舞浜新聞

東京ディズニーリゾートなどのディズニーパークをはじめとして、ディズニーに関する様々な情報をお伝えします。



「ワンス・アポン・ア・タイム」は、東京ディズニーランドの夜を変えるのか?

いよいよ5月29日から東京ディズニーランドでキャッスル・プロジェクション「ワンス・アポン・ア・タイム」が始まりました。すでに多くのメディアで取り上げられていますので、映像を見たという方も多いのではないでしょうか。

 

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©Disney

 

さて、そんなシンデレラ城を舞台にした、新しいショープログラム。今回の記事では新しく始まったワンス・アポン・ア・タイムについて、舞浜新聞らしい視点でいろいろと考えてみたいと思います。

 

ショーの内容についても本文では触れていますので、ネタバレを避けたい方は、一度ショーを見てから読むことをおすすめします。

 

涙が出るほどの感動!

舞浜新聞では初日の29日に取材へ行ってきました。率直な感想は「これはすごい!」これまでもディズニーのエンターテイメントプログラムは最高の技術を使って、素晴らしいストーリーを私たちに見せてくれました。ワンスでも私たちの期待を裏切らない、素晴らしいプログラムに仕上がっていました。

 

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©Disney

 

ショーを見て涙が出たのは久しぶりでした。それだけ心に響くほどの感動があったと思いますし、これだけのものを作り上げたキャストの皆さんには、本当に頭が下がる思いです。総投資額は20億円ですが、それだけの価値以上のプログラムに仕上がっていると思います。

 

メディアやYouTubeなどではショーの映像が多数公開されています。しかし、画面を通して見るよりも、やはり実際にパークで、自分の目で見たほうが絶対にいいと私は思います。それは映像だけでは伝わらない、独特の空気感があるからです。これを見るためだけにパークへ行く価値はあると思います。

 

中身は将来への布石?

ワンスのプログラムは映画『美女と野獣』に登場するチップとポット夫人がストーリーテラーとなって、物語が進んでいきます。もうすぐ眠りにつくチップのために、ポット夫人が様々なおとぎ話を語って聞かせるというのが主な柱となっています。

 

ショーで登場するのは以下の作品です。

  • ふしぎの国のアリス
  • 塔の上のラプンツェル
  • シンデレラ
  • ピーター・パン
  • 白雪姫
  • くまのプーさん
  • 美女と野獣

 

それぞれの作品の印象的なシーンが、素晴らしい音楽とともにシンデレラ城に投影されます。レーザーやパイロ、そして様々な特殊効果を使って、物語が進んでいくという構成になっているのです。

 

さて、私がこのプログラムを見たときに感じたのが「将来の新ファンタジーランド導入への布石なのかな?」ということでした。

 

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フロリダ・マジックキングダムで進められていた新ファンタジーランド建設工事。今年5月にグランドオープンした。©Disney

 

ワンスで登場する作品はすべて、日本の多くの人に親しまれているものです。また、ランドで言うと、おとぎ話の世界をテーマにしたファンタジーランドの世界観と合う作品です。舞浜新聞では以前から、東京のパークにはマジックキングダムに導入された新ファンタジーランドと、同じようなものが将来的に導入されるのでは?という記事を書いてきました。

 

 

今回始まったワンスは期間限定ではなく、常演のプログラムとなっています。新しいパークの夜の顔となるワンス。そんなワンスがおとぎ話を扱っているというのは、新ファンタジーランドの導入に向けた準備なのかな?という見方ができるのです。

 

特にショーの柱に『美女と野獣』を据えているのも気になります。美女と野獣の公開は1992年。つまり今どきの若い女性が幼いころに見た作品の一つなのです。ディズニーパークにとって、メインのゲスト層でもある若い女性。そんなゲストに向けて作られているのがワンスなのです。今のパークには『美女と野獣』に関連する施設はありません。さて、どうなることやら…。

 

「より多くのゲストに提供する」という課題

ワンスはシンデレラ城を大きなスクリーンに見立てて、そこに映像を投影しています。立体物などに映像を投影するのを「プロジェクション・マッピング」といいますが、ワンスではこの技術をディズニーらしい、東京らしいショーへと仕上げています。

 

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©Disney

 

ランドではこれまでシンデレラ城の前に特設ステージを組み、そこで期間限定のショーを行ってきました。過去には「スターライト・マジック」などのように、城に映像やレーザーを投影する演出は行われてきたのですが、キャラクターやダンサーが一切登場しない、映像だけのショーは今回が初めてとなります。

 

今回ワンスを導入したのは、より多くのゲストにショーを提供するためではないか。舞浜新聞ではこう考えています。

 

シンデレラ城前には「中央鑑賞エリア」として、2,400席の鑑賞席が設けられています。ワンスは1日2回公演ですので、単純に考えると1日で4,800人のゲストにしか提供できないことになります。全体の入園者数を考えると、これはかなり少ない人数でしょう。抽選に当たる確率も、おのずと低くなります。

 

しかし、ワンスはプロジェクション・マッピングを使ったショーですので、中央鑑賞エリアだけではなく、城周辺の多くのゲストが見ることができるのです。これはワンスの大きな特徴と言えるでしょう。仮に中央鑑賞エリアの抽選に外れてしまっても、ショーを見ることができる。これがキャッスルショーであれば、遠くからキャラクターやダンサーを見ることは難しいですからね。

 

単に「経費削減」と言いたくない

一方でこんな見方もできます。

 

「ワンスにはキャラクターもダンサーも出演しない。これは経費削減では?」

 

