日本国内だけではなく、海外からも多くのゲストがやって来る東京ディズニーリゾート。そんなゲストの皆さんが利用しているのが、パーク周辺にあるホテルです。
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今回は東京ディズニーリゾート周辺(千葉県浦安市)にあるホテルについて、将来像を少し考えてみたいと思います。
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今年だけでも4つのホテルが誕生!
以下の表は、東京ディズニーリゾートの周辺にある、ホテルの客室数を一覧にまとめたものです。
非公認ホテルも合わせると、東京ディズニーリゾート周辺では、約9,400室もの客室があります。また、2016年だけでも、以下のホテル新設・増室がありました。
- 東京ディズニーセレブレーションホテル:ウィッシュ 6月1日
- 東京ディズニーセレブレーションホテル:ディスカバー 9月10日
- シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル:PARK WING 12月19日
- ラ・ジェント・ホテル東京ベイ 12月23日*1
「東京ディズニーセレブレーションホテル」は、これまでオリエンタルランドが運営していた「パーム&ファウンテンテラスホテル」を、ディズニーホテルにリニューアルする形でつくられました。
これまで、ディズニーホテルといえば「高級」なイメージが強く、なかなか予約は取れませんでした。より安い値段で、15分前入園などの特典が利用できる、新しいタイプのディズニーホテルがオープンしたのです。
ホテルのリニューアルについては、こちらの記事をどうぞ。
オリエンタルランドとしては、単なる客室改装よりも、ディズニーホテルへの業態転換のほうが、安定的な集客と、客単価の向上が望めると考えたのでしょう。ディズニー社としても、自社で運営してるホテル会員権プログラム「ディズニーバケーションクラブ」に、安いホテルが加わったことで、アメリカの会員に向けたサービスの充実が図れる、という思惑もありそうです。
オフィシャルホテルの「シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル」では、これまで立体駐車場があった場所に、新しく「PARK WING」棟をオープンしました。愛犬と一緒に泊まることができる「ドッグ・ラバーズ・スイート」も併設しており、新しい顧客ニーズへの対応が期待できます。
シェラトンは今回の増設で、東京ディズニーリゾート周辺で初めて「1,000室」を超えました。日本国内でも、1,000室を超える巨大ホテルは、数えるほどしかありません。シェラトンとしては、それだけ増室しても、十分な客数を望めると判断したからでしょう。
12月23日にプレオープンした「ラ・ジェント・ホテル東京ベイ」は、舞浜地区から少し離れた、日の出地区に位置しています。大和ハウス工業が開発したホテルで、専用ウェブサイトは持っていません。ひっそりと、旅行サイトで予約を受け付けしています。
実は12月20日には、大阪・桜島に「ラ・ジェント・ホテル大阪ベイ」が開業しています。こちらのホテルは、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのほど近くにあります。大和ハウス工業は、USJのコーポレート・マーケティング・パートナーになっていますので、今後はテーマパークを訪れる観光客を、積極的に取り込んでいきたいと考えているのでしょう。
人気アトラクションの「ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド」大和ハウス工業は、ここの協賛を務めている。
東京五輪までに、2000室も増える?
さて、ホテルの新設・増室が相次いでいる東京ディズニーリゾート周辺。実は2020年の東京オリンピックに向けて、浦安市内では多くのホテル計画が進められているのです。
東京ディズニーリゾート周辺のホテル新設・増室計画。新浦安エリアの日の出地区で、ホテル新設が目立つ。
表を見て分かる通り、2020年に向けて、約2,000室ものホテルの新設・増室が行われる予定です。舞浜地区にある「シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル」が約1,000室ですから、シェラトン2つ分の客室が増える計算です。
富士見地区の「変なホテル2号舞浜 東京ベイ」は、旅行代理店のH.I.S.グループが運営するホテルです。長崎ハウステンボスにある「変なホテル」は、ロボットがホテルの業務を担っており、人件費の削減に成功しています。その成功を受けて、満を持して首都圏に進出する予定です。
「ホテルドリームゲート舞浜」は、JR舞浜駅の高架下にあるホテルです。東京ディズニーリゾートの徒歩圏内にありながら、オフィシャルホテルなどの認定を受けていない、比較的リーズナブルなホテルです。
「高架下」と聞くと、電車の騒音が心配になりますが、きちんと防音設計になっており、客室にいても全く気になりません。JR東日本としては、今後の東京ディズニーリゾートを訪れる客を取り込むために、別館の増築を考えたのだと思います。
「増室」といえば、日の出地区にあるパートナーホテルの「ホテルエミオン東京ベイ」も、新館の建設を進めています。ここは天然温泉を抱えており、ファミリーに強いホテルとして有名です。新館は本館から駐車場を挟んだ、向かい側の土地に建設されます。新館にも大浴場が造られますので、ますます稼働率を伸ばしていくでしょう。
「ホテル エミオン 東京ベイ」204室の 『新館』 着工。2018年春、営業開始(予定)
http://www.hotel-emion.jp/topics/docs/shinkan_open.pdf(PDFファイル)
東京ベイ東急ホテル(仮称)は、日の出地区にある「浦安市青少年交流活動センターうら・らめーる」の裏側に建設される予定です。ちょうど海を望む場所になっていますが、すぐ近くには、ディズニーホテルである「東京ディズニーセレブレーションホテル」があり、なかなかの苦戦を強いられるかもしれません。
