈落の下へと消えていきました。ここでショーは終了…と思いきや、シー15周年イベントのテーマソングが発表され、なんと15周年のコスチュームを着たミッキーたちが登場!会場からは歓声と割れんばかりの拍手が巻き起こりました。

 

私も「ここで15周年のコスチュームを初披露するのか!」と、のけぞってしまいました。シー15周年のテーマソングである「When Your Heart Makes a Wish」の曲とともに、キャストが舞台に勢ぞろい!アンバサダーの今枝さんや上西社長も登場して、まさに大団円となりました。

 

ショー終了後は、シー5周年のテーマソングである「Sea of Dreams」が流れました。ショーは45分間でしたが、シー14年間の歴史を振り返るだけでなく、15周年イベントの前日譚を描くショーの構成には、思わず感服してしまいました。また、ポートディスカバリーやストームライダーのBGS(バックグラウンドストーリー)も盛り込むなど、ゲストの様々な反応やニーズをしっかりと調べている、という姿勢も示してくれました。

 

Twitterのタイムラインを見ていても「良かった」「感動した」「号泣してしまった」といった、ショーに対する賛辞の声であふれました。また「オリエンタルランドはゲストのことをよく分かっている」といった発言もありました。

 

でも、ちょっと待って!

D23 Expo Japan 2015で行われた「東京ディズニーリゾート・スペシャルプログラム」ショー自体は本当に完成度が高く、素晴らしいものだったと思います。しかし、ちょっと冷静に考えてみたいのです。

 

私たちの思い出に残るショーは、もう見られない・聞けないからこそ、目の前で演じられると感動するのではないでしょうか。ランドのキャッスルショーもそうでしたが、過去の素晴らしいショーを再現して、不満を語るゲストなんて、いないと思うのです。

 

ショーを見ていて、オリエンタルランドとしてはゲストのニーズをきちんとつかんでいるんだな、と確信しました。しかし、なのにどうして、ランドのキャッスルショーやシーのステージショーをやらなくなったのか。ショー・パレードの製作費を削り続けるのか。このあたりの問題も、きちんと考えていくべきだと思います。

 

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エンターテイメント・ショー製作費の推移を表したグラフ。2012年度以降は、ランド単体時代と同水準が続いている。

 

オリエンタルランドとしては、豪華なショーやパレードをやりたい。けど、ゲストのニーズが多すぎて対応できないだけなのか。それとも、マニアしか喜ばないエンタメは極力削って、そのぶんの浮いたコストを今後の投資に回すつもりなのか。

 

ただ「オリエンタルランド万歳!」「やっぱりオリエンタルランドはすごい!」という礼賛だけでは、オリエンタルランドの真意を見誤ってしまう危険性があるのではないでしょうか。

 

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シー15周年は「原点回帰」?

さて、今回のスペシャルプログラムでは、シー15周年イベントにスポットが当てられました。プレゼンテーションを見ていて思うのは、開園当時のシーの雰囲気を15周年で取り戻そうとしているのではないか、そんな気がするのです。

 

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シーはランドとの差別化から「大人向け」「冒険とイマジネーション」「キャラクター要素は薄め」というコンセプトでスタートしました。しかし、ランドと比べてアトラクションも少なく、ミッキーたちキャラクターの出演が少なかったことから、入園者数でかなり苦戦しました。

 

オリエンタルランドとしては、家族向けのアトラクションを造ったり、キャラクターの出演を増やしたりして、なんとかランドと肩を並べるほどの入園者数を確保できるようになりました。

 

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2012年にオープンした「トイ・ストーリー・マニア!」連日多くのゲストで賑わっている。©Disney

 

しかし、その一方で、昔のシーの雰囲気を知る人にとっては、開園当時のシーの良さが失われてしまったということで、落胆の声も上がりました。私も以前、シーの「ランド化」について、記事をまとめたことがあります。

 

 

シー15周年イベントのプレゼンテーションを見ていて思うのは、開園当時のシーの雰囲気を取り戻そうとしているのではないか、そんな気がするのです。特に船に乗って旅立とうとする様子は、まさに冒険とイマジネーションの海を象徴する場面だと思うのです。

 

今後、ランドではファンタジーランドの再開発工事が本格化します。シーの新テーマポートを建設してから、ランドのファンタジーランドの再開発に着手するという流れも考えられますが、ランドの収容能力が下がれば、その分だけシーでゲストを受け入れなければいけません。

 

「シー15周年、良かったよ!」という声が広がれば、それだけランドよりもシーの集客につながります。オリエンタルランドとしても、今後のシー集客強化への足がかりとして、15周年イベントを活用しようとしているのではないでしょうか。

 

さて、原点回帰となり、シーのもともとの良さを取り戻すことができるのか。そして、「クリスタル・ウィッシュ・ジャーニー」はどんなハーバーショーになるのか…。期待半分、不安半分で来年を待つことにしましょう。

 

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※記事で使用している「D23」のロゴマークが入っている写真は、米国D23公式サイト「D23 EXPO Japan 2015 Dazzles Fans - D23」から引用したものです。

*1:ミステリアス・マスカレードは2010年にも公演されましたが、マーク・オーメンの出演は2009年のみとなっています。