4月2日から東京ディズニーランド・東京ディズニーシーで開催されているスペシャルイベント「ディズニー・イースター」いよいよ明日でフィナーレを迎えます。
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今回はそんなイースターイベントがパークにもたらした功罪について、少し考えてみたいと思います。
もともとはランド限定イベント
東京ディズニーリゾートのイースターイベントは、2010年にランドの「ディズニー・イースターワンダーランド」として始まりました。イースターワンダーランドはその後、2011年・2012年にも開催されました。
2012年に行われた「ディズニー・イースターワンダーランド」©Disney
2013年は30周年イベントのため非開催、そして2014年からはイベントの名前を「ディズニー・イースター」に変え、パレードも一新して行われたのです。
2014年に行われた「ヒッピティ・ホッピティ・スプリングタイム」©Disney
そして今年(2015年)、イースターイベントはシーでも開催されることになりました。ハロウィーンや七夕もかつてはランド限定でしたが、のちにシーでも開催されるようになっています。今回のイースターも同様に、ランド・シー共通のイベントとなったわけです。
イースターは「閑散期対策」?
意外にも思われるかもしれませんが、東京ディズニーリゾートの場合、1年間で集客に苦労するのが4月~6月の第1四半期と、1月~3月の第4四半期なのです。
近年のオリエンタルランドの四半期別営業利益(連結)を表したグラフ。4月~6月と1月~3月が落ち込んでいるのが分かる。
1月~3月の場合は、気温も低く、天候も安定しないため、パークへ行くゲストの数が減ってしまうのは納得できます。しかし、どうして4月~6月も集客に苦戦するのでしょうか。
4月の場合は3月の春休みの段階で、パークにゲストが集中することに加えて*1、新年度・新学期が始まり、落ち着いて遊べない時期になるからです。
5月はゴールデン・ウィークがありますが、長期休暇となると首都圏に住んでいる方は、海外や地方などの遠くに出掛けることが多く、東京ディズニーリゾートを訪れるゲストはそれほど多くありません。また連休が終わると、運動会や授業参観などの代休日で混むことがありますが、客足はそれほど伸びないのです。
6月は皆さんの知っている通り「梅雨」の時期に当たります。雨が少なければいいのですが、どうしてもパークを訪れるゲストの数は減ってしまうのです。
東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは、以前からこの「第1四半期」の集客に力を入れてきました。今年も販売された平日限定の「首都圏ウィークデースペシャルパスポート」や、地方限定で販売される割引パスポート、マルチデーパスポートは代表的なものですね。
オリエンタルランドはこういった割引パスポートでの集客に加えて、イースターイベントの育成にも力を入れてきました。イースターを第1四半期の集客の目玉にするためです。
以下は2001年から2009年までに、第1四半期で行われてきたランドのイベント一覧です。
- 2001年 ディズニー・パーティーエクスプレス!(1月19日~5月31日)
- 2002年 Dポップマジック!(1月15日~5月31日)
- 2003年 20周年イベント(1月25日~)
- 2004年 開催なし
- 2005年 ディズニー・ロック・アラウンド・ザ・マウス(4月15日~8月31日)
- 2006年 リロ&スティッチのフリフリ大騒動~Find Stitch!~(4月15日~7月13日)
- 2007年 リロ&スティッチのフリフリ大騒動~Find Stitch!~(4月10日~7月19日)
- 2008年 25周年イベント(4月15日~)
- 2009年 開催なし
こうやって見ていくと、イースターイベントが開催される2010年より前は、4月~6月といったように、第1四半期で固定されたイベントはなかったことが分かります。年によっては、1月からのイベントを5月まで伸ばしていたり、4月からのイベントを夏休み前まで行っていたりしたときもあります。
オリエンタルランドとしては、第1四半期にも集客を強化して、混雑を平準化したいという思いがあったのでしょう。オリエンタルランドが発行しているアニュアルレポートには、以下のような記述があります。
(オリエンタルランド「アニュアルレポート2013」より引用)
現在は、4~6月期におけるイースターイベントの育成・定着に挑戦しています。
こういったものからも、オリエンタルランドがイースターイベントの育成に力を入れていることが分かります。
そもそも、どうして「イースター」なの?
東京ディズニーランドが開園した1983年当時、クリスマスは、今ほど大騒ぎするようなものではありませんでした。今でこそ、11月になるとイルミネーションが飾られ、商業施設には「クリスマス」の文字が躍りますが、1983年当時はそこまでではなかったのです。
そんなとき、アメリカ文化の象徴でもある東京ディズニーランドが開園しました。ランドでは、開園当時からクリスマスイベントを行っており、ここでアメリカのクリスマスに触れた方も多かったのです。
その後、時代の流れとともにクリスマスの習慣が浸透し、クリスマス商戦が行われるようになると、東京ディズニーランドでも1997年から、クリスマスイベントを11月の第1週から始めるようになります。こうして、日本のクリスマスは11月から始まるようになっていたのです。
またハロウィーンも、もともとはアメリカの民間行事として行われていたものを、東京ディズニーランドが1997年に1日限定のイベントとして実施。2000年にはスペシャルイベントに格上げされ、2003年からは9月~10月のイベントとして定着しました。
日本は「八百万の神」の文化が古くからあり、外国や異教徒の文化に比較的寛容になっています。むしろほかの国の文化を積極的に取り入れようとする姿勢が強いでしょう。
また「お祭り好き」という民族性も強いと思います。そんな日本のゲストを考えて、春のお祭りとしてイメージしやすい「イースター」を、第1四半期のイベントのテーマに持ってきたのではないでしょうか。
クリスマスやハロウィーンと同様に、日本でもイースターの文化が定着すれば「春だし、東京ディズニーリゾートに行かなきゃね!」といったような、来園動機にもつながります。マスメディアでも季節イベントのほうが取り上げられやすいですし、イメージもしやすいでしょう。
シーのイースターは、ミシカ終了の埋め合わせ?
