12月19日、オリエンタルランドは東京ディズニーランドへ「リロ&スティッチ」をテーマにした新しいアトラクションの導入を発表しました。
オープンは2015年夏。トゥモローランドの「キャプテンEO」がある場所に新しく作られます。新アトラクションについて、プレスリリースにはこのように書かれています。
ゲストは、シアター内の大きなスクリーンを通じて、スティッチとのリアルタイムな“交信”を体験していただけます。いたずら好きのスティッチとの、ユーモアと驚きにあふれるやりとりを、ご家族みなさまでどうぞお楽しみください。
この文章を読む限り、スティッチとの会話を楽しむアトラクションであることが分かります。同じプレスリリースでは香港にある「スティッチ・エンカウンター」の写真が使われていますので、おそらく香港やパリにあるものと同様のものになるでしょう。東京の場合「ディズニーシーにあるタートルトークのスティッチ版」と言えば、分かりやすいのではないでしょうか。
ちびっ子から大人まで人気のある「タートルトーク」クラッシュの当意即妙な会話は何度行っても飽きない。©Disney
この新アトラクション導入に伴って、キャプテンEOは2014年6月30日でクローズされます。新アトラクションもシアタータイプですので、おそらく建物を大きく壊したりせず「リニューアル」という形で導入されるでしょう。
総投資額が約20億円と小ぶりの投資になっているのも、そのためだと思われます。トゥモローランドでは過去にも、既存施設をリニューアルして新しいアトラクションを導入しています。
現在のキャプテンEOの定員は369名となっています。シーのタートルトークとキャプテンEOの両方へ行ったことのある方は「あそこは、ゲストと会話するには広すぎるんじゃないの?」と思われるかもしれません。しかし、今回の新アトラクションは定員が160名となっています。タートルトークの定員が238名ですので、ゲストとの会話に問題はないでしょう。
シアタータイプのため、大きなスペースを取っている「キャプテンEO」新アトラクションの定員はこれよりも少なくなる。©Disney
所要時間は12分間となっています。これはタートルトークと同じ長さです。どんなプログラムになるかは現時点で何もわかりませんが、香港やパリの場合「ガントゥの宇宙船に忍びこんだスティッチをゲストが助ける」という流れになっています。ただ海外のパークのアトラクションを東京で導入する場合、少しアレンジを加える場合もあります。ちょっと楽しみですね。
香港にある「スティッチ・エンカウンター」時間帯によって広東語・北京語・英語の3種類のプログラムが用意されている。©Disney
パリにある「スティッチ・ライブ!」こちらはフランス語に加えて、英語によるプログラムもある。©Disney
スポンサーは「キャプテンEO」に引き続いて、おそらくJCBが務めるでしょう。JCBは東京ディズニーリゾートのオフィシャルカードとして、レジ横に大きくロゴマークが掲げられています。毎年キャンペーンを行って、ディズニーパークの貸し切りイベントに利用者を招待するなど、スポンサーとしてかなりの恩恵を受けています。そんなJCBがスポンサーを降りるとは思えません。
今回の新アトラクション導入は、正直驚きでした。私としては「スティッチ・エンカウンター」の東京での導入はないと思っていたからです。それはすでにスティッチのアトラクションとして「魅惑のチキルーム」があるためです。
ランドの「魅惑のチキルーム」オリジナル版とかなり変わってしまったが、スティッチを主人公としているのは東京だけ。©Disney
チキルームでは2008年7月からスティッチが主人公となりました。チキルームは本来、ウォルト・ディズニーが制作に携わった伝統のあるアトラクション。ただ、オーディオ・アニマトロニクスによるショーは古めかしさがあり、そのテコ入れとしてスティッチが導入されたという経緯があります。
チキルームにはみずほ証券がスポンサーとしてついていますし、ポリネシアンのコンセプトがハワイが舞台の「リロ&スティッチ」とうまく合ったというのもあるのでしょう。
もともと「リロ&スティッチ」では、人間の少女であるリロが主人公です。しかし、日本ではリロよりもエイリアンであるスティッチのほうが高い人気を誇っています。
過去にはスティッチがメインとなったスペシャルイベントもパークで開催されていますし、沖縄を舞台にしたテレビアニメ「スティッチ!」も作られています。ディズニーが日本を舞台にアニメーションを作るのは異例で、当時はローカル化の象徴として大きく取り上げられました。近年のディズニーは地域に合わせたものを作っていますので「スティッチ!」もまさにそんな作品の一つだったのです。
沖縄を舞台として、スティッチとイザヨイ島に住む少女ユウナとの交流を描いた「スティッチ!」©Disney
それを考えると、家族連れが多いランドへ新しくスティッチのアトラクションが導入されるのも納得です。
ちなみに、フロリダのマジックキングダムにはトゥモローランドに「スティッチのグレートエスケープ」というアトラクションがあります。私も行ったことがあるのですが、迫力に欠け、あまり面白いとは思いませんでした。これが導入されなくてよかったのかもしれません。
マジックキングダムにある「スティッチのグレートエスケープ」様々な効果があるのだが、どれも迫力に欠けてイマイチ。ちなみに、これはマジックキングダムにしかない。©Disney
舞浜新聞としては、キャプテンEOは近いうちにクローズするだろうと睨んでいました。それはもともと1年間の期間限定で復活したアトラクションであること、マイケル・ジャクソンの人気に陰りが見えてきたこと、業績好調なJCBがスポンサーを務めていること、などがその理由として挙げられます。
ただ、新しいシアター系のアトラクションか、それともライド系のアトラクションか、どちらになるのかと思っていたのですが、まさか「スティッチ・エンカウンター」だとは思いませんでした。
舞浜新聞では以前から、東京ディズニーリゾートに迫る2015年問題について論じてきました。
オリエンタルランドから大型の投資計画が出るのを楽しみに待っているのですが、今のところ全くその気配はありません。
ただ、30周年イベントの終わる前にパークへの投資計画を発表してしまうと「新しくなったときでいいか」というように、来園の先送りが発生してしまうおそれがあります。そのため、あえて情報を小出しにして発表している可能性もあります。
それにしても、先日発表されたシーの「マーメイドラグーンシアター」のリニューアルが2015年春、そして今回の新アトラクション導入が2015年夏となっています。どちらも新規導入とはいえ、既存施設のリニューアルになります。新しい投資計画としてはちょっと迫力に欠ける気がします。
以前の記事でも書きましたが、大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンでは、2014年秋のオープンを目指してハリーポッター・エリアの建設が進められています。今までテーマパーク業界の先頭に立っていた東京ディズニーリゾートにとって、かなりの脅威と言えます。事実、オリエンタルランドの経営陣も名指しで危機感をあらわにしているくらいです。
ハリーポッターへの対抗措置としては、やはり今回の新アトラクションも驚きに欠けると言えるでしょう。オリエンタルランドの中期経営計画の発表は間もなく。その中で「やっぱり舞浜はすごい!」と思えるような、驚きの投資計画が出ることを期待しています。