舞浜新聞

東京ディズニーリゾートなどのディズニーパークをはじめとして、ディズニーに関する様々な情報をお伝えします。



4年で64%も減!ショー製作費削減は何を意味するのか?

4月26日、オリエンタルランドは2013年3月期の連結決算を発表しました。同時に、2013年度の新しいファクトブックも発行されました。

 

 

以前の記事でも書いたのですが、「ファクトブック」とは企業の財務情報などについて、複数の年度のデータを図やグラフで紹介しているものです。

 

 

今回そのファクトブックの中で、特に私が気になったのが「エンターテイメント・ショー製作費」の部門。以下は1997年度から2012年度までのショー製作費の支出額をグラフにまとめたものです。

 

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グラフを作っていく中で私は思わず息をのんでしまいました。過去10年間を振り返ってみると、過去最高なのはやはり東京ディズニーリゾート25周年を盛大に祝った2008年度。この年はキャッスルショーあり、ステージショーあり、ランドの新パレード導入、新しいスペシャルイベント、カウントダウンイベントなど、とにかくエンターテイメント部門にお金をかけた年でした。

 

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25周年のランド・キャッスルショー「ドリームス・ウィズイン」©Disney

 

では、2008年度から2012年度を見ていきましょう。2009年度と2010年度はアニバーサリーイベントの非開催年であり、2002年度と同水準であることが分かります。しかし、シー10周年の2011年度は東日本大震災の影響があるとはいえ、5周年の2006年度と比べて約半分まで落ち込んでいます。

 

It'll Be Magical! ?東京ディズニーシー(R)開園10周年記念テーマソング? (英語、バラード・バージョン)

震災の影響でプログラムの大幅縮小となったシー10周年イベント ©Disney

 

極めつけは2012年度。私はてっきり2012年度は2011年度の落ち込みを回復して、2010年度と同水準まで回復すると思っていたのですが…。近年では群を抜く低予算であったことが分かります。グラフにも書きましたが、2008年度と比べて64%も減少しています。

 

2012年度を振り返ってみると、ランドはまず春のイースターは前年と同じ、夏は夏祭りを新規導入したものの、ハロウィーンとクリスマスも前年と同じ、そして1月~3月の閑散期イベントはなし。シーは春のダッフィーイベントは新規導入、夏は前年と同じ、ハロウィーンとクリスマスは内容を一新したものの、ステージショーはなし。もちろん1月~3月の閑散期イベントはなし。

 

これだけ内容を削れば、ここまでの落ち込みになるはずです。特に2012年度は2011年度と同様にカウントダウンイベントの中止と、年越し特別営業(スペシャルパレードやショーではなく年越し花火のみ)への変更を行ったため、それらの費用も発生しなかったためだと考えられます。

 

東京ディズニーリゾートでは現在「東京ディズニーリゾート30周年"ザ・ハピネス・イヤー"」が開催されています。リゾート全体でアニバーサリーを祝うのは25周年の時以来。ファンの間では「一体どんなエンターテイメントが出るのかな?ショーやパレードは何が変わるのだろう?」と首を長くして待つ人も多かったと思います。

 

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©Disney 

 

しかし、いざふたを開けてみると、目玉と言えばランドの新しいパレード「ハピネス・イズ・ヒア」 ぐらい。ランドの昼のパレードは5年ごとの更新がほぼ決まっていること、スポンサーであるNTTドコモが製作費を負担してくれることなどから、果たして東京ディズニーリゾートが誇る目玉なのかと疑問の声が上がりました。

 

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満を持しての導入となった新パレード「ハピネス・イズ・ヒア」©Disney

 

その後のプレスリリースを読んでみても、キャッスルショーやステージショーといった、25周年のときのような盛大なエンターテイメントプログラムの名前は並んでいません。どちらかというと、アニバーサリー非開催年と同水準か、むしろそれよりも下がっているのではないか、という印象さえ感じます。

