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舞浜新聞

東京ディズニーリゾートなどのディズニーパークをはじめとして、ディズニーに関する様々な情報をお伝えします。



オリエンタルランド福岡進出の破談と「舞浜一極集中」を考える

東京ディズニーリゾートの分析・考察

それは2008年にさかのぼります。この年の元日、西日本新聞の一面にこんな見出しが躍りました。

 

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この年の4月、東京ディズニーリゾートは25周年イベントを控えていました。そんなタイミングで出た福岡へのディズニー進出の記事。新聞記者が裏を取らずに、ちょっとの情報と憶測だけで書いた記事のことを「飛ばし記事」なんて言いますが、私も友人からこの話を聞いたときは半信半疑でした。

 

記事の内容は?

内容としては、福岡地所が当時計画を進めていた商業施設「キャナルシティ博多」の増築計画「第2キャナルシティ(仮称)」に世界初となる「屋内型ディズニー施設」を建設する方向で最終調整に入ったというもの。この計画には東京ディズニーリゾートを経営するオリエンタルランドが参加する、とされていました。

 

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キャナルシティ博多

 

施設の内容としては、ディズニー側とも協議中であり未定としながらも、ショップやレストラン、ディズニーのキャラクターが出演する劇場などが挙げられていました。オリエンタルランドの投資額は200~300億円、入場者数は年間数百万人を想定している、とのことでした。

 

一部では「モンスターズ・インク“ライド&ゴーシーク!”」や「タートル・トーク」、「ミッキーのフィルハーマジック」、「トイ・ストーリー・マニア!」が計画当初、福岡の屋内型施設に建設される予定だった、という話があるようです。

 

ただ当時の新聞報道やオリエンタルランド、福岡地所双方からの発表の中にはアトラクションを設置するという話はありませんでした。

 

どうして「福岡」だったの?

報道された当時、福岡は九州新幹線の全線開業を控えており、それに合わせて博多駅の再開発が計画されていました。もし博多駅に新たな商業施設ができれば、キャナルシティは大きく客を奪われてしまう。そう考えた福岡地所はキャナルシティの増築部分に、大きな集客力が見込まれるディズニー施設を誘致しようと考えたのです。

 

当初は10階程度の建物の中に、核テナントとしてディズニー施設を建設するという計画になっていました。

 

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キャナルシティ博多は福岡市内中心部に立地している。しかし、周辺には天神地区などに競合する商業施設も多く、博多駅や地下鉄の駅からは距離がある。

 

そもそも、この屋内型ディズニー施設は、福岡地所による思いつきではありません。オリエンタルランドは2007年5月に「中期経営計画」を発表したのですが、その中で、2011年3月までに首都圏以外の大都市中心部において、ディズニーと屋内型施設を共同開発する目標を掲げていたのです。

 

オリエンタルランドにとっては今後の少子高齢化を見据えて、地方都市にディズニー施設を建設することで、舞浜への集客を狙っていました。同時に、舞浜一極集中のリスクを軽減させることも考えていました。

 

そんな中で飛び出した「ディズニー福岡進出へ」の大きな記事。オリエンタルランドとしては慌てたと思います。当時オリエンタルランドからは「具体的なことは何も決まっていない」というプレスリリースが発表されました。

 

リーマン・ショック、そして計画は白紙撤回に 

その後、福岡へのディズニー施設建設計画は進むかに思われました。しかしこの年の9月、100年に一度という世界的な不況のきっかけとなる「リーマン・ショック」が起こります。東京ディズニーリゾートやオリエンタルランドをめぐる状況は大きく変化してしまいました。

 

そして10月、オリエンタルランドはディズニーとコンセプト開発や市場研究を進めていたものの、投資規模に見合った収益が見込めず、事業性が乏しいことを理由に、屋内型施設を共同開発する目標を断念し、計画の検討作業を終了することを明らかにしました。計画は白紙になってしまったのです。

 

当初の計画が狂ってしまった福岡地所は、キャナルシティ増築計画を大幅に縮小。ファッションブランドを集めた「イーストビル」として、2011年9月30日に開業させました。しかし、福岡駅にできたJR博多シティに今も苦戦しています。

 

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緑化壁面が目を引くイーストビル

 

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駅ビルとしては国内最大規模を誇るJR博多シティ

 

当時の新聞報道では、福岡地所とオリエンタルランドの賃料交渉が決裂したことが、計画の白紙撤回につながったというものがありました。しかし、福岡地所はプレスリリースで明確にこれを否定しています。

 

また同じプレスリリースの中で「事業収支シミュレーション上の想定賃料では概ね合意」していたことを明らかにしています。水面下では交渉が行われていたということでしょう。

 

舞浜一極集中は問題なの? 