さて、今年が初開催となった東京ディズニーシーのイースターイベント。その目玉ともいえるのが、ハーバーショー「ファッショナブル・イースター」です。
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昨年(2014年)秋からメディテレーニアンハーバーでは、大規模な改修工事が行われてきました。今回のイースターイベントでは、新しく造られた可動式ステージが活用されています。
ザンビーニ前の工事エリア。壁で覆われ、ハーバーを見ることはできなかった。©Disney
シーの場合、これまで大規模なショーは、アメリカンウォーターフロントにある「ウォーターフロントパーク」の特設ステージで行われてきました。しかし、2011年に行われた「クリスマス・ウィッシュ」を最後に、特設ステージを組まれることはなくなりました。
2011年に行われた「クリスマス・ウィッシュ」©Disney
これはおそらく、提供できる客席数が少ないこと、ショー公演に伴う経費が大きいこと、ゲストの誘導のために多くのキャストが必要なこと、などが原因として考えられます。
その後「イースター・イン・ニューヨーク(2012年~2014年*2)」や「ニューヨーク・ハロウィーン・フォリーズ(2014年*3)」では、ミニステージが組まれ、ゲストは地面に座って鑑賞する形式に変更されました。
2014年に行われた「ニューヨーク・ハロウィーン・フォリーズ」©Disney
しかし、ウォーターフロントパークでのショーには限界がありました。そこでオリエンタルランドは、より多くのゲストが見られる、経費も削れるハーバーショーに力を入れていくことになります。
今回のイースターイベントで行われた「ファッショナブル・イースター」は、そんなハーバーショーへの一本化を象徴するショーと言えるでしょう。
シーでは昨年(2014年)9月に、レギュラーのハーバーショー「レジェンド・オブ・ミシカ」が終了しています。これは例えて言えば、ランドの昼のパレードがなくなるのと同じことでした。
多くのゲストに惜しまれつつ終了した「レジェンド・オブ・ミシカ」©Disney
このミシカ終了については、ハーバーの工事との関係もあったのでしょう。しかし、その後新しいハーバーショーについての発表は一切なく、先日発表されたシー15周年イベント(2016年開催予定)のプレスリリースでも、期間限定のハーバーショーのみ、内容が公表されました。
ファッショナブル・イースターを見ていると、ミシカ終了で浮いた予算と人員を、そのまま投入している、とても豪華なプログラムという印象を受けました。
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メインとなる4人のファッションデザイナーたちは、生で台詞を話していますし、出演人数も約110名と、ランドの昼のパレードと比べても*4、人数が同じくらいであることが分かります。
ダンサーの皆さんのキレのあるダンスもそうですが、衣装にもこだわりがこもっているのを感じました。シーの春イベントは昔から力が入っているのですが、今回の「ファッショナブル・イースター」も、初めてのイースターイベントの名前に恥じない、ハーバーショーに仕上がっていたと思います。
また、新しく完成したミッキー広場やザンビーニ前の可動式ステージでは、遠くにいるゲストでもショーの様子を見ることができるようになりました。バケーション・パッケージのゲスト向けに、新しく鑑賞エリアも造られましたので、今後より多くのゲストが楽しめるハーバーショーが強化されていくでしょう。
ミッキー広場に新しく造られた可動式ステージ ©Disney
ハーバーショーについては、ミッキー広場、ザンビーニ前、リドアイルと、鑑賞する場所によってショーの楽しみ方が変わってきます。ショーを何度も見てほしい、1か所に固まらずに、いろいろな場所で見てほしいという、オリエンタルランドの意図も透けて見えます。
イースターは「第2のハロウィーン」になるのか?
オリエンタルランドが定着に力を入れる「イースター」実はすでにほかの業界でも、イースターを新たな商機と考えて動いています。
ただ、新年度・新学期とゴールデン・ウィークが重なり、なにかと出費が増えるこの時期に、どれだけ新しいお祭りが定着するのかは、未知数だといえるでしょう。ただ、マイナーだったハロウィーンも、今ではすっかりおなじみのものになっています。こればかりは、今後を見守るしかなさそうです。
イースターは「第2のハロウィーン」になるのでしょうか。私としては、一つのコンセプトにこだわらないスペシャルイベントも好きだったのですが…。ひとまずは、今後のイースターイベントを楽しみたいと思います。
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