読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

舞浜新聞

東京ディズニーリゾートなどのディズニーパークをはじめとして、ディズニーに関する様々な情報をお伝えします。



どうして今、東京ディズニーリゾートはチケット値上げを決めたのか?

東京ディズニーリゾートの分析・考察

1月29日、オリエンタルランドは東京ディズニーランド・東京ディズニーシーのチケット料金改定を発表しました。

 

 

今回はチケット料金改定について、その中身や理由を考えていきたいと思います。

 

f:id:Genppy:20150131224646j:plain

©Disney

 

一体いくらになるの?

チケット料金の全面改定は、2011年4月以来、4年ぶりとなります。ほぼ全券種で値上がりとなり、1デーパスポートは今年4月1日から大人6,400円から6,900円になります。

 

それ以外のチケットの新料金は以下の通りです。

 

f:id:Genppy:20150131215647j:plain

(オリエンタルランドのプレスリリース*1から引用)

 

複数日有効のマルチーデーパスポートや年間パスポートなども、1デーパスの価格に合わせて値上げされます。

 

私が一番驚いたのが「アフター6パスポート」昨年9月に500円値上げしたのですが、今回さらに300円値上げされることになります。閉園までの4時間で4,200円、1時間当たり1,050円の計算になります。かなり割高な印象がありますね。

 

アフター6は学校や仕事終わりで、パークを楽しむ方が多く利用しています。オリエンタルランドとしては、人件費などの運営コストが増える平日夜の入園者数を抑えて、朝からの滞在を促したい狙いもあるのかもしれません。

 

そもそも、どうして今値上げなの?

舞浜新聞としては「そろそろパークチケットは値上げされる」と睨んでいました。しかし、2014年4月に消費税率引き上げに伴って、実質的に料金改定を行いましたので、やるとしても2016年度からでは?と考えていたのです。

 

しかし、ここにきてまさかの「値上げ発表」特に1月29日はオリエンタルランドの第3四半期決算の発表日だったため「大規模開発に関する新しい情報が出るのでは?」と考えていた人も多かったと思います。しかし、今回のサプライズ発表は「パークチケットの値上げ」これにはびっくりしました。

 

2006年の改定、2011年の改定は以下のようなスケジュールで行われました。

 

  • 2006年5月9日発表 → 2006年9月1日実施*2
  • 2010年12月10日発表 → 2011年4月23日実施*3

 

前回、前々回ともに発表から約4か月後に改定を行っています。しかし、今回は1月29日発表→4月1日実施ですから、約2か月後という短い期間になっています。スケジュールを見る限り、オリエンタルランドは事前に準備していたというよりも、かなり焦って決定したような印象を受けます。

 

2006年の改定では、シー5周年イベントが夏休み前の7月14日から開催、夏休み明けの9月4日に「タワー・オブ・テラー」のオープンを控えていたことから、この時期の値上げに踏み切ったのだと思われます。また2011年の改定では、シー10周年イベントが4月23日から開催予定だったため*4、それに合わせて値上げを行おうと考えたのだと思われます。

 

f:id:Genppy:20150118125601j:plain

シー5周年イベントの目玉として導入された「タワー・オブ・テラー」投資額は約210億円にも上った。©Disney

 

最近の料金改定を見ていると、シーの周年イベントに合わせて値上げしているのが分かります。そのため舞浜新聞でも、消費税率引き上げが落ち着き、シー15周年イベントが行われる2016年度に値上げが行われるのでは?と考えていたのです。

 

2017年4月には消費税率が10%まで引き上げられます。もし値上げするのであれば、それよりも前にやるだろう。そんな考えもありました。

 

しかしオリエンタルランドは、本来は周年イベントの谷間で、集客に不安が残るこの時期の値上げを決断しました。舞浜新聞としては、今回の値上げはユニバーサル・スタジオ・ジャパンの値上げに合わせたのではないかと思っています。

 

今回の値上げはUSJに合わせた?

USJは今年1月5日、1月30日からスタジオ・パスの価格を改定することを発表しました。

 

1日券の場合、大人6,980円だったのを220円引き上げて7,200円となりました。USJでは2014年1月に料金改定、4月に消費税分の転嫁、そして今年1月の料金改定と、ここ1年間で相次いでチケットを値上げしています。

 

f:id:Genppy:20140730090400j:plain

最近は入園者数を伸ばしているユニバーサル・スタジオ・ジャパン ©Universal

 

以下はUSJのチケット料金の推移です*5

 

  • 2001年3月開業時 5,500円
  • 2006年7月~ 5,800円
  • 2010年6月~ 6,100円
  • 2011年2月~ 6,200円
  • 2012年4月~ 6,400円
  • 2013年1月~ 6,600円
  • 2014年1月~ 6,790円
  • 2014年4月~ 6,980円*6
  • 2015年1月~ 7,200円

 

