皆さんは「ディズニー」と聞いて、何をイメージするでしょうか。ミッキーやミニーといったキャラクターたち、数多くのアニメーション、それともディズニーランドに代表されるテーマパークでしょうか。もちろん「ウォルト・ディズニー」という人物を想像する人もいるかもしれませんね。
©Disney
では、ディズニーと聞いて、悪い印象を持つ人はいるでしょうか。ディズニーランドに対して「あそこは人が多いから嫌」「ミッキーなんてただの着ぐるみでしょ」なんて思う人はいるかもしれませんが、子供にも安心して見せられる健全なものだと思います。
今回の記事では、そんなディズニーとマスコミの関係について、ちょっと考えてみたいと思います。
ディズニーホテルでも「食材偽装」?
最近世間を騒がせている「食材偽装問題」以前もこういった企業のスキャンダルはありましたが、今回の場合、同じような食材だけど実際は違う食材を使っていたというのがほとんどです。しかも、時間が経つにつれてホテル、レストランからデパートまで、ありとあらゆる業種に広がっています。
実はディズニーも今回の「食材偽装問題」とはまったく無関係ではないのです。今年の5月30日、ディズニーホテルのホームページに「一部メニューの使用食材に関するお詫び」という一本のプレスリリースが出されました。この中で3つあるディズニーホテルすべてで表示と異なる食材が使われていたことを発表したのです。
このときはあくまでも「誤表示」で「偽装」という言葉は使われませんでした。ディズニーホテルは該当のメニューを食べた人に一律1,000円を返金するとしましたが、お詫びの記者会見は一切ありませんでした。
阪急阪神ホテルズのメニュー虚偽表示問題で世間が大騒ぎになる、ちょうど5か月ほど前です。ディズニーホテルでの一件は週刊文春の記事でも取り上げられました。しかし、この記事の中でも「誤表記」とされ、偽装とは表現されていません。
マスコミといえば、事実と返金対応について軽く報じるのみ。阪急阪神ホテルズやそれ以降、虚偽の表示が分かった企業に対して連日報道するといった状態にはなりませんでした*1。では、どうしてこのような違いが出たのでしょうか。
ディズニー批判をしたくないマスコミ
実は大手のマスコミは「ディズニー批判」つまり、ディズニーやディズニーパークを運営するオリエンタルランドにとって、イメージダウンになる報道を避けたがるのです。それにはいくつかの理由があります。
1. 大口の広告主だから
一つはオリエンタルランドが大口の「広告主」だからです。大手の新聞や雑誌にはよく、東京ディズニーリゾートの大きな広告が載っています。テレビでもゴールデンタイムにディズニーリゾートのCMが流れています。これらは当然、広告代理店を通じて出稿されているもの、つまりオリエンタルランドが広告料を支払っています。
今年1月7日に全国紙に掲載された全面広告。全国紙でしかも見開き・カラーの広告料は高額だと想像できる。©Disney
そんなスポンサーにとって悪い報道をしたがるマスコミはありません。だって、スポンサーを怒らせてしまえば、それだけ広告料を失うことになってしまいますから。
そのため、マスコミはディズニーに関する報道に慎重になっているのです。オリエンタルランドにとっても、広告料は一種の保険料になっていますね。
2. 読者・視聴者の反感を買いやすい
2つ目は、ディズニー批判は読者や視聴者の反感を買いやすいということです。皆さんの周りにいる人たちを思い浮かべてみてください。「私、ミッキーマウス大嫌い!」と叫んでいる人はいるでしょうか。世の中に好き嫌いはあるとはいえ、ディズニー嫌いの人のほうが、好きな人・普通な人と比べて少数派だと思います。
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大多数の人は「ディズニーは好き」と答えるのではないでしょうか。そんな多くの人に愛されているディズニーというブランドを傷つける報道を「見たい!」と思う人は、いったいどれくらいいるでしょうか。メディアというのは、見たい・読みたい・買いたいと思う人が多くなければ商売になりません。ですから、ディズニー批判をタブーとして、決してやろうとはしないのです。
もしディズニー批判をすれば、たちまち「夢を壊すな!」「ディズニー嫌いなのか?」という反感を買います。しかも、ディズニーの場合は幅広い年齢層に愛されていますからね。ちなみに、本国アメリカに次いでディズニーファンの裾野が広いのが、実は日本なのです。
3. ディズニーとの関係悪化を避けたい
3つ目は2つ目とも関連するのですが、ディズニーやオリエンタルランドとの関係を悪化させたくないからです。オリエンタルランドの裏側をすっぱ抜いた週刊文春のように、おじさまが読む週刊誌であれば、別にオリエンタルランドから取材拒否されても問題はありません。
これが若者向けの雑誌だったらどうでしょうか。広告の出稿取り止めならともかく、取材拒否はディズニーの記事が書けなくなることを意味します。それは多くの読者にとってウケがいいディズニーの記事を載せられなくなるということなのです。
今年はランド開園30周年。テレビでディズニー特集をやっていたら、ついついあなたも見ていませんか?©Disney
現状もそうなのですが、マスコミはディズニーやオリエンタルランドの顔色を常に窺っています。公共放送であるNHKでさえ、権利関係にうるさいディズニーの取り扱いには慎重です。それが分かっているため、オリエンタルランド側もメディア対応には慎重になっているのです。
東京ディズニーリゾートの場合、オフィシャルスポンサーの存在も重要です。パークの運営自体はオリエンタルランドが行っていますが、運営資金の一部はスポンサーになっている大手企業から拠出されています。
東京ディズニーランドのお昼のパレードは、NTTドコモグループがスポンサー。©Disney
夜のパレードは日本ユニシスが1985年から一貫してスポンサーを務めている。©Disney
東京ディズニーリゾートのイメージダウンは、オフィシャルスポンサーのイメージダウンにもつながるのです。そして、このオフィシャルスポンサーになるような大手企業から、マスコミは多くの広告料をもらっているのです。
さいごに
さて、ここまでディズニーとマスコミとの関係について考えてきました。ディズニーホテルの一件については、現場レベルでの判断ではないことは多くの人が分かります。
舞浜新聞では何度か皆さんにお伝えしている通り、オリエンタルランドは近年、経費削減の姿勢を強めています。そんな経営姿勢の中で、ディズニーホテルもより安い食材に手を出したのだと考えられます。
舞浜新聞では読者の皆さんにとって、より有益な記事を書けるように努力していきます。もちろん、その中で東京ディズニーリゾート批判、オリエンタルランド批判も書くことがあるかもしれません。その点については、ご理解を頂きたいと思います。
*1:読売新聞や産経新聞では、連日の虚偽表示問題の記事の中で「ディズニーホテル」の名前を出して報道しています。ただし、扱いは小さいと言えるでしょう。