東京ディズニーリゾートがあるのは千葉県浦安市舞浜地区。駅名にも入っているため、「ディズニー=舞浜」というイメージを持っている人は多いと思います。そんな舞浜地区ですが、元々は遠浅の海を埋め立てた土地です。海にも近いため、当然地震による津波や液状化の心配があります。

 

東日本大震災では、パークや周辺施設は大きな被害を受けませんでした。これはあらかじめ、土地に砂の柱を何本も打ち込んで地盤を固める工事を施していたからでした。それでも、電力事情などから休園を余儀なくされました。駐車場は対策工事をしていなかったため、液状化で噴出した水と砂であふれました。

 

今後懸念される首都直下型地震や南海トラフ巨大地震…。もし発生すれば、東京ディズニーリゾートも大きな被害を受けることが予想されます。しかも、オリエンタルランドは舞浜にしか事業場所を持っていません。舞浜地区が被害を受ければ、それはオリエンタルランドの企業生命に直結してしまいます。これが「舞浜一極集中」と呼ばれている状況です。

 

福岡への進出はやるべきだった? 

2008年は東京ディズニーランドが開園から25周年を迎え、初めてリゾート全体でアニバーサリーイベントを開催しました。東京ディズニーランドホテルやシルク・ドゥ・ソレイユ シアター東京(2011年12月クローズ)がオープンしたのもこの年です。アトラクションやショー・エンターテイメントプログラムに、多額の投資をしたのもこの年でした。

 

そんな祝祭ムード一色だったリゾートを襲ったのが「リーマン・ショック」幸いにもパークは過去最高の入園者数を更新し、オリエンタルランドも大きな利益を上げました。しかし、100年に一度ともいわれた世界的な不況の前で、オリエンタルランドが福岡への投資に躊躇したのは間違いないでしょう。

 

リスクを恐れて舞浜地区への集中投資を選択し、有利子負債の返済を優先したオリエンタルランド。結果的に、舞浜への一極集中は東日本大震災の発生で明るみになりました。

 

私としては、ディズニー施設に絞らず、オリエンタルランドには舞浜地区以外での事業展開を早い段階で考えてもらいたかったと思います。

 

東京以外の日本国内にディズニーパークを作ることは、客の奪い合いになって難しいですし、そもそもディズニー社が許可するとは思えません。屋内型施設にしても、単なるショールームになれば、早い段階で飽きられるでしょう。

 

劇団四季と共同でディズニーのミュージカルを制作したり、そのための劇場建設、シルク・ドゥ・ソレイユのツアーショーへの協賛など、やるべきことはまだまだあるはずです。

 

もし屋内型の施設を作るのであれば、ミニディズニーランドの規模ではないと客の満足は得られないでしょう。しかし、福岡の計画が白紙撤回になったように、どれだけのゲストが、どれだけのお金を使うのか、と聞かれれば収益性はかなり厳しいかもしれません。

 

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さまざまなディズニーのミュージカルを公演している劇団四季。日本国内でディズニーパークを運営するオリエンタルランドが関与する余地はあると思うのだが…。

 

資金調達やディズニー社へ支払うロイヤリティーも問題になってくるでしょう。福岡の計画撤回には、ここの問題も絡んでいたのではないか、と私は考えています。収益性が見通せない事業に、誰がお金を出してくれるのか。ロイヤリティーはどうするのか。舞浜地区以外で事業展開をするのであれば、必ず乗り越えなくてはならないでしょう。

 

ブライトンホテルの買収が意味するものとは? 

オリエンタルランドは今年(2013年)2月、4つのホテルを所有するブライトンコーポレーションを買収すると発表しました*1

 

オリエンタルランドは3つのディズニーホテルと1つのリゾートホテルをすでに経営していますが、どれも舞浜地区を訪れる客をターゲットにしています。ブライトンホテルは浦安以外にも立地しているため、舞浜地区以外での事業拡大につながるでしょう。

 

ただ、オリエンタルランドはこれまで舞浜地区以外での事業拡大をしていなかったわけではありません。ディズニーストアの経営やミュージカル「ディズニーライブ!」の公演、レストランの経営、映画制作事業への参入、キャラクターコンテンツの管理など経営の多角化を進めていた時期もありました。

 

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日本郵政グループのイメージキャラクターとして使われたポスティーズは、もともと日本郵政とオリエンタルランドが共同で開発したキャラクター。2010年4月にトムス・エンタテインメントへ権利を譲渡。

 

しかし、ディズニーストアの経営については、思ったよりも収益性が伸びなかったため、2010年4月にウォルト・ディズニー・ジャパンへ経営権が戻っています。それ以外の事業でもあまり収益が伸びず、撤退や縮小が多いのが現状です。

 

一部では「ディズニーパークの収益が大きく、経営陣が新規事業にあまり積極的ではない」「オリエンタルランドはテーマパークやその関連事業はうまいが、それ以外ではずぶの素人集団」といった、かなり厳しい投資家の声も聞きます。

 

ただ、これまで書いてきたように、舞浜一極集中はリスクが大きすぎます。経営陣の皆さんには、早い段階で新たな事業拡大を目指していってほしいものです。

 

参考資料

オリエンタルランド「都市型エンターテイメント施設」検討作業終了について

http://www.olc.co.jp/resources/pdf/news/2008/20081007_02.pdf

 

 

*1:会員制ホテルの蓼科ブライトン倶楽部は買収対象から外れています。