これを見ると、開業から14年で1,700円引き上げているのが分かります。特に2010年以降、毎年のように値上げを繰り返しています。これは様々なイベント開催に伴う経費の増加、入園者数増加に伴う運営コストの増加、などが理由として考えられます。

 

最近では2014年7月にハリー・ポッターエリアをオープンさせており、値上げによって生まれた利益を、パークのさらなる開発に使おうともしているのです。

 

f:id:Genppy:20140730130948j:plain

集客の目玉になっている「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」©Universal

 

さて、今回のUSJの値上げが発表されたのが1月5日。オリエンタルランドから値上げが発表されたのが1月29日。そしてUSJの値上げは1月30日から。いくらなんでも、これは出来過ぎではないでしょうか。

 

おそらくオリエンタルランドとしては、シー15周年イベントや消費税率引き上げを見越して、チケット値上げを考えていたでしょう。しかし、USJが値上げを発表したのを受けて、消費者の値上げに対する反発が薄いうちに値上げしてしまおう。そう考えたのではないでしょうか。

 

東京ディズニーリゾートの新料金は1デーパスで大人6,900円。USJが7,200円なのと比べると、少し割安感さえ感じてしまうほどです。

 

チケット値上げにはそれ以外の理由も?

USJの値上げ以外にも、オリエンタルランドがチケット値上げを決断したと考えられる理由はいくつかあります。

 

まずは「パークへの大規模投資のため」オリエンタルランドは今後10年間で約5,000億円をパークへ投資する計画を立てています。この5,000億円は銀行からの借り入れや増資ではなく、すべて自己資金で賄う予定です。つまり入園客からのお金で投資しようとしているのです。

 

 

5,000億円といえば、本州と淡路島を結ぶ明石海峡大橋の建設費とほぼ同じです。それだけの資金を自己資金で賄うためには、莫大な利益も必要になってきます。最近パークで行われている徹底的なコストカットもその一つです。経費を削り、利益を増やす。今回の値上げも客単価の引き上げを狙って行われたと考えられるのです。

 

f:id:Genppy:20141102151153j:plain

オリエンタルランドから発表された、新ファンタジーランドのコンセプトアート ©Disney

 

またチケットの値上げによって、入園者数を一定レベルまで抑えようとしているのではないか。そういった見方をすることもできます。

 

さすがにオリエンタルランドも入園者数を減らしたいとは思っていないでしょうが、最近は連日多くのゲストで賑わっており、アトラクションやレストラン、ショップにも長い行列ができています。パークの混雑緩和を目的として、今回の値上げを行った可能性はあるでしょう。

 

特にランドの場合は、今後のファンタジーランドの再開発に伴って、パークの収容能力が一時的に減る可能性もあります。そういったことも値上げに関係しているのかもしれません。

 

さらに今年3月には北陸新幹線の開通が控えています。これまでは長野止まりだった新幹線が金沢まで伸びることによって、北陸方面からの集客が期待できるのです。東京ディズニーリゾートを訪れる人が増えれば、結果的に値上げで収益が伸びる可能性があります。

 

海外のパークと比べれば、まだ安い?

以前、舞浜新聞ではこんな記事を書きました。

 

 

海外のパークと比べると、東京のチケットはまだまだ安いといえるでしょう。しかし、東京の場合はチケットよりも、グッズやレストランでの消費金額のほうが、ゲスト一人当たりの売上高(客単価)が高いのです。

 

f:id:Genppy:20150131222154g:plain

ゲスト一人当たりの売上高(客単価)の推移*7

 

もし仮にチケットをアメリカのパークと同じように、1万円程度まで引き上げたとすれば、間違いなくグッズやレストランの売り上げは減るでしょう。一人で行く場合ならまだしも、家族連れで行くとなれば、かなりの負担増になります。

 

特にフランチャイズ経営のオリエンタルランドにとって、ディズニー社へのロイヤリティーの支払いが多いチケット収入よりも、物販収入のほうが儲かりやすいという事実があります。

 

「海外のパークと比べたらまだ安いよ」というように、チケット値上げを擁護する声もありますが、やみくもに値上げをするべきではないと思うのです。

 

今回の値上げによって、チケット料金は単純平均で12.2%の増加になります。ただし旧料金で販売されたチケットも出回っていることから、値上げの影響が客単価に反映されるのは、2016年度以降になるとオリエンタルランドは見通しています。また2015年度の客単価は、300円台前半の上昇になると見込んでいます。

 

しかし、果たしてそれだけ客単価が上昇するのだろうか、と舞浜新聞では考えています。

 

今回の値上げでは1デーの場合、家族4人で2,000円程度の負担増になります。お土産一個分、食事一人分といったところでしょうか。ただしマルチデーパスの場合、負担はさらに大きくなります。夢と魔法の国では、どうしても財布のひもは緩みがちですが、やはりこのあたりの収入が減るのでは、とも思います。

 

本当に値上げ分の価値は上がってるの?

