最近、テレビを見ているとランドセルのCMを見かけることが多くなりました。実は最近、ランドセル商戦は8月のお盆の時期がピークになっているのです*1。これはお盆の帰省に合わせて、祖父母が孫にランドセルをプレゼントする家庭が増えているためです。
あまり知られていないのですが、2012年から東京ディズニーリゾートでも、パーク限定デザインのランドセルを販売しています。今回はそんなパーク限定ランドセルについて、その狙いを考えていきたいと思います。
©Disney
最近の売れ筋は「3万円~4万円台」
最近のランドセルは3万円~4万円台のものがよく売れています。しかし、百貨店やメーカーの展示会などへ行くと、10万円近くもする高級ランドセルも売られています。やはり「6年間使うから」という理由で、高級ランドセルを選ぶ家庭も多いようです。
ただ「ランドセルは高いんだな」と思った方も多いかもしれません。ランドセルの場合は小学校に入学する新1年生しか購入しないこと、近年の少子化で子ども一人当たりにかける金額が増えていることなどから、どうしても価格が高止まりしがちなのです。
最近では学習机の代わりに、ランドセルにお金をかける家庭も増えています。またお盆に帰省した際に、祖父母と一緒にランドセルを見に行って、その場で買う家庭も多くなっています。祖父母としては、やはり孫のために高級ランドセルを選びたい、そんな願いは強いのでしょう。
ランドセルの場合は原価が低いため、メーカーにとっては「儲かる商品」と言っていいと思います。事実、ネット通販を見ていると、1万円台から買える商品もたくさん並んでいます*2。
東京ディズニーリゾート限定のランドセル?
東京ディズニーリゾートでは2012年から、パーク限定デザインのランドセルを販売しています。
パーク内で展示されている2015年モデルのランドセル ©Disney
毎年夏にパーク内のショップで受付を行い、完全受注生産で販売しています。電話やネットでは注文を受け付けていません。2016年モデルはプレミアムモデルの「パールピンク」に加えて、ピンク、ブラウン、ラベンダー、そして男の子向けのブラックの計5色を取り扱っています。
私も実物を見たことがあるのですが、キャラクター要素はあまり強くなく、6年生になっても使えるようなデザインに仕上がっている印象を受けました。素材は人工皮革を使っており、男の子が乱暴に扱っても壊れにくいのではないかと思います。
価格はパールピンク(プレミアムモデル)が75,000円(税込・送料含む)、それ以外の色が58,000円(税込・送料含む)となっています。先ほど、ランドセルの売れ筋は「3万円~4万円台」と書きましたが、それを考えるとパーク限定のランドセルは高めに設定されています。
以下は2012年~2015年までのランドセルのラインナップを表にまとめたものです。
こうやって見ると、年々値上がりしていることがよく分かります。もちろん、原材料費の値上がりや消費税率の引き上げの影響もありますが、2014年に登場した「プレミアムモデル(パールピンク)」からも分かる通り、高い値段でも限定デザインのランドセルは売れると確信しているのでしょう。
どうして限定デザインのランドセルを売っているの?
では、どうして東京ディズニーリゾートは限定デザインのランドセルを販売しているのでしょうか。舞浜新聞では、以下の3つの狙いがあるのではないかと思っています。
- パークへの来園動機にするため
- 「3世代ディズニー」のきっかけにするため
- 東京ディズニーリゾートとの関係づくりをするため
それでは、順番に見ていくことにしましょう。
まず一つ目は「パークへの来園動機にするため」ランドセル商戦はお盆がピークだということは、先ほど書いた通りです。夏は気温が高く、どうしても小さい子を連れた家族連れの来園は減る傾向にあります。そこでランドセルが、夏のパークへの来園動機になるのです。
パーク限定のランドセルは、パーク内のショップでしか注文の受付を行っていません。また見本の展示や試着もその店舗でしか行っていません。つまり、パーク限定のランドセルを買うためには、ランドかシーへ行かなければいけないのです。
もちろん、パークの近くに住んでいる方や、年間パスポートをお持ちの方であれば、特に問題はないと思います。では、地方に住んでいる方はどうでしょうか。ランドセルの購入が、家族みんなで東京ディズニーリゾートを訪れるきっかけになりえるのです。
二つ目は「3世代ディズニーのきっかけにするため」こちらは、先ほどの来園動機と少し似ています。最近では孫にランドセルを送る祖父母が多くなりました。パーク限定のランドセルを買うために、祖父母や両親、孫の3世代でパークへ訪れる。ランドセルが3世代ディズニーのきっかけになりえるのです。
2012年に配信されたモデルプレスの記事には、以下のように書かれています。
7月以降売り場を担当した店舗スタッフによると、購入層の中には祖父、祖母と一緒に、親、子どもの3世代ファミリーで来園した方も多く、北海道から沖縄まで日本全国のゲストが購入。特にピンクが人気の色ということ。
首都圏などのパークから近いゲストだけではなく、地方のゲストも多く購入していることが分かります。地方に住んでいる方にとっては、代金に送料も含まれていますから便利ですよね。
三つ目は「東京ディズニーリゾートとの関係づくりをするため」ランドセルは毎日、しかも小学校生活の6年間、使い続けるものです。「パークで買った」という思い出は、その子にとってずっと心に残ります。ランドセルがその子と東京ディズニーリゾートをつなげる、きっかけになりえるのです。
もちろん、ランドセルは原価率が低い商品ですので、それだけ儲かります。また完全受注生産ですので、売れ残った在庫を抱える心配もありません。
ディズニーデザインのランドセルは、珍しくない?
実はディズニーデザインのランドセルは、決して珍しくありません。例えば流通大手のイオンは、ディズニーデザインのランドセルを取り扱っています。
イオンが取り扱っている「アナと雪の女王」モデルのランドセル ©Disney
それ以外のメーカーでも、ディズニーデザインのランドセルを取り扱っています。
シブヤ文房具が取り扱っている「ディズニー・プリンセス」モデルのランドセル ©Disney
しかし「東京ディズニーリゾート限定」という付加価値は、やはり大きいのではないでしょうか。
特にパーク限定のランドセルは、完全受注生産で受け付けも期間限定ですので、それだけ希少価値も大きくなっています。今後もパーク限定ランドセルの販売は続いていくでしょう。
ランドセルは日本の子どもたちのシンボル
日本の小学生が当たり前のように使っている「ランドセル」もちろん、これは日本独特の文化です。海外の小学校では、こういった文化はありません。ちなみに、地域によってランドセルを使わないところもあります。
京都府内の小学校で使われている「ランリュック」ランドセルとリュックサックが一緒になったようなカバンだ。
最近では荷物や安全管理の観点から、高学年になるとランドセルを使わない地域もあるようです。それでも「新1年生のシンボル」として、ランドセルに憧れる子どもたちの姿は変わりません。
日本文化の象徴でもある「ランドセル」最近では外国人観光客が、土産物としてランドセルを買うケースも増えてきたといいます。東京ディズニーリゾートがパーク限定デザインのランドセルを販売しているのも、それだけパークと日本人の生活が強く結びついている証拠なのかもしれませんね。
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