私自身、実際にワンスを見るまでは「映像と舞台演出に頼った、ただの経費削減プログラムではないのか?」とうがった見方をしていました。確かにワンスでは人件費などのコストは大きく抑えられています。また雨の日でも開催が可能なプログラムになっています。

 

しかし、映像の製作やパイロなどの舞台設備の準備、そして現場のゲストコントロール・キャストの人件費などを考えると、単に経費削減のショーと言えないと思います。

 

プロジェクション・マッピングを使ったショーは、これまで日本各地で行われてきました。また海外のディズニーパークでも同様のショーが行われていました。それなのに、どうしてわざわざそれを東京でやるのか。実際にこの目で見て分かったのが、これまでの技術を使いつつ、きちんと東京のゲストに合わせたショーにオリエンタルランドが仕上げているということです。

 

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パリで行われているショー「Disney Dreams!」20周年イベントの目玉として導入された。今年9月30日までの上演が決まっている。©Disney

 

先ほども記事で触れたように、ワンスはこれを見るためだけにパークへ行く価値があるプログラムだと私は思っています。単に「経費削減」という見方は間違っていると言えるでしょう。

 

ワンスはパークの夜を変えるのか?

さて、いよいよ本題です。ワンスはパークの夜を変えるのか。ワンスは1日2回公演で、夜のパレードが終わった後の開催となります。宿泊ゲストや近くに住んでいるゲストならともかく、夜の遅い時間に開催ということで小さな子を連れた家族や、日帰りで来ているゲストにとってはちょっと見づらい時間設定かもしれません。

 

しかし、これは「パークの近くに泊まって、一日を満喫してほしい」という思いがあるからでしょう。アニバーサリーイベントが行われる年以外は、どうしてもパーク周辺ホテルの宿泊需要は落ち込みます。夜遅い時間にワンスを開催することで「泊まってでも見たい!」という気持ちを引き出したいのかもしれません。

 

また海外のパークでは夜のプログラムを閉園間際に開催して、そのままゲストに帰ってもらうという構成にしているところもあります。寝る前にポット夫人のお話を聞くチップと同じように、私たちゲストも楽しい気分で帰路につきたいですね。

 

夜遅く、閉園間際にも開催されるワンス。これはゲストの平均滞留時間も伸びるかもしれません。2013年度では、ゲスト一人あたり8.9時間となっています。ワンスで夜遅くまでパークに残っていれば、それだけ平均滞留時間は伸びるでしょう。そうなってくると、将来的なパークチケットの値上げにもつながってくるかもしれません。

 

プログラムの変更はありうる?

ワンスの場合、映像が基本的な要素となっていますので、海外のディズニーパークのように期間限定プログラムの導入は十分可能だと思われます。

 

もちろん、映像を作るのは簡単なことではなく、それなりの手間とコストがかかります。しかし、ハロウィーンやクリスマスのように、スペシャルイベントで変化を出している東京にとって、プログラムの中身をいじることができるワンスはピッタリのショーと言えるでしょう。今後に期待したいところです。

 

またゲストのニーズに合わせてプログラムを変更することもありえるでしょう。例えば、ワンスには『アナと雪の女王』に登場するエルサとオラフが少し登場します。

 

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©Disney

 

これまでのパークでは、人気のあるディズニーキャラクターがいても、それをパークに導入するまで時間がかかっていました。しかし、ワンスではそれをスピードアップすることができるのです。エルサとオラフに関しては、あらかじめ導入が決まっていたのかもしれません。それでも旬なキャラクターをすぐに出せるのは、ワンスの強みでしょう。

 

見えてきたワンスの課題

では、そんな素晴らしいショープログラムである「ワンス・アポン・ア・タイム」の課題について、少し考えてみたいと思います。

 

一つは「鑑賞場所・鑑賞方法」について。あらかじめ椅子が設けられている中央鑑賞エリアはともかく、抽選に外れてしまったゲストは城周辺のエリアからショーを見ることになります。その場合、どこを鑑賞エリアとするのかを明確にしておかないと、ゲストが混乱してしまいます。

 

実際初日に取材へ行くと、キャストが誘導をしているものの、通路と鑑賞場所との区分けがきちんとされておらず、混乱が起きていました。

 

またパレードとは違って座り見はなく、すべて立ち見となります。気温の低い日ならともかく、暑い日にゲスト同士が立ち見で密着する…。熱中症や体調を崩してしまうゲストも出るかもしれません。肩や体がぶつかったということで、ゲスト同士のトラブルにもつながる恐れがあります。

 

もう一つは「夜の花火との関係」について。パークでは法律や条例の関係もあり、一日で使用できる花火の量に制限があります。またあまり花火を打ち上げすぎると、音や燃えカスなどで周辺に住む人たちへ迷惑がかかってしまいます。

 

もしかすると、今後は夜の花火を縮小・廃止して、ワンスに一本化していくのかもしれません。これについては、風向きや風速、日没時間とも関係してくる問題ですので、夏と冬で状況が変わってくると思います。今後の状況を注視していきます。

 

さいごに

「ワンス・アポン・ア・タイム」を見て、これだけレベルの高いショーを東京で見られることに、私は素直に感動しました。日本人で良かったとすら思ったほどです。

 

同様のプログラムは海外のディズニーパークでも行われてはいますが、ワンスは東京オリジナルのショー。これだけのものを作り上げてくれたキャストの皆さんに、本当に感謝したいと思います。

 

パイロの煙で真っ白になるシンデレラ城を見て、まるで海外のパークに来た感覚になりました。大規模な投資を控えている東京ディズニーリゾート。そして今年7月には大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンにハリーポッターのエリアがオープンします。

 

ハリーポッターに、まずはワンスで対抗しようとしている舞浜。これからのパークにますます期待したいところです。