2月6日、オリエンタルランドは東京ディズニーランドのウエスタンランドに、新しくキャラクターグリーティング施設と飲食施設を建設することを発表しました。
今回は新施設のプレスリリースから、東京ディズニーランドの将来像について少し考えてみたいと思います。
どんな施設ができるの?
新しいグリーティング施設とレストランは、ディズニーの「ジュニア・ウッドチャック」シリーズをテーマにしたものとなります。
新しいグリーティング施設の外観イメージ ©Disney
新しいレストランの外観イメージ ©Disney
「ジュニア・ウッドチャック」シリーズとは、ドナルドやその甥っ子のヒューイ・デューイ・ルーイが、アメリカの原生地でキャンプなどの野外活動を通して自然に親しむ、というものです。ボーイスカウトの活動がもとになっています。
©Disney
ウエスタンランドはアメリカの西部開拓時代をテーマにしていますので、「ジュニア・ウッドチャック」シリーズはそういったテーマ性の統一から選ばれたのでしょう。
グリーティング施設について、どんなキャラクターが登場するのかは発表されませんでした。しかし、リリースの中にドナルドやヒューイ・デューイ・ルーイの名前が載っていることから、こういったキャラクターに加えて、デイジーなどの出演が可能性として高いでしょう。
新レストランとグリーティング施設の総投資額は、合わせて約30億円となっています。
いつ・どこにできるの?
オープンは2016年秋から冬で、詳細な日程はまだ決まっていません。
新しいレストランは現在のラッキーナゲット・カフェをリニューアルする形で造られます。グリーティング施設については、今回のプレスリリースでは詳細な場所は発表されませんでした。しかし、外観イメージを見る限り、ラッキーナゲット・カフェの奥に造られると思われます。
現在のラッキーナゲット・カフェ周辺の衛星写真。右奥に空き地が広がっているのが分かる。
ラッキーナゲット・カフェについては、今年秋にクローズする予定です。
リニューアルされるラッキーナゲット・カフェ ©Disney
今回のリニューアルは「混雑緩和」だけじゃない?
新しいレストランはランドで初めて、2階建てのレストランになる予定です。
ランドの場合はもともと「年間1,000万人」の来園客に対応するために、様々な施設が設計されています*1。しかし、2013年度はランド・シー合わせて年間3,000万人を超えるなど、想定をはるかに超えたゲストのために、混雑が激しくなっています。
シーの場合はランドの反省から、レストランのレジ前を広く取ったり、客席を立体的にしてキャパシティを広くしたりしてあります。今回のリニューアルでも、そういった混雑緩和を目的として、レストランを2階建てにするのでしょう。
しかし、舞浜新聞ではそれだけではないと見ています。
読売新聞の記事*2によると、新レストランの客席数は現在とほぼ同じの400~450席になる予定です*3。もしキャパシティを増やしたいのであれば、もっと多くの座席を取るはずです。
現在のラッキーナゲット・カフェは、アメリカ河沿いの道から歩いていくと、ちょうど行き止まりになっている場所にあります。おそらく、新グリーティング施設がその奥に造られることから、通路を確保するために立体的な施設にするのではないでしょうか。
またラッキーナゲット・カフェは半屋外になっており、夏暑く・冬寒いという課題がありました。リニューアルによって完全屋内座席を増やす目的もあると思われます。
グリーティング施設の新設は今後の布石?
今回、新しく造られるグリーティング施設は、トゥーンタウンの「ミッキーの家とミート・ミッキー」以来、約20年ぶりの新グリーティング施設となります。ランドの場合はこれまで、屋外で行うフリーグリーティングや、場所を決めてゲストが並ぶ整列グリーティングが行われてきました。
しかし、雨天の場合は実施が難しいこと*4、また具体的なスケジュールが出されないために「絶対に会いたい!」というゲストの要望に応えきれないこと、などが課題でした。
新グリーティング施設では、そういった課題がある程度解消されるでしょう。特に東京の場合はキャラクターと一緒に撮るだけではなく、キャラクターそのものを撮りたいというゲストがかなり多いです。そういったゲストのニーズにも応えることができるでしょう。
今回のグリーティング施設新設によって、今後ランドでも屋内型グリーティング施設の導入が進むのでは?と舞浜新聞では見ています。
海外のパークを見ると、ディズニー作品に登場するプリンセスたちの屋内型グリーティング施設の導入が進んでいます。正式発表はされていませんが、香港や上海でも同様の施設導入が噂されています。
マジックキングダムにある「プリンセス・フェアリーテール・ホール」アナとエルサのグリーティングも行われており、連日多くのゲストで賑わっている。©Disney
東京の場合、プリンセスのグリーティングはフリーグリーティングのみとなっています。しかし、女の子や若い女性を中心に「プリンセスに会いたい!」というニーズは強いでしょう。ファンタジーランドの再開発でこういった施設が導入されるのか、ちょっと期待したいですね。
©Disney
アメリカ河の再開発はないの?
