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舞浜新聞

東京ディズニーリゾートなどのディズニーパークをはじめとして、ディズニーに関する様々な情報をお伝えします。



「ディズニーギャラリー」閉鎖はマニア切り捨てのためなのか?

東京ディズニーリゾートの分析・考察

2月19日、オリエンタルランドは一本のプレスリリースを発表しました。それは、2017年春に東京ディズニーランド内に「ビビディ・バビディ・ブティック」の2店舗目をオープンさせる、というものです。

 

 

今回はビビディ2店舗目のオープンと、それに伴って閉鎖される「ディズニーギャラリー」について、少し考えていきたいと思います。

 

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©Disney

 

どこにできるの?

「ビビディ・バビディ・ブティック」は、小さな女の子がディズニープリンセスに変身できる、ビューティーサロンです。予約が取りづらいことで知られており、連日多くの家族連れで賑わっています。

 

ビビディは東京ディズニーランドホテル内にあります。ホテルで変身して、パークへ向かう。小さな女の子にとっては、まさにシンデレラのように、魔法にかけられた体験を味わうことができるのです。もちろん、その子の親御さんにとっても、思い出に強く残る体験となります。

 

今回発表されたプレスリリースによると、ビビディの2店舗目は東京ディズニーランドのワールドバザールにつくられます。場所は現在、ディズニーギャラリーがあるところです。

 

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(プレスリリースより引用)

 

ビビディの新設に伴い、ディズニーギャラリーは2016年秋に閉鎖されることが決まりました。ディズニーギャラリーで行われている「ディズニードローイングクラス」も、終了することになります。

 

ディズニーギャラリーの閉鎖はなぜ「暴挙」なのか?

今回のプレスリリースに対して、TwitterやFacebookなどのSNSでは、ビビディ2店舗目に対する歓迎の声よりも、ディズニーギャラリー閉鎖に対する反対の声が大きく上がりました。

 

では、どうしてディズニーギャラリー閉鎖に対して、ここまで大きな反応があったのでしょうか。

 

ディズニーギャラリーは、東京ディズニーランドが10周年を迎えた1993年にオープンしました。ディズニーのこれまでの作品やキャラクターを紹介する施設として、多くのゲストに親しまれてきたのです。

 

東京ディズニーシーがオープンする直前には、コンセプトアートやパークの建築模型が展示されたこともありました。ディズニーギャラリーはディズニーの文化や精神を感じられる、数少ない施設だったのです。

 

2005年5月からは、ディズニーのキャラクターたちを描くことができる「ディズニードローイングクラス」も始まりました。しかし、ドローイングクラスの導入に伴い、展示スペースが縮小され、以前は2~3年おきに入れ替わっていた展示内容も、そのままの状態が続いていました。

 

そんななか、突然発表された閉鎖。ドローイングクラスも終了という知らせに、多くのファンからは「クローズしないで」「そのまま移転はしないの?」という声が上がったのです。

 

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©Disney

 

ウォルト・ディズニーはかつて、ディズニーランドについて「金儲けのためにつくったのではない」と語っています。ディズニーギャラリーは経営の面から見ると、ただの展示スペースであり、単位面積当たりの売り上げも低い施設でしょう。

 

しかし、ディズニーの作品がいかにして生まれたのか、ディズニーパークの原点はどうだったのか、そうした文化や精神を学べる大切な施設でした。

 

一見すると無駄に見える施設でも、ディズニーギャラリーはパークにとって必要な施設だったと思います。そんな施設を、客単価を引き上げるために、安易にビビディに置き換えることは、暴挙と言われても仕方がないと思います。

 

なぜ、ギャラリーを潰して「ビビディ」なのか?

SNSの反応を見てみると、どうしてディズニーギャラリーを潰すのか、イクスピアリやパーク内のほかの場所でもいいのではないか?という声が見受けられました。

 

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©Disney

 

ディズニーギャラリーが単に採算が悪かった、単位面積当たりの売り上げが低かったというのも、場所として選ばれた理由だと思います。では、もう少し具体的に分析してみることにしましょう。

 

まずはパーク外を見ていくことにしましょう。

 

イクスピアリにつくった場合、ランドやシーまで距離があり、小さな女の子は移動が大変になってしまいます。また、ランドホテル内にある既存店舗との競合や、予約代行業者への対策を考えると、パーク外は適さなかったのでしょう。

 

では、次にランドとシーを比べてみます。シーよりもランドの方が、家族連れの集客に強みを持っています。それは、小さな子でも楽しめる施設が充実しているからです。冒険とイマジネーション、異国情緒を強みとしているシーと比べても、夢と魔法の王国であるランドの方が、プリンセスとイメージが合います。

 

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©Disney

 