さて、今回のパークチケットの値上げ。オリエンタルランドから出されたプレスリリースには、以下のように書かれています。

 

この間、東京ディズニーランドでは、デイパレード「ハピネス・イズ・ヒア」(2013年4月)や、アトラクション「スター・ツアーズ:ザ・アドベンチャーズ・コンティニュー」(2013年5月)、ナイトエンターテイメント「ワンス・アポン・ア・タイム」(2014年5月)を導入してまいりました。

 

また、東京ディズニーシーにおいても、アトラクション「ジャスミンのフライングカーペット」(2011年7月)や、「トイ・ストーリー・マニア!」(2012年7月)をオープンさせてまいりました。

 

この他にもショー鑑賞エリアの再整備やレストランの屋外席の環境改善など、両パークにおいてハード、ソフトの両面でパークを訪れるゲストの体験価値向上に努めてまいりました。

 

今後も、当社ではハード面における取り組み*に加え、キャストのホスピタリティなどソフト面における更なるクオリティの向上を図ることで、ここだけでしか体験することができない魅力に満ち溢れた世界で唯一のテーマパークを目指し、更なる成長をしてまいります。

 

*2015年度は、東京ディズニーランドでの新規アトラクション「スティッチ・エンカウンター」(2015年7月)のオープンや、東京ディズニーシーでのアトラクション「マーメイドラグーンシアター」(2015年4月)のリニューアルなどをおこなってまいります。

 

前回の値上げから今回の値上げまでに、パークの体験価値がどれだけ上がったのか。オリエンタルランドはこう書いています。しかし、大型投資の「トイ・ストーリー・マニア!」はそうだとしても、それ以外は小粒な投資が目立ちます。果たして本当に、ここ4年間で体験価値は上がったのでしょうか。

 

f:id:Genppy:20150131231658j:plain

連日多くの人で賑わう「トイ・ストーリー・マニア!」ファストパスは開園してすぐになくなるほど。©Disney

 

震災以降、日常を忘れさせてくれるテーマパーク、特に東京ディズニーリゾートの人気は高まりました。パークファンの裾野が広がっていることを強く感じます。しかしその分、パークの混雑度は上がっているのが実情です。アトラクション、レストラン、トイレ、さらには限定グッズを買い求めるために、ショップにも長い行列ができるくらいです。

 

特に近年は、ショーやパレード、アトモスフィアといったエンターテイメント・プログラムが減っているため、ゲストが分散化しにくい傾向も強まっています。

 

f:id:Genppy:20140429210853p:plain

東京ディズニーリゾートのショー製作費の推移。近年はランド単体の頃とほぼ同額まで縮小している。

 

オリエンタルランドでは、周辺ホテル宿泊者向けに「バケーション・パッケージ」を用意して、ファストパスやショー鑑賞券といった付加価値をつけた宿泊プランを販売しています。旅行代理店に販売するよりも収益率がいいため、最近ではディズニーホテルの代理店への配分が減らされているくらいです。

 

「お金を出せば、より体験価値が上がる」日本は資本主義社会ですから、当然のことだと思います。しかし、最近のエンタメ削減、キャストの人件費削減といったコストカットに加えて、バケーション・パッケージ利用者への優遇を見ると、どうも違和感を覚えるのです。

 

これからの投資のためには、パークチケットの値上げは必要でしょう。しかし、今のパークを見ていると、値上げ分の価値は感じられないのが正直なところです。「お金をかけなくても客が来るからいいや」そんな思いさえ感じてしまうのです。厳しい言い方ですが「これからのパーク」には非常に期待できる一方で「今のパーク」にはまったく期待できません。

 

2015年度、ランドは「スティッチ・エンカウンター」、シーは「マーメイドラグーンシアター」のオープンを控えています。またスペシャルイベントの開催も決まっています。

 

 

果たして東京ディズニーリゾートは、どんな新しい体験価値を提供してくれるのか。まずはこの目で確かめてから、今回の値上げについて最終判断をしたいと思います。

 

参考リンク

*1:株式会社オリエンタルランド「東京ディズニーランド®」「東京ディズニーシー®」料金改定について(PDFファイル)・2015年1月29日発表。

*2:長期滞在を促すため、3デー・4デーパスポートは値下げされました。

*3:学校向けの「スクールスペシャルパスポート」は値下げされました。

*4:東日本大震災のため、シー10周年イベントは9月4日に延期されました。震災後ランド・シーともに休園していたのですが、ランドは4月15日から、シーは4月28日から営業を再開して、チケットの値上げには間に合わせました。特にランドは4月23日から夜間営業を再開しています。

*5:1日券の「1デー・スタジオ・パス」の大人料金です。

*6:消費税率の引き上げ分を転嫁したため。

*7:オリエンタルランドグループ「ゲストプロフィール」より引用。