東京ディズニーシーの夜のハーバーショーといえば「ファンタズミック!」ウォータースクリーンと花火、ソーサーズハットや球体のスクリーンを多用した壮大なショーは、見る者を圧倒します。
とかく言う私も、最初に見たときは鳥肌が立ち「やっと東京でも見られるようになった!」と感動したものです。
実はこの「ファンタズミック!」東京だけではなく、ディズニーランド(アナハイム)やディズニー・ハリウッド・スタジオ(オーランド)でも行われています。東京のショーが360度から見られるのに対して、アナハイムやオーランドは一方向(といっても角度は広いのですが)から見ます。
それ以外にも若干の違いはあるのですが、このショーが持つ迫力で比べれば、東京はアナハイムやオーランドにも負けていないと私は考えています。
ところで、アナハイムでこのショーが始まったのは1992年5月。今から21年も前のことです。オーランドは1998年10月。今から13年前です。アメリカのショーやアトラクションが、遅れて東京にも導入されるということは過去にもありました。しかし、なぜファンタズミックの東京への導入がここまで遅れてしまったのでしょうか。
実は東京でもファンタズミックの導入が考えられたことがありました。しかし、ショーを行うだけの十分な水上スペースがないということで、世界観をそのままに新しくパレードを作ることになりました。それが「ディズニー・ファンティリュージョン!」なのです。
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ファンティリュージョンはファンタズミックの制作チームが中心となって造られました。ファンティリュージョンの公演開始は1995年7月。アナハイムのショーからわずか3年後のことです。時期的にもピッタリです。では、ここで本題。果たして本当に東京で「ファンタズミック」はできなかったのでしょうか?
ここに2枚の地図があります。左は東京ディズニーランド。右はアナハイムのディズニーランド。どちらもアメリカ河を中心として、上が北になるよう同じ縮尺で切り取ってみました。どうでしょう?若干の太さの違いはありますが、大きさに違いはないことが分かると思います。
右の地図で赤く塗ったのは、アナハイムのファンタズミックでショーが行われるエリア。ここはトムソーヤ島の一部なのですが、日没後はショーのスペースとして使われています。橙色のエリアは主な鑑賞エリア。ゲストは川越しにショーを見るようになっています。
左の地図は「もし東京のアメリカ河でファンタズミックを行うとしたら」と想定して私がエリアを色分けしたものです。どうでしょうか。東京のほうが狭いというわけではないと思います。むしろアナハイムよりもショーエリア・鑑賞エリアともに広く確保できる気がします。
ここからは私の推測です。東京にファンタズミックが導入されなかったのは、単に水上スペースが足りなかっただけではないと思うのです。私が考える主な理由は、以下の3つです。
- 終了するエレクトリカルパレードの後継ショーとするため。
- 大規模な改修工事が必要であったため。
- ディズニー社に東京へ導入する考えがなかったため。
当時、夜に行われていたのは「東京ディズニーランド・エレクトリカルパレード」初代のエレクトリカルパレードでした。そのリニューアルにあたって、ファンタズミックをパレード化したファンティリュージョンを導入しようと考えた説が1です。
2はかなり現実的な説です。私が地図上で塗ったエリアは赤色・橙色ともにかなりの改修工事が必要となると考えられます。トムソーヤ島一つとっても、現在あるような施設をそっくりそのまま壊して、立て直す必要があると思います。そう考えると、トゥーンタウンの建設を控えていた1995年前後に、このエリアで大規模な工事に踏み切れたとは思えません。
3はもっと現実的な説です。そもそもディズニー社が東京にファンタズミックを輸出する気がなかった、だからその代わりにファンティリュージョンを造った、というものです。事実、ファンタズミックが現在行われているのはアナハイム、オーランドと東京だけ。パリや香港のディズニーパークでは行われていません。
ここまで、なぜ東京ディズニーランドでファンタズミックが行われなかったのか、その理由について考えてきました。では、今後アメリカ河を再開発して、ファンタズミックのような水上ショーを行う可能性はあるのでしょうか。
私は、その可能性は限りなくゼロに近いと思います。シーでファンタズミックをやっていることに加えて、これ以上ランドにショーを行うスペースは必要ないと思うからです。近年はキャッスルショーすら実施をためらっているオリエンタルランド。「コストがかかるから」というのは素人にも分かりますが、もう少しゲストには夢と魔法を提供してもらいたいと思います。
ちなみに、アナハイムのファンタズミックは1公演あたり75,000ドル、オーランドは1公演あたり45,000ドルかかるとされています。夢と魔法を提供するためには、かなりのお金が必要になるのですね。