シーは現在、家族連れにターゲットを絞った施設やプログラムの導入が進んでいます。ただ、プリンセス要素が薄いシーにビビディの2店舗目を導入しても、売り上げが伸び悩む可能性があったかもしれません。

 

さて、パーク外、そしてシーのパーク内という可能性が消えました。実は米カリフォルニアのディズニーランドや、フロリダのマジックキングダムにもビビディがあるのですが、いずれもファンタジーランドにあります。では、東京もファンタジーランドに導入するべきではなかったのでしょうか。

 

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カリフォルニアのディズニーランドにある「ビビディ・バビディ・ブティック」ファンタジーランドの一角にある。©Disney

 

オリエンタルランドは今後10年間で、パークに5,000億円もの大規模な投資をする計画を立てています。ランドではファンタジーランドの再開発、シーでは新テーマポートの建設が計画されています。

 

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(プレスリリースより引用)

 

もしファンタジーランドをいじることになれば、再開発と合わせて二度手間になってしまいます。またショップを潰してビビディを導入するとなると、それだけ改装費用が掛かります。ショップの売り上げをビビディの売り上げと比べたときに、売り上げを落としてしまう可能性もあります。

 

ディズニーギャラリーであれば、今ある施設をそのまま有効に使うことができます。また「プリンセスに変身してから、アーケードをくぐってパークへ入る」という、物語の導入も大切にすることができます。だからこそ、ディズニーギャラリーがビビディ2店舗目の場所に選ばれたのではないでしょうか。

 

パーク内ビビディは儲かるの?

さて、現在のビビディはランドホテル内にあります。ランド内にできる2店舗目は、利用のためにパークチケットが必要となります。果たして、わざわざパークチケットを払ってまで、利用するゲストは多いのでしょうか。

 

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©Disney

 

これについて、オリエンタルランドはほとんど心配していないと思います。ランドホテルで変身したプリンセスたちは、そのほとんどがパークを訪れており、変身したまま家に帰ったり、パーク以外の施設に行ったりする可能性は非常に少ないと思うからです。

 

仮にパーク内にあったとしても、バケーション・パッケージのゲスト向けに予約枠を販売すれば、ゲストはチケット料金などをほとんど気にしません。バケパ向けの販売が充実すれば、地方ゲストの利用も大きく伸ばすことができるでしょう。

 

今回のプレスリリースには、こんな一文もあります。

 

新たな「ビビディ・バビディ・ブティック」には、あこがれのプリンセスに変身したお子さまとご家族が一緒に撮影できるフォトスタジオを併設予定です。

 

ランドホテル内にある既存店舗では、撮影は本人のみ、家族と一緒に撮ることはできません。おそらく2店舗目は、地方からの3世代ファミリーにターゲットが絞られていくでしょう。

 

もちろん、アメリカのディズニーランドやマジックキングダムにあるビビディが好評なのも、東京がパーク内に建設を決断した理由でしょう。

 

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©Disney

 

ビビディは一番安いクラウンコースで9,180円、一番高いコースで36,720円となっています。客単価を引き上げることができれば、パークへ投資するキャッシュフローも積み上げることができるのです。

 

女の子向けに絞った集客は危険なのでは?

ビビディ2店舗目の新設に対して、「男の子が楽しめる施設が導入されないのはおかしい」という声も見受けられます。

 

女の子がみんな、プリンセスに対して憧れを持っているわけではありません。ビビディについても「別に興味がない」と考えている女の子もいると思います。ただ、世間全体を見ていくと、やはりプリンセスに対するニーズは大きいと思います。

 

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「フェミニンさを感じさせる」という批判の声が強くなり、北米では最近になってプリンセスたちのデザインが変更された。今後、日本でも上のデザインに統一されていくだろう。©Disney

 

東京ディズニーランド・東京ディズニーシーの場合、男性と女性のゲストの割合はおよそ3対7になっています。東京の場合は、おそらくディズニーが好きな女性が男性と一緒に来るパターンや、ディズニー好きのお母さんが家族と一緒に来るパターンが多いと思います。

 

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東京ディズニーリゾートの男女別来園者比率(オリエンタルランド「ゲストプロフィール」より引用)

 

家族連れの場合、男の子よりも女の子の方がよりお金を使う傾向があります。ひな人形や七五三を見ていると分かるように、どうしても消費金額は女の子の方が大きいのです。

 

海外のパークを見ると、「ジェダイ・トレーニング・アカデミー」のような、男の子や男性向けのプログラムも充実しています。海外のビビディでも、女の子だけではなく、男の子向けのプログラムも用意されています。

 

しかし、日本の場合はどうしても「ディズニー=女性が行く場所」のイメージが強いため、仮に男性向けの施策を充実させても、集客に結び付きにくいという事情があります。そのため、今回のビビディ2店舗目のように、小さな女の子やお母さん向けの施設充実につながってしまうのです。

 