 

では、なぜオリエンタルランドが近年ここまで目に見える形でエンターテイメント・ショー製作費を削減しているのか。私なりに考察していきたいと思います。

 

1. アトラクションのほうが集客力があるため

アトラクションの場合、作るときに設備投資が必要ですが、作ってしまえばあとは維持管理をするだけです。減価償却に時間もかかりますし、スポンサー企業もつきやすいでしょう。人気アトラクションになれば、それだけでパークの集客力となります。

 

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2012年度のシー入園者数を押し上げた「トイ・ストーリー・マニア!」©Disney

 

一方で期間限定のショーやパレードは費用がかさむ割には、大きな集客力になりにくいと思われます。減価償却も短く、スポンサー企業からの出資ではなくオリエンタルランド本体でその費用を賄う必要があります。そのため、ショーやパレードといったエンターテイメントプログラムを削って、より集客力のあるアトラクションにお金をかけているのではないか、という仮説が成り立つのです。

 

「天候に影響されやすい」というのもショーやパレードの弱点でしょう。屋内であれば問題ないのですが、ディズニーパークの場合は屋外で行われるエンターテイメントが多いのが現状です。オリエンタルランドとしては、雨や風の影響を受けにくいプログラムの開発に努めているそうですが、やむを得ず中止や内容の変更を決断しなくてはいけない場面は多いと思われます。もちろん、ゲストからのクレームも発生してしまうでしょう。

 

2. 単に経費を削減して利益を増やすため

有名な経営者として知られる稲盛和夫氏は 「売上を最大に、経費を最小に」という言葉を語っています。経営学の教科書にも載っているようなことですが、企業は儲け、つまり利益を最大にするために活動しています。

 

東京ディズニーリゾートを運営しているのは株式会社オリエンタルランド。東証一部にも上場している一流企業です。それだけの大規模な営利企業であれば、より少ない投資・経費で、より大きな売上・利益を上げるために努力するのは当然のことです。それが企業の使命であり、株主もその使命に賛同して出資しているのですから。

 

では、どうしてオリエンタルランドが近年、ここまで目に見える形で経費を削って利益を上げようとしているのか。私はフリー・キャッシュ・フロー、つまりオリエンタルランドが自由に使えるお金を増やすためではないか、と考えています。

 

以前の記事でも書いたのですが、オリエンタルランドの2013年3月期連結決算の中で、キャッシュ・フローの使い道として「新たな成長への投資」が挙げられています。

 

 

これはまさしく、東京ディズニーリゾートへの新たなる投資ではないかと思われます。これはこれで、ちょっと楽しみでもあります。

 

3. マニアしか見ないため

最後の理由は単純明快。誰かと一日、もしくは何日間かの時間を楽しく過ごすために訪れるのがディズニーパークだと思います。これが普通の人の感覚ではないでしょうか。一方、ディズニーパーク大好きな人々、いわゆるマニアの人々はディズニーパークそれ自体が行く目的となっています。

 

普通のゲストは長時間も待ってアトラクションには乗りますが、ショーやパレードは待たないでしょう。アトラクションを待っている間は、ゲストが退屈しないような工夫がされていますが、ショーやパレードの待つ場所は屋外。ただボーっと過ごすしかありません。

 

そんなマニアな人しか見ないショーやパレードに力を入れるよりかは、普通のゲスト、リピーターの客向けのサービスに特化したほうがいい。ニッチな需要よりもマスな需要を目指したほうがいい。そういった理由で予算が削られたのではないでしょうか。

 

以上3つ、私が考えるエンターテイメント・ショー製作費の削減理由について考察してみました。

 

私も恥ずかしながら、アトラクションよりもエンタメが好きなマニアの部類に入る人間です。そのため、近年のエンタメ軽視・縮小のパークに心を痛めています。今後のオリエンタルランドの経営姿勢を、注視していく必要がありそうです。