舞浜新聞では以前から「集客力の弱いアメリカ河を潰して、カーズランドを持ってくるのでは?」と考えていました。
ディズニー・カリフォルニア・アドベンチャーにあるカーズランドと東京のアメリカ河を、同じ縮尺で比べたもの
しかし、今回のリリースを読む限り、オリエンタルランドとしてはアメリカ河の再開発には手をつけないと思われます。
リリース冒頭には「ゲストはアメリカ河沿いの昔懐かしい自然を背景に繰り広げられるディズニーのクラシックストーリーの世界に浸ることができます」と書かれていますし、新レストランの説明では「ゲストは、アメリカ河の景色を眺めながらゆっくりとお食事を楽しむことができます」と明記されています。
おそらくアメリカ河やトムソーヤ島は、今後もウエスタンランドの一部として存続していくでしょう。ただ、オリエンタルランドとしては、従来は集客力が弱かったこのエリアを強化するために、需要のあるグリーティング施設を導入して、ゲストの回遊性を高める狙いなのでしょう。
トムソーヤ島 ©Disney
アメリカ河の再開発ではなく、クリッターのエリア拡張?
今回のリリースを読んで舞浜新聞が考えたのは「オリエンタルランドはウエスタンではなく、今後クリッター・カントリーの拡張に手をつけるのでは?」というものです。
集客力の弱いウエスタンやクリッターを改善するためには、エリアの拡張や新施設の導入が必要不可欠です。しかし、アメリカ河はそのまま残す。そうなると、クリッターの奥、現在の「ラケッティのラクーンサルーン」の周辺に手をつけるのではないでしょうか。
オリエンタルランドは今後の開発計画で、バックステージ施設の移転・再配置も行うと明らかにしています。バックステージ施設の跡地を使って、エリアを拡張しても何ら不思議ではありません。
オリエンタルランドがバックステージ再整備で挙げたのは「セントラルキッチン」と「ロジスティックセンター」それ以外にも本社機能の一部移転も噂されている。
ただ、このエリアの問題点は「花火の打ち上げ場」現在のパークワイドの花火は、クリッターに近い場所から打ち上げられています。住宅街近くに移転することは難しいですし、場所によってはランド・シーそれぞれから見えにくくなる可能性もあります。このあたりを改善するのは難しいでしょうね。
ミュージック・フェスティバル・プログラムは今後どうなるの?
ラッキーナゲット・カフェには「ラッキーナゲット・ステージ」があり、2001年3月まではレギュラーショーが行われていました。しかし、現在ではアトモスフィア*5や、学校・団体がパーク内で演奏する「ミュージック・フェスティバル・プログラム」のステージなどとして使われています。
今回のリリースでは、ステージについて言及はありませんでした。オリエンタルランドとしては経費が掛かるステージの新設はしないと思われますので、今回のリニューアルに伴ってなくなる可能性が高いでしょう。
実はミュージック・フェスティバル・プログラムは応募方法の変更に伴って、今年4月の出演分から受付を中止しています。ランドの場合、屋根があり、大きさがちょうどいいラッキーナゲット・ステージは多くの団体に使われてきました。応募が中止されているのは、ラッキーナゲットのリニューアルが関係しているのではないでしょうか。
ランドの場合、ミュージック・フェスティバル・プログラムが実施できる場所はいくつかあります。ただ屋根付きステージは、ラッキーナゲットを除くとシアターオーリンズとプラザパビリオン・バンドスタンドで、いずれもレギュラーショーが公演されています。スケジュールをやりくりするのは難しくなるでしょう。
屋外エリアで行う場合はゲストの誘導でキャストも必要になりますし、公演場所を空けなければいけません。シーの場合もプログラムが実施できるステージがいくつかあるのですが、現状は屋外のディズニーシー・プラザがほとんどで、それ以外のステージでは、レギュラーショーとの関係からか行われていません。
屋外の場合、雨が降ればプログラムは中止となります。オリエンタルランドとしては、余計な経費がかかるのは避けたいでしょうし*6、できればプログラムを縮小したいと考えているかもしれません。このあたりも注目していく必要がありそうです。
新施設はランド再開発の第一歩
アドベンチャーランドは、ジャングルクルーズのリニューアルによって、夜でも多くのゲストで賑わうようになりました。今後、ウエスタンランドやクリッターカントリーでも同様に、ゲストの集客強化、特に夜の周遊性の確保を目指していくと思われます。
©Disney
ファンタジーランドの再開発によって、今後ランドのキャパシティは減るとみられています。ゲストの満足度を下げずに、いかに混雑緩和を図っていくのか。そして開園から30年以上が経っているランドを、どのようにして生まれ変わらせていくのか。
舞浜新聞では今後も、東京ディズニーリゾートの姿について、読者の皆さんへ情報をお届けしたいと思います。
参考リンク
*1:今から考えると少ない気もしますが、当時は過大見積だと言われていました。
*2:キャラクターにいつでも…TDLが新施設を発表 : 経済 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)・2015年2月6日より。
*3:現在は屋根下・テラス席を合わせて約400席となっています。
*4:雨の日はレインコートを着たミッキーやミニーのグリーティングが行われることがありますが、荒天の場合は実施されません。
*5:2014年のハロウィーンイベントでは「ハッピーハロウィーンアミーゴス!」というアトモスショーも行われました。
*6:ミュージック・フェスティバル・プログラムの参加者は、出演当日無料でパークに入園することができます。雨天中止の場合も入園できます。