ただ、今後の少子高齢化を考えると、女の子や女性だけではなく、男の子や男性も楽しめるプログラムの充実は急務だといえるでしょう。オリエンタルランドにはガラパゴス化に陥らないように、ディズニーが持つスターウォーズやマーベルといったコンテンツの活用も進めていってもらいたいですね。

 

採算重視は企業として当然。でも…

今回発表されたディズニーギャラリーの閉鎖と、ビビディ・バビディ・ブティックの2店舗目のオープン。企業にとって、採算の取れない場所を改善して、収益を伸ばすことは当然だと思います。しかし、今回のように、ディズニーの文化を伝える施設を潰してまで、客単価を引き上げる方法には、やはり納得できません。

 

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©Disney

 

ワールドバザールでは以前、開園25周年イベントに向けて、施設の大規模な改修が行われました。このときも、採算の悪い施設を潰して、ショップのスペースが広げられたために、ファンからは批判の声が上がったのです。しかし、結果的にショップの動線が改善され、より売り上げを伸ばすことに成功しました。

 

オリエンタルランドとしては、SNSを使いこなしているようなコアなファンよりも、地方ゲストやライトなファンを集客して、利益を伸ばそうとしているのでしょう。アトラクションに乗れて、季節を感じるパレードやショーが見られて、レストランで食事ができれば満足。そんなゲストを大切にしたいのでしょう。

 

昔と比べて質が下がった、ディズニーの精神を大切にしていない、キャッスルショーを復活させてほしい…。そんな古くからのゲストの戯言は、聞く気はないのでしょう。

 

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©Disney

 

今後はますます、七夕やバレンタインのような有料ショープログラム、バケーション・パッケージとセットになっている有料グリーティングが充実していくと思います。パークチケット+αの支払いも、増えていく気がします。

 

オリエンタルランドがやっていることは、企業経営や株主の立場から考えると、至極当然のことです。ただ、ディズニーを愛する私のような人間からすると、どうしてもディズニーの文化や精神をないがしろにしているのではないか、という疑念が強くなってしまうのです。

 

オリエンタルランドには、古くからのファンにも夢と魔法を見せてくれることを願うばかりです。

 

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©Disney

 

おまけ

海外にある「ビビディ・バビディ・ブティック」のコース料金を載せておきます(2016年2月現在)。

 

香港ディズニーランドホテル

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Bibbidi Bobbidi Boutique | Shop | Hong Kong Disneyland

  • The Crown Package:HK$980
  • The Castle Package:HK$1,880

 

ディズニーランド

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Bibbidi Bobbidi Boutique | Disneyland Park

  • The Crown Package:$59.95+税
  • The Courtyard Package:$94.95+税
  • The Castle Package:$194.95+税
  • The Frozen Package:$194.95+税
  • The Frozen Crown Package:$124.95+税
  • The Knight Package(男の子向け):$19.95+税

 

マジックキングダム

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Bibbidi Bobbidi Boutique – Cinderella Castle | Walt Disney World Resort

  • The Crown Package:$59.95+税
  • The Courtyard Package:$94.95+税
  • The Castle Package:$194.95+税
  • The Disney Frozen Package:$194.95+税
  • The Disney Frozen Crown Package:$124.95+税
  • The Knight Package(男の子向け):$19.95+税

 

ディズニー・スプリングス

Bibbidi Bobbidi Boutique at Disney Springs | Walt Disney World Resort

  • The Crown Package:$59.95+税
  • The Courtyard Package:$94.95+税
  • The Castle Package:$194.95+税
  • The Disney Frozen Package:$194.95+税
  • The Disney Frozen Crown Package:$124.95+税

 

ディズニークルーズライン

Disney Cruise Line - Bibbidi Bobbidi Boutique

  • Crown Package:$59.95
  • Under the Sea Package:$99.95
  • Castle Package:$194.95
  • Disney Frozen Package:$194.95
  • Celebration Package:$124.95

 

  • Royal Knight Package:$19.95
  • Captain's Package:$119.95
  • First Mate Package:$39.95
  • Empress Package:$39.95
  • Deluxe Maiden Package:$99.95
  • Captain’s Package:$99.95

 

ロンドンのハロッズ

Bibbidi Bobbidi Boutique at Harrods

  • Royal Experience:£1,000
  • Castle Experience:£500
  • Crown Experience:£200
  • Courtyard Experience:£100
  • Elsa Royal Experience:£1000
  • Coronation Experience:£300
  • Snow Queen Experience:£300
  • Cinderella Ball Experience:£500
  • Knight Experience(男の子向け):£125

 

※パリのディズニーランドやその周辺にビビディ・バビディ・ブティックはありませんが、ディズニーランドホテル内に「Princess for a Day」という女の子向けのビューティーサロンがあります(Disneyland Hotel Recreation | Disneyland Paris Hotels)。

 

参考資料