ファクトブックとは、企業の財務情報などについて、複数の年度のデータを図やグラフで紹介しているものです。つまり、これを読めば企業の誕生から現在までの情報について、網羅的に知ることができるのです。
今回は東京ディズニーリゾートを運営しているオリエンタルランドの「ファクトブック2012」を読み解いていきたいと思います。なお、以下で紹介している数字は2012年3月31日までのものです。
オリエンタルランドグループの売上高
オリエンタルランドグループの売上高(2012年3月期)の内訳は
- テーマパーク事業 82.7%
- ホテル事業 11.7%
- その他の事業 5.6%
となっています。8割以上をランド・シーの両パークで稼いでいます。つまり、災害が発生してパークが運営できなくなると、直ちに経営が苦しくなることを意味しています。まさに「舞浜一極集中」と言えるでしょう。
災害による特別損失
- 2011年3月期 97億円
- 2012年3月期 36億円
2011年3月期は東日本大震災発生から3月31日まで、2012年3月期は2011年4月1日~2012年3月31日までの期間です。ランドは4月15日から、シーは4月28日から運営を再開しましたが、施設の修繕費などが重なり100億円以上の損失が出ています。
男女別の来園者比率(ランド・シー)
年によって多少の誤差はありますが、男:女の比率は3:7となっています。やはり女性のほうが比率が高くなっています。
来園者一人あたりの売上高
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チケット収入 4,335円
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商品販売収入 3,796円
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飲食販売収入 2,205円
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合計 10,336円
この数字はあくまでも2012年3月期の平均値です。東京ディズニーリゾートの来園客は小さい子からお年寄りまで、幅がかなり広いと思われますので、実際には多く使う客と少ない客の差はかなり広がっていると考えられます。
アトラクション・ショー収入の内訳
- アトラクション・ショー収入 1,342億円
- <内訳> テーマパークチケット収入 1,099億円
- その他 243億円
東京ディズニーリゾートでは現在、アトラクション乗り放題・ショー見放題のチケット「パスポート」のみ販売しています。昔は「ビッグ10」や「入園券」があり、アトラクションに入るときにチケットを渡したり見せたりした記憶がある人も多いのではないでしょうか。
2012年3月期のアトラクション・ショー収入のうち、「その他」が243億円となっています。アトラクションやショーの入り口でお金を取っているわけではないので、チケット収入以外はよく分かりません。
あくまでも推測ですが、これがオフィシャルスポンサーからの収入でしょう。年間で200億円以上を各社で分担するとは、やはりオフィシャルスポンサーは大企業ではないと財務的にきついと思われます。
エンターテイメント・ショー製作費
- 2007年3月期 130億
- 2008年3月期 126億
- 2009年3月期 154億(リゾート25周年)
- 2010年3月期 107億
- 2011年3月期 99億
- 2012年3月期 78億円(東日本大震災・シー10周年)
さて、2007年3月期から2012年3月期までのパレード・ショーの製作費の数字を載せてみました。こうして見てみると、東京ディズニーリゾート25周年のイベントを開催した2009年3月期の数字が突出していることが一目瞭然です。
2012年3月期は東日本大震災による休園や、年越しのカウントダウンイベントの中止(パレード・ショーではなく花火のみ)の影響でかなりの落ち込みとなっています。
原価率(2012年3月期)
- 商品原価率 41.4%
- 飲食原価率 39.8%
原価率とは売り上げに占める商品の仕入れ価格の比率です。100円で仕入れたものが1,000円で売れたら、原価率は10%となります。つまり原価率が低ければ低いほど、利益は増えることになります。
あくまでも平均値のため一概には言えませんが、東京ディズニーリゾートで売られている商品や食品の原価は、価格の約4割、つまり1000円のものなら原価は400円となります。そうやって考えてみると、高いか安いかが分かりますね。
ファクトブックを読み解いていくと、東京ディズニーリゾートの違った一面が見えてきます。いよいよ4月26日にはオリエンタルランドから2013年3月期の決算発表があります。ファクトブック2013もその頃には発表されると思われます。さて、どんな数字になっているのか。ちょっと期待しておくことにしましょう。