ちなみに「あれ?舞浜に東急ホテルはなかったっけ?」と思われる方もいるかもしれません。実は1990年5月に、オフィシャルホテルとして「東京ベイホテル東急」が開業したのですが、2010年9月に東急ホテルズとのマネジメント契約が終了しているのです。現在、旧東急ホテルは「東京ベイ舞浜ホテル クラブリゾート」という名称に変わっています。
東急は、大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンの目の前に「ザ パークフロント ホテル アット ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」を開業しています。USJ前の東急ホテルが598室、東京ベイ東急ホテル(仮称)が地上18階・640室(予定)ですから、東と西でどちらも巨大ホテルになります。
明海地区の「ハイアットプレイス東京ベイ」は、「新浦安 アートグレイス・ウエディングコースト」の裏側、了徳寺大学に隣接する土地に建設されます。「ハイアットプレイス」は、ホテル大手のハイアットが、アメリカ国内を中心に展開している「セレクトサービス」のブランドです。今回の「東京ベイ」が、日本初進出となります。
「セレクトサービス」とは、客が必要とするサービスを自由に選べるようにしている、という意味です。ハイアットとしては、高級ホテルと宿泊特化型ホテルの、中間となるブランドとして位置づけており、浦安市内で成功すれば、今後ほかの地域への出店も検討されるかもしれません。
なお、 「ハイアットプレイス東京ベイ」の隣には、別のホテル計画が動いています。こちらは道路を挟んで、マンション「パークシティ東京ベイ新浦安Sol」があるため、周辺住民から反対の声が上がっています。今後、計画が変更される可能性があります。
いずれのホテル用地も、もともとは了徳寺大学が使用するはずだった。ちなみに、現在大学がある土地も、野村不動産マスターファンド投資法人が取得している。
了徳寺大学の土地売却を巡る報道。一部では「高額転売では?」という批判の声も上がっている。
東野地区の「ミラコロ」は、イタリアンレストランとして有名でした。剛力彩芽主演の映画『カルテット!』でも、ロケ地として使われ、地元からも愛されるお店でした。現在、東野地区にあったお店は取り壊され、その跡地にホテルの建設が進められています*2。詳しい開業時期などについては、まだ分かっていません。
同じく、日の出地区の科研新浦安ビル跡地のホテル計画についても、詳細な開業時期は分かっていません。ホテルエミオン東京ベイの新館から、目と鼻の先にある場所ですので、今後の動向が注目されます。
オリンピックが終わったら、閑古鳥?
観光庁が発表している「宿泊旅行統計調査」(平成28年9月・第2次速報、平成28年10月・第1次速報)によると、千葉県内のリゾートホテルの稼働率は84.4%で、全国2位という高水準となっています(1位は大阪府の95.6%)。
千葉県の場合は、東京都内からも交通の便が良く、成田空港も抱えています。また、観光資源が多いこと、さらには東京オリンピックのメイン会場からも近いため、今後さらなる外国人観光客の増加が見込まれます。
東京ディズニーリゾートでも、2020年に向けて、東京ディズニーランド・東京ディズニーシーの開発計画が進められています。インバウンド(外国からの客)を取り込むことができれば、年間3,000万人台のゲストを安定的に確保することができるでしょう。
2020年までの開発計画については、こちらの記事をどうぞ。
今後も多くの宿泊客が望める、東京ディズニーリゾート周辺で、ホテルの新設・増室計画が進められているのは、納得できます。ただ、一つ引っかかるのが「東京オリンピックが終わった後」です。
東京ディズニーリゾートの場合は、2020年以降、ランドが40周年を迎える2023年にかけて、さらなるパークの開発が進められる可能性はあります。集客については問題ないと思うのですが、少子高齢化や人口減少を考えると、10年、20年先も安定的に3,000万人台の客を確保できるとは断言できません。
東京オリンピックが終わった後、外国人観光客が一気に減ってしまえば、浦安市内のホテルも閑古鳥が鳴く事態になりかねません。まだまだ先の話ですが、それぞれのホテルの経営手腕にも注目していきたいですね。
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おまけ
以前、舞浜新聞では、オリエンタルランドが第一生命から取得した「東京ベイNKホール」の跡地について、いろいろと考察しました。
オリエンタルランドの株主総会でも、NKホールの跡地は「ホテル用地」という発言があり、てっきり新しいホテルが建設されると思われました。しかし、解体工事が進められていたものの、更地になることはなく、現在も構造物が残ったままとなっています。
この状況について、Ni-gata Traders ?さんが、とても興味深い記事を書いています。
オリエンタルランドが93億円で取得した「東京ベイNKホール」を簡単に再開発できない複雑な理由 | Ni-gata Traders ?
この記事を読むと、NKホール跡地の利用は、一筋縄ではいかないようです。オリエンタルランドとしては、他社に取られてしまうよりかは、自社でひとまず保有しておきたいと考えたのかもしれません。もちろん、元の所有者であった第一生命が、オリエンタルランドの大株主であり、オフィシャルスポンサーを務めている、という関係性も働いたと思われます。
舞浜のオフィシャルホテル群の中にある、NKホール跡地。ホテルの新設や、立体駐車場の建設でパークの開発用地を確保することも考えられるが、実現は未知数だ。
週刊東洋経済の「ディズニー客を狙う「ホテル大量開業」の全貌」では、NKホールの跡地について「ホテルが建設されるのでは?」というニュアンスで触れています。しかし、地下の施設が移転されない限り、オリエンタルランドが地上部分を開発することは不可能でしょう。今後の動向